【完結済】気付いたらパワプロで適当に育てた選手に転生してた話   作:いちごケーキ

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247球目 寝耳に水

 

 

 待ちに待った、ワールドシリーズ!

 やっぱり対戦相手は、綾瀬川と黄瀬が所属するニューヨーク・メッスだった!

 

 アイツらの実力からして、来てくれるとは思ってたよ!

 でもやっぱり、嬉しいなぁ……!

 「世界一豪華な同窓会」の開催1回目って感じ!

 

 次はアイツらも一緒に開催してぇな〜っ!

 ……いや、移籍には7年必要らしいから普通に無理か。

 

 

「やっぱりお前らが来るよな!待ってたぜ。

 ……つっても、綾瀬川も完全試合を達成してるし20勝してるし、黄瀬だって1年で58回も救援して防御率1点台だから、俺が偉そうに言える立場でも無いけどな。」

「俺も北瀬っちと戦うの、楽しみにしてたっス!くうっ……!早く投げあいたいっスね〜!綾瀬川っちもそう思うでしょ!」

 

 黄瀬とペチャクチャ喋っていても、綾瀬川は微笑んでいるだけだった。

 あれ?こいつは勝負したいとは思ってないのかな。

 まあ確かに、綾瀬川は勝敗に拘るタイプって感じはしないよな〜。

 

 

「綾瀬川っち?」

「ああ、うん。勝負出来たら嬉しいなと思います。

 ――俺が最強になるって、誓いましたから。」

 

 綾瀬川は苦笑いした後、雑誌に載っけたら反響が凄そうな位、凄みのある真剣な顔で宣言した。

 やっぱそうだよな!俺達ってライバルだけど、別リーグだから戦わなきゃお互いの強さが分からないもんな!

 

 俺も綾瀬川達も、手加減する気は微塵もない。

 ――最強を決める戦いが、これから始まるんだ。

 

 

「だよな――決勝で逢おう!」

『ハイッ!!』

 

 こうして俺達は良い感じに別れを告げ、ワールドシリーズへのモチベーションを高め合った。

 伊川が居なくても、ナックルが使えなくても、俺は負けるつもりはねぇぞ。

 

 負けても言い訳なんかしねぇよ。

 ――勝って、勝ち続けて、俺が最強って事を、証明してみせる!

 

 俺に関わって来た人達、全員がきっと見てるんだ。

 大切なチームメイトも、母さんも……きっとアイツらだって見てる。

 だから、絶対に勝つ!

 

 野球部の皆だって、また招待したんだ。

 どっちを応援してるかは分かんねぇけどさ、この戦いで無様な所は見せたくねぇんだよ!!

 

 

 

 

 

 

「メッスの先発投手は、マイグ・フェルブス!今季は15勝9敗と勝ち越している、メッスの2番手投手であり、防御率も3.66とまずまずな……」

 

 えっ?1試合目がエースじゃねぇの??

 綾瀬川は、明日登板なのかよ……ええ……

 

 

 

 

 

 

 ちなみに、俺が出た試合は2試合共勝った。

 けど他の試合で負けたから、ワールドシリーズの優勝はメッスになっちゃった。

 超絶不完全燃焼なんだけど。折角ならエース争いをさせて欲しかったな……ま、来年もあるしいっか!

 

 

 

 

 

 

 ワールドシリーズで敗退して、仲間とベンチで慰め合いながら帰宅した。

 

 城鳥さんに何故か軽く謝罪されたから、よく分かんないけどオフシーズンに釣りの名所を教えて魚をくださいってお願いしてみた。

 あの人も俺と同じで釣りが好きらしいから、ちょっと気になってたんだよな!

 オフに一緒にいる程の仲の良さは無かったから、今までは言えなかったけど。

 

 ちなみに城鳥さん側は、俺も釣りが好きな事を知らなかったらしい。

 そう言えば確かに、雑誌とかでもアニメとかゲームについて取り上げられる事はあっても、釣りについて取り上げられる事は少なかったような……そりゃあ、言わなきゃ分からない訳だよね。

 

 てか、釣りの雑誌に掲載される程の釣り名人ってマジ?

 俺はそこまで上手くないけど、一緒に行って大丈夫かな……?今更だけど不安になって来た。

 まあいっか!本当に今更だし、考えても仕方ない。

 

 

 

 

 

 

「……って感じで、ワールドシリーズは負けたよ。あーあ、せめて綾瀬川とか黄瀬と戦って負けたんだったらさ、まぁ納得行ったんだけどなぁ。」

「しゃーねぇ、人生なんて大体そんなモンだろ。ま、そのうちアイツらと戦う機会はあるだろうからさ、それまで楽しみにしてろよ。」

「そりゃそうだけどさ〜、マジ楽しみにしてたのに……」

 

 真っ先に伊川に通話を掛けた俺は、グチグチと運命に対する愚痴を話していた。

 良くない事だとは思うけど、前から楽しみにしてた事が無くなっちゃった虚しさは、誰かに言わないと収まりそうに無かったんだ。

 

 今日の伊川は何故か、本気で聞いてくれてるのか若干怪しい感じになってるけど……何でだろうな?

