【完結済】気付いたらパワプロで適当に育てた選手に転生してた話 作:いちごケーキ
感想の返信も出来ていなくてすみません。全部読ませて頂いて、執筆の活力にさせて頂いています!就職活動が終わったら全部返す予定です。
WBC予選1回戦、日本の対戦相手は中国。世界ランキングも20位以内であり、舐めて掛かれる相手では無い……とは、有識者の間でもあまり言われて居なかった。
メジャーリーガーであるベテラン、竹阪選手をここに持ってこれるだけの余裕がある投手事情や、イチロウや轟といった主砲格が4番に座れないレベルの強打者揃いを背景に、国内では必ず勝てると言われていたのである。
……どうやら前の大会での惨状は、頭の中から消し飛んでいるらしい。
――バシッ!
「strikeout!
(ストライク!バッターアウト!)」
――バシッ!
「strikeout!
(ストライク!バッターアウト!)」
今回の試合の先発投手であり、つい先日には北瀬にナックルを教えた(?)竹阪選手は安定感のあるピッチングを披露している。
普通に考えればエース格か2番手ピッチャーが妥当な彼を、3番手の先発として起用出来るというメリットは余りにも大きかったのだ。
本人は、同じ日本人選手の若手が台頭しつつある事を喜びながらも、少し悔しそうにしている。
「うっしゃ!いいかんじ!」
『ナイスです!竹阪先輩!』
「凄いピッチングでした、竹阪さん!」
「ま、俺から先発を奪い取ったならさ、コレくらいはして貰わないとね!」
「カハハ……ないす。」
最近の若い子に慕われる空気感な竹阪は、高卒2・3年目の後輩達からの信頼を勝ち得ている。
北瀬・伊川・綾瀬川といった人あたりの良い選手は勿論、成宮の様にプライドの高い選手からも、雷市の様に人見知りが激しい選手からもけっこう慕われている。
この光景を当然ながら見ていた監督は、キャプテンマークを渡しても良かったかもしれないと感じていた。
今回の日本代表は、年齢や実力の乖離が激しい結果、キャプテンを作っていなかったからだ。
――カキン!
「Double Hit!
(ツーベースヒットだ!)」
(ま、これくらいはな。打って得点をくれたら良いな。)
そんな事がありながら1回裏、1番打者である伊川始が余裕のツーベースヒットを放った。なぜ彼と勝負したのだろうか……?日本人ファンからすれば意味不明である。
彼らは既に、敬遠し続ける異常性を軽視しつつあった。
そんな事は関係ないというか、当然の事だと思い込んでいる伊川は、普段通りにリードを大きく取って少しでも隙があったら盗塁をしようとしている。
彼の高校生時代からすれば有り得ないが、伊川は隠れヤクザ監督によって積極的に盗塁をして成功出来る選手になっていた。
ちなみにそれより、あまり普通のファンには知られてはいないが、自己判断で動ける様になった所が凄まじい成長である。
――ブォン!
――シュタタ!
「steal a base!
(盗塁に成功しました!)」
(盗塁のアシスト上手いなぁ。これがプロの上澄みってトコか。)
(コイツ、余裕で成功させたな。)
伊川は監督のサインを見て、相手からも警戒されていた3塁への盗塁を余裕で成功させた。どうやら向こうのエースは、あまりクイックが上手くないらしい……と伊川は思っている。
実際は、異次元の動体視力を最大限に活用した伊川の盗塁に、慣れていないだけだった。
彼からすれば、何重もの作戦を重ねて対策されている事が日常なのである。
伊川の実力を知っている2番打者のイチロウが、積み重ねによって成熟した野球IQを駆使し、空振りで進塁させるチームプレイをした後に。
――カキーン!
「Hit! Japan takes the lead with one point!
(ヒット!これで日本、1点先取!)」
『Oh!』
「伊川の盗塁、参考にするか?」
貫禄のツーベースヒットを放ち、結果を出しながら何かをポツリと呟いた。これで日本は1点先取である。
歓声が鳴り響く中、異次元の聴力を活かして先輩の独り言を無意識に盗み聞きしていた北瀬は、辞めたほうが良いと思いますと心の中で呟いた。
伊川は毎回、やる事なす事が天才性に溢れているので、真似をしても良い事が無いと分かっているからである。
それは事実なのだが、北瀬の心境は自分の才能を棚上げして考える悪癖が混じっていた。
――カッキーン!
「Home run! That's a home run!
(ホームラン!ホームランが出たぞ!)」
『How cool!
(スゲェ!)』
「カハハハ……ホームラン!楽しい!!」
3番打者の轟が、ダメ押しの様にホームランを放った。本人は楽しんでいるだけだか、向こうのエースからは悪魔の様に見えているだろう。
「さっすが雷市!もうちょっとで場外だったな!」
「あの体格であのパワーは可笑しくね?本当に人間かよ……」
「野球は体格じゃないしね!俺を見れば分かるでしょ!」
『確かに……』
北瀬が能天気に称賛している横で、伊川は雷市の人外じみたパワーに慄いていた。凄く今更である。
その横で成宮は、持論を堂々と宣言し2人を納得させていた。が、野球は体格が重要なのはただの事実である。
結果2人は本気で信じ、誤った知識を習得してまった。
体格って別に、特に有利になったりしないんだなぁと信じてしまったのだ。
別に成宮本人だって、体格が全く関係しないとは思っていないのだが……北瀬と伊川は、友人を疑えない性格がこの数年で強くなっている。
――カッキーン!
「back-to-back homer!Japan is playing one's way to a victory over!
(2連続ホームラン!勝利に向かって進んでいる!)」
『Whoo!
(おおお!)』
「スゲェな……今が歴代最強メンバーだ!」
主砲の村大は珍しく、テンション高くはしゃいでいる。普段の彼の、男らしい堂々とした立ち居振る舞いを知っている選手達は驚いていた。
尚、相手チームは相当に悲壮な顔をしていたが、日本代表には関係が無かった。
なんと、北瀬すら全く気にしていない。
理由は色々あるが……大きい要因は、国際大会の異様な雰囲気が彼の平常心を奪っているのだろう。
――カッキーン!
「Our Kitase hit it again!! Three consecutive home runs!!
(我らが北瀬がまた打った!!三連続ホームラン!!)」
「Woo Hoo! Even though he's a pitcher, his hitting power is amazing
(スッゲェ!!ピッチャーなのに打力エグい!!)」
(国際大会ってレベルたっか!まぁメジャーの方がもっと凄いけどさ。)
北瀬は楽しそうにしながらも、どこか冷静な表情でマウンドを回った。
どうやら無意識に、この程度の相手は勝てて当然だと思っている様である。
嘗て市大三高と戦った時の様な、無謀な自信では無い所が困りものである。
……
一方的な虐殺の様な試合は、28−1で日本の圧勝に終わった。リリーフの中松が事故のような一発を食らった以外は、完璧なピッチングを見せられたのだ。
「あー楽しかった!やっぱ野球はホームランっしょ!」
「カハハハ!ワカル!」
「いや違うね!野球はエースの活躍が1番だって!」
「チームワークみたいなのが1番カッコよくね?いぶし銀みたいな。」
薬師陣営+若手の成宮は、気付けば一緒に行動するようになっていた。
というか勝手に成宮が仲良しグループに混ざったのだが、彼の堂々とした振る舞いから溢れ出るカリスマからか、誰も疑問に思っていない様である。普段は冷静な伊川すら、当然の様に感じていた。
もしこれに伊川が気付いたら、あまりに普通と違うコミュ力の困惑しつつ割と真面目に羨んだだろう。
まあ成宮からすれば、伊川の打力の方が羨ましいだろうが……本人の本当に欲しい物が違うのだから、仕方ない。
