【完結済】気付いたらパワプロで適当に育てた選手に転生してた話   作:いちごケーキ

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小説をくださった方、ありがとうございます!


212球目 曇華一現

 

 

 

 

「今日の試合は、私たち北海道日本ツナファイターズと、薬師高校とのエキシビションマッチです。

しかし皆さんもご存知の通り、この試合は単なる試合ではありません。我々の目的は、ただ一つ___この試合を、我らが北瀬涼選手の門出を祝うものとすることです」

 

日ツナの監督は、静かにマイクを持ち替え、話を続けた。

声は自信と穏やかさに溢れていて、観客全員がその言葉に引き込まれているのが分かる。

 

 

観客たちの注目が、更に深まっていく。

彼は一呼吸置き、マイクを持つ手をわずかに動かして、薬師高校のベンチに視線を移した。

その眼差しには、ただの対戦相手に向ける物だけではなく、敬意と期待が込められていた。

 

 

「何よりもまず、彼がこれまでどれだけの努力を重ねどれだけの成長を遂げたのか、その全てを見せる舞台です。

そして、彼がどれだけ私達に通用するか。

___その才能を皆さんにご覧いただければと思います」

 

 

観客から歓声と拍手が沸き起こる。

スタジアムの中にいる誰もが、北瀬という存在の特別さを感じているのだろう。

 

稲山監督はその拍手を受けながらも、静かに右手を挙げ、再び観客達の集中を自分に戻す。

自信に満ちた動作が、彼の長年の経験とプロとしての気構えを示していた。

 

 

そして薬師高校の監督である、俺の方を一瞥した。

目には挑戦の意志と共に、戦う相手としてある種の敬意が込められている様に感じられた。

だから俺は、それに応える為、敬意を込めて頷いた。

 

 

「薬師高校といえば、全国でも名の知れた強豪校。その中心に立ってきたのが、今日の主役である北瀬涼選手です。

彼がこれからプロの世界でどのように羽ばたいていくのか、私たちファイターズも非常に楽しみにしています。

 

今日の試合は、そんな彼の門出を祝う特別な時間であり

___同時に我々プロ選手も、本気で挑みます!」

 

そして稲山監督は、今度は目線を北瀬に向けた。

彼の目には、大きな期待が込められている。

 

 

「ご存じの通り、北瀬君は我々日本プロ野球とは違う新たな道を歩みます。彼が歩んできた道のり、共に汗を流してきた仲間たち、そのすべてが今の彼を作り上げた。

これから北瀬くんは、世界最高の舞台で多くの挑戦が待っているでしょう。

 

彼の根底にある情熱と努力は、これから薬師だけでなくこの国の誇りとなり、武器となる。

メジャーの舞台で存分に輝いてくれる事を、大いに期待しています!」

 

彼の言葉は、北瀬だけでなく薬師高校の選手達全員に響いているかのようだった。

監督の視線は、プロとしての期待とともに北瀬がこれまでに培ってきた全ての努力への敬意を雄弁に語っている。

 

リベンジを果たしたいと言う言葉は嘘ではないし、当然今もあるのだろう。

だが同時に、絶大な敬意と期待もまた存在しているのだ。

 

 

 

 

 

 

日ツナの監督は、俺に向けてマイクを差し出した。

遂に俺が話す番になった。俺は、自分の胸にある全ての思いを込めて、観客と選手達に向かって語り始めた。

 

「まず、北海道日本ツナファイターズの皆さん、そして監督。こうして素晴らしい機会を与えていただき、ありがとうございます。

 

俺達薬師高校は、これまで数々の試合を戦い抜きました。

地区大会は元より夏の甲子園、神宮大会、選抜。

その中心には常に北瀬がいた。

そして雷市、三島、秋葉、伊川……彼等の努力と才能が、今日こうしてプロの舞台に立つことを許してくれた」

 

言葉が自然と口をついて出る。

視線を北瀬の方に向けた。彼は、ベンチで静かに俺を見ている。

一瞬緊張が走ったように見えたが、直ぐにその目は再び闘志を取り戻した。

 

 

