【完結済】気付いたらパワプロで適当に育てた選手に転生してた話 作:いちごケーキ
「もう無理、この学校」
「だよな……2人で県外行ってやろうぜ!」
不良に虐められている猫を助けたら、最終的に暴力団に追いかけ回された中学3年生のとある日、北瀬と伊川は決心した。
海のある所に行きたいと行った北瀬の願いを聞いて、伊川が選んだ場所は宮城県の青葉城辺り。
「来たぞ!城西!!」
「入学まで、ホントに大変だったよな」
空いた時間を使って受験も頑張り、入学した学校は偏差値58の青葉城西高校。
中学時代は有り得なかった、純白のブレザーを来ていた。彼らは底辺から卒業できた事を大層喜んでいる。
伊川の言葉を聞いた北瀬は、ニコッと笑った。
「入学出来たのは、全部伊川のお陰だ!ありがとな!」
「いや、全部北瀬の努力だよ。俺は後押ししただけ」
「謙遜すんなって!」
入学式が行われる予定の体育館に、2時間前から向かっている北瀬達。
彼らは自分の常識に自信が無いので、初日はなるべく早く来ようと思って実践している。
___キュッ、キュッ、バシッ!
ガラガラとドアを開けた瞬間、空を跳ぶ男達が見えた。
「えっ、入学式は……?」
「もしかして、違う所に入って来ちゃったか?早めに来て良かった!」
唖然とする北瀬と伊川。彼らは、バレーという競技を生で見たことが無かった事もあり少し混乱していた。
なんだ、この青春感漂う空間は……とビックリしたのだ。
パワポケの世界線とハイキュー!!の世界感は、一瞬見ただけでもあからさまに雰囲気が異なった。
「ん?お前ら入部希望者か?」
『ちわす!』
そんな彼らに話し掛けたのは、副部長の岩泉一。
男前な性格のエースで、少し身長は足りない(179.3cm)が優秀なスパイカーだ。
明らかに不良ではない見た目をしている彼に、彼らはすぐに警戒心を解いた。
「にしても、お前ら大っきいな!何cmだよ」
「俺は確か、186cmッスね」
「188cmッス」
伊川と北瀬が、端的に身長を答えた。
ちなみにこの身長は、どの世界線でも変わらない。北瀬よりは少し小さいとは言え、圧倒的身長を誇る伊川が美少年と呼ばれるのはかなり凄い事だと思われる。
「金田一と変わんねぇじゃねーか!良いな!なんか早く来ちまったみたいだし、せっかくだ。見学してけよ!」
『アザース!』
(俺らって入部希望者じゃないけど、良いのかな?)
(ま、実際面白そうなら入部しても良いんじゃねぇの?親切そうな先輩いるし)
(だな!)
