【完結済】気付いたらパワプロで適当に育てた選手に転生してた話 作:いちごケーキ
感想欄で頂いて気付いたのですが、展開の入れ忘れがあったので1話前に付け足す予定です。この話が、元204球目になります。分かりづらくてすみません。
高校最後の甲子園が終わった北瀬達。全国の強豪校を見事蹴散らし、前代未聞の4連覇を成し遂げ伝説を残した。
そんな彼らは最上級生が5人しか居ないので、甲子園と同じ布陣で国体に挑むと思われていたが……
「うーし、これも経験だ!3年生以外スタメン固定しねぇぞ!ついでにベンチメンバーも入れ替えるぜ!」
『えぇ……?』
妙に国体を軽視している監督が、ベンチ入りメンバーを6人も入れ替えてしまった。
しかも……
「え、ちょっ、何で由井がベンチ入りメンバーから外れてるんスか?!」
北瀬の相棒が、まさかのベンチ落ち。これには、リードが甘かったと反省している本人も絶句していた。
「そりゃあ、1年生の笠松にも経験を積ませてぇからな。
キャッチャーとして由井か奥村を落とさなきゃいけねぇなら、専属捕手になっちまってる由井を落とすわな。
お前の全球種は取れねぇとはいえ、奥村でも多分何とかなりそうだし」
「えー……そんなぁ……」
由井と組み続けて来た北瀬は轟監督の言葉に理解は示しつつも、最後の最後で一緒に戦えないのかと気落ちしていたが……由井はそれどころではなかった。
この選出で、次の正捕手として期待されているのは奥村だと判明したからだ。
国体で大エースと組めない事も残念だが、それどころではない由井。
彼が非常にショックを受けているのを見て、北瀬は(そんなに国体に出たかったのかな。そりゃ由井も野球大好きだし、そう思うよね)と考えていた。凄く呑気である。
一方で奥村は、次期正捕手筆頭だと判明して凄く喜んでいた。別に騒いだりしていた訳ではないが、意外と顔に出ている。
「はぁっ?!何で俺もベンチ外なんだ!!ですか!!」
「地方大会でも公式戦でも沢山出ただろ?そこまで重要な大会じゃないんだし、他のメンバーに経験を譲ってくれ」
「悲しいぜ……ます……」
なぜか次期主砲の火神までベンチ外にされていた。
轟監督の適当さにみせかけて、実はこれも多少は考えた上の判断だ。
公式戦に慣れていない選手を多く起用する予定なので、守備が酷すぎる選手を出せないと判断したのである。
3年生の舞台である国体では轟や三島が固定出場になるので、普段試合に出せていない結城なども出すなら彼は出せないと判断したらしい。
それを加味しても、あまりにも実力を考慮していない采配ではあるが……
轟監督は、黄金世代の彼らなら国体でも勝てると判断している。だから、次世代の育成に全力を出そうとしているのだ。
この滅茶苦茶な采配も、今後の事を考えたら仕方ないのだろう……多分、恐らく。
一抹の不安を残す選出で始まった、国民体育大会。
1戦目の相手は紅海大章栄。今年の甲子園には出場していないが、割と名門のチーム。今回は地元枠として国体に出場することになったらしい。
轟監督は悩んでいるふりという小芝居を挟みながら、選出舐めプを宣言した。
「よ〜し、今日の先発ピッチャーは三島だ!」
