【完結済】気付いたらパワプロで適当に育てた選手に転生してた話   作:いちごケーキ

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シナリオを提供してくださった方、ありがとうございます!落合コーチの言葉を勝手に一部変更してしまってすみません!


193球目 青道Side

 

 

 

 

夏の終わりを告げるように、薄暗い夜の風がグラウンドを吹き抜けていた。

降谷と沢村の二枚看板が牽引した青道高校は、公式戦最後の試合で薬師高校に敗北し、その挑戦の幕を下ろす。

最強薬師打線を相手に7失点で抑える堅守を見せた、青道高校の戦いぶりは最後の夏にふさわしい激闘だったが、無情にも敗北の文字が彼らの前に突きつけられた。

 

 

試合後、部室には静寂が漂っていた。

沢村と降谷は無言でベンチに座っている。二人はチームメイトと別れの挨拶を交わした後も、中々その場から動けずにいた。

この場所で過ごした日々、流した汗と涙、数えきれないほどの練習の記憶が二人を引き留めていた。

 

 

「……探したぞ、こんな所にいたのか」

「あ……かんとく」

「ぐ、軍曹!?お疲れ様であります!!」

 

そこに現れたのは、監督の落合博光だった。

片岡監督の後を受け継ぎ、勝利のためには手段を選ばないリアリストとして、選手たちを厳しくも的確に導いてきた。

 

負けるだろうと端から分かっていた戦いだった。

しかし、それでも彼の胸中には、今回の敗戦が重くのしかかっている。

落合は2人の前に立つと、ふと視線を落とした。

いつもの冷静な態度からは想像もつかない、どこか悔しさを感じさせる様子をしていた。

 

 

「……お前ら、頑張ったな」

 

そう言っても、2人はうまく返事ができなかった。

沢村は俯いたまま、降谷も何も言わず前を見つめている。

落合は少し黙ってから、口を開いた。

 

 

「沢村。お前も薄々気づいてると思うし、もう今更だけどな……正直、降谷はともかくお前がここまで化けるなんて思って無かったんだわ」

「いやそん……?……ん??!」

 

この言葉に、思わず沢村は反射的に顔を上げた。

信じられないという表情を浮かべる沢村に、落合は苦笑を浮かべる。

 

 

「ちょっ、ちょっと待ってください軍曹!? 今のどういう意味っすか!?」

「……あー、気づいてなかったのか。なら今のナシな」

「ねえちょっと!? ……なしになる訳あるかぁ!!

そこまで言ったなら最後まで言ってくださいよ!!」

 

沢村は混乱したまま問い詰めるが、落合は淡々と続ける。

 

 

「まあ、続けるけどよ。正直なんで片岡監督があそこまでお前を重用したのか、俺にはイマイチ分からなかった

そりゃー天然ムービングの左腕投手って個性は強い……

けど1年の頃のお前はコントロールはまだまだ粗い、変化球もそれほど使えない、球速も薬師のバケモン共が相手だと打ちごろときてた」

 

監督の、数々の言葉のナイフが突き刺さる。

沢村はこれまでの自分を思い返す。常にがむしゃらに投げ、どれだけ練習しても見合う成果が出ず焦りばかりが募った日々。片岡監督の期待が逆にプレッシャーになったこともあった。

だが今では、自分がその期待に応えられる存在になったと思っていたからこそ……落合監督の言葉は辛かった。

 

 

「だから、俺はお前を使うとしても精々ワンポイントのリリーフぐらいだと思ってた

……打倒北瀬涼。その目標を荒唐無稽だ、身の程知らずだって内心どころか目の前でバカにしてた奴もいただろ」

 

沢村の心に響く落合の言葉。指導者である落合でさえ、かつては沢村を信じ切れなかったという現実に沢村は唇を噛んだ。

しかし、落合の表情には軽蔑や嘲笑の色はなく、ただ純粋に過去の自分を振り返っているだけだった。

 

 

「まぁ一応監督の俺が言える事じゃ無かったが、正直俺も内心そんな風に思ってたよ

___けどお前は、俺の想像なんて遥かに超えて成長を続けた。いつの間にかプロで……いや、メジャーで活躍する選手になるんじゃないかって思うようになった」

「……けど、その割には俺が監督に教えを乞いにいったとき、監督はなんでも真剣に教えてくれたじゃないですか」

 

沢村は反論するように問いかけるが、落合は苦笑する。

 

「そりゃ、まあ仕事だからな……でも教えた事を実際出来るやつなんて早々居ない。お前が例外だ。

だから俺の目が節穴で、片岡コーチの目は正しかった。とか……いや、そんな事が言いたい訳ではない。その……」

 

落合は視線を落とし、拳を握りしめた。言葉を探すように、一瞬の間を空ける。

 

「本当はこの試合、もっと良く出来たかもしれないと……今更そんな事考えちまった。

最初は原石だったお前を、ダイヤのエースとしてもっと磨いてやる方法があった筈だ。お前らに、他にも教えてやれることがあったんじゃねえのか?かける言葉も他にあっただろってな……」

