【完結済】気付いたらパワプロで適当に育てた選手に転生してた話   作:いちごケーキ

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結末を決める重要な√分岐が小説後にあります!
ご投票宜しくお願いします!!

ちなみに次の話は本編になります!待たせてしまって申し訳ありません。


IF 稲城実業√Ⅴ

 

 

 

 

稲城実業高等学校と合併してから2ヶ月、遂に甲子園出場を掛けた戦いが始まった。

ユニフォームの背中に刻まれた「1」の数字が、やけに重く感じる。前だって、同じ番号を付けていた筈なのに。

 

こんなに沢山の選手達がいるチームで、成宮さんと言う大エースもいるチームで、俺がエースナンバーを背負って良いのかと思う日もあった。

でも、それでも。俺がこうして選ばれた以上、投げて、勝つ事で応えるしかないんだ。

 

ふと、薬師高校時代を思い返した。そう、あの頃は『挑戦者』だったんだ。

勝たなければならないと言うプレッシャーは、周りから全然感じてなかったな。ただ目の前の相手を全力で、楽しみながら倒しに行くだけだった。懐かしいなーーー。

 

 

 

俺達にとって1戦目の相手は、西部高校。普通の1線目は、俺達がシード枠だから除外されている。

 

 

「初戦!大事に行こう!!」

『おうっ!!』

 

キャプテンの福井さんが俺達を鼓舞し、ベンチの士気が一気に高まる。

 

でも、俺の心にはまだどこか緩んでいる部分があった。

相手は秋季大会で地方大会ベスト16。強いとは言い辛いけど弱くもないチームだし、そんなに気合いを入れなくても負けないと思うけどなぁ。ま、大丈夫でしょ。

そう思ってしまうほど、このチームは実力者揃いだった。

 

 

それにしても、俺が最初にマウンドに立てるなんて、正直ラッキーだと思う。

成宮先輩でも真田先輩でもなく、俺に初戦を任せてもらえるなんて。それだけで、俺が1番を背負いたい理由としては十分だろう。

 

俺はやっぱり、公式戦で投げる事が好きなんだ。

 

 

それにしても……なんか初戦は失敗しやすいからとか言ってたけど、よく意味が分かんねぇんだよな。

相手はあんまり強くないし、俺達が負ける訳ないと思うんだけど。ま、出して貰えてるんだからいっか!

 

でも、キャッチャーが正捕手の多田野ってのは心配かも。

あんまり一緒に練習したこと無いんだけど、大丈夫かな?

いや、その辺は轟コーチ達が考えてるか。

 

 

 

 

 

 

1回表、西部高校の攻撃。1番バッターは馬場……いや場地だっけ?みたいな感じの名前の人。興味が無い選手の名前を覚えられないのは、俺の悪い癖だ。

どっちかって言うと守備型だけど、何かが得意って言ってた気がする。

 

 

(伊川、何が得意なんだっけ?)

(コンパクトなスイング)

 

外野に立ってる伊川に、こっそり謎テレパシーで聞いたら答えてくれた。

なるほど、コンパクトなスイングか。それ、長打力が無いって事じゃないか?せっかくなら大振りすりゃ良いのに。

 

そう思いながらサインを確認し、投球を開始した。

 

 

___バシッ!!

 

「ストライク!バッターアウト!!」

 

1人目を三振で切り抜けた瞬間、一気に高揚した。

やっぱ試合で投げんの楽しいな!この緊張感、この真剣勝負ーーーたまんねぇ!

 

 

 

 

次に打席に立ったのは、2番の……名前は忘れた。

得点圏にランナーがいない時に出塁するのが得意、って言ってた気がする。じゃあ今だな。

 

ま、そんなの関係ねーか。俺なら多分抑えられるし。

 

 

___バ、ガシャン!

 

「セーフ!!」

「ドンマイ多田野!」

 

やべ、多田野が取れなかったか。振り逃げで1塁まで行かれてしまった。

キャッチャーのミスな気もするけど、俺のコントロールが悪かったのかもしれねぇ。反省しなきゃな。

 

 

「ナニやってんだ多田野ォ!!」

「背負ってるモンの自覚あるのかァ?!!」

 

