【完結済】気付いたらパワプロで適当に育てた選手に転生してた話   作:いちごケーキ

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プロ野球編
220球目 ドラフト会議前半


 

 

 

 

ドラフト会議が始まる前にメジャーリーグの舞台へ旅立っていった北瀬は、皆で旅行に行けなかった事を最後まで残念がっていた。

大舞台に旅立つ前にしてはスケールの小さい事を嘆いているが、日常の出来事を大切にする彼らしいとも言える。

 

まぁそんな事は置いておいて……日本にいるドラフト1位指名が予想される薬師4人衆は、固唾を呑んで大勢のテレビカメラに囲まれながら集まっていた。

 

 

「ガハハハ!ドラフト1位は貰ったな!!」

「ヤクルス来いヤクルス来いヤクルス来い」

「緊張する……」

「お、俺も……」

 

緊張している雷市と秋葉に、ブツブツと神仏に祈りを捧げている伊川、なぜか堂々とドヤ顔している三島と直前での動きに個性が出ている様だ。

 

既に、彼ら4人が指名されないと思っている人はいない。

それでも、もしもを考えて不安になってしまう事もあるのだ。それに世間からの騒がれぶり的に、下位指名では周りから物足りないと思われてしまうだろう。

 

そんな風にドキドキしている伊川に、1番の後輩兼気兼ねなく話せる友人の花坂が嬉しそうに話し掛けて来た。

 

 

「ついにこの日が来ましたね!ドラフト会議!!」

「うん、ヤクルスワローズに決まると良いけど」

 

張り詰めた空気を吹き飛ばすかの様に花坂が声を上げた。

対して伊川は、ヤクルスからの単独指名は恐らく厳しいだろうなと、珍しく苦虫を噛み潰したような顔をしている。

 

彼はヤクルス以外ならメジャーに行くと公言しているにも関わらず、先日から讀売ジャイアンツから1位指名を公言されているのだ。

 

正直彼は、かなり良い迷惑だと思っていた。

真田先輩と一緒に野球をやりたいだけなのに、なんで邪魔をされなきゃいけないんだと憤っているのだ。

もしかしたら彼はいまだに、自身の才能を軽視しているのかもしれない。甲子園打率9割超えの男など、全球団が欲しがるに決まっている事を理解しきれていないのだろう。

 

 

「つかカメラの人多くね?こんなの吊るし上げじゃん」

「いや、この状況で1人だけ1位指名貰えなかったら雰囲気ヤバいだろうな。まぁ流石に伊川は無いだろうけど」

 

まるで大物芸能人の記者会見の様にカメラに囲まれている、薬師高校の選手達。

本日の主役と言うべき最上級生の2人は、微妙にげんなりとした様な顔をしていた。

 

 

「大丈夫だ!俺達は絶対に1位指名されるからな!

1位を俺達だけで独占して話題沸騰させてやろうぜ!!」

『流石にそれは無理』

 

三島のめちゃくちゃな発言に、呆れた様な顔をしている彼ら。ライバル達の強さを忘れているのではと、アホの子を見る様な顔をしていた。

まぁ強さの理論だけで言うと、それを蹴散らして甲子園4連覇を成し遂げたのが彼ら薬師野球部の選手達なので、三島の意見は一概に無いとも言い切れない気もするが。

 

 

「優太の意見は置いとくけど、まぁ俺達は1位指名されると思う。それだけの力は示して来たからな!」

『おぉ〜!』

「伊川がそういう事言うの、珍しいな」

「プロ相手でも少しは結果が出せたんだ。少し位は自信持たないと、凄い選手っぽくないだろ?」

 

最近段々と自己肯定感が付いてきた伊川は、自信ありげに笑って話を締めた。

 

高校生にして国内最高峰の選手として考えれば足りないが、彼にしては珍しく正当に実力を誇れているのだろう。

片岡コーチは既に涙を堪らえようと目に力を入れていた。

まだ指名された訳でも無いのに……

 

 

 

 

 

 

『第1巡指名、中帝ドラゴンズ___伊川始、内野手、薬師高校』

『おお〜っ!!』

 

 

___パシャパシャ、パシャパシャ

 

そんな風に始まったドラフト会議。

最初の指名はやはりこの男。高校通算打率9割超えの安打製造機、伊川始。

湧き上がる会場が映ったテレビと彼本人を、カメラマンは必死に撮り続けていた。

 

 

「クッ、最初は俺が良かった!でもおめでとう!」

 

三島は悔しそうに拳を握り締めた後、伊川を祝った。

こんな化け物相手に戦おうと思い続けている彼を、由井は恐れ慄く様な目で見ている。

知ってはいたけれど、ちょっとメンタルが不屈過ぎるなと思ったのだろう。

 

 