「やっったぁーー!!」
『まじで……?』
喜んでいる三島に対し、微妙な顔をしている部員達。
別にキャプテンの事が嫌いな訳ではないが、彼は最近ピッチングの練習をしていない事を知っているからだ。
「勿論キャッチャーは笠松!なぁに、炎上したら直ぐに綾瀬川に変えるからよ!」
「は、はい!頑張ります!!」
「表情が固てぇぞ?今から悩んでもどうにもならん!もっと試合を楽しんでこーぜ!」
「はいっ!」
部員も観客達も、薬師高校の選出方針にかなり疑問が残っている試合が始まった。
練習不足の投手に、高校公式戦の経験が浅い捕手。これは大変な事になるのではと思われていたが……
___カキン!
___バシッ
『ファーストへの打球、だが伊川くんの射程圏内だ!!』
「アウトォ!」
「ガハハ!ナイス始!」
___ガギーン!
『ライト前方にフラフラっと上がっていく打球……センター桜木くんが全力で向かっています!』
___バシッ
「アウト!」
「桜木ー!全力疾走助かった!ありがとう!」
「ナーッハッハッハ!俺はゴールデン・クラブ賞を取る男ですから!!」
___ガギン!
___バシッ
「アウト!」
「始……おめぇ、マジで守備上手くね?」
「ありがと、練習したからな」
『セカンドへの強振ですが、伊川くんが余裕を持って捕球!これは完全にアウトです!』
彼は5回2失点と、投壊薬師野球部にしては最少失点と言える成果を出した。
相手の打撃能力が弱かっただけな気もするが、まあ三島キャプテンの実力もあるだろう。
ちなみに、薬師高校の得点は5回までで20点。どう考えても負けようがない点差が付いている。
しかも轟監督は最上級生達に、疲れちゃうから打つのを辞めろという指示を出していた。
観客達も、伊川がワザと三振を続けている事なんて分かりきっている。この程度の投手の球を、彼が2回連続で打ち損じる訳がないからだ。
これはもう、どう考えても負けようがない。
「うーし。三島ァ、よくやった!次は秋葉の番だ!!」
「えっ、俺……??」
「流石に辞めといた方が良いのでは……」
6回から8回は秋葉が登板。3年生の思い出の舞台なんだから、ちょろっとピッチャーやってたコイツにも投げさせてやるかという監督からの要らないお節介である。
勿論、秋葉本人は嫌がっていた。甲子園クラスの相手に投げられる程、ピッチングに自信がある訳ではないからだ。
結果、3回15失点と派手に炎上。
だが野手陣が追加で20点取ったので問題は無かった。
「よし!なんか打たれまくってたが、勝ってるからオッケー!最後は……伊川!おめぇだ!!」
「いやいやいや、俺ピッチャーの練習した事ないんですけど??!」
「全力で投げりゃ140kmは出んだろ、問題ない!!」
「マジすか…………」
最後のマウンドに立ったのは、まさかの伊川。
1度も練習した事がないポジションに立たされた彼は、冷や汗をかきながら三野先輩の事を思い出していた。
絶対に勝てない相手と戦う事になった、彼が1年生の頃の控えピッチャーの事だ。
(あの時、ネットで叩かれる同チームの人が増えて嬉しいなと思ってすみません……コレ、凄く嫌ですね)
