【完結済】気付いたらパワプロで適当に育てた選手に転生してた話   作:いちごケーキ

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シナリオをくださった方、ありがとうございます!
最推しが沢山出てくる小説を頂き、凄くワクワクしています!嬉し過ぎて、5回位読み直しました!!


209球目 嘗ての

 

 

 

 

「ふんふふ〜ん」

 

 

日本ツナの廊下を、鼻歌混じりに成宮鳴は歩いていた。

嘗て野球の名門、稲城実業にて2年から絶対的エースとして1の背番号を背負っていた彼は、日本ツナを前代未聞競合10球団ドラフト1位で入団。

5月までの防御率は実に1.06。対策もあってそこからやや上がってしまったが、圧倒的投球内容によって満場一致で新人王は確実と言われている。

 

更には全国最強投手にして高卒メジャー150億契約を結んだ北瀬涼と投げ合ったという物語性もあり、ルックスも併せて話題性も抜群だった。

そこについてはやや添え物的扱いに不満はあるものの、メジャーで北瀬のいる舞台に上がるという目標がある為、今は敢えて気にしないことにしている。

 

 

全国全ての球児が、いやプロの大半すら羨む様な順風満帆な野球人生を送っている彼自身、やっと自分がこのプロの舞台で認められてきている感覚を持っていた。

ちょうどいい具合に調整も出来て、これからの試合も楽しみだ___そう、完全に安心していたそんな時。とある一枚の通知を渡された。

まだ少し冷えた空気の中、何気なくその紙を手に取る。

 

 

「えーっと何々、特別試合開催のお知らせ……?」

 

 

 

 

 

 

北海道日本ツナファイターズ 選手・コーチ 各位

 

株式会社北海道日本ツナ

 

特別試合開催のお知らせ:薬師高等学校野球部とのエキシビションマッチについて

 

 

日頃より日本ツナファイターズの活動にご尽力いただき、誠にありがとうございます。

この度、以下の通り、特別試合を開催することが決定しましたので、選手及び関係者の皆様にお知らせいたします。

 

 

試合概要

 

今回の試合は、今後プロ入りが有望視されている注目選手を多数擁する薬師高等学校野球部との対戦となります。

特に同校のエースである北瀬涼選手は国内外で高い評価を受けており、その圧倒的な速球や変幻自在の投球術により、今や全国最強の投手として広く知られています。

 

将来のプロ野球界においても重要な存在となることが期待されている彼らとの対戦は、我々にとっても大変意義深い物となると考えております。

また、昨年のU-18日本代表として出場した薬師高校の選手達は、同世代の選手たちの中でも突出した実績を誇り、その実力はプロのレベルに匹敵するとされています。

 

こうした背景を踏まえ、今回の試合は高校野球界とプロ野球界の技術の融合と、次世代選手の育成を目的とした特別な場となることでしょう。

本試合は、我々にとっても技術的に高い挑戦であり、非常に価値のある試合となると確信しております。

エース北瀬涼投手を筆頭に、薬師高等学校の選手達が見せる卓越したプレーは、我々にとっても技術向上の機会であり、今後のシーズンに向けた良い刺激となる事を期待しています。

 

 

 

試合名称:北海道日本ツナファイターズ 対 薬師高等学校 特別試合

開催日:平成19年10月19日

会場:阪神甲子園球場

試合形式:9回制・DH制採用

試合開始時間:13時00分

選手集合時間:10時00分(球場入り)

 

 

試合の意義

 

今回の試合は単なる親善試合ではなく、高校野球界とプロ野球界の技術と意識の高さを示す場です。

特に北瀬涼投手の持つ既存の常識を覆す球速と変化球を相手にする事は、我々にとっても挑戦となります。

この試合がファンやメディアの注目を集め、プロ野球の更なる発展と成長につながる事を期待しています。

 

 

お願い事項

 

本試合に向け、以下の点にご留意いただきたく存じます。

 

コンディションの管理:シーズン中のため、試合前後の体調管理に細心の注意を払ってください。

メディア対応:試合当日は多くのメディアが取材に訪れる事が予想されています。インタビューや取材に際しては、広報部からの指示に従ってください。

試合に向けた準備:高校生チームとの対戦ではありますが、薬師高等学校は国内外で非常に高く評価されています。全力で試合に臨んでください。

 