「ドラフト1番乗り、貰ったぜ!まぁ正直、真田先輩がいるヤクルス以外の指名は要らねぇけど」

 

嬉しい様な困った様な顔で、彼は話している。

大切なチームメイトだが、今回は1位指名を取り合うライバルでも有るんだろうなと一応は分かっているのだ。

 

つまり真っ先に指名を貰って1人だけ緊張から解放された後、他に言う事が見当たらなかっただけである。

 

 

 

 

『日本ツナ___本郷正宗、投手、巨摩大藤巻高校』

『お〜』

 

2人目は本郷正宗が指名され、会場が微妙な空気に包まれていた。

確かに彼も優秀な選手だが、全盛期の薬師野球部以外から指名するのは如何なものかと言う空気である。

本郷は甲子園準優勝選手にも関わらず、プロ野球ファンから少し舐められていた。

 

 

「薬師野球部が1位独占は出来なかったか!だが、アイツも凄いピッチャーだから仕方ない!もちろん、バッターとしては負けんがな!」

「独占ってマジで言ってたのか?」

「三島はそういう奴だよ」

 

潔い三島の発言に若干驚いている伊川。

雰囲気である程度は察していたとはいえ、まさか100%本気でドラフトを独占しようとしているとは思っていなかったのだ。

 

目を丸くして驚いている伊川を見て、秋葉は呆れながらも少し楽しそうに笑っていた。

三島の豪胆さによって、緊張が吹き飛ばされたのだろう。

 

ちなみに……雷市は緊張によってカチンコチンになり、会話が成り立たなくなっていた。

打席では信頼の置ける大胆なバッティングをするが、それ以外では基本的に大人しい人間なのである。

2桁のカメラに囲まれてしまえば、何が何だか分からなくなっても仕方ないだろう。

 

 

 

 

『ヤクルスワローズ___伊川始、内野手、薬師高校』

「おお〜っ!!」

 

3人目の指名、ヤクルスはやはり伊川だった。

野球と言う競技が始まって以来の天才と噂される彼と、相思相愛の球団であるヤクルスが指名しない訳が無い。

 

それでも伊川は、利き手を握りしめてガッツポーズした。

指名されなければ入団の可能性はゼロなので、やはり嬉しかったのである。

 

 

「おめでとう、伊川!」

「ガハハハ!!当然だがな!!」

「ありがと!この後のクジに掛かってるけど、嬉しいや」

 

彼はバクバクと高鳴る心臓を必死に押さえつけ、普段通りの顔を維持しようとしていた。

 

ヤクルスに入団出来る確率は、今の所2分の1。ここで喜んだ所で意味がないのだと、頭では思っているからだ。

 

 

 

 

『西部___影山飛雄、捕手、烏野高校』

『えっ』

 

困惑した様な空気が流れているドラフト会場。

烏野高校の絶対的主砲で球界の頭脳な彼は、キセキの世代に相応しい捕手なのだが今の所は過小評価されていた。

 

やはり烏野高校が、甲子園決勝戦に進出した事が無い事が尾を引いているのだろう。

ガチ高校野球ファンからはそこそこ注目されているのだが、ライトプロ野球ファンからしたら誰だコイツと言う選手である。

 

 

「影山も1位指名か、後でおめでとうLIME送っとこ」

「あれ?伊川って影山と知り合いだっけ」

「あ〜、甲子園の後に交換したんだよ」

 

甲子園で2回程当たっているとはいえ練習試合も世界大会でも会っていないので、秋葉達からすれば思い入れの無い選手だった。

そう言えばそんな奴も居たなぁ位の顔をしている。

 

 

 

 

『讀売___伊川始、内野手、薬師高校』

『おおお〜!!』

 

「…………」

「やっぱ伊川は評価されるよなぁ」

 

3回目の指名で、伊川は難しそうな顔をしていた。

これでヤクルスに当たる可能性は約33%になってしまい、自らの不利を察したのである。

まだ指名を貰っていない秋葉も複雑そうな顔をしていた。

 

 

 

 

『東北樂天___牛島若利、投手、白鳥沢学園』

『んん……』

 

影山の時より嫌そうな空気になったドラフト会場。

東北のウシワカの名は、全国クラスでは無かったのだ。

 

薬師野球部の選手達も、彼の指名にはノーコメントだった。それより俺達を指名して欲しいと、思っていたとかいないとか。

 

 

 

 

『横浜DMA___秋葉一真、外野手、薬師高校』

『おお〜っ!』

 

「やった、やった!!」

 

漸く指名が入り、秋葉は満面の笑みを浮かべた。

会場の隅では、家族が涙を浮かべている姿も見えた。

 

「ガハハハ!一真なら当然だな!!」

「おめでとう!」

『おめでとうございます!!』

「カハハ……オメデト!」

 

