【完結済】気付いたらパワプロで適当に育てた選手に転生してた話   作:いちごケーキ

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はっきり言って、少しの描写ならば全部で良いと思います
と感想を頂いたので全部書くことにしました


207球目 終わり

 

 

 

 

決勝戦の相手は、薬師高校が過去に国体で負けた経験のある大阪桐生。

西東京地区の野球部以外で考えたら最強と言われる事もある超強豪校で、轟監督も割と警戒している。

もちろん、真田母を何回も派遣して偵察済みだ。

 

その結果、最近の大阪桐生は調子が悪い事も判明しているが、ライバルとして最後まで真剣に戦おうと監督やコーチは思っている。

少なくとも、今の黄金世代でも舐めプ采配や辞めとこうと思われるだけの実績を持つチームだった。

まぁ両者が、大阪桐生の監督の交友関係がある事も大きいだろうが。

 

 

「ホントのホントに最後の試合だ!お前らぁ!思う存分に打ちまくって楽しめよ!!」

『おうっ!!』

 

 

 

 

___カキン!

___カキーン!

___カッキーン!

___カッキーン!!

___カッキーン!

___カッキーン!!

 

轟監督が望んでいた通り、薬師打線が大阪桐生投手を大炎上させる結果となった。

1年前の彼らの強さを知っている北瀬は、少し首を傾げて不思議そうにしていた。正直、大阪桐生はもっと強い筈だと思っているのだ。

 

 

「なんかさぁ……大阪桐生、弱くなってね?」

「……1年前は、大阪桐生史上最強世代だって言われてたんだ。俺達が居なきゃ甲子園連覇だって出来たかもって言われる位にはな。今回戦ってるのは谷間の世代だから、格落ち感はあっても仕方ない」

「へぇ、そうなんだ〜」

 

伊川にあっさり一刀両断されている大阪桐生の選手達。

一応、前の世代よりも仲間との連携が上手い、性格が破綻していない人格者達が集まっていると言う事実もあるのだが……そんな事情を彼が知っている筈もない。

それに実際の所、場の空気に飲まれる選手ばかりなせいで本来の実力が発揮し切れなくなっているので、競技者としてはマイナスとすら言えた。

 

 

 

___バシッッ!

 

「ストライク!バッターアウト!」

 

 

___バシッ!

 

「ストライク!バッターアウト!」

 

 

___バシッッ!

 

「ストライク、バッターアウト!……チェンジ!!」

 

守備の回では北瀬が無双し、全く野手陣にボールが飛んでこない展開に。

キャッチャーの奥村も溢さず、完全試合が見えてきている状況なので、守備に自信が無い選手は俺の所に飛んでくるなと願っている。

 

 

「ナイス奥村!良い感じじゃん!」

「そちらこそ、ナイスピッチです北瀬さん」

「もしかしたら、完全試合の可能性もあるかもな〜!」

「___あるかもではありません。やりましょう」

「りょーかい!」

 

今まで公式戦では組んでこなかった彼らだが、5回表まででノーヒットでランナーも一切無し。

奥村と言う男の実力を、地味に見せ付けていた。まあ、変化球は全て取れる訳でも無いのが弱点だが……

 

完全試合もあるかもしれないと話す北瀬に対し、やりましょうと断言する奥村。その言葉に、エースは高揚した。

この2人、出会いが違えば完全な相棒に成れていたのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

ヤクルスワローズの寮で、後輩達の最後の試合を見守っている真田。

キセキの世代達が戦っている事により今回の試合はプロでも注目度が高く、共用リビングのテレビで試合が付けられていた。

今日も、プロの試合があるというのにである。

 

 

『6回表、やはり続投!!世界最速の大エースが、この場面でも実力を見せるか?!』

『彼を相手にしている大阪桐生が不憫でなりません。高校生離れと言うか、人間離れした相手と戦わなきゃならないんですから。彼らはプロでもないのに……』

『北海道ツナの2軍も、薬師5人衆を含むU-18に惨敗したと言われていますからね!流石はキセキの世代と言った所でしょう!!』

『それ、未公開情報ですよ……』

『……あっ』

 

うっかり爆弾発言をかました実況者を笑いながら、真田とカルロスは談笑している。

基本的に陽気な彼らは、人間的な相性が割と良かった。

 

 

「未公開情報勝手に公開ってマジかよ!」

「やっべーな……ま、ネットに流れてはいたけどさ」

「あ〜、そういや聞いた事もあったわ。アレがまさかマジとはな……そういやシュンペーは知ってたのか?」

「ま、後輩達から聞いてたな!」

 

