【完結済】気付いたらパワプロで適当に育てた選手に転生してた話 作:いちごケーキ
1位指名が終わった後、選手達の運命を左右する籤引きがやって来た。
秋葉や雷市はどのチームでも自分の力を試せると思っているが、伊川からすれば死活問題である。
真田先輩と野球をする為にメジャー行きを一旦断ったのだから、ヤクルスが当ててくれなくては困るのだ。
そう考えていると、心臓が早鐘のように鼓動して手にじんわり汗が滲んで来た。
ヤクルスワローズの監督も、讀売ジャイアンツの監督も、中帝ドラゴンズの監督も真剣な表情をしている。
やはり全員が、伊川を絶対に当てたいのだろう。
殺気立つ様な気配を醸し出しながら、レジェンド達はクジ箱を見つめていた。
「それでは、開けてください」
その瞬間、時間が止まった様な気がした。 小さな紙片が注目する指先に挟まれ、ゆっくりと開かれる。
数秒後、ヤクルスワローズの監督が短く息を吸い込み、力強いガッツポーズを決めた。
『わあああぁぁぁ!!』
一瞬遅れ、歓声と悲鳴が地鳴りのように会場を揺らした。
まるで会場の温度が急激に上昇した様だ。ヤクルスファンは歓声を上げ、他球団ファンは悲鳴を上げている。
メジャーリーグから200億を提示された男を、たった1億5000万円で手に入れられてしまったのだ。
感情を顕にしても仕方ないだろう。
「まじか、マジかぁ……!」
「おめでと、伊川」
「ガハハハ!我がライバルは運も味方に付けたか!!」
「かはは……おめでとー!」
状況を暫し遅れて理解し、伊川は満面の笑みを浮かべた。
正直な所、入団出来る可能性は低いと感じていたのだ。土壇場の逆転劇に、暫し呆然としてしまっても当然だろう。
「既に世界を代表する様な選手である伊川くんを、世界一の選手に出来る様、我々は努力して行きたいと思います」
高台監督はドラフト1位とはいえ、たかが高卒選手に掛ける言葉では無い程の期待を込めてリポーターに話した。
まぁ伊川の残した成績からすれば妥当なのかもしれない。
「ヤクルスワローズに所属出来て嬉しいです!真田先輩と!一緒に!1軍で活躍して行きたいです!!」
彼は胸の中で、野球部で過ごした日々と真田先輩と同じグラウンドに立つ未来を思い浮かべた。
珍しくハイテンションなまま、伊川も取材に答えている。
アドレナリンがドバドバ出ていて、感情の制御が出来なくなっているのだろう。
後でニュースを見た伊川は、俺はこんな声で話していたのかよと唖然とする事になる。
次は同じく、3球団競合の秋葉一真の籤引きである。
1位指名ならどの球団でも構わない彼は、リラックスした表情をしていた。
「それでは、開けてください」
『わああぁぁ!!』
彼は阪真に決まった。
テレビに映る会場中の歓声を尻目に、秋葉は割と自然体な表情をしている。
V逸したとはいえ、リーグ2位のチームに入れたのはラッキーだとも思っていた。
「甲子園4連覇を成し遂げた、素晴らしい選手だからぁね。球界を代表する様な選手になってくれると思います!」
「はい、指名頂けて嬉しいです。紅星選手の様に、打てて守れるプレイヤーになりたいと思っています」
次は2球目競合の轟雷市の籤引きである。
例年なら成宮の様な他球団競合が予想されるであろう実力を持っている彼は、まだ緊張が取れていなかった。
カメラマンやリポーターが沢山来てくださる都合上、寮ではなくレンタルスペースを貸切にしたのが悪かったのかもしれない。
普段とは違う環境に、彼は馴染めていなかった。
「それでは、開けてください」
『わあああぁぁ!!』
彼は福岡ハードバンクホークスに決まった。
2008年は屈辱の最下位に終わってしまったが、金満球団と言われる程に地力があるチームである。
