【完結済】気付いたらパワプロで適当に育てた選手に転生してた話   作:いちごケーキ

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錦織というキャラをくださった方ありがとうございます!
頂いた時の資料が見つからなくなってしまってイメージで書いているので、間違っていたらすみません。


206球目 確信

 

 

 

 

「明日の試合はもちろん、巨摩大藤巻とだよな!本郷と投げ合うの楽しみだ!」

「カハハハ……ホンゴー、打つ!!」

「ガハハハ!次こそはアイツからホームランを放ってやるぜ!!」

 

準決勝の相手はもちろん巨摩大藤巻高校……と思いきや、なんか彼らはあっさり白鳥沢に負けていた。

北瀬達は知らないが、エース本郷はまだ復活していない。

だから正直な所、巨摩大藤巻高校は国体1回戦を勝ち抜くのもギリギリだったのだ。

 

 

「……いや、白鳥沢が悪いって訳じゃないんだけどさ。巨摩大藤巻とか烏野とかと比べると落ちるよなぁ。ぶっちゃけ、負けようが無いだろ」

「そうだな…………いや、待てよ?もし監督が滅茶苦茶な采配をして来たら負けかねないかも……」

『確かに……』

 

非常識な采配をしてくる可能性を指摘した伊川は、ふと4番手投手の錦織が試合に出ていない事に気が付いた。

 

 

……嫌な予感がした。

国体は育成メインで行くと話していた轟監督が、彼を出場させない事などあるのだろうか?

 

そもそもの話、1回戦で急造投手の秋葉や俺なんかを出す位なら彼を出せば良かったのではと一瞬思った伊川。

だが、あれだけの点差が付いていたら、ピリ着いた試合にはならなかっただろうなと気付いて少しだけ納得した。

 

 

(もしかして、錦織が投げ負けた時に非難が殺到しない様に、敢えて意味不明な采配をしてたのか?んな無茶な……いや、あの監督なら有り得る。

北瀬に注目が集まってる今、決勝前で躓いたら大問題だからな。経験を積ませる為に負けても、選手が非難されない様にあえて道化を演じていてもおかしくはない……か?

いや、何も考えて無かった可能性も普通にあるけど)

 

 

思い出作りにしても限度がある采配に、少しだけ納得がいった伊川。

まぁもし錦織が出場させられなかったら完全に考え過ぎだが、可能性はあるなと内心思っていた。

 

 

(そうだとしたら何で最初から理由を説明してくれないんだ?あ、そっか。錦織はリリーフピッチャーの予定だから、緊急登板での適性を試そうとしてるのか!

……なら皆には、可能性を言わない方が良いだろーな)

 

 

そう判断した彼は、あえて自分の想定を口にしなかった。

そしてその予測が会っていたのかは不明だが、準決勝では伊川の思っていた通りの展開が起きる事になる。

 

 

 

 

 

 

先発の黄瀬が、6回2失点と好投を見せていた。

普通の野球部なら一般的な点数だが、投壊薬師打線にしては頑張っていると言えるだろう。

代わりに打者陣が9得点取っているので、彼らは楽勝ムードだった。

 

 

「うーん、俺ってまだまだッスわ!」

「ナイスピッチ、黄瀬」

「アザース!」

 

そろそろ交代する頃かな思い、投げ終えてベンチに戻った黄瀬はチラリと綾瀬川の方を見た。

轟監督は、生徒達を見ながら嫌な笑いをしている……部員達はこの時、凄く嫌な予感がした。

 

 

「よ〜し、分かっているとは思うが。交代だ!黄瀬

で、交代で出るのは錦織だ!」

『…………』

 

彼の言葉を聞いて、黙り込んだ一同。

実力で考えると国体で投げるには足りない気もしていたが、野手の三島先輩や秋葉先輩を出場させる時の様に非難は出来なかった。

 

 

「お、俺……??」

「何だ、分かってなかったのか?今大会、出場してないのは残り2人だけ!勿論、今日の試合で全員出す予定だ!」

『あぁー……』

 

