【完結済】気付いたらパワプロで適当に育てた選手に転生してた話 作:いちごケーキ
絶対完結まで書き続けます、ありがとうございます!これからも出来れば、完結まで宜しくお願いします!
(伊川……お前、本郷狙い撃ちしたよな?)
(そうだけど、マズかった?)
テレパシーモドキで伊川と話し、流石に卑怯じゃないかと言った北瀬。
彼は、なぜ卑怯な事が駄目なのか理論立てて考えられなかった。
別にやったらポリ公に捕まる訳でもないし、問題無い様な気もする。モラルをデメリットで語る愚かさに気付かないまま、北瀬の思考は加速する。
そういう事は良くない気がする。何で良くないんだろうか? 北瀬は気付いた。
……そうか、観衆にバレたら問題になるからだろう!
北瀬はそう結論づけた。まあ企業モラルなどは、究極的に言えばそうなるから間違えてはいない気もするが、一般的な理屈から言えばズレている。
(……まあ、ルールではOKか。でも次やったら観客にバレるなら辞めたほうが良い)
(バレたらマズいのか……じゃあ辞めるわ。赤い旗の為に、就職リスクまでは冒せない)
なんと、ピッチャー狙い撃ちが一般人にバレたらいけないとすら分かっていなかった伊川。割と潔癖な人もいるんだなぁと思いながら次はしない事を北瀬に宣言した。
モラルが向上した訳では無いし似たような事をやらかしそうな気がするが、取り敢えず相手ピッチャー負傷の危機は減った。
……
8回裏までで平均失点1点以下の7失点と傷は浅く、エース北瀬は良くやっていたが、薬師高校の総得点も4点と物足りない数字となっていた。
北瀬は完全に息を切らしていたが。スタミナがAもある彼だが、ここまで投げさせればば当然だ。
160kmのストレートを、そしてそれに劣らない変化球を、上位打線から下位打線まで全員に全力で投げ続けていたのだ。
だが野球が好きな気持ちと観客達の大歓声、そして真田先輩に深紅の大優勝旗を上げるという一時的な使命感に背中をおされ、なんとか気力を持たせていた。
今までの試合の疲れも積み重なっているので、ここで勝っても次の試合では投げられないかもしれない。
その場合ファーストの三島と、弱小校でも燃えまくっていた三野が投げる北進学園顔負けの試合になる。
9回表、ワンアウトランナー無し3点差で、打順はこの男……決勝に進めば確実に本塁打記録を更新するだろうと言われる、2番北瀬に回った。但し本塁打記録は、同時に轟も更新するかもしれないが。
「頑張れ北瀬! ホームラン出せー!」
「たった3点差だぞー!!」
「4点取れー!!」
「フォアボールは駄目だぞー!」
「それ俺の事言ってんのか?」
この男なら、この打席で絶対勝ってくれる。そう信頼している薬師メンバーは、誰も微塵も諦めていない。
前回の試合で9回裏9点差をひっくり返したのもあり、薬師部員は誰も心配していなかった。
___ガギン!
剛速球のストレートに対し、全力でバットを振り切った北瀬。完全にボールを捉え、センターに飛んだ打球はホームランになると思われたが……
___バシッ!
「アウト!」
守備陣の介護をしながらピッチャーをして恐らく毎試合二桁得点、その上で全打席に立っていた北瀬は、気力だけで持たせていた疲れがここで来てしまったのか?
元来のパワーから言えば有り得ない、フェンス直前で失速した球をセンターはしっかり捕球。これでツーアウト。
轟はショート前ヒットを放ったものの、三島が痛恨の三振。後ワンアウトで試合終了だろうとバットを振り切った彼を、責めることは出来ないだろう。
「ドンマイ三島ぁ」
「悔しー! 負けたかぁ」
「そんな事もあるって……」
「つか俺らさ、たった1年で良くやったよな」
ベンチメンバーも暖かく三島を迎え入れる。甲子園の舞台が終わってしまった彼らだが、誰も泣いている人はいなかった。
なぜなら、そもそも甲子園出場が目標だった彼らは、ベスト4という快進撃に非常に満足していたからだ。
試合が終わった瞬間、あー終わった俺達良くやったよな、という弱小校モードな雰囲気になっていた。
薬師部員の、本番と日常のシーンを上手く切り替えられる所が、北瀬と伊川という異物が上手くやれていた秘訣かもしれない。
「礼!」
『ありがとうございました!!』
薬師高校メンバーは、これが最後だと、大きな大きな声で挨拶をした。
「良く頑張った薬師ー!」
「やっぱ巨摩大藤巻は最強や!」
「伊川ぁ! 打率10割まで惜しかったでー!」
「本郷強っ!!」
「三島ぁ! そんな事もあるでぇー!」
観客達からも温かい声援が飛ぶ。概ね今回の試合に満足した高校野球ファンは、楽しげに手を叩いていた。
ちなみに薬師高校のファンが会場の8割を占めていたにも関わらず、誰からも対して文句が出ていないのはいつ負けてもおかしくなかっただろう試合を毎回していたから覚悟されていたのだろう。
___これで、勢いだけで勝ち進んでいた様に見える、薬師高校の甲子園が終わった。
「北瀬くんと伊川くん! ベスト4で巨摩大藤巻高校に敗れてしまいましたが、今回の試合はどう思いますか?」
試合後若干モラルの足りない記者兼リポーターに、負けた試合の感想を聞かれた北瀬と伊川。
この2人が取材を受けているのに、最多本塁打まで後2本だった轟を呼んでない理由は、ストッパーが足りなくて大変な事になってしまった取材があったからだ。
取材の場合、北瀬と伊川、轟と真田、監督と薬師部員達の3パターンにほぼ固定され始めている。
「負けてしまって悔しいです」
「深紅の大優勝旗を手に入れる事が出来なかