【完結済】気付いたらパワプロで適当に育てた選手に転生してた話   作:いちごケーキ

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読者様の評価が悪かったらボツにします。
北瀬の名前は、初期段階では涼か葵かで悩んでました。


245球目 由来

 

 

 俺は、救いようの無い馬鹿だった。

 幼稚園に入る時、受かって当然の学校に落ちてしまったから、俺の人生は大きく変わった。

 

 だって、落ちる筈が無かった。父さんは5000万円の献金をしてたから、落ちる筈の無い加点が俺に付いていた筈なんだ。

 だけどあの時、受験の瞬間になった時、父さんと母さんの怒る顔を思い出して……気付けばテストは終わっていた。

 

 

「ごめんなさい、母さん――と、とうさん、ぼく……」

 

 合格ラインは70点のテスト。

 だけど俺は、多分50点取れてれば行けたんだ。

 

 

「落ちるだと……?まさか、あそこまでして落ちただと!!俺の息子が、ここまで馬鹿な筈が無い!前から思っていたが、お前は馬鹿過ぎる!!いったいどこの馬の骨のガキなんだ!」

「辞めてッ!涼は大器晩成なのよ、大切なうちの子なのよ……っ!」

 

 いつもの様に。いや、いつもより、怒鳴られて、詰られて、他人扱いをされる事が怖かった。

 胸ぐらを掴まれてブラブラと揺れる事が嫌がったんじゃない。父さんが青い顔をして眉を吊り上げながら泣いているのが嫌だったんだ。

 そして、母さんが父さんに赦しを請い、俺を抑え付ける父さんの手のひらを引き寄せようとして――

 

 

――バシッ!

 

「全く、母さんも母さんだ。私だって、本気で不倫を疑っている訳じゃない。悪かったよ。

 でも可笑しいと思わないか?優秀な私と優秀な母さんの子供が、ここまで馬鹿なんて……ハァ、次の子に期待するしか無い様だ。」

「…………」

 

 母さんは頬を叩かれて、それでも俺を心配そうに見ていた。

 母さんは俺だけの味方じゃなかったけど、本気で俺の事を愛してくれていたんだ。

 

 

 

 

 

 

 今日は父さんが帰ってこないから、僕が大好きな読み聞かせの日。

 母さんが構ってくれるなら、僕は何の絵本でも良い。

 だから母さんは、母さんが1番好きな本を嬉しそうに読んでくれるんだ。

 

 

「キラキラ輝く水面に、真っ白な美しい白鳥が映っていました。これが、ぼく?そう、醜いアヒルの子は白鳥だったのです。」

 

 母さんは俺を見ながら、言い聞かせる様な声でいつも言っていた。

 

 

「貴方が1番綺麗よ。仲間が優しく撫でてくれました。白鳥の子はとても嬉しく思いました。」

 

 僕は、母さんが優しく撫でてくれるこの時間が大好き。

 僕の頭がとっても良ければ、母さんとの時間も増えるのに。勉強は嫌だけど、もっとがんばらやきゃ!

 ふあぁあ。今日もいっぱい勉強したから、少し疲れちゃった。眠いけど、まだお話してたいなぁ?

 

 

「ね〜ねぇ……この話、母さんは好きなの?」

「……えぇ、そうね。私は大好きよ。」

 

 

 

 

 

 

 俺は両親の離婚後。この話をふと思い出した。

 母さんは、俺がいつか報われると信じたかったんだと思う。

 でも俺は、全く信じて居なかった。

 

 

「俺、あの降谷さんにプロに成れるって言われたんスよ!いや〜、もしかして成れちゃったりしますかね〜!」

「お前がプロになれるかだって?――バカ言え、成れねー訳ね〜よ!ガッポリ儲けられるぜ?お前の才能ならよ!」

「えっ??」

 

 あの降谷にプロに成れるって言われたと轟監督に自慢しに行って、本気で肯定されたあの日までは。

 

 

 

 

 

 

 あの日から俺は、俺の強さを冷静に考えようとした。

 

 確かに俺は元から、身体がけっこう頑丈だ。

 でもそれって、伊川みたいに凄い頭脳を持ってるとか、そういうレベルの凄さじゃないと思ってたんだ。

 

 ゲームを楽しんだ後、コソコソとパソコンを使ってプロになる方法を調べていたら、気付けば伊川に画面を覗かれていた。

 

 

「へ〜、北瀬ってプロになりたいのか?」

「別に本気で思ってるって程じゃないんだけど、まあ?」

 