言われてみれば、轟監督の采配方針的に考えれば順当だと思われる采配を聞いて、慌てる部員達。

いや、錦織も悪いピッチャーではない。ないんだけど……東北のウシワカと投げ合うには実力が足りないのではと危惧していた。

 

 

「俺ですか?嬉しいんですけど、やっぱ炎上するかもしれないような……」

 

身の丈にあった冷静な判断をする錦織は、監督にそう告げた。だが轟監督は、そんな彼の思慮深さが見える判断をを笑って退けた。

 

 

「ダイジョブダイジョブ!10点取られても20点取りゃいーんだよ!___お前らなら取れるよな?

特に雷市!最近気迫が足んねーぞー、今日はお前に試合が掛かってんぞー!!」

「…………分かった!」

「ガハハハ!気にする事は無い!俺が20点取って、お前らを楽にしてやる!!」

「……流石にそれは厳しくないか?」

「いや、皆が優太の前に出れば可能性はあるかも……?」

 

 

 

 

7回表、錦織がリリーフとして登板した直後、薬師部員達が内心思っていた通りの大炎上をしていた。

 

 

「何見せてくれてんじゃー!!」

「早く綾瀬川に変えろーーッッ!!」

「この糞監督ーー!!」

 

鳴り止まない轟監督への罵声。

自分が言われている訳でもないのに、一般的な感性を持つ錦織は竦み上がっている。

 

……だが、監督は耳をほじりながら馬耳東風とでも言いたげな顔をしている。

まーた試合を見てる事しか出来ない野球を知らないバカ共が騒いでいるなという、ガン無視モードに突入していた。

 

 

結局、この回だけで6失点。黄瀬と打者陣が作り上げた貯金を、殆ど吐き出してしまう。

 

 

「あっ……あの……」

 

青ざめて震えている錦織。そんな後輩の背中を、キャプテンの三島がバシッと叩いた。

 

 

「気にすんな!1回6失点なんて、良くある事だぜ!」

「で、でも、あのウシワカ相手ですよ?!このままじゃ負けちゃうのでは……」

 

怯える後輩を見て、じっと監督の意思を確認した三島。

絶対変えてやらねぇと言う確固たる意思を見て、それでこそ雷市の親父だよなと思った。

 

 

「大丈夫!俺達は、追い詰められた時の方が強い!気がする!!……そうだろ、涼!!」

「そうだよな!負けてる時の方が、なんか力が入るんだよな〜……今はまだ負けてないけど」

 

 

 

 

7回裏、1点優勢の状況で打席に立ったのは1番秋葉。

本日は2得点と控えめな数字だが、それは下位打線の低打力が関係しているだろう。もちろん薬師にしてはだが。

 

(これ……打たなきゃけっこうマズいんじゃね?

そういや、追い詰められたのっていつぶりだろ……)

 

 

___カキン!

 

「セーフ!」

 

そんな事を思いながらヒットを放った秋葉。

彼にはやはり、安打製造機という言葉が似合っている。

 

 

 

 

ノーアウトランナー1塁の状況で、打席には2番伊川。

恐ろしい威圧感を出しながら冷静に投手を観察している。

 

 

___カキーン!

 

「セーフ!」

 

「だからホームラン打てーーっ!」

「花火打ちゃ良いのにさー!」

「別に良いだろ!どうせ北瀬か雷市が決めるんだから!」

 

 

 

 

普段通りヒットを放った伊川がベンチにいる監督や同級生達に野次を飛ばされている最中、次の打者は北瀬。

 

 

「スチール!!」

 

牛島が投球動作に入った瞬間、伊川が走力Sを活かして盗塁を試みる。

投げ始めてしまっているピッチャーは、キャッチャーが刺殺しやすい様に外角のボールゾーンに投げ……

 

 

___カッキーン!!

 

『わああぁぁ!!』

 

それを読んでいた北瀬にカッ飛ばされ、スリーランホームランになってしまった。

 

 

 

 

ベンチに戻った北瀬と伊川は「やったな!」と言いながらハイタッチしている。

 