軽い口調で話している一瞬で、6回表は終わっていた。

完全に北瀬無双である。

 

 

「アイツの球、マジで凄かったもんな……また受けてみてぇわ!俺」

 

普段は飄々としている御幸が、真剣な口調でそう話した。

それを聞いた真田は、軽い口調でトンデモナイ事を言い出す。

 

 

「へー、じゃあメジャー目指す感じか!頑張れよ!」

「いやいや……まぁアイツの球を受けるにはそうなるけどさぁ、まだ俺ら2軍だぜ?そんな夢を口にすんのは早すぎねぇか」

「え?あぁ……そっか。高校の頃、メジャーに行くって公言してる後輩が多すぎて、そんなモンだと思ってたぜ」

『えぇ……?』

 

聞いているプロの人達にとって、薬師高校の不可思議な点が、また増えた。

ゆるゆるだけどメジャーリーガーを目指す選手が沢山いるチームってどんなチームだよと、気になって頭を抱えている人すらいたらしい。

 

 

 

 

 

 

『7回表、高卒でメジャーに行く男が投げぬきます!』

『誰もが憧れる舞台でも大活躍して欲しいですねぇ。少なくとも日本史上最高のポテンシャルを持った投手なので』

 

国体で北瀬に対して流れる実況を聞いた、現在防御率2位の成宮は不貞腐れていた。

 

 

「日本史上最強のポテンシャル?!何言ってんの、俺が世界で1番の投手になるんですけど!!」

「すっげ、思いっ切り大言吐くじゃん!」

「ぜっったい実現するし!!」

 

彼も入団1年目で1軍に上がり、チームのエースとして活躍している天才である。

だが高校生ながらに世界最速記録を持つ北瀬には、実力でも知名度でも勝てていない。

ぐぬぬぬと悔しそうな顔をしながら、彼は北瀬へのリベンジを誓っている。

一応、今の所は投手として負けている自覚はあるらしい。

 

 

『三振!!また三振!!これで、今試合21連続目の三振です!このまま行くと、全打席三振も狙えます!!』

 

「ふん!!三振狙いだけが格好良い訳じゃないし!!!」

「鳴、流石に煩ぇぞ」

「うわ、また雅さんに叱られてんじゃん!」

 

大先輩達も試合を観ている中で大騒ぎしていた成宮を、高校時代にバッテリーを組んていた原田が叱った。

なまじ結果を出し続けているだけの事はあり、後輩にも関わらず叱責し辛くて苛ついていた先輩達から内心感謝されている。

 

そんな彼を見て、同時期にドラフト2位で指名された天久が笑った。

バカにして来た彼を見ながら、成宮は「だって光聖が酷い事言うんだもん!!」とまた喚く。

これでも彼らは意外と仲が良いのだから、人間関係とは分からない物である。

 

 

 

 

 

 

『8回表、アメリカからこの試合の為に帰って来た大エースが、マウンドに上がります!!

会場中が揺れる様な大歓声!薬師高校の選手達も、真剣な表情で彼らを率いてきた背番号1を見ています!』

『高校生として最後の試合、世界最速の投手は何を思って投げるのか?!2度と見られない、歴代最高投壊打線にも注目ですよ!』

 

「さっすが俺らのライバル!負けてらんねーな!暁!!」

「……うん。僕も、強くなりたい!」

 

運命のライバルが大層活躍している姿に刺激された2人。

皆で試合を観ている最中、急に立ち上がった。

 

 

「こうなったら特訓だーーっっ!!行くぞ、暁!!」

「負けない!」

「あっ待て!フライングだぞ!!」

 

練習場に駆け出した彼らを見て、同じく引退した3年生達は苦笑いしている。

 

 

「良いのかな、沢村達を放っといて?試合を見るのも勉強だと思うけど……」

「バカは放っとけ……どうせ、火がついたアイツらは止まんねぇよ」

「うーん。沢村くんも降谷くんも、単純一途だしね」

「練習したいなら捕手置いてくなよ……行ってくるわ」

『行ってらっしゃ〜い』

 

無尽蔵の情熱でチームを引っ張った、キャプテンの沢村。

彼は引退しても、1年生の頃と性格が変わらなかった。

めちゃくちゃバカだけど、なぜか人を惹きつける主人公体質と言う所が特に。

 

 

 

 

 

 

『9回表、最後の試合でマウンドを任されるのは勿論この男!日本の北極星、北瀬涼!!