 まあそもそも、くだらねぇ事を全部真剣に聞いてくれてた前がおかしかったのかもしれないけどさ。

 それでもあいつが、真面目な顔をしてコクコクと頷いているのが、スマホ越しでも何となく分かった。

 

 

 なんつうか、カンとか間の取り方って言うよりは、話す声とかの反響で分かるって感じかも。

 俺って耳も凄く良いらしいし、それが合ってるならあり得る話だと思う。

 

 音の細かい違いを聴き分けるって言うよりは、音の場所や距離を正確に把握するって感じらしいな。

 他の人の耳で聞いた事が無いから、ホントかどうかは分からないけど。

 

 ていうか、伊川なら音の細かい違いも、場所も距離も正確に把握しようとすれば出来るっぽいしな。

 俺はアイツ程じゃないし、耳がいいなんてホントかなって思っちまうよ。

 だって伊川、朝の天気予報より正確な予報を出せてたからな……いや、それは耳の良さとは関係ないかも?

 

 ま、どうせ現代社会じゃ、こんな特技は何の役にも立たたないけどな。何も聞こえないよりはマシって感じか?

 

 

「それに……当たらなかったのは、向こうの監督の予定調和なのかもしれねぇよな。」

「それ、どういう事だよ。」

「綾瀬川が北瀬に勝つ確率より、他でマリナイズに勝つ確率の方が高いって判断したのかもって事だよ。

 せっかく綾瀬川はワールドシリーズでも2勝を計算出来る投手なのに、最強の投手とぶつけるギャンブルは犯せないだろ。まあ、商業的にはどうかと思うけどさ。」

 

 伊川はため息を吐くような声を出しながら、考え込む様な声を出している。

 どうしたんだろ?珍しく、ホントに困ってる様な声に聞こえるな。

 

 伊川が悩んでも解決出来ない様な事を、俺が解決出来るとは思えないけど……!

 やっぱりあいつが困ってるから、声を掛けようと思う。

 

 

「どうした、伊川――珍しく悩んでるよな、お前。」

「いや、結菜が妊娠したから、どの学校に入れようかとか思ってたんだけどさぁ……」

「おめでと!良かったな!!」

 

 なんだ、結菜ちゃんが妊娠したんだ……え、速くね??

 つい最近まで高校生じゃなかったか?てか、栄養士になるって言って大学入学して無かったっけ?それに、そういえば結婚式をまだ挙げて無かったよな?

 

 俺は納得した。そりゃ伊川だって困るよな、と。

 もう少し計画的に出来なかったのかとは思うけど、まあ今の伊川なら何とか出来るだろうから、まあ良いか。

 俺が横から叱る程の、悪い事じゃねーと思うし!

 

 それに……なんつうか分かんないけど、伊川は子供が居たほうが幸せだと思うんだよな。

 よく寂しそうな顔をしてるっていうか、愛情に飢えてるっていうか、そんな感じがしてたからさ。

 まあ俺は、結果オーライって思う事にするよ。

 

 

「ああ、ありがと。オフに無理やり結婚式を捩じ込む予定だから、絶対来てくれよな。」

「勿論!行くに決まってんじゃん!」

 

 ワールドシリーズ敗退って暗い話から、おめでたの話になって温度差で風邪を引きそうだけどさ、大切な兄弟の祝い事なら全力で祝うぜ!

 ご祝儀って幾ら包めば良いんだろう?それに、ベビー用品とかってプレゼントするべきかな?!!

 

 俺は、控えめに言ってワクワクしていた。

 弟を祝う気持ちも本当だけど、赤ちゃんを見れるなんて、俺には殆ど無い体験だったからって理由もあるかもしれない。

 だってさ、極亜久の奴に赤ん坊を見せるなんて、害してくれって言ってる様なモンじゃん。誰も見せないって!

 

 

「ご祝儀はちょっと期待してろよな!前も言ったけど、スポンサー収入で100億入ったからさ!懐に余裕はあるぜ!!」

 

 この金額は、1年で考えると歴代メジャーリーガーの最高レベルらしい。そこまで評価してくれるのは嬉しいけど、期待が若干過剰な気もするなぁ。

 ま、そのお陰で弟を祝いまくれるんだけどさ!ありがとう、スポンサーの方々!