「甲子園、そしてあの戦いでも活躍した選手との交渉権を得られて嬉しいですね。球界を代表する長距離砲として活躍してくれるでしょう」
「カハハ……嬉しいです……」
お互いが無口な事もあり、彼らの取材はイマイチ盛り上がりに掛けていた。
まぁ根本的な性格は基本的に変えられないから、こうなっても仕方ないのだろう。
「今の心境を、まず教えてください」
「球団の印象を教えてください」
「今日を迎えるまで様々な思いがあったと思いますが、今日を迎えるまでの心境はどうだったのでしょうか?」
「プロに入って、どんな選手になりたいですか?」
「そして、対戦したい選手は誰でしょうか?」
「プロに入る決意や抱負をお願いします」
大体こんな事を聞かれた4人組だが、答え方は全く異なっていた。
部員達の仲は良いが、思考回路は全く違うからである。
取材対策を取る時間が無かった事により、本人の意思が大きく反映される結果となっていた。
まず伊川は、こう答えていた。
「凄く嬉しいです!!本当にそれはもう!!」
「真田先輩がいるチームですね!!名捕手やトリプルスリーを排出した凄いチームだと、先輩が前言ってました!」
「いや、高校の部活動はめっちゃ楽しかったですね!卒業したく無いなぁと思いながら日々野球をしていました!」
「皆に信頼される様な選手になりたいです!」
「えーっと、対戦したい選手ですか。うーーん、成宮さんですかね(強い奴と戦いたくないなんて言えねぇよな)」
「薬師野球部黄金世代の2番バッターとして、恥じない結果を出したいと思っています!」
彼は高校時代の心境を引き摺ったまま、プロになる様だ。
記者会見でも、ほとんど学生時代の事を話していた。
感動出来る様な発言は特に出来ていないが、それでもある程度は納得できる答えを出せている事は、彼の地頭の良さを表しているのだろう。
次に秋葉は、この様に答えていた。
「3球団競合してくださった事に驚いてます。同じチームを筆頭に、今年は凄い選手ばかりだったので」
「関西で圧倒的な人気で、熱狂的なファンの方がが多くいるチームだと思います!俺もその人気にあやかれたら良いなと思っています」
「轟親子に振り回されていたら、ここまで辿り着けたって感じですね!俺の青春?は彼らと共にあったと思います」
「しっかり打って、しっかり守れる万能型。みたいな選手になりたいです」
「リーグは違いますが、三島と戦ってみたいです。やっぱり俺にとっては1番のライバルなので」
「同学年に沢山ライバルがいるので、彼らに負けないスタープレイヤーを目指したいです!」
秋葉も所々で薬師野球部の話題を出しながら、地に足を付けた回答をしていた。
彼が薬師野球部で1番、プロになる為の心構えをしていたのだろう。1番無難な答えを言えていた。
次に雷市は、次の様に答えていた。
「カハハ……うれしいです」
「カハハ……凄いです」
「たのしかった、です」
「えっと、その……カハハ…………打って打って、打ちまくる!!ホームラン!!」
「キタセと戦いてぇ!!え、プロにはいない?うん……」
「ホームラン、打ちます!!」
彼はマトモに答えられていなかった。
中学時代は無名選手だった彼は、高校生になって超有名選手になっても取材は他のチームメイトに任せていたのだ。
仲間が失言をしまくる所が見たくなかった彼らは、苦手な取材だろうと率先して任されていた。
周囲から甘やかされ続けたツケが、現状である。
最後に三島は、こんな事を言っていた。
「遂に俺のプロ入りが決まったか!!って思いましたね!!」
「若手育成が凄いって聞いてます!なので楽しみにしています!!」
「そうですね!沢山のライバルを圧倒する為、毎日努力して来ました!その成果が出たと思います!!」