こうして北瀬と伊川は、流れに乗って練習に参加する事になった。ちなみに、靴などは貸し出して貰えたらしい。
___スッ……バシュ
「あの1年、レシーブけっこう上手いな。経験者か」
「隣の奴は微妙だな、経験者ではありそうだけど」
パス&レシーブ練習では、北瀬も伊川も目立っていなかった。
伊川は将来スタメン入りするかもしれない実力を持つと思われていたが、北瀬は身長だけの初心者モドキだと思われていた。
ちなみに、全くの未経験者だとは気付かれていない。
世界最高レベルの身体能力のより、経験の無さがある程度カバー出来てしまっていたからだ。
___バコーーン!!
「何だ?!あの1年!!」
「化け物……あのウシワカより飛んでないか??」
次のスパイク練習で、北瀬が異彩を放っていた。
彼の最高打点は、現時点で355cm。青葉城西が苦渋を舐めさせられている高校3強のウシワカよりも、10cmも高いのだ。
初心者にトスを出してあげたつもりだった、主将の及川は唖然としている。
(何なのコイツ、天才か……ムカつく。でもこれからは、チームメイト。しっかり使ってやるから、覚悟してなよ)
嘗ての後輩の様に突如現れた天才に驚きながら、及川徹は敢えて軽い口調を意識した。完全に想定外だったとバレて、舐められない様にする為だろう。
「あ、ごっめーん!やっぱり低すぎたかな?」
「え、別に……」
ボソボソと返した北瀬を見て、空気が読める及川は頭をフル回転させている。
(どっちかって言うと気が弱いタイプかな。それに、セッターに期待してないね。ウシワカちゃんみたいに、自分で決めるって感じ……?ムカつく)
内心イライラしながらも、彼は表面上愛想良く振る舞っている。
「そう?でも肘の辺りに来てたよね。打ちづらかったでしょ___困ったら指摘しなよ、完璧に修正するから」
「えっと、分かりました……」
生返事をした北瀬の内心に、伊川は気付いている。
内心不機嫌そうな及川を見て嫌がりながら、伊川は彼の発言に訂正を入れた。
「あ、すみません。俺達1度もバレーをやった事がない初心者なんで、何が良いプレーなのかとか分かんないッス」
『はあぁ〜〜??!』
衝撃の初心者宣言に、驚愕した部員一同。
国内最高クラスのフィジカルを見せ付けておいて、それはないだろうとビビっているのだ。
「マジ?いやいやいや、にしてはレシーブとかが上手過ぎるだろ」
「あざっす!今見て、少しだけ覚えました!」
『…………』
静粛に包まれたバレー部。次元の違う化け物に、部内の空気は完全に破壊されている。
入部して1週間で、北瀬は親しみを抱いている岩泉先輩からエースナンバーを奪っていた。
「岩泉先輩!ストレートの打ち方、教えてくれてありがとうございます!」
「お、おう。マジで覚えるの速かったな」
まだ感情の整理が追い付いていない岩泉先輩に気付かず、北瀬はニコニコと笑っている。
「教えてくれるのが上手かったんですよ!」
「そうか?ありがとな」
一応ほのぼのと会話をしている北瀬と岩泉先輩を見ながら、伊川は冷や汗をかいていた。
(いや、エースナンバー奪ったのを根に持たれてるかもしれねぇんだぞ?!今の時期にわざわざ接触しに行くなって。まぁ気付いてねぇんだろうけど)