「…ぁ……」

 

沢村は言葉に詰まり、落合の真摯な想いが胸に響く。

沢村だけではない、今青道にいるチーム全員が落合に育てられ、導かれてきた。

合理的指導を最善として指導して来た落合監督が、既に引退した選手達への後悔を口にする姿は、指導者としての真摯さを示していた。

 

 

「だからな……すまん」

 

落合のその一言に、沢村は涙をこらえながら頷いた。

彼の心には、感謝と悔しさが混じり合った感情が渦巻いていた。

降谷も静かに隣に座り、チームメイトとして、そしてライバルとして共に戦った時間を思い返している。

 

 

「落合監督……2年間、俺達と一緒に戦ってくれて、ありがとうございました!!」

「ありがとうござました」

「ん、プロでも今まで通り頑張れよ」

 

沢村と降谷のその一言に落合はそれに対して短く頷き、その場を後にした。

彼の背中は、どこか重苦しさを感じさせたが、同時に沢村達を信じる強い意志が見え隠れしていた。

 

2人は監督の後ろ姿を静かに見送った後、もう1度グラウンドへと足を運んだ。

ナイターの灯が照らす空の下、彼らの野球は終わりを告げたが、これまでの経験は決して消え去ることはない。

お互いを信じ支え合った日々を胸に、次のステージに進む準備を始める。これが青道高校野球部の物語の終わりであり、同時に2人の新たな旅の始まりでもあった。

 

 

 

 

 

 

その夜、青道高校の野球部は静けさに包まれていた。

薬師高校に敗北したことは、公式戦最後の試合であり、沢村と降谷にとって高校野球の終わりを告げるものだった。

いつもは賑やかな部室も、今はどこか寂しげで、部員たちはそれぞれの想いを胸に帰路についた。

 

その中、降谷暁と沢村栄純は校庭に残り夜風に吹かれながらベンチに腰を下ろしていた。

2人は何度もバッテリーを組み、多くの試合で共に戦ってきた仲間でありライバルだ。

その沈黙の中にあったのは、今日で終わるという現実へのやりきれなさだった。

 

 

「ハァ……去年の頃も、こんな感じだったよなぁ……いや、あんときはU-18のお疲れ会だっけか?」

 

そんな風に黄昏れる沢村に、降谷がぽつりと口を開く。

 

 

「栄純くん、僕が薬師の彼らと御幸先輩と一緒に戦ったそのU-18の事なんだけどさ、僕が出た試合覚えてる?」

 

沢村は突然の話題に驚きながらも、目を細める。

あの時のことは、沢村の記憶にも鮮明に残っていた。

降谷、御幸、稲城の成宮とカルロス、そして薬師の北瀬涼を始めとした黄金世代の五人衆がU-18日本代表として遠征に挑んだ夏。

沢村はそのメンバーには選ばれなかったが、同じ青道のライバルとしての誇りを胸に、降谷の戦いを応援していた。

 

 

「……ん?どうしたってんだよ、いきなり」

 

沢村は不意を突かれたように問い返す。

降谷の表情はいつも通り無表情だったが、遠くを見つめるように、当時の自分を振り返りながら続けた。

 

 

「僕は、アメリカチームを相手に本郷君から引き継いで、2回7失点だった。

青道の代表として、北瀬くんのライバルとして意気込んで……凄く格好悪い所を、彼らと御幸先輩の前で見せた」

 

降谷の言葉には悔しさが滲んでいた。

あの試合では、アメリカの打者たちに打ち込まれ、期待された結果を残せなかったことが今でも彼の胸に棘のように刺さっている。

降谷は普段は言葉少なめで感情を表に出さないが、この時ばかりは自身の失敗を隠すことなく語っていた。

 

 

「あぁ……あんときのお前、すっげぇ凹んでたよな」

 

沢村は苦笑しながらも、その時の降谷の様子を思い返す。

普段はクールで自信に満ちた降谷が、1人でどんよりとしたオーラと共に悔しさを噛みしめていた姿は沢村にとっても印象的だった。

降谷にとってそれは、人生の中で初めて味わった本当の意味での挫折だったのかもしれない。

 

 

「だから僕は、プロになった後、どうしてもやりたい目標があるんだ」

「……目標?なんだよ?」

「___僕はWBCで、アメリカを完封してみせる」

 

その言葉は、降谷の強い意志そのものだった。

かつての失敗を乗り越え、アメリカ代表を相手に完璧なピッチングを見せるという大きな目標。

それは降谷にとって、自分自身へのリベンジであり、世界最高の舞台で自分を証明するという覚悟を表していた。

 

沢村は降谷の言葉に目を見開き、一瞬言葉を失ったが、すぐに笑みを浮かべた。

 

 

「メジャーで頂点獲るって言いだすのかと思ったら……

でもいいなぁ、それ!!」

 