 当然、俺は軽く反対されて終了と思ってたんだけど……

 伊川は俺の顔をじっくり眺めた後、目を軽く瞑って、軽い口調で言い放った。

 

 

「良いんじゃね?夢はでっかくプロ志望って!実は俺も、インタビューでそう言おうか悩んでんだよな〜。」

「えっ?!伊川ってそんなに野球好きだったっけ??!」

 

 俺は凄くビックリしたけど、嬉しかった。

 こいつが薬師野球部の人が好きな事は分かってたけど、まさか野球がそんなに楽しかったんだとは思ってなかったから。

 

 

「いや、そういうんじゃなくて……野球が強かったり実績を残すとさ、良い大学から来てくださいって言われるらしいんだよ!」

「えっ?!何で?」

 

 俺はビックリした。だって、野球と勉強能力には、何の関連性も見出せなかったから。

 大学って勉強しに行く所でしょ?位しか、大学について知らなかったんだ。俺は受験も勉強も嫌いだったから、マジで何にも調べ無いままで、伊川に調べて決めて貰ってたから。

 

 

「野球見るの好きな高校生がいるじゃん?」

「うん、いるだろうね。」

 

 確かに居るけど、それが大学の推薦と関連する理由が分からなかった。

 この頃の俺は野球を見る事に興味が無かったから、よく分かんないけど何となく応援されているんだろう程度の気持ちだったんだ。

 

 

「野球の強い大学に行って、贔屓のチームを応援するのって楽しそうじゃね?」

「あ〜確かに……って事は!」

「そう!客寄せパンダとしての需要があるんだ!!」

 

 

 

 

 この日から数日後、俺は本気で野球をやる様になった。

 確かに野球が好きな事も、理由として大きかった。

 

 だけど、1番の理由はそれじゃなかった。

 

 バーターという制度がある。

 それは強い選手と普通の選手を組み合わせて、相手チームに売り出す事だ。

 噂によれば、大学所かプロ入りでだって使えるらしい。

 

 それなら……誰かを俺のバーターに使えれば、めっちゃ感謝されるんじゃないかって思ったんだ。

 今考えるとバカバカしい話だけど……俺と伊川で、良い大学に三島と秋葉をバーターで連れていって、4人で野球をやるのも面白そうなんて考えてたんだ。

 

 雷市はプロに行くだろうから、もし上手く行けば俺達もそれを追い掛けよう、なんて。

 そしたら俺は、皆とずっと友達で居られるよな?って。

 

 

 

 

「私達は、君の持つ圧倒的素質に敬意を示すつもりだ。最低でも1年20億円、複数年契約なら更に支払ってみせよう。

 北瀬の才能を、最高峰のリーグで活かしてみるつもりはないか?」

「??!」

 

 エディー・C・ヘンソンさんによって、俺の思い違いが正されるまでは、本気で思ってたんだ。

 

 

「それは……ジンバブエ・ドルです?」

「いや、日本円で20億だ。説明が足りなかったね」

 

 頭が真っ白になった。

 

 

「轟監督……この人達って、本物ですか??」

「おいおいおい。本場のスカウトにこれ以上失礼な事言うなよ……? 本物だ。間違いない」

 

 俺がこんなに評価されるなら、俺以外の選手だって評価されている筈だ。

 皆、バーターなんて要らなかったんだ。

 

 

「いいや、疑ってくれても結構だとも。騙され難い人間の方が、私達にとっても有難い。

 ___それで君は、メジャーで野球をする事をどう思うかい?どんな返答であれ、私達は君を待ち望んでいるんだ。言いたい事を言って良いさ。」

 

 じゃあ、俺の価値って何なんだ。

 頭も良く無いし、面白くもない俺の価値は……何だ?

 

 

「…………」

 

 伊川が、轟監督と片岡コーチが、スカウトの人が、固唾を飲んで見守る中、俺は思い付いた。

 

 ――そっか、強さだ。

 野球が強いって事は、絶対的な価値なんだ。

 

 そう分かった俺は、嬉しくなった。

 だって、それなら出来るかもしれない。昔母さんの言ったみたいに、白鳥の子に成れるのかもしれないって、分かったから。

 

 

「一生掛かっても稼げない額を、本当にたった1年で頂けるなら、まあ……海外は怖いけど……

 でも、俺は、伊川とまだ野球がしたいので、どうしようかとも……」

 

 メジャーに行って金を貰って、俺の野球の実力まで示せれば、俺の価値はうなぎ登り。断る理由なんて無い……とまで、俺は思い切れ無かった。

 だって、俺には大切な親友が居たからだ。

 

 親友と金や名誉のどちらかしか手に入らないのなら、俺は伊川を選ぶ位、最高の友人で有り続けていたから……俺はそうやって、暴れる心臓を抑えつけようとしていた。

 脳裏を掠める、成宮さんとの勝負を思い出さない様にしながら。

 

 

 ……まあ伊川は全肯定してくれたから、なにも問題無かったんだけど。あれ?俺は何を悩んでたんだっけ??