大体そんな事を考えている伊川。
だがそんな彼も、嫉妬深い及川先輩からセッターのポジションを奪おうとしている。
彼はバレーに対する熱意もなく、部内の空気が読めない訳でもないのだが、別にキャプテンに気を使う義理は感じていないらしい。
どのポジションでも構わないにも関わらず、なぜか正セッターを目指そうとしていた。
一応、北瀬にトスを出したいという理由もあるらしいが……嫌いな及川を追い落としたいという方が本音だろう。
彼は性格が歪んでいる癖に、真っ直ぐ生きている人間が好きな人種だった。
身内への情は無駄に厚く、北瀬の為なら何でもする性質が部内を混沌に陥れようとしている。
そんな初心者エース達を見ている国見と金田一。
彼らは、別ベクトルにヤバかった同級生を思い出して微妙な顔をしていた。
「王様も強烈だったけど、アイツらも大概」
「才能だけなら、北瀬と伊川の方が上かもな」
常に100%の努力を強要し続ける天才と、10%の努力で結果を出す化け物を比較している彼ら。
影山の方が傍迷惑だが、北瀬の方が虚無感を煽られるという結論が出たらしい。
「……結局、凡人は天才には勝てないって事か」
悟った様な事を口にしている国見。
だが本人達は気付いていないが、彼も努力を続ければオリンピックに出られる位の天才なので同族嫌悪ぎみである。
強豪校の選手としては努力が足りない上に、北瀬程の天才では無い為誰にも気付かれていないが。
影山の言動は、確かに金田一に対して酷かった。だが、国見に対しての罵倒は割と真実が混じっていたらしい。
金田一&国見と北瀬&伊川のグループは、意外と表面上は仲が良かった。
バレーボールの才能差や家庭環境の差など、お互い思う所はあったが性格の相性は悪くなかったのである。
お互いが1年生にも関わらずベンチ入りメンバーで、青葉城西高校では上澄みの能力な事も大きいのかもしれない。
「烏野との練習試合かぁ、そのチームって強いのか?」
「さぁ?あの王様がいるチームだから、最低限の実力は有るんじゃない?空気は凄く悪くなってそうだけど」
素朴な質問に対して、国見が暗く濁った目付きをした。
発言した本人は何か嫌な空気だなぁ位に思っているが、伊川は地雷を踏んだ事に気付いて慌てている。
「王様?流石にガチの国王様って訳じゃないよな」
意味が分からないと、不思議そうな顔をしている北瀬。
金田一が、乾いた笑い声を出した。
「ハハハ、そりゃ知らねぇよな。
本名は影山飛雄。独善的なプレースタイルで怒鳴って来るセッターだから、コート上の王様って呼ばれてんだよ」
『へ〜』
北瀬と伊川は、ぼんやりと納得した様な声を上げた。
正直チームメイトの元チームメイトなんて、どうでも良かったのである。
「まぁ、確かに俺達と違って天才だったよ。アイツは」
『へぇ〜』
「同じチームに入って来なくて良かったな、伊川」
「ああ。才能があるからって偉ぶる奴なんて面倒だ」
同じ高校に入学されなくて良かったな、と思った。
影山に才能が有るか無いかなんて、どうでも良かった。
彼らは今の所、バレーボールに殆ど興味が無いのだから。
「えっ、岩泉が4番じゃないな」
「っかしいな、絶対アイツがエースだと思ってたのに。
調子でも崩したのか?てか及川も居ねぇじゃん」
呑気な感想を述べているキャプテンの澤村と菅原。
試合が始まった瞬間、先程までの感想を吹き飛ばされるとも知らずに。
___バシュ……
___スッ、バコーーン!!
「何なんだ!あのウイングスパイカー?!」
「何だよチートか?!あんなの高校生じゃねーべ!」
翌日、烏野高校の選手達は驚愕していた。
北瀬と言う選手の最高到達点355cmは、日本バレーボールオリンピック選手にも居ない強烈な高さなのだ。
「ナイス北瀬!」
「そっちこそ、ナイス伊川!」
ハイタッチをして、お互いのプレーを称え合う2人。
そこだけ見ると感動的だが、周りのチームメイト達はかなり白けていた。
「いや、俺らにもトス回せよ」
「でも、良い感じに点は取れてるしなぁ」
「もしかして、俺達も白鳥沢化するのか?」
一本の大砲で薙ぎ払う、そんなプレースタイルを披露している青葉城西。
これは監督の指示ではなく、伊川の独断である。
兄貴件親友の北瀬がソワソワと打ちたそうにしてるし、アイツの球は早々防がれないからと、8割のボールを彼に回しているのだ。
「ウーム。伊川も良い選手だが、これは流石に」
「この火力では、絶対に間違えとも言えませんが」
監督やコーチも、困った顔をしていた。
宮城県ベストサーバーの及川に近いサーブに、190cm近い体格。機械の様に正確なトスと、大よそ選手に欲しい能力は既に持っているのだ。
だが、確かに戦略上は間違っていると言えないとはいえ、他の選手を無視してエースに上げ続けるのは、部活動と言う観点から間違っている様な気がする。
白鳥沢の白布以上の、エース偏中トス回しはやり過ぎだろうと監督達は感じていた。
青葉城西が圧勝している最中、謎のちびオレンジが選手としてコートに入った。
初っ端からサーブで味方に当てるなど、全く頼りにならない雰囲気が最初はしていたのだが……コート上の王様とのコンビプレイで、当てが大きく外れた。
___パコン
___スバシッ!
「何だあの速攻?!」
後に及川が神業速攻と名付ける技を披露した日向&影山。
「アレの対処は面倒そうだなぁ。ああ面倒」
伊川は、かなり嫌そうな顔をした。
松川先輩をベタ付けにする、全員でリードブロックを徹底して打つ方向を絞らせる、俺のキルブロックでドシャットするなどの方法は思い付いているのだが……
微妙な空気感のチームメイトに、自分から提案するのが面倒だったらしい。
この程度の事は誰かしら思い付くだろうと、気付かなかった事にした様だ。
「すっっげぇ!俺もやりたい!!なぁ良いだろ伊川!!」
「えっ?ああうん、分かった」
一方、かつてない程に目を輝かせた北瀬。
後衛の彼の声を聞き、驚いて後ろを振り向いた伊川。
あまりにも楽しそうな顔をしていたので、ぶっつけ本番で神業速攻を試す事になった。
(アイツのこんなに楽しそうな顔を見るの、いつぶりだろうな___バレーをやって良かった!)
伊川は少し、目を潤ませていた。
沢村の球団(まだ検討中なので、他のキャラも変更する可能性があります)
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ヤクルス(伊川や真田と同じ)
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ハードバンク(雷市と同じ)
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横浜DMA(降谷と球団が近い)
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北海道ツナ(成宮や本郷と同じ)
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その他・無回答