観客席から、既に盛大な拍手が送られています!!』

『いや本当に173kmって何??この男はどこまで伸びちゃうの??と、解説の私も思っております。プロで戦っていた頃でも見たことがありませんよ……』

 

ラジオで実況が垂れ流されている中、本郷はじっと北瀬涼を見ていた。珍しく、苦いだけの表情を浮かべている。

そんな彼を見て、相棒の円城は心配そうな表情を隠せずに茶化そうとしていた。

 

 

「……どうした?正宗、まさか勝てねぇとでも思っちまったのか?」

「違う___ただ、アイツと戦う事は2度と無い」

 

彼の端的な言葉に、円城は思い当たる節があったらしい。

口を出し辛い、本人の思想の問題だよなと苦笑した。

 

 

「……お前、北海道ツナに骨を埋めたいって昔から言ってたもんなぁ。そりゃ、メジャーに行く北瀬とは戦えないか!」

「ああ。だが___エースとして負けるつもりは無い」

 

何度も負かされ続けた怨みと、彼の実力を称賛する想い。

そして、次に戦う時は絶対に勝つと言う闘志を瞳に乗せながら、本郷は断言した。

 

 

「___それでこそ、本郷正宗だ」

 

12年もの間、ずっと彼と組んできた相棒はそう笑った。

 

 

 

 

 

 

「33-0で、薬師高校の勝ち!礼!!」

『ありがとうございました!!』

『……わああぁぁぁぁ!!』

 

薬師野球部黄金世代としての公式戦は、全て終了した。

最初は言われるがまま試合に出ていたが、途中からは紛れもなく本人の意思で戦った北瀬と伊川。

万巻の思いを込めて、北瀬は弟に笑いかけた。

 

 

「終わったな……伊川」

「ああ……野球部として戦うのは、これで終わりだな」

 

しんみりと、全てが終わったとでも言いたげな北瀬と伊川を見て、三島と雷市は首を傾げている。

 

 

「ガハハ!何言ってんだ?___俺達の戦いは、これからも続く!!次はプロで、その次はメジャーで大活躍するんだからな!!」

「……いや、北瀬は直ぐにメジャー行きだけどな」

 

北瀬達に共感していた秋葉が鋭いツッコミを入れた。

少し位、感慨に耽らせてくれても良いだろと若干苛ついている。まあ、これでこそ薬師だとも思っているが。

 

 

「そうだったな!確かにそうだ!!」

「カハハハ……プロにはいっぱい、強い奴がいるんだろーなァ……打ちたい!!!」

『っ……ははは!!』

 

主砲の嬉しそうな声を聞いて、部員達は爆笑した。

いくら何でも切り替えが早すぎる、さっき公式戦が終わったばっかなのに……それでこそ俺達だとウケたのだ。

 

「今試合終わった直後なのに、もー次の事考えてんのかよ!流石雷市!」

「1年生の頃からプロ入り目指してた奴は違うなぁ!」

「?そう??」

 

北瀬達の言葉の意味がよく分かっていない雷市は、こてりと首を傾げたまま悩んでいる。

酷く普段通りの、楽しい野球部だった。

 

 

 

 

 

 

こうして……北瀬涼、伊川始、轟雷市、三島優太、秋葉一真という、投壊野球の象徴たるスター選手達の高校野球生活は終わった。

 

 

 

 

 

 






こんな題名ですが、まだプロ編が何話か続きます。勘違いさせてしまっていたらすみません。


オマケ 昨年度、ヤクルスワローズに指名された人物など


1位 真田俊平   薬師
2位 御幸一也   青道(苦手…でも才能は凄い!)
3位 神谷カルロス 稲城実業(おもしれー奴だな!)
4位 角倉謙二   大阪桐生(よく知らねぇ)
5位 月島蛍    烏野(ツンツンしてて良し!)
6位 堀雄介    紅海大章栄(良い奴だけど才能は)
7位 王野新太郎  白龍(何か壁を感じるんだよな)
8位 楊舜臣    明川(意外と冗談が通じる奴)


育成枠

1位 真貝一人   青森安良(あの時の…ちわす)
2位 真木洋介   仙泉(でっけー!カッケェー!)
3位 梅宮聖一   鵜久森(かなり水が合う)
4位 山口忠    烏野(よく知らねぇ)
5位 白州健二郎  青道(よく知らねぇ)

全員高校生ドラフトという狂気
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