「今日の試合は、北瀬のために用意された物だが

___それだけじゃねえ。薬師高校野球部の成果の全てをこの試合で見せるつもりだ!

そして、北海道日本ツナファイターズの皆さんと全力で戦い、彼等の野球を証明する。それが、今日ここに集まってくれた皆さんへの、俺達からの挑戦状だ!」

 

その瞬間、観客席からは再び大きな拍手が沸き起こった。

俺の言葉が少しでも彼らの心に響いたのだろうか。

稲山監督は微笑を浮かべながら再びマイクを取り、最後の締めくくりに入った。

 

 

「では、皆さん。これより薬師高校と北海道日本ツナファイターズのエキシビションマッチを開始いたします。

皆様に最高の試合をお届けできるよう、私たちも全力を尽くす所存です。

本日もどうぞ応援のほど、よろしくお願いいたします!」

『わあああぁぁぁ!!』

 

その言葉と共に挨拶は終わりを告げ、会場は試合開始への向けて天井知らずの高揚感に包まれた。

 

俺は深呼吸を一つし、再び選手達の元へと戻る。

北瀬をはじめとする選手たちが、既にグラウンドへと向かっていく姿が目に入った。

今日の試合が、どれだけの価値を持つのか、俺達は痛いほど理解している。

 

 

___行けよ、お前ら。お前の野球って奴を見せてやれ。

 

心の中でそう叫びながら、俺は薬師高校に用意されたベンチへと戻った。

観客席からは歓声と拍手が鳴り止まない。

 

この試合が薬師高校の、そして北瀬涼の……いや、アイツラ五人全員の新たなスタートとなる。

その瞬間を俺は元実業団選手として、そして薬師野球部の指導者として全身で受け止めるつもりだった。

 

 

 

 

 

 

遂にフィールドで、両チームのスタメン発表が行われた。

スタジアムに掲示された選手達の名前が、さらなる期待と緊張感を与えていた。

 

薬師高校の応援団は、学校の旗を高く掲げ、各選手の名前が呼ばれるたびに、声を張り上げてエールを送る。

観客席も全て埋まり応援歌が鳴り響く。

特に吹奏楽部の応援団は大きくドラムとトランペットを響かせ、熱気を増幅させていた。

 

薬師選手1人1人が現れる度に、スタンドからは大きな歓声と拍手が湧き上がる。

彼らの勇姿を見送る為に数え切れない程の観客が詰めかけ、期待に満ちた視線がフィールドに注がれていた。

 

 

『さあ、本日行われるのは、薬師高校と日本ツナのエキシビジョンマッチ!

高校を卒業し、メジャーでのキャリアをスタートさせる北瀬涼選手の為の特別な一戦です!

この試合は、彼の高校生活最後の晴れ舞台!多くの観客が期待を寄せています。

それでは、薬師高校のスターティングメンバーを紹介していきましょう!』

 

『まずDHに入ってたのは薬師の主砲、轟 雷市選手。

監督である轟雷蔵さんの息子で、パワーと長打力にかけては国内屈指の選手。

野球に対する飢えと意欲は並外れており、その強烈なスイングは圧倒的な存在感を放っています。

プロからも注目される長打力をこのエキシビジョンマッチで如何なく発揮できるか、注目です!』

 

『ファーストには、三島 優太選手。

薬師の黄金世代の一角として長打力とアグレッシブな打撃スタイルが特徴です。

かつては二刀流を目指した彼も今や完全に野手としての道を歩み、打撃に集中しています。

雷市選手のライバル心を胸に秘めつつ、今日の試合でも特大のホームランを狙っている事でしょう!』

 

『セカンドには伊川 始選手。打率は驚愕の通算九割超!

可愛らしい顔でも隠せない、威圧感溢れる打撃!

最近は守備や走塁にも定評があり、全く隙の無い選手となっております。

人智を超えた超人的バッティングが、この甲子園球場で今日も炸裂することでしょう!』

 

『ショートには瀬戸 拓馬選手。伊川選手と並ぶ、薬師内野手の中心選手!

薬師野手陣に相応しい打率と、甲子園でも屈指の守備範囲。来年もU-18を率いるであろう並木監督も「来年、彼は絶対に呼ぶ」と公言しています!

