【完結済】気付いたらパワプロで適当に育てた選手に転生してた話 作:いちごケーキ
北瀬が日本に帰国して、まず真っ先にした事は伊川に合う事だった。
テレビ通話では何回も話していたとはいえ、1年ぶりに会える弟との会話を楽しみにしているのだ。
ヤクルスワローズの寮で話し込む訳にもいかないので、彼らは高級ホテルを予約して室内で話している。
まあ、北瀬の稼ぎからしたら微々たる金額だったが。
「久しぶり!元気にしてたか?」
「うん、こっちもけっこー楽しくやってるよ」
つい先程、伊川以外の1軍選手全員が叱責されて空気が悪くなった事など無かったかの様に、彼は前向きな事を言った。
これは北瀬が思い悩まない為の嘘……ではなく、どうやら伊川の送ってきた人生の相対評価で考えると、楽しいと言う事に嘘は無いらしい。
「へ〜、やっぱ真田先輩と仲良くやれてんの?」
「うん、1軍と2軍で分かれちゃってるけど、ちゃんと色々話せてるよ」
真田先輩とは週2回程度しか練習出来ていないが、仲良くやれているだろう。伊川はそう判断していたし、実際に真田もそう感じていた。
「知ってた!ここ数年は毎日楽しそうだしな!」
北瀬は話しながらコートを脱いだ後に、柔らかな3人掛けのソファーに座り、天井に張り付いているテレビをリモコンを操作して下ろして付けた。
彼の顔色を伺っていた伊川も付けられたテレビを確認して、少し嫌そう顔をした。つい先日に収録された、自分が出た番組が映し出されたからだ。
「あれ?この番組さ、伊川出てんじゃん!スッゲェな!」
「あ〜、うん。ジャンクSPOLTSって番組なんだけど、内容が活躍した選手を呼んで素顔を明らかにするって感じなんだよな……」
「へー、面白そうじゃん!」
北瀬はワクワクした顔をしているが、伊川はげんなりした顔をしていた。
番組中に意外な庶民派とか、意外な意見とか言われまくってしまい、この放送後にSNSで何て言われるか憂鬱になっているからだ。
まあ俺は野球選手だから、結果さえ出せれば問題ない……と、本人は心の中で頑張って開き直ろうとしている。
『伊川と言えば、薬師野球部黄金世代のスーパースターですよね!』
『甲子園の活躍での、世間が大騒ぎだったもんなぁ〜』
『あっ、よろしくお願いします!!』
テレビをあまり見ない北瀬ですら見覚えのある人達と話している伊川の姿を見て、彼は感心した様な顔をしている。
別に北瀬も、出ようと思えばこういった番組に出られると思うのだが、それとこれとは話が別らしい。
『打率驚異の9割3分8厘、6冠王の伊川始!(18才)』
『ウス、ファンの皆さんの期待に応えられたと思っています……いやどうだろ、応えられてますかね?』
『いやいや、これで文句言うファンは居ないでしょ!』
愛想笑いが染み付いている伊川だが、意外と今回の番組では普段通りの顔で応えていた。
芸能人の巧みなトークによって、緊張が解きほぐされていたのかもしれない。
『これはもうご褒美貰い放題じゃないですか!』
『いや〜次の契約金はエゲツナイんじゃない?!』
『えっと、ハイ。かなり貰えちゃいました。まぁ北瀬(マリナイズのエース、契約金5年150億)と比べるとアレですけど。』
『今日のお買い物は日本一の家電量販店のビックカメラ!伊川選手は、真っ先にゲームコーナーへ直行しました。』