 

 

 

 

 ――この時の俺は、知らなかった。

 まさか、妊娠発覚を超える知らせが、伊川に舞い込んでいたなんて……

 

 

 

 

「うん、ありがとう……でも、言いたかったのはそれじゃなくて……」

「えっ?」

「なんか俺のせいでチームが崩壊しかかったらしくて。ヤクルスを追い出される事になったからさ、来年からはマリナイズに入団する事に決まりそうなんだ。

 ああ、アメリカで子供の養育ってどうすれば良いんだよ……??それに、唯菜の大学だって……」

「はっ?えっ??」

 

 寝耳に水な情報を滝のように流し込まれた俺は、聞き返す事しか出来なかった。

 伊川のせいでチームが崩壊しかかってるって、どういう事なんだよ。一言も聞いてないんだけど、俺。

 事前に言ってくれてればさ、一緒に頑張って解決策だって考えたのに。

 

 言ってくれても良いじゃんな。俺は確かにお前より頭が悪いけど、たった1人の兄貴なんだから。

 

 

「俺も知らなかったんだよ。急に監督から、お前は悪くないけど、チームが崩壊する原因になってるから出てってくれって言われてさ。今の段階でも、立て直しに5年は掛かるだろうってよ。

 俺だって真田先輩に迷惑は掛けたくないし、これは仕方ねぇと思う。」

「――何でだよ。だって伊川は、何もしてねぇじゃん!」

 

 顔は見えてないけど、伊川が無理に明るい顔を作って話し始めたのが分かった。

 作り笑いなんてしなくて良いのに……

 

 でも、前よりも嘘が下手になった事を嬉しくも思った。

 あいつはもう、無理をしなくて良い環境にいるんだって分かったから。

 まあ、これから追い出される訳なんだけど……!

 

 

「天才が何もしてないってのが駄目なんだろうな!仕方ねぇよ、前だってこういう事、あっただろ。やっぱりさ、薬師時代が特別だっただけなんだ。」

「…………」

 

 俺は、何も言えなかった。

 俺は、天才は何かを成し遂げなきゃならないなんて意味不明っつうか自由にさせてやりなよと思ってる。

 だから伊川の公務員の夢だって、否定しなかった訳だ。

 

 でも多分、世間では俺の考えの方が珍しいんだ。

 あいつみたいな万能の天才は、何もしなくても人を傷付けてしまう事があるみたいなんだよ。

 

 俺は別に、一瞬で伊川に成績を抜かれても大して傷付かなかったけど、きっと大多数はそうじゃない。

 妬ましくなって排除されてしまうか、公共の利害みたいなのを重視されて排除されてしまうんだ。

 

 

「俺が北瀬のいるチームも壊す可能性を考えると……」

「楽しみだな!伊川が来てくれるの!」

 

 伊川は、普段通りの声色で、自分を傷付ける様な事を言おうとしている。

 だから俺は、バッサリと話を遮った。

 

 だってさ、伊川が居たら楽しそうなのは本当だからな!

 高校時代も野球って競技として考えると、お前と戦うのが1番楽しかった訳だし!

 いや〜楽しみだな。俺のナックルに恐れ慄くと良いさ!

 ……まぁ今の所、うちのチームは誰もナックルを捕れないんだけどな。

 

 

「まだ完成しきってないし誰も捕れないけど、俺のナックルを見てくれよ!中々良い感じになって来てるから。

 あっ、シアトルはさ!海が近くてクラムチャウダーが美味しいよ。来た時に良い店紹介するから、マジ楽しみにしておけよ!」

「おう……ってか、ナックルなら俺が捕れるな!行ったら取ってやるよ。」

 

 伊川は曖昧に頷いた後、ニヤッと笑って宣言した。

 調子が戻ってきたみたいで、良かった!

 

 安心しながら、俺もニヤッと笑って返事をした。

 

 

「マジ?俺ら、最強バッテリーになっちゃう?」

「いやいや、俺のリードが良くねーから無理だって。」

「でもよ、ナックルにリードって関係なくね?それに、高校生時代の最後の方は割とマシになってたじゃん!」

「まー、たしかに!」

『あははは!じゃあまた明日〜!』

 

 ノリノリの雰囲気のまま、今日の衝撃的な通話が終わって一息ついた。

 ホントは、ナックルは伊川と戦う為の必殺技のつもりだったんだけど、見られ続けたら使えなくなっちゃうな。

 ……まあ、いっか。最強のバッテリーって憧れるしな?

 

 




(北瀬のナックルが捕れれば、俺も役に立つ筈だよな?)
(自分で考えなきゃ、嫌なことも無いのと同じだよな。)

青道√だと、沢村と降谷という最高のライバルを見続けた結果、北瀬と伊川が最高のライバルになっていました。
ハピエンなのは、そういう事も含んだ結果です。

ちなみに耳の良さは、北瀬も伊川も無自覚にバッティングなどに活かしています。
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