今回も、彼の万能さが光る展開となるか?!』

 

『サードには真田 太平選手。ヤクルスワローズ外れ1位、真田俊平前キャプテンと親族関係に当たる選手です。

上級生からも素質を感じると評判。特に伊川選手から「プロでも同じチームだと嬉しい」と絶賛されていますが、優秀なチームメイトによって埋もれ気味でも有ります。

資質を遺憾なく発揮し、プロへの大きな足掛かりとする事が出来るでしょうか?!』

 

『レフトは結城 将司選手。3年生達にも劣らぬフルスイングが魅力です。

薬師の次世代を背負う彼の打撃力にも、大きな注目が集まっています!当たれば長打確定の凄まじいパワーは、甲子園を大きく沸かせました。

彼にとっても今日の試合は、メジャーリーグへのステップアップを意識した大きなアピールの場になるか!』

 

『センターは秋葉 一真選手。薬師高校の黄金世代を築いた選手の1人。

守備にも定評があり、何度も彼らの危機を救いました。

そして最後の夏、甲子園での打率はなんと7割!

圧倒的粘り強さでも知られ、最強打線の一角として名が高い彼の圧倒的精確なミート力に期待です』

 

『ライトには火神 大我選手。

圧倒的な体格とパワーを持つ、挑戦心に満ちたプレイヤーです。守備は苦手としていますが、そんな事は気にならないだけの破壊力を持っています!

薬師3強と並ぶ打撃の実力を持つ彼。

今日はエキシビジョンマッチという特別な舞台で、その豪快なスイングを見せつけたいと意気込んでいます!』

 

『キャッチャーを務めるのは由井 薫選手。

神童の名を持つ由井選手は、リトル時代から数々の実績を残してきました。打撃でも光るものを持ち、新世代薬師打線の核となる存在です。

彼の打撃が、プロ相手にどこまで通用するか。

そして北瀬選手の剛速球を長年受け続けてきた由井選手が、今日の試合でどれだけの活躍を見せるのか。期待せずにはいられません!』

 

 

 

 

 

 

『そして、マウンドに立つのは勿論この男!

薬師の絶対的エースであり今回のエキシビジョンマッチの主役、北瀬 涼選手!!

今日再び!そしてこの甲子園球場に!!日本のエースが舞い降りる!!!』

 

『人類最速のストレートと日本ツナのプロバッター陣との対決は、この試合の最大の見どころでしょう。

北瀬選手にとって、高校最後の登板となるこの試合。どのような投球を見せてくれるのか!注目しましょう!!』

 

『北瀬選手の新しい門出を祝い、その活躍を最後まで見届ける為、多くのファンが集まっています!

高校野球の枠を超え、プロの舞台でも輝ける才能を示してくれることを期待して、試合の開始が待たれます!』

 

 

 

 

 

 

いよいよ試合開始のアナウンスが響く。

薬師の選手達は再びベンチを飛び出し、グラウンドへと駆け出した。

観客席からは大きな応援の声が湧き上がり、両チームの応援団も熱烈なエールを送り続けている。

 

 

(最高の試合、楽しんでこーぜ!)

(期待してる、北瀬。だから___俺にも期待してろよ)

(おうっ!!)

 

その瞬間、北瀬は伊川とテレパシーを交わしてマウンドへと向かった。

 

 

「んじゃ、行くか」

 

北瀬は自らを奮い立たせるように静かに呟き、甲子園のマウンドに立つ。

甲子園独特の、土の感触が足元に伝わる。

 

 

プレートに足をかけて、右手で帽子を少しだけ押さえた。

観客席からは一瞬の静寂が訪れ、そして審判員の声が高らかに響き渡る。

 

 

「プレイボール!」

 

 

___試合の幕が上がる。

 

北瀬涼の、そして彼らの最後の舞台が今、始まる。

共に歩んできた日々を形にする、最後の一戦が。

 

 

 

 




伊川のプロ編でのポジションを迷っています。
投票してくださると嬉しいです!

セカンドの場合、打力重視になります。
ショートの場合、守備も頑張ります。

伊川のポジション

  • セカンド
  • ショート
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