真っ先に目指した場所を見て、北瀬は爆笑している。
なぜここまで笑っているのかよく分からないが、どうやら彼のツボに入ってしまったらしい。
「はははは!マジで?ここでゲームコーナー真っ先に目指すの?!」
「いやだってさ、寮に持ち込める小さい物なんてあんまり無いだろ……」
釣られて伊川も笑い出している中、突如番組の司会が業界のタブーを聞いてしまった。
この瞬間、SNSでは野球ファンや伊川ファンから悲鳴の声が多く上がったらしい。
『打席の半分以上が四球なんだって?もう勝負避けられてんじゃん、ぶっちゃけコレどう思ってんの?』
『いやまぁ、勝つ為って考えたら普通の判断だと思いますよ?だって俺、今期けっこうホームランも打ててたんで。
……あ、これ言ったのバレたら監督に怒られちゃうんで、ここだけの秘密にしてください。』
『え、マジ?仕方ないって思ってたんだ。』
カットしてくれと頼んでいたシーンが堂々と報道されてしまい、伊川は青ざめていた。インテリヤクザに、また目を付けられてしまうと怯えているのだ。
そんな彼を見ながら、北瀬は不思議そうな顔をしている。別に悪い事を言った訳でも無いのに、なぜそんなに怯えているのか理解出来なかったからだ。
『伊川の出塁率は、歴代2位の楽号と2倍以上の差が付いている。そんな最強の男が、今正に欲しい物とは?!』
『Swltchの本体とカセットですね。売り切れ続出なんで、マジで欲しかったんですよ。特に新作のパワプロは本当に欲しいです』
物欲もそこまで無い彼からすれば、この番組で欲しい物と言えばSwltchとイヤフォン位しか無かった様だ。
別にミニマリストという程でも無いので彼の側面をファンは知らなかったらしく、そこを引き出した時点で高評価されている。
北瀬と違い、彼は公式SNSをマトモに運用していないからだろう。
「あれ?スポンサーから貰って無いのか?」
「いや1個は持ってんだけどさ、唯奈用に欲しくて」
「確かに見せたいよな、実装された伊川!」
彼のテレビでの発言を聞いた北瀬は少し不思議そうな顔をしたが、伊川の言葉を聞いて直ぐに納得した。
恋人に成果を見せたい気持ちは、鈍感な北瀬でも簡単に理解出来たからだ。
実際の所、恋人に上げたいと言えばスポンサーは絶対に用意してくれたと思われるのだが、伊川はそういった環境に慣れていないので思い付かなかったらしい。
ちなみにゲームに実装された彼はミートSにパワーS、その他の能力も殆どSな上に【奇跡の打撃王】というミート+50と内野安打に大きな補正が掛かる専用チートスキルが内蔵されている。
ついでにメジャーリーガーの北瀬と違い国内のチームに所属する彼は使いたい放題なので、サクセスの難易度エキスパートにも裏ボスとして登場する無法ぶりを見せていた。
専用のイベントもしっかりと用意されているが、後でプレイした北瀬によると「こんな青春さわやか青年みたいな奴じゃねぇだろ!」らしい。
まあ、伊川の性格なんて少し見ただけでは分からないから仕方ないのだろう。
『これはもうね、値段的にチャレンジでしょ!』
『チャレンジ……すか?』
『いやいや、知らんで番組出てるんかい!』
『濱田のお財布救済の為に産まれたシステム、チャレンジ!金と白のボールが1つずつ入ったボックスから、金のボールを引けば商品獲得!