 

 

 

 

 

 

――バシッッ!!

 

「ストライクアウト!チェンジ!!」

『woo hoo!!』

 

 メジャーに行ってからも順調過ぎる程に勝ち続けた俺達は、WBCの決勝戦でも余裕な雰囲気を醸し出していた。

 8回表で、点差は18−0。今の所は1回のヒットもランナーも許してないから、完全試合を目指すんだ。

 

 

「ナイス涼!まあまあ良いピッチングじゃん?まあ俺が投げたかったけどね!――次は奪うから。」

「ハイ!楽しみです!!」

 

 大切な先輩、後輩、友人達を手に入れた。

 地位に名誉に金だって手に入れた。

 野球だって最高峰のリーグでプレーしている。

 

 だから、人生で最高の筈なんだ。

 

 そうだよな?だって、楽しい事しか無いんだから。

 世間から持て囃されて、試合だって勝ちまくってさ、これで物足りないなんて思ったらバチが当たっちゃう!

 

(だよな!伊川!)

 

 俺はベンチに帰った後、伊川に笑いかけた。

 伊川はチラリと綾瀬川を見た後、軽い笑みを浮かべた。

 

(そりゃそうだろうな。でもよ、次のメジャーリーグ決勝戦は、もっと楽しいぜ!)

(あ、綾瀬川と黄瀬がいるもんな!)

 

 そう言えばあの2人は、別のリーグだったよな!

 じゃあ俺達、初めて公式戦で戦う事になるのか〜!

 俺が勝つかあいつらが負けるか分からないけど、楽しい試合になりそうだな!

 

 つか、あいつらの2人が組むってズルいって!

 だって俺、分身するなんてムリだもん!

 許される事なら、あいつらとの戦いは全試合投げたい位だけど、絶対許されないよな〜。ああ楽しみ!!

 

 

 

 

 良く分からないけどテンションが上がった俺は、バカスカ投げて余裕で勝った。勿論、完全試合も達成した!

 

 あ~、今日の試合も……じゃなくて、今日の試合は特に楽しかった!

 俺が打てなかったのは残念だけど、雷市のホームランとか伊川の敬遠祭りとか見れたし、成宮先輩と竹阪先輩の活躍も見れたし、楽しかった!

 メジャーリーグの時の様なビリビリした感じはしないけど、こういう試合も楽しいよな〜!

 

 

 楽しい気分のまま、苦手な取材を受け終わった俺達。

 2人で俺の部屋に帰ったら直ぐに、俺は秘蔵の酒とジュースを取り出した。

 

 

「よっしゃ!これでドンチャンしようぜ!」

「マジで北瀬は酒好きだよな〜、酔った事ねぇのに。」

「だってマジで美味いもん!」

 

 カパカパと色々な酒を煽っていたら、伊川から変な雰囲気を感じた。だから見てみたけど、スマホを弄っているだけだった。

 多分あれ、インテックス投資?みたいなのをやってるな。俺には良く分かんねぇけど、何か凄そう。

 

 

「そういや今更だけどさ、お前涼呼びされる事増えたよな。」

「そうだな〜。」

 

 伊川に言われて、そう言えば中学時代までの俺は涼って名前が嫌いだった事を思い出した。

 

 涼って名前には、知的な子に成長してほしいとか、いつも冷静で聡明な人になってほしいって意味が含まれてる。

 それを父さんが願っていた事が、昔の俺は凄く嫌だったんだよな〜。色々とさ。

 

 まあ、今となってはどうでも良い話なんだけど。

 だって母さんは葵って名前を付けたがってたんだから。

 豊かな実りって意味らしいんだけど、今の俺には当てはまってると思う!

 

 でも皆が親しみを込めて涼って呼んでくれるから、今は涼って名前も好きなんだよな〜。

 そういや、伊川には言ってなかったっけ?

 

 

 

 




伊川も名前呼びを嫌っていたのですが、その辺は同人誌に書きます。
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