轟監督は「盗塁しろなんて指示、出してねぇのによぉ〜!」と言いつつも嬉しそうにしていた。

いつもやる気が無かった伊川が、段々と野球を真剣にやり始めてくれたのが嬉しいのだ。

もう選手として高校野球で活躍する事はなくても、彼にとっても大切な教え子なのだろう。

 

 

 

 

___カッキーン!

 

『わああぁぁ』

 

北瀬のスリーランホームランが決まった後、雷市がホームランを出して会場を盛り上げた。

これで薬師高校が5点分優位になっている。

 

 

 

 

___カキーン!

___コロコロ……

___カキン!

___コロコロ……

___バシッ

___コロコロ……

___バシッ

___カキン!

___カキン!

___コロコロ……

 

だがそんな絶対的に見える優位も、8回表で簡単に吹き飛ばされてしまった。

恐ろしい投壊野球。この回だけでエラーは4回。しかも、記録として付く場合のみを数えてである。

結局この回だけで7得点もされてしまい、2点差で追いかける事になってしまった。

 

 

 

 

8回裏は、無謀にもこの場面で入れ替えられた緑野が三振。ついでに投手の錦織も三振して無得点。

9回表でも3得点されてしまい、最終回で5点差を追いかけるハメになっている。

 

 

「い、伊川先輩……どうすれば……」

 

完全に狼狽えている花坂。彼は、今までの高校生活でここまで追い詰められた事が無かった。

あの牛島若利相手に6点も取らなければ負けてしまうなんて、どうすれば良いのか分からなくなってしまっていた。

 

 

「大丈夫!俺達なら行ける!!たった6発、ホームランを打てば良いだけだからな!」

 

話を振られた伊川は半分虚勢、半分本心の言葉でチームを鼓舞する。彼は悲観的なリアリストだが、薬師野球部という居場所を強く信頼してもいるのだ。

 

 

「ガハハハハ!!ここは俺が逆転して、スター街道を突っ走る場面だな?!!」

「いや、優太が逆転は出来ないよ……」

 

1番打者から始まるのだから、5番打者の三島は例え前のバッターが全員ホームランを打っていても逆転できないと、こんな場面にも関わらず冷静に告げる秋葉。

小心者だと自認している彼だが、こんな場面でも平静を保っていられる程度の度胸があるらしい。

 

 

「まぁ、後ろに回す為に打ってくるよ……出来ればね?」

 

 

 

 

大胆な宣言をした秋葉が、5点差の場面で打席に立った。

これで打てなかったら恥ずかしいんですけどと、先ほどの発言を少し後悔している。

 

 

___カキーン!

 

安打製造機と昇り龍の金特が発動して、牛島相手からツーベースをもぎ取った秋葉。

ほっと一息つきながら、次の塁に進む機会を伺っている。

 

 

 

 

次の打者は、日本最強の安打製造機と目される伊川。

流石にこの状況はヤバいから、多少のリスクを犯しても点を奪い取らなきゃと思っている。

 

 

___カッキーン!

 

『わああぁぁ!!』

 

そして狙い通りにホームランを放った。

世間には知られていないが、彼は左投手にめっぽう強いのだ。時代が違えば高校最強レベル程度の投手に、簡単に負ける筈もない。

 

 

 

 

3点差で負けている場面で打席に立ったのは、日本が誇る1等星の北瀬。

 

 

「ここで打たなきゃ、エースじゃねーよな!」

 

やる気十分と言った顔をしている彼は、金特の火事場の馬鹿力が発動している。

ちなみにエースと言う言葉と打力に関係がない事に、彼は一切気付いていなかった。

 

 

___カキーン!

 

『わあぁ!』

 

それでも、東北のウシワカ相手ではホームランを打てなかったらしい。ツーベースヒットにも関わらず、彼は悔しげな顔を隠せなかった。

 

 

 

 

「カハハハ……ウシワカ、打つ!!」

 