何かご不明な点がございましたら、チームマネジメント部までお問い合わせください。

 

 

 

 

 

 

(___うん、んー……とりあえず、もう一度最初から読んでみるか。俺が理解できてないだけかもしんねぇしな)

 

「現実を見ろ成宮、正式に決まったんだよ。俺達と薬師高校との戦いが正式にな」

 

宇宙を背に背負ったようなポカンとした顔で固まった成宮を目に、正捕手の太野は困った顔で追い打ちをかける。

当然彼とてこのような事は人生で初めての事なのだから、心境としては似たようなものだが。

 

 

「……ドッキリ?カメラ回ってる?これ」

 

自分で言って、つい辺りを見回してしまう。

けれど普段から俺を疎んでいる先輩方も含め、誰もニヤニヤ笑っている様子なんかない。本当にガチでこの話は現実のようだった。

すると、他の先輩が引き攣った顔で言った。

 

 

「既に向こうの野球部、高野連の承諾及び他球団、スポンサー、リーグの承認もすべて得ているそうだ。

や……やったな成宮、再戦が叶ったじゃねえか……」

 

言葉の意味を噛みしめながら、俺は先輩達と資料に視線を行ったり来たりさせた。

内容は要するに、俺達日本ツナ1軍と、薬師高校が正式な試合形式で戦うという物だった。

しかも唯のエキシビションじゃなく、リーグ承認もスポンサーも巻き込んだ「プロと高校のガチ試合」という触れ込み……って

 

 

「イヤイヤ、イヤイヤイヤおかしいでしょ!?そりゃあ再戦は俺にとって目標だったけど!てかどういうコト!?」

 

日本ツナ1軍選手達に配布された通知書___それに記された内容はあまりにも常軌を逸しており、怪文書の領域に達していた。

それを見て、成宮は叫ぶ。

 

第一、意味が分からな過ぎる。

薬師高校といえば俺の高校時代からの宿敵がいる高校で、プロでもあいつらのようなバッターを全員ぶちのめす。

確かに、そんな思いでここまで来たのは事実だけど……

 

 

「……一応、動き自体は結構前からあったみたいなんだがな、まさかこんなことになってるとは俺も思わんかった」

「いや分かるよ、2軍で完全試合寸前の完封されたからそのリベンジって奴でしょ?でもさ、1軍出して球場貸切ってってのはやりすぎでしょ!上の人良く認めたね!?」

 

大層混乱している成宮に、先輩は怒鳴りながらこう付け足した。

 

 

「だから敬語使えよ!んでそれなんだが……なんかな……どうもお前の発言も一因として絡んでる様なんだよ……」

「___えっ??」

「高校生とプロのガチンコ対決っつったら、普通はバラエティ的な企画を想像するだろ?どこぞの正月番組的な……

監督以外の幾らかは最初はそういう方向に修正するつもりだったみたいなんだが___オマエ、いつだったか7回無失点達成した時のインタビューでやらかしたろ」

 

 

 

 

レジェンド先輩の言葉に、当の成宮は小首を傾げて不思議がった。

 

 

「えっ、何を??」

 

すると、何とか冷静に喋っていた先輩もこめかみに青筋を立てて捲し立てる。

 

 

「……お前なあ!あんとき『薬師打線の方が怖かった』って言い切ってヒデェ騒ぎになったの、もう忘れたのか!」

「あ、ああー……」

「ああじゃねえよ、このバカ!!!」

 

そう指摘されて、漸く納得がいった。

やばい笑えねえぞこれは。ロッカールーム全体に妙な緊張感が漂ってきた。これがドッキリでも何でもない事を、じわじわと実感させられている。

 

 

まあ、今思えばあれは確かに失言だったと思う。

別に煽りのつもりなんかなくて、単純な比較で考えての感想のつもりだった。というかアイツらと真面目に対等でやれる奴なんて、それこそメジャーのトップクラスなんじゃないとは今でも思ってる。

___そんな軽い発言が、どうやらそれがこの企画に影響を及ぼしたらしい。

 

 