沢村の素直な反応に、降谷は少し照れたように俯いた。

2人はいつも通りのテンポで言葉を交わし、互いの想いを共有していく。その一方で、沢村もまた、心の中で自分の目標を見つめ直していた。

 

 

「けど……北瀬もWBCに出るだろ。

あいつもうメジャー内定してるし、日本史上最強の投手として期待されてるって話だぜ?アイツとまた競り合うんだろ……?すっっげぇワクワクする目標だな!!」

 

北瀬涼は、すでにメジャーリーグへの内定が決まり、日本でも飛び抜けた存在として注目されている。

沢村とて張り合うのを諦めたつもりは無いが、北瀬と降谷が日本代表のエースの座を巡って競い合う姿は想像するだけで胸が高鳴るものだった。

降谷は少し考え込むようにしてから、小さく頷いた。

 

 

「うん、北瀬君は強いよ。彼とまた同じチームで戦うのは嬉しいけど、次はライバルとしても負けたくない」

「……ははっ、じゃあ俺も決めたわ!

___俺もプロになって、WBCに行く!んで、俺が日本のエースになって世界を制覇する!!

世界のSAWAMURAを知らしめてやる!負けっぱなしは俺のプライドが許さねぇ!!」

 

沢村の言葉は熱く真っ直ぐだった。自信満々で、時に突っ走る性格の彼だが、その言葉には真剣さが込められていた。彼にとって北瀬と降谷は一つの憧れでもあり、負けたくない相手でもある。そのため、同じ舞台で並び立ち、共に世界と戦うという目標は、沢村にとっても大きな挑戦だった。

 

「君と北瀬君と僕、3人でエースを取り合うって事?

___いいね、面白そう」

「そう!!トリプルエースなんて呼ばれてよ!最強の仲間でライバルって奴だ!!」

 

降谷もまた、沢村の言葉に感化されたように頷く。

高校最後の試合で味わった悔しさ、U-18での挫折、全てが二人を次のステージへと駆り立てていた。

2人は互いに励まし合い、これからの未来に向けて新たな一歩を踏み出す覚悟を固めた。

 

 

 

 

その夜、降谷と沢村はグラウンドに立ちもう1度キャッチボールを始めた。

月明かりの下、ボールは何度も投げ返され、2人の未来へと繋がっていく。

誰もいないグラウンドで響くボールの音は、これからの挑戦を誓う彼らの決意の音だった。

 

沢村が投げた球を受け取った降谷は、少し息を整えてからボールを見つめた。

やがて降谷が投げ返すと、沢村は笑顔でそれをキャッチする。まるで、未来に向けたバトンを受け取るように。

 

 

「なあ、暁よ!俺たちの戦いはこれで終わりじゃねえよな!」

 

沢村の言葉に、降谷は無言で頷いた。彼らにとって、高校野球は確かに終わりを迎えた。しかし、二人の野球はまだ続いている。次の舞台でも、二人は互いに刺激し合い、競い合いながら成長を続けるだろう。

 

 

「___メジャーでも、一緒に戦おうぜ」

 

沢村の声に力強さが込められているのを感じて、降谷も同じように笑みを返す。

互いに認め合い、競い合うことで成長してきた二人だからこそこれからの未来にも揺るぎない自信があった。

 

彼らの目指す場所は同じ。

新たな戦いが、これから始まるのだ。

プロの舞台で、メジャーで、そしてWBCで。

2人が再び、またライバルとして最高のピッチングを見せるために。

 

 

次の日、青道高校のグラウンドには朝陽が差し込み、2人の影を長く伸ばしていた。

新たな挑戦を前に、彼らの心は高鳴り、再び共に戦う日を夢見ながら、それぞれの道を歩み始めていく。

 

青道高校のグラウンドに立つ2人の姿は、これまでの試合以上に輝いて見えた。

それは彼らが、目指す未来がどんなに険しくても輝かしいものであると信じている証だった。

 

 

 

青道高校で培った全ての経験と共に、降谷と沢村は次の戦いに向けて闘志を燃やす。

それぞれの夢と誓いを胸に、彼らの物語はまだまだ終わらないのだから。

 

 

 

 




(落合監督、2年間俺達と一緒に戦ってくれてありがとうございました。なんて言われたの、初めてだったな。片岡さんみたいな良い監督に、近付けているんだろうか……)


Q.落合監督って選手思いでしたっけ?

A.優秀な選手の事は大切にしています。
「本当はこの試合、もっと良く出来たかもしれないと……今更そんな事考えちまった」と言うのは、降谷と沢村2人の失点を減らせたかもしれない。
そうなっていたら、スカウトからの評価も良く出来たかもしれないと言う意味で話しています。
金丸とか東条とかの選手の事は、最後まで2大エースと大砲の添え物だと思ってました。


Q.3人で世界1って、高校右腕最強の本郷は?
A.甲子園で1回戦って勝ち、U-18で会話は無かったけどチームメイトだった男の事は、沢村も降谷もあまり興味がない様です。
本郷は、北海道から逃げた降谷を敵対視しつつライバルとして見ていますが……
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