【完結済】気付いたらパワプロで適当に育てた選手に転生してた話   作:いちごケーキ

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しっかり設定を作ったつもりの北瀬より、オマケで作られた伊川の方がコメント欄で人気(?)で驚いています。
返信する内に、伊川の設定がめちゃくちゃ増えましたw

日間ランキング1位、ありがとうございます!

設定が固まってもいない段階からここまで来れたのは、投票・ココ好き・コメント・誤字報告・そして読んでくださった皆様のお陰です!無印編が終わるまで止まらないので、これからも宜しくお願いします!


17球目 たかが部活

北瀬は上手く練習を抜け出してサボっている最中、後に彼が運命を信じたくなる言葉を掛けられていた。

 

 

それに対し、同じ練習をしていた筈の伊川は、運悪く守備練習を抜けられずにいた。

地獄の守備練習が終わり、ようやく休憩時間になったかと思いきや、青道高校の先輩である御幸一也に絡まれていた。

 

 

「よっ、伊川」

「えっと、あんたは……御幸さん」

 

北瀬と同じで、対戦した強豪校のメンバーを半分位しか覚えていなかった伊川だが、御幸一也の事は覚えていた。あいつスゲーな! パワプロで再現できないかなぁといった感じで。

 

 

「ん? 俺の事もしかして覚えてない?」

「流石に覚えてますよ。北瀬を刺した時凄かったです! もうベンチ大盛り上がりでした!」

 

俺のことを覚えていないのかという発言は、対戦相手だった俺の選手データ位キャッチャーなんだから知ってるよな? という意味も含まれていたが、伊川は気付かなかった。

 

 

御幸も誤認に気付いていなかったが、それより不可解な情報が紛れていた。

ベンチが大盛り上がりという表現に対して、御幸はなんでそんなどうでもいい嘘を吐くんだろうと軽く疑問に思った。

伊川が言ってる事は正しいのだが、疑って当然だ。薬師高校は一発勝負の地区予選でランナーがアウトにされてしまったのだから。相手が凄い、面白い! なんて戦闘狂みたいな事を普通言わないだろう。

 

 

「流石に嘘だろ……あれで得点機会を失ったんだ。悔しがってくれても良いんだぜ」

「でも、あれで失ったのは1点だけですし……御幸さんの神プレーの方が面白かったっス」

 

御幸は、1点の重みを全く分かっていない伊川の発言にドン引きした。通常の試合では、1回の攻撃で1得点も得点出来ないのが普通なのだ。

確かに薬師高校は、毎試合10点以上取っているから感覚が多少ズレるのも分かるが……

 

なるほど。この情報は薬師高校を分析する時に役に立つかもしれない。元々話そうとしていた内容ではない話をしたけど、話しかけたお陰で良い情報を手に入れた! 儲けたな。

御幸はそう考えながら、本題に入る。

 

 

「……そう? そりゃ良かった

で、本題はこれなんだけどさ……お前、キャッチャーやる気あんのか?」

 

なあなあでキャッチャーを続けてきた伊川は、軽い気持ちで自分の問題点が大きい考えを打ち明けてしまう。

 

 

「えっ、えっ。まあ普通に、今までキャッチャーやって来たんで、割と? 本当はサードの方が良いですけど……」

「…………なんでだよ」

「楽そうじゃないっスか。やっぱ守備って面倒くさいし、出来れば楽そうな所をやりたいっすよねー」

 

轟監督は、何でこんな奴を扇の要に抜擢したんだ?! 御幸はキャッチャーという聖職をバカにされた怒りを通り越して、こいつ何でキャッチャーやっているのかと困惑した。

投手を輝かせる為に必死に努力し続けるポジションの奴が、あろう事か面倒くさいだと?