___バシッ!
「ストライク!バッターアウト!」
『伊川くんが、なんと144kmを記録!投手としても優秀な面を、国体で見せています!』
___ガギン!
「セーフ!」
『流川くんも良い送球を見せましたが……セーフ!判定はセーフです!!』
___ガギ
___コロコロ……
「セーフ!」
『あーっと!サード轟くんへのフォローが無い!!ボールはコロコロと転がっていくぞ!!』
『これ、記録上は3塁打になるんですよね……』
___バシッ!
「アウトォ!試合終了!……18-35で薬師高校の勝ち!礼!!」
『ありがとうございました!!』
『わあぁ!!』
こうして国体1戦目は、投壊野球の本質を見せつける形で終わった。
公式戦初登板の伊川も、1回1失点と奮闘。最上級生達の力を見せ付けられたと言える。
秋葉は15失点してしまっていたが……そもそも彼は投手ではないから仕方ない。急に言われて投げられる伊川がおかしいのだ。
「伊川ー、ピッチャーも上手いじゃん!せっかくならプロでもやってみたら?」
「うーん、ポジション増やしたら練習量が増えるじゃん。それは面倒くさいかな」
「そっかー」
薬師が誇る北瀬&伊川コンビはゆるふわな会話をしながら、ホテルに戻って行く。
ナチュラルに1回戦なんて勝てて当然だと思っているので、喜ぶ事はなかったのである。
下級生達の王者の風格に、彼らも多少は飲まれていた。
「あの……俺のリードが悪かったです、すみません……」
「えっ?……いや、俺ピッチャーじゃないし、打たれまくって当然だろ。笠松のせいじゃない」
ちなみに、今回キャッチャーをした笠松は秋葉に謝りに行っていた。自分の未熟なリードのせいで、先輩が滅茶苦茶に打たれてしまったと思ったからである。
「いえ。秋葉先輩のピッチングも、全国に通用する実力だと思います」
「いやいや……もしそうだとしても、俺達って投壊薬師じゃん?変なエラーなんてしょっちゅう出るんだし、気にしなくて良い。あんま気にし過ぎちゃうと色々疲れるよ」
「すみません、ありがとうございます」
対して秋葉は、俺のピッチャーとしての実力なんてこんな物だろうと特に気にしていなかった。
SNSで常に自分達の試合で賛否両論されている事に慣れ過ぎて、たかが3回15失点程度では動揺しなくなっていたのだ。
俺は投手じゃないって知ってるのに、無理やり登板させた監督が悪いと思っている。
彼は薬師野球部の中では繊細な心をしているが、それでも一般的な人と比べれば大層図太い性格をしていた。
「ここも勝って、また優勝しよう!」
『おうっ!!』
2回戦の相手は芝田商業。2年生の時に夏甲子園で戦った相手である。ちなみにその時は友部が投げていて、35-15で圧勝していた。
今回、薬師高校の投手は先発完投型の大エース北瀬……後はもう、観客達全員お察しの展開になった。
___バシッ!
___バシッ!
___バシッ!
「アウト!スリーアウトチェンジ!!」
『わあああぁぁぁ!!』
普段組み慣れていない奥村との急造バッテリーなので、北瀬全ての変化球を使う事は出来ない。
だが世界最速の173kmと決め球のスライダーだけで、紅海大章栄を圧倒。
一瞬で攻守交代してしまい相手チームの見どころがなくなっていたが、薬師無双を期待していた観客達からは盛大な歓声が鳴り響いていた。
___カキーン!
___カキーン!
___カッキーン!
___カッキーン!!
___カッキーン!
___バシッ
___カキン!
一方で薬師が攻撃の際は快音が鳴りやまず、多い時は打順が完全に2巡する結果になった。
特に主砲の轟雷市とエース北瀬が、8打席8ホームランを記録。ガソリンを撒き散らして火炎放射器で燃やし尽くしたかの様に、相手投手を大炎上させている。
「なんかさぁ……白鳥沢とかより弱くない?」
「しっ!誰が聞いたんだか分かんないトコでは言うな!」
「ガハハハ!俺達最強!!」
「カハハハ……サイキョー!!」
結局試合は、45-0で薬師高校の圧勝。
ただでさえ高校最強の布陣なのに、調子の良い時は手のつけられない破壊的打線を見せ付けていた。
これで、次期主砲の火神などをベンチ入りさせていないというのだから恐ろしい話である。
「次は黄瀬が先発か……まー普通に勝てんじゃね?」
「チョー楽しみッス!スタミナ少ないから、完投出来ないのが悔しいっすけど……」
「先発完投型って、プロだとめっちゃ少ないらしいよ?」
「えぇマジすか?!案外プロって大した事ないんスね!」
「いや、プロフェッショナルだから分業してんだろ……」
試合が終わった後、北瀬と伊川と黄瀬が非常にレベルの低い会話をしていた。
この場面だけ見ると、とても国体出場選手とは思えない。
だが……知識が浅かろうと、彼らはポテンシャルで何とか出来てしまうのだ。
そんな感じのままで許されてしまうのが、薬師がゆるふわ野球部たる所以だった。
こんな空気のまま、次世代に引き継いで良いのだろうか?
1番 北瀬(ピッチャー)3年生
2番 奥村(キャッチャー)2年生
3番 三島(ファースト)3年生
4番 伊川(セカンド)3年生
5番 轟(サード)3年生
6番 三井(ショート)2年生
7番 秋葉(レフト)3年生
8番 桜木(センター)1年生
9番 結城(ライト)2年生
10番 綾瀬川(2番手ピッチャー)1年生
11番 黄瀬(3番手ピッチャー)1年生
12番 笠松(2番手キャッチャー)
13番 國神錬介(代打)1年生
14番 真田(内野・守備固め)2年生
15番 花坂(サード・代打)2年生
16番 疾風(外野・代走)2年生
17番 流川(セカンド・控え)1年生
18番 錦織唯月(4番手ピッチャー)2年生
19番 緑野秀丸(代打)2年生
20番 青井葦人(外野・守備固め)