殺意の様な意欲を滾らせる、薬師高校の主砲。牛島と戦うのが、それだけ楽しいのだ。

大切なチームの勝敗も背負っている事が、彼の闘争心を更に刺激している。

 

 

___バシッ

 

「ボール、フォア!」

「カハハ……」

 

だがそんな相手の事情など知った事ではないと、白鳥沢は敬遠を選択した。雷市は悲しそうな顔をしている。

そしてエースも、悔しげな顔を隠していない。

この屈辱は一生忘れないとでも言いたげな雰囲気を出していた。

 

 

 

 

「ガハハハハ!ここで俺が3ランホームランだな!!」

 

ノーアウト1・2塁の場面で堂々と打席に立つのは、5番打者の三島。

 

 

___カキン!

 

「セーフ!」

「ぐぬぬぬぬ、打てなかったか……!!」

 

本人の意思とは裏腹に、ヒットしか打てなかった三島。

ここで打てていれば同点だったので、思うように行かなかった悔しさで地団駄を踏んでいた。

そもそも「ヒットしか打てなかった」という発想がおかしい事には気付いていない。

 

 

 

 

ノーアウト満塁の場面で、ミートBパワーDの奥村が打席に立った。打ち損じる訳にはいかないと、真剣な目付きでウシワカを睨んでいる。

 

 

___バシッ!

 

「ストライク!バッターアウト!」

 

「ドンマイ奥村!」

「カハハハ……ドンマイ!」

「よし!次は決めろよ!」

 

だがギリギリの所に決まった球を見逃した結果、残念ながら見逃し三振となってしまった。

ギリギリと奥歯を噛み締めながらベンチに帰って行く彼に、上級生達は温かい声を掛けている。

 

 

 

 

ワンアウト満塁、ここで打たなければ貧相な下位打線に入ってしまう場面で、打席には7番結城。

当たれば長打確定だが、ミート力が低い彼は2代目ブンブン丸とも呼ばれていたりする。

 

 

「___打つ。それだけだ」

 

王者たる気迫を燃やしながら、彼は打席に立った。

そして……

 

 

 

 

___カッキーン!!

 

『わあああぁぁぁ!!』

 

場外への特大ホームランを、この場面で出して来た。

確信歩きをする打者を見ながら、白鳥沢の捕手は崩れ落ちた。

 

 

 

 

 

 

「試合終了ーーっっ!!16対17で、薬師高校の勝ち!礼!!」

『ありがとうございました!!』

 

こうして、何とか準決勝を勝ち進んだ薬師高校。

下級生達は、今後はこういう試合が増えていくのだろうと気付いて青ざめている者も多かった。

 

甲子園4連覇校としての重圧を、漸く感じ始めたのだ。

今までは偉大な先輩達の大活躍で全く負ける気配を感じないまま、観客達からの凄まじい期待に簡単に応えられていたのだ。

次の大会からはキセキの世代が居なくなってしまうのに、異常な成果は求められ続けると気付いて今更慌てている選手も多かった。例えば、先ほど狼狽えていた花坂などが正当する。

 

 

「今日の試合、楽しかったな!伊川!」

「うーん、俺的にはギリギリでキツかった感じだな」

「ガハハハ!終わりよければ全て良し!!」

 

……ちなみにキセキの世代とも呼ばれ始めている最上級生達は、負けかけた事を全く気にしていない。

野球とはこういう物なのだと、この3年間で誤認しているからである。

 

 

 

 




本日の打順

1番 秋葉(センター)
2番 伊川(セカンド)
3番 北瀬(ライト)
4番 轟 (ファースト)
5番 三島(サード)
6番 奥村(キャッチャー)
7番 結城(レフト)
8番 三井(ショート)→緑野
9番 黄瀬(ピッチャー)→錦織

最後の試合、観戦しているのは(少しの描写だけです)

  • 入団を楽しみにしてる真田&ヤクルス
  • 複雑な表情で見守る成宮&天久&北海道ツナ
  • 戦ってきたライバルを見守る沢村&青道高校
  • 観客席で闘志を燃やす本郷&巨摩大藤巻高校
  • 無回答
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