こんな糞みてぇなリードしか出来ねぇ奴、素直にファーストに置けば良いだろうに。そのポジションには同じく守備難の轟がいるから、他のポジションにするしかないが。

 

……あっ、そうか──北瀬の球がこいつ以外取れねぇのか。

 

御幸は、伊川がキャッチャーをしているのは轟監督にとっても苦肉の策である事を見抜いた。

 

MAX160kmの唸りを上げて飛んでくるストレート、球速を考えたら鳴以上かもしれないスライダー、丹波さんの決め球よりも大きく曲がるカーブ、上記と比べて全く遜色ないフォーク、そしてキャッチャーのタイミングすら狂わせるスローボール。

……俺だって、しばらく練習させて貰わなきゃ取れないであろう程、全ての決め球が1級品。それを、こいつは捕球自体は完璧に出来ている。

 

打撃しか好きじゃない、味方投手の足を引っ張り泥沼に引きずり込むような男にキャッチャーをやらせるしかない程、北瀬の投球を捕るのが難しいんだろう。

 

(……才能って言葉は好きじゃねぇけど、こいつは天才だ。好きでもないし、やる気もあるんだか分からねぇ浮ついた気持ちで、あの北瀬のボールを捕球出来るんだからよ)

 

「……お前、捕手失格だよ」

「えっ? はぁ……そうっすかね」

 

伊川は、確かに守備は上手くないけど、セカンドやってたってどうせエラーするからキャッチャーのままでも良いだろ。何でそんな事言われなきゃいけないんだ?

と思い、先輩である御幸に珍しくちょっとだけ苛ついていた。青道高校が薬師高校に負けたから、その憂さばらしで俺に不満をぶつけて来てるよな。先輩だから許すけどさ。

 

無知で野球に対する熱意の足りない伊川視点からすればご尤もな事を考え、御幸の言う事をあまり真面目に受け止めなかった。

 

 

「あれだけ素晴らしい投手が、お前のせいで輝けない事に虫唾が走る。俺なら、あいつをもっと輝かせてやれるのにってよ」

 

御幸は確かに伊川の発言に苛ついてこそいたが、あくまで北瀬の為にあまりにも酷いリードを辞めろと注意したつもりだったが、伊川は全く気付かなかった。

御幸は腹黒い性格ではあるが、ピッチャーを輝かせる事が大好きだった。だから、北瀬は敵エースではあるが、あんなに素晴らしいピッチャーがキャッチャーのせいで貶められるのに我慢がならなかったのだ。

それにどうせ、このポンコツキャッチャーのリードがゴミな事位、どうせ薬師メンバーは分かってるだろうし。指摘されるのがちょっと早くなるだけだ。

 

問題点は即座に解決してきたこの正捕手は、この天才キャッチャーが努力すればどこまで行けるのかも割と、ピッチャーの北瀬程では無いけれど気になっていた。

強いチームを倒す。その為に鳴に誘われた稲城実業を断って青道に来たのだ。

薬師が更に強くなって立ちふさがると思うと、ワクワクが止まらない。

いや別に、利敵行為をした訳じゃねーぞ。指摘されるのがちょっと早くなっただけだ。そう心の中で言い訳しながら、伊川に強く指摘する。

この場面で指摘する事を選ぶあたりが、御幸が性悪キャッチャーと呼ばれたりする理由だった。

 

……伊川は、御幸の嫌味の意味に全く気付かなかった。

 

(なんだこの人。俺ってそんなに悪いか? いやまぁ確かに、バントとか上手く捌けないけどさぁ……こんな上手い人からすれば、俺の粗は沢山見つけられるんだろうな)

 

伊川が全く御幸の嫌味に込められた意味に気付かないのは、未だに自分のリード能力のあまりのお粗末さに気が付いていないからだった。

甲子園出場選手にもなって、たかが部活だと思っている彼がそういう所に気付かないのは納得がいく所ではあるが、気付いている薬師メンバーに指摘されない理由はもちろんあった。

なぜなら、それより優先順位が高いと判断されたバント練習が終わっていないからだ。それを習得した後、じっくり習熟させていく予定の轟監督は、伊川にあえて言わなかった。

 

 

「いやまぁ。御幸さんにかかればどんなピッチャーでも輝くのかもしれないっすけど、アイツは俺の親友なんで……あげませんよ?」

 

北瀬の事を親友として割と大切に思っている伊川は、まさかこの人は引き抜きをしようとしてるんじゃないかと疑い、無駄な牽制をした。

止めろ! 北瀬とつるんでるのけっこう好きなんだよ。引き抜かれたら後2年半の学校生活が、ちょっとつまんなくなっちゃうじゃないか。

 