「場外ホームランを沢山打てる、世界最強の選手になりたいです!!そして、ピッチャーとしても最強になりたいです!!特に雷市!お前には負けねぇ!!」
「雷市、秋葉、伊川、北瀬、成宮さん、本郷、牛島、降谷、沢村、ラミスさん、グレイシンガーさん……えっ、もう良い?まだまだ戦いたい奴が居るのに」
「世界最強になる!!」
あまりにも夢見がちな事を話している三島に、視聴者達は唖然としていた。
確かに将来の夢を話す場面ではあるが、まさかここまで言う奴が居るとは思っていなかったのである。
確かに凄い選手だけど、入団時に世界最強は言い過ぎではと思われていた。北瀬や伊川を抜いて、世界一になる所が想像付かなかったのである。
そんな視聴者からの見え方は気にせず、本気で言い切る所が三島キャプテンの凄い所なのだろう。
2時間近い会見が終わり、解放された3年生達。
借りている後輩達がいる部屋に戻ると、既に恒例の焼き肉パーティーが始まっていた。
「あ、ズルいぞ!俺達が主役なのに!」
「先に頂いてます、今回も美味しいですよ」
三島の言葉を聞き、一旦箸を止めて奥村はそう返した。
一見先輩を敬っていない様に見えるが、他の選手達は気にせず食べ続けているのでマシな方である。
2人が話している間に、ちゃっかり秋葉と雷市は後輩から肉を献上されて食べ始めている。
「おぉ伊川くん!先にワシ達が頂いてスマンな!いやぁ祝勝ムードで我慢出来なくてな?で、この肉いる?」
「いえ、俺もお腹空いてるんで丁度良かったです。では頂きます!」
学園長が焼いてくれていた肉を貰った後、彼は太平とか花坂がいる方へ楽しそうにしながら向かった。
彼は、細かい事は意外と気にしない性格なのだ。
「あ、あぶねー。タブレット忘れる所だった!」
「そう言えば北瀬先輩も参加するって言ってましたね!」
伊川は花坂に預けていたタブレットを開くと、北瀬と通話を繋げた。
人に高価な物を預けられる様になったのは、確かに彼の心理的な成長だった。
「久しぶり〜、ってもう食べてるし!」
「俺らは来たのついさっきだけど、先に肉パーティー開催されてたんだよな。つか北瀬、お前も食ってんじゃん!」
「いやぁ、タンパク質の摂取時間は大事だしな」
アメリカにある自室で肉を焼かれなから、北瀬は驚いていた。ちなみに彼は、調理師免許を持つ人に住み込みで働いて貰っている。
北瀬は料理が作れないので、そうするしか無かったのだ。
外食は好きだけど、毎日は嫌だったらしい。
「じゃあコイツらの活躍と、薬師野球部の活躍を願って……カンパーイ!」
『カンパーイ!!』
お腹が大分膨れた後、轟監督が今更な乾杯コールをした。
グダグダな段取りとしか言いようがないが、確かに薬師らしい終わり方なのかもしれない。
そんな彼らを、日本中がTVの前で見守っている。
没シーンに、北瀬プロ入りIFを追加しました。
1位 外れ 外れ 2位
中帝 ✕伊川 ✕降谷 ◯モブ 原村(富士崎)
ツナ ◯本郷 円城(巨摩大)
ヤク ◯伊川 向井(帝東)
西部 ◯影山 モブ(社会人)
讀売 ✕伊川 ◯モブ 今泉(中崎)
東北 ◯牛島 モブ(大学生)
横浜 ✕秋葉 ✕降谷 ◯モブ 大場(U18)
福岡 ◯轟 モブ(大学生)
広島 ✕秋葉 ◯降谷 モブ(大学生)
千葉 ✕轟 ◯日向 モブ(高校生)
阪真 ◯秋葉 沢村(青道)
オリ ◯三島 原(U18)
ドラフト指名選手 育成
中帝 小湊(青道)
ツナ 槇野(松若商業)
ヤク 照井(市大)
西部
讀売 大平(白鳥沢)
東北 白布(白鳥沢)
横浜 野添(川上)
福岡
広島 多田野(稲実)
千葉 早乙女(市大)
オリ 明石(創聖)
阪真 優人(山守)
小説の展開をくださっている方、ありがとうございます!このキャラはドラフト指名されているだろうと言うキャラがいたら、活動報告欄で教えてください。追加します!