他の選手達も周りとハイタッチをしながら、歓喜の渦に沸いている。この時ばかりは、固まっていた雷市も口角を上げて楽しそうにしていた。

 

 

 

 

『福岡ハードバンク___轟雷市、内野手、薬師高校』

『おお〜っ!』

 

「ガハハハ、流石は生涯のライバル!俺より先に指名されるとはな!!」

「おめでとう、雷市!」

 

三島が豪快に笑い、秋葉も笑顔で声を掛けた。

 

 

「…………」

 

フラッシュが焚かれる中、彼は呆然と立ち竦んでいる。

 

 

「いや、流石に緊張し過ぎだろ」

「…………」

 

棒立ちしている雷市。周りからの注目にメンタルが耐えきれなくなったのだろう。若干白目を剥いて放心していた。

 

伊川が呆れなから背中を叩いたが、彼は無反応だった。

普通の取材でも耐え切れない彼にとって、この場所はハードルが高過ぎたらしい。

 

 

 

 

『広島東陽___秋葉一真、外野手、薬師高校』

『おお〜っ!!』

 

「マジか、2回目!!」

「おめでと〜!」

 

秋葉は目を丸くし、驚きの表情を浮かべる。

この大豊作世代で、以外なのかそうでも無いのか。秋葉は2回目の指名を受けたのだ。

本人は思わぬ指名に慌てつつ、素直にこの結果を喜んだ。

 

ネットには、指名される場合は球団から沢山ラブコールを受けると書いてあったので、あまり本格的に誘われていない広島から指名されたのは意外だったらしい。

 

本人達は知らないが、薬師野球部は1位指名候補が多すぎて「貴方を1位指名したいです」と言うリップサービスが言えない環境になっていたのだ。

土壇場で指名者が代わってしまい、チームメイトに吹聴されて不信感を抱かれるよりは、土壇場で指名した方がマシだと思われていた。

 

 

 

 

『千葉レッテ___轟雷市、内野手、薬師高校』

『おお〜っ!!』

 

「2回目じゃん!やったな雷市!」

「カハハ……」

「ガハハハ!流石は俺のライバル!!で、俺の指名はまだか?」

『…………』

「流石に来るだろ、流石に。多分」

 

喜んでいた部員達だったが、キャプテンの言葉で場が凍りついていた。

本人は指名される事を疑っていなかったが、他の生徒達はまさかの事態を想定し始めていたのである。

 

 

 

 

『阪真___秋葉一真、外野手、薬師高校』

『おお……!』

 

『…………』

「さ、3回目おめでと」

「あ、ああ。ありがとう」

「流石は俺の親友だな!おめでとう!」

 

11球団目の阪真は、秋葉を指名。3球団強豪という快挙に対し、本人は少し引き攣った顔をしていた。

この取材陣の中、親友だけ1位指名が無かった時の事を考えてしまったのである。

 

そんな空気の中でも、三島は堂々と祝福していた。

人が出来ているのか、図太いのか。微妙なラインかもしれない。

 

 

 

 

「オリックフィアース___三島優太、内野手、薬師高校」

『おおおっ!!』

 

薬師野球部3年生5人組、全員のプロ入りが決定。

ドラフト会場は観客達により歓喜の熱気に包まれていた。

 

 

「やったな優太!」

「おめでとうキャプテン!いやホントに良かった!」

 

秋葉も伊川も、内心ホッとしながら祝福している。

憂いは杞憂だったと、肩の力を抜いたのだ。

 

 

「ガハハハ!1位指名は嬉しいぜ!我がライバルのお前達に、指名数で負けたのは悔しいがな!」

「これは実力差じゃないだろ」

「そうそう、指名する人の気分で決まってそうだしな」

 

喜びながらも悔しがる三島に対し、秋葉達は慰めの言葉らしき物をかけている。

本人達は本気で言っているが、まぁ正直言うと実力差や発言の差が割としっかり付いているのが現状だった。

 

 

 

 

「薬師野球部全員1位指名!おめでとうございます!!」

「メジャーリーガーと1位指名4人は、高校野球史上初の快挙ですね!」

「今の感想を教えてください!」

 

リポーター達は、こぞって彼らに感想を求めた。

甲子園での圧勝劇に加え、プロ相手でも奮戦した彼らは非常に注目されているのだ。

多くの視聴者からの期待に応えて見せると、本職の方達は意気込んている。

 

 

「ガハハハ!!ありがとうございます!!!」

「史上初は、やっぱり嬉しいです!」

「期待に応えられて、何と言うか今、ほっとしています」

「カハハハ……」

 

3年生達も嬉しそうに所感を述べている。

1人だけ何も答えていない感じの選手もいたが、御愛嬌といった所だろう。

 

 

 

 

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