引き抜こうにも、別の学校の野球部に移った場合、1年間は試合に出られない規則があるので出来る訳が無い。

そんな規則を知らない伊川は、完全にビビっていた。

 

(確かに甲子園出場チームの主砲だもんな。弱小校にいたら引き抜きたくもなるか。もし引き抜くなら、ついでに俺も引き抜いてくれねぇかな? 俺も打撃力はけっこうあるし)

 

野球部に入部させてくれた、根気強くド素人と伊川達に野球を教えてくれた轟監督に、感謝は大してしていない伊川。

そんな彼の夢は海がある田舎で地方公務員になって、たまに海水浴をする事なので、甲子園に行くことに特にメリットを感じていなかった。

むしろ、熱心に指導されたら勉強時間が減ってマイナスでは……? 位の考えだ。

まあ一応伊川は、監督に感謝こそしていないけど、轟親子の野球に対する熱意には敬意を示しているだけマシか。

 

轟監督も、伊川がそう考えている事位は察している。ガサツで適当な人間だが、人の気持ちが全く分からない人間ではない。親としてはダメダメだが、監督として重要な能力を十分兼ね備えた人間である。

 

伊川からは野球に対する執着心が全く感じられないので、それを青道高校での辛い練習の中指摘して、退部でもされたら野球界の損失だ。

そう思い、あまりの酷い守備に胃が痛くなりながら根気強く教え続けていた。

才能はあるが、それを磨かんとする精神力が無い。というかそもそも野球にたいして興味が無い。

 

 

 

──轟監督は、甲子園出場が決定した今だからこそ思う。

大した努力もしていないのにクリーンナップに配置しているのは、努力してもスタメンに入れない部員達に、申し訳無い事をしているのかもしれない、と。

 

だが……野球に求められるのは結果! 実力の理由が努力でも、才能でも! そこはブレちゃいけねぇ。

それに……伊川の才能が開花すればどこまで行けるのか、それを俺は見てみたいって思っちゃったんだよ。

 

轟監督は、妻に逃げられ、借金を作り、息子に十分な食事を与えないような人間性をしている。だが、野球部の運営に関してだけいえば素晴らしい素質を持った監督だった。

 

彼ら親子に感化されたから、野球を真剣にやっている部員が多数を占めている。

細かい文句こそ出るも、激アツな野球を教えてくれた監督に感謝している部員達が、スタメン選出について不満に思う事は全くなかった。

 

それこそ決勝戦で、北瀬と真田のどっちをピッチャーとして使うか位しか出ていない。

それに、あれは怠惰な天才への不満ではなく、薬師が誇る天才を最後まで使ってほしいという嘆願だ。

部員達は口では不満を言いつつ、監督の指示を支持しているのは分かっているのだ。

 

それでも部員達に少しだけ罪悪感を覚えるのは、どんなに足掻いてもプロになれなかった監督が1番、彼らの溢れるような才能に嫉妬しているからかもしれない。

監督も含め、誰も轟監督が少しでも嫉妬してる可能性なんて、想像してみてもいないが。

 

 

 

 

青道高校寮での生活で、上級生にバント阻止の特訓で扱かれたり、雷市が辞退したオリジナル楽曲の件で揉めたりと、地味に各地で仲違いの種をばら撒きながら……最悪の1週間を終えた。

 

 

顔付きが少し強豪校っぽくなった薬師野球部は今日、全ての野球部員が夢見る聖地、甲子園での野球が始まる。

 

___彼らの野球光景がフリー素材化する日は、近い。

 

 

 




応援歌は

秋葉→とんぼ(前園)
伊川→必殺仕事人(白州)
雷市→宇宙戦艦ヤマト(伊佐敷)
北瀬→煌めく瞬間に捕われて(オリジナル)
三島→サンライズ(オリジナル)
真田→SEE OFF(オリジナル)
福田→狙い撃ち(御幸)
小林→TRAIN-TRAIN(倉持)
大田→ロッキーのテーマ(増子)

のイメージです。他のイメージが良い方は、そのイメージでお願いします。
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