恋人に自分が実装されたゲームをやって貰いたい伊川は、Swltchゲットなるか?!』
「あれ、唯奈ちゃんの事って公表してたっけ?」
「うぅん、公表したと言うか前の番組でバレちゃったって言うか……」
喜んでいる事が隠し切れていない、ワザと渋い顔を作った伊川の顔を見ながら、北瀬は気付けば番組に夢中になっていた。
弟が出ている番組と言う時点で、なんかもう色々と面白かったらしい。
こうして北瀬と伊川は、テレビからの思わぬサプライズもありつつ楽しい1日を過ごした。
ちなみに後で伊川は、監督達から本音で話し過ぎだと反省させられてしまった。他の選手は、気を緩めすぎたなと軽く笑っていたが。
丸一日、兄弟との家族団欒を過ごした北瀬は、次の日の朝から薬師野球部に挨拶に行っていた。
彼の立てた予定では、数週間程度は一緒に練習させて貰うつもりらしい。
ちなみに前に住んでいた自宅は盗難が相次いで物が全て無くなってしまったので、暫くの間はホテル暮らしの予定である。
「轟監督!久しぶりっス!」
「ガハハ、よく来たなぁ北瀬!メジャーでも凄まじい活躍っぷりじゃねぇか!お陰で新入生やら取材やら書籍化やらがバンバン来てるぜ!」
監督はニマニマと豪快に笑いながら、彼の背中をバンバンと叩いた。
最近は北瀬に対し、ここまで親しげにしてくる大人が居なかったので、彼はどうも懐かしさを感じたらしい。
日本の一等星でメジャーリーグMVPと言う実績が、彼のメンタルにとっては重すぎる可能性がある。
「良かったッスね!なら借金も返せたんじゃないっすか」
「それはもう、雷市の契約金で返し終わってるな!」
「言われてみればそうッスね!」
『はははは!!』
若干酷い事を言いながら笑い合っている2人。
だが実は、轟監督はほとんど取材も受けてないし取材費も貰っていないのだ。大量の部員達を育てるのに忙しく、小遣い稼ぎなどやってる暇は無いかららしい。
それは当然の事だと本人は自認しているが、名声や金銭に惑わされる人も多い事は事実であった。
轟監督はやはり、野球以外に興味が薄いのだろう。
殆どの元部員達は知らないが、借金が出来た理由も大怪我をした脚を選手復帰出来るまで治す治療費だったのだ。
別に無駄な浪費をしまくって借金を膨らませた訳でも無いのである。
だから心情が分かる息子は、働けダメ親父とは言っても借金自体にはそんなに文句を言わなかったのだ。
「流川とか青井とかは、今どんな感じっすか?」
「あー……流川はサードで大活躍してるぜ、なんか守備はめちゃくちゃ下手になっちまったがな……青井は2番手センターとして頑張ってるな。桜木に負担が掛かり過ぎてるから、ちょくちょく交代させてんだ。」
北瀬が元バッテリーの由井や元同室の青井に注目していると分かっている監督。だがあくまで贔屓は無くし、ある程度は客観的な意見を口に出した。
「流川も遂に打撃に目覚めたんスか!薬師っぽくなりましたね!」
「薬師らしくはあるが!んんん……」
嬉しそうな顔をしている北瀬に対して、監督は微妙な顔をしていた。
守備も打撃も出来る起用万能なプレイヤーに育てようと考えていたにも関わらず、結果が打撃特化選手になってしまったからである。まあ、雷市よりはマシだが。
プロ入りの面で考えると有利になった気もするが、薬師野球部としては歓迎出来ない状況であった。
「つか、青井はそんなに凄い選手でしたっけ?いや、確かに下手では無かったと思いますけど。」
由井とは違い、青井に対する選手としての評価は低かったらしい北瀬は、彼が2年生で実質スタメンに抜擢されている事を不思議がっている。
北瀬は薬元師部員らしく、どこか守備を過小評価しているのだろう。流石に、雷市や秋葉よりは明らかにマシだったが。
「確かにアイツは最近、かなり伸びたからなァ。センターとしての経験が生き始めてる最中ってトコロだろ。」
「へー、それは良かったッス!」
意外な話だが……北瀬の過小評価では無く、彼が居た時の段階では正当な評価だったらしい。
轟監督は真面目な顔をして、内心で真田スカウトの慧眼を褒め称えていた。
「よし!またアイツらの面倒見てくれんだったよな。じゃ〜頼むわ!」
「はい!頑張ります!」
真面目な顔で話していた監督だったが、直ぐに元のテキトーな雰囲気に戻って北瀬を案内し始めた。どうやら、無給の凄腕打撃投手としてこき使ってやるつもりらしい。
そんな事は薄々分かっている北瀬は、それでも嬉しそうに彼の後を付いて行っている。
彼は本当に、薬師野球部の事が好きだからだろう。
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☓インデックス ◯インテックス です、名前間違えてましたすみません。
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