自軍スタンドから、けっこう野次が飛んでる。

確かに割とあからさまな失敗だったけど、それにしたって多田野を責めすぎじゃね?アイツだって頑張ってるんだから、責め過ぎるのは良くないでしょ。

 

そう思っていると、衝撃のアナウンスが響いた。

 

 

『稲城実業、選手交代のお知らせをします。キャッチャー多田野くんに変わりまして、由井くん。由井くん……』

「マジかよ」

 

ウソだろ?!まだ1回表。エラーはたった1つ。かのに交代させられちゃうのか。もしかして……俺達も1回エラーしただけで変えられたりして。怖えぇ。

 

ベンチに戻る多田野の背中は、普段よりも小さく見えた。

 

 

 

 

 

 

「___多田野、何故変えられたか分かるな?」

「はい」

 

キャッチャーとして失格の、酷い失敗をしてしまった。

俺は、ピッチャーの信頼を裏切ったんだ。

 

 

「1人の選手に固執し、エースを蔑ろにした。その結果がこれだ。___次は無いぞ。」

「はいっ」

 

 

北瀬に落ち度は全く無い。全部、俺の浅慮が招いた事。

次からは、鳴さんよりも、北瀬を選んで練習しなきゃ行けないんだ。

……こんな気持ちで、俺はあの場所に立って良いのか?

 

 

 

 

 

 

このチーム状況なら、捕手として試合に出られる可能性はかなり有ると考えていた。

だから今、その時が来たに過ぎない。

 

ここから先、俺の力の全てを使って、エース北瀬さんをサポートするんだ。

今の俺の実力じゃ、足を引っ張るだけになるかもしれないけど……

 

 

「由井!公式戦デビューおめでとう!」

「ありがとうございます!」

「大丈夫!俺達が負ける様な相手じゃない!」

「はいっ!」

 

北瀬さんが、俺に気を使ってくれている。

それじゃダメなんだ。ピッチャーに心配されるんじゃなくて、信頼されるキャッチャーにならないと。

 

 

「全球ストレートでお願いします、北瀬さん!」

「オッケー!打ち取れるか分かんないけど、頑張るよ!」

 

 

___バシッッ!!

 

「ストライク!バッターアウト!」

 

 

___バシッッ!

 

「ストライク、バッターアウト!チェンジ!」

『わああぁぁ!!』

 

やっぱり北瀬さんは凄い!こんな重い剛速球を投げられる人は、世界中を探しても絶対に居ない。

彼が、世界最強の投手なんだ!!

 

 

「由井!ナイスリード!」

「ナイスピッチです!北瀬さん!」

 

ハイタッチした後、ベンチに戻った北瀬さん。

あんなミスがあった後なのに、苛つかないのも凄い。

 

 

 

 

___カキーン!

___カキーン!

___カッキーン!

___カッキーン!!

 

 

攻撃に移ると、打撃陣が爆発した。秋葉さん、伊川さん、北瀬さん、雷市さんの連打で初回から一気に4得点。

打撃に特化している彼らを止められる選手なんて、高校生には居ないんじゃないか?

圧倒的な力の差を見せるような、凄まじい猛攻だった。

 

 

「北瀬も雷市もカッ飛ばしたなぁ!」

「アザース!やっぱホームラン楽しいですね!」

「カハハハ……楽しい!!」

 

真田先輩とか森山先輩が笑顔で迎え入れて、元薬師組でわちゃわちゃしている。

旧稲城実業組は少し寂しそうだ。7人しかいないしね。

それでも先輩方は、冷静に試合を見つめていた。

 

 

「凄い勢いで飛ばしましたね!最後まで投げ抜くスタミナは、残ってますか?」

「もちろん!延長まで投げ抜けるよ。多分コールドになるだろうけど」

 

ちょっと心配になる位豪快なスイングだったけど、北瀬さんはピンピンしてるいみたいだ。

この調子なら、最後まで投げ抜いてくれそう!