2回戦の韓国との戦いでは、成宮から僅差で最優秀防御率投手賞を奪い取った実力者でもあるダルッシュが見事なピッチングを見せた。
日本代表は妙に打席が回って44−0というエゲツナイ成果を叩き出し、世界中を騒がせている。
ここまでの点差が付いたのは、2回目の開催であるWBCでは当然初めての事だった。
これから先も、この記録を超える事は無いのではと会場に来ていた日本野球ファン達は感嘆していた。
……まあ暫くすると、全盛期の薬師組が111−1という、どこかで見たことある数字を叩き出してしまうのだが。
しかも日本が11エラーで相手も11エラーと、前よりも1が増えてしまっていた。
ワザとでは無いかと一部界隈で揉めていたが、もちろん事実無根である。本人達も「なぜこんなことに……」と引いた顔をしていた。
試合が終わった後、北瀬は微妙そうな顔でスマホを眺める伊川を見て、不思議そうにしていた。
「あれ、なんでそんな顔してんだ?俺達、SNSで叩かれてたりしたか?」
「いや、ヤクルスワローズが妙に負けてんだよ。真田先輩は燃えなかったみたいだけど……」
そう、伊川が抜けたヤクルスワローズは、連敗に連敗を重ねていたのだ。
先輩達の実力は割と知っている自負がある伊川は、リリーフの真田先輩が負け試合頑張って抑えているのはまぁ良いけど、こんなに負けるのはなんか可笑しいなと困っている。
「へぇ……あ、ホントだ酷い。」
「だろ?変だよな〜。」
北瀬も調べた様で、エゲツナイ負け方をしているヤクルスを端的に貶していた。
伊川は内心では否定したくても結果を見ると否定出来ず、軽く話題を流して終わった。
彼らは気付いていないが……伊川という異次元の才能に壊されたヤクルスの選手は多かったのだ。
所詮俺達は主役になれない。なるのは伊川と、ついでに北瀬なんだ――それでも良いさ、アイツが世界を取る事は分かりきっているのだからと、一見達観してしまった選手が大量に出たのである。
つまり周囲が精神的にも依存しかかっている伊川が、一時的にとはいえ急にチームから抜け、チームが回らなくなったのだろう。
高原監督はニコニコと笑顔で「君達はもう、プロじゃないよね?結果に拘れないもんね?草野球の選手かな?」と語り、選手達を恐怖に陥れていた。
尚、それでもあまり改善しなかったらしい。
「つうか関係ないんだけど、俺、ナックル得意みたいで楽しいんだよ。でもまだ、城鳥先輩が取れないんだよな。
正捕手を今怪我させる訳にはいかないから、封印させられちゃった……仕方ないのは分かってるんだけどさ、投げたいから後で付き合ってくれね?」
「当然オッケー。別に俺は、ボールを取る事が嫌な訳じゃないからな。」
2人共、軽い気持ちで気持ちでピッチングを始めた。
これがまさか、人生を大きく変えてしまうかもしれないとは知らずに。
――バシッッ!
――バシッッ!
「やっぱさ、捕るのは伊川が1番上手いな!マジで溢す感じがしねぇもん!」
「まあ正直、そんな気はしてたけど……つってもなぁ、リードがダメダメだし、面白くねぇしなぁ。」
「だよな、残念だけど仕方ない!」
「悪いな北瀬!」
「いや全然!楽しいのが1番だし!」
『ハハハハ!!』
軽く笑い合っている彼らは、監督やコーチに見られている事を意識していなかった。
別に怒られてないのだから、問題ないのだろうと思っているのである。
「……分かりますよね、監督。」
「ええ。将来北瀬の才能を、日本の宝達の才能を活かしきるなら、やはり伊川に捕手もやって貰わなくては。」
球団としては敵だとはいえ、真剣に日本プロ野球を考えている彼らは頷きあった。
本人は今のところ嫌がっているが、伊川が捕手も兼任する日は近いのかもしれない。
これは仕方ないのだろう。
才能は、必ずしも本人の為になる訳では無いのだから。
才能に振り回されている、薬師が誇る絶対的プレイヤーである伊川と綾瀬川。
そういった色々な意味で規格外の選手が、薬師高校には集まり易いのかもしれない。
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