いやバラエティ企画とかでもなくて、普通の試合形式でホントにやるの……?1度冷静になろうとした頭が、また熱くなってくるのが分かる。

流石に先輩達の冗談だろうと思いたいけど、どうもこの状況は冗談には思えない。

 

既に今回のプロとして威信を賭けた戦いが、北瀬涼と日本ツナから、薬師高校とプロ野球の戦いそのものへと変わってしまっているのだろう。

 

 

「ゴホン!まあ確かに、仮にも防御率リーグ1位だった成宮があんな発言したって影響は確かに大きいだろうが……んなの所詮は数ある一因、ダメ押しだ。

結局の所、北瀬涼だけじゃなく、例の黄金世代1人1人が日本野球界を牽引するクラスの選手であると世間に認められたってのが1番だろうよ」

 

その言葉に口を閉じて通知を見つめ直す。

俺が予想していた以上に事態は深刻で、リーグ関係者やスポンサーまでもがこの試合に興味を示したらしい。

 

試合当日は、観客席にはスポンサーやプロ野球関係者、マスコミも大勢詰めかけるだろう。

北瀬も今シーズン終了後にはメジャーに挑戦することが確定しているし、もう1度彼の公式試合を見たいと思うのも無理はない。

 

つまり、日本中がこの試合に注目し、対戦を見届けようとしているって事だ。

 

 

「一応お題目としては、メジャーの舞台に旅立つ男のお別れ会的な感じにするらしい」

「……とんだお別れ会があったものだな」

「あー、なんかもう頭痛くなってきた!」

 

深く息をつきながら、髪の毛をぐしゃぐしゃにした。

確かに心の中では、奴と再び戦えるチャンスが訪れたことに燃え上がる部分もある。しかし、同時に不安もあった。

俺も絶対に、この舞台で更に力をつけて強くなっている自信はある。けどあいつらも、更に力を付けてるんだ。

 

 

「向こうも万全の準備で来るだろうからな。DH制だから北瀬は打席に立たねえだろうが……ヤツラにまた全打席ホームランされんなよ」

 

太野さんのその言葉で、以前甲子園で全打席ホームランをかまされた屈辱が蘇った。

あの悔しさを晴らすためにも、俺はこの試合に本気で挑まなければならない。

 

 

北瀬にとって、これが日本で戦う最後の試合。

そして苦渋を舐めさせられた俺にとっては、俺の道を心置きなく進んでいくための決戦になる。

 

 

「……分かったよ。もう腹くくるしかねぇな」

 

再び通知を見つめ、静かに決意する。

呆れたように呟きながらも、心臓から熱い闘志が沸き上がってくるのを感じていた。

 

 

 

 

 

 

最後の夏、俺には心残りがどうしても1つあった。

 

北瀬に最後の最後で勝てなかった。

アイツラをまた甲子園の舞台に連れていけなかった。

個人としても、チームとしても負けた。

 

辛さは勿論あるけれど、あれは精一杯やった結果だった。

今でも死ぬほど悔しいけれど、それは仕方の無い事だ。

 

 

でも……

 

 

『……鳴さん。俺も……俺も勝ちたかったです……っ!』

『そんなの、知ってるよ……っ!

 

 

 

 

 

 

お前らは、アイツらに勝てよ……!』

 

 

最後の最後、樹に向かって口にした余計な1言が、今でも俺の中に棘のように残っている。

託すといえば聞こえはいいけど……でもそこからの1年間、あいつがどういう気持ちでプレーしてきたのか知らない訳じゃない。

 

甘めに見て、守備の甘さを込みに考えて、俺ですら10回に1回勝ちを引き寄せられるかどうかの分の悪さ。

そこから更に強くなった薬師打線を相手に、実際アイツらも本当によくやったとは思う。

 

 

 

 

でも、端から勝ち目の無い戦いを、嘗ての相棒に押し付けてしまった俺は……

 

 

「……頑張ったご褒美だ。卒業前のオマエに先輩の格好いいトコ見せてやるよ、樹」

 

 

 

 

 

 




Q.北海道ツナの2軍が負けたのはU-18だよね?薬師高校じゃなくて、そっちを相手にしたら?
A.既にプロになっている選手が多いので、北海道ツナの事情だけでは呼び出せないです。それと、うちのエースの成宮まで持っていかないでください。

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