 

___掴んだチャンス、逃しませんよ。多田野さん。

 

 

 

 

 

 

優れた1年生が現れようと、正捕手は2年生の多田野。

そこを動かすつもりは無かった。

高校野球の実績が無い選手を、信頼が大切な捕手として起用する事は難しいと判断ているからだ。

 

 

だが……現状を鑑みると、由井も使わざるを得ない。

 

超高校生級の成宮だけで、多田野には大分荷が重い。

彼との連携を強化した上で、メジャークラスの北瀬とも正式に組めと言うのは、こちらが無茶を押し付けているのだろう。

 

正捕手がエースを蔑ろにするなと、試合では叱った。

だが、後手後手に回った結果がこれだと、本来は私が反省すべき場面だったのかもしれない。

 

 

「___正捕手の件、決着はどうしますか」

 

野球部部長の林田さんが、重々しく口を開いた。

 

 

「ん゙ー。俺は北瀬達を、由井に任せても良いと思いますけどね。アイツも上手い選手ですし。分業させた方がバッテリー的には良くないっすか?」

 

轟監督は、多田野に拘るつもりは全く無いらしい。

今後の部内情勢ではなく、あくまで現時点での次善策を取る判断をしたのだろう。

彼の単刀直入な発言を聞いて、長く見て来た生徒への私情が入っていたかもしれないと自戒した。

 

 

「俺はあくまで、正捕手は多田野が良いと思いますね。

捕手と言うポジションは扇の要。2人体制にしてしまうと、野手陣の連携に支障が出かねません。」

 

林田さんの意見は、私が1番危惧していた事だった。

状況判断を一任されている捕手。別々の判断をする司令塔が2人もいると言うのは如何なものかと、私の野球経験から判断しているのだ。

だから12年間、私が監督をしている時は1度も2捕手制を取った事は無い。

 

 

私としては、やはり捕手は多田野1人体制が妥当だと考えている。

だが……叱った時の彼の顔を思い出し、今直ぐに判断するのは次期早計だろうと考え直した。

 

 

「___多田野本人に決断させましょう。

あくまで成宮1人に拘るのか。正捕手として全員の球を受けるのかを」

 

林田さんは驚き、轟さんは納得した様な顔をした。

 

当然だろう。私は正攻法を重んじる性質をしているが、轟コーチは奇策・奇襲を持ち味としている。

彼にとって、これ位の事は想定の範囲内だったのだろう。

 

 

「良いんですか。そんな大切な事を1生徒に決めさせて」

「ええ。命令すれば『監督に言われたのだから仕方ない』と言う逃げ道を与えてしまうでしょう。どちらでも構わないのなら、自分で選んだ道を進ませるべきだと思います」

 

私の言葉に、轟監督は少し引き攣った顔をした。

何故だろうか?一般論を話しただけだと思うのだが。

 

 

「いやぁ、厳しい事言いますねぇ。……でも強豪校はこう有るべきなんでしょうね。まだまだ俺は、強豪コーチとしての心構えが足りてなかったですわ!」

 

轟さんは、たった2年でチームを甲子園に導いた名監督。

その手腕を疑う事は、出来よう筈もない。

 

だがそれと同時に、新米コーチでもあるのだ。

経験の浅さは恥じるべき事では無い。これから積み重ねて行けば、着実に力は付いていくのだから。

彼には、天才的な打撃指導センスがある。他の事は、同じチームの仲間として我々が支えていけば良いのだ。

 

 

「今は特殊な環境です。ですが覚悟を持たせる事は、必ず多田野にとって力の源になります。獅子は我が子を千尋の谷に落とす、我々はそのつもりですよ」

「はぁ〜なるほど。名門校がそう有り続けられるのは、そう言った理由が有るんですね」

 

こうして正捕手問題は、当事者の多田野が決定権を握る事となった。彼の決断が、部に与える影響は大きいだろう。

……まぁ、何があってもこのチームは勝てるだろうが。

 

 

 

 

ちなみに轟監督は「獅子は我が子を千尋の谷に落とす」という諺を知らなかったので、後で調べたらしい。

「本当に我が子を深い愛情を持って育てると言う事は、ワザと厳しい試練を与えて成長させるということである」と書いてあるのを見て、一理あるなと思ったとか。

 

それでも流石に、息子に満足に食事を与えられず、素振りだけさせ続けるのはどうかと思うが……。

 

 

 

 




伊川が野球に対して本気になるかの投票です。
頂いた本編が激アツだったので、流れに乗って展開の変更を考えています!

-追記-

本編の展開の投票です。

伊川始がやる気を出すかどうか

  • 覚醒したラスボス√
  • 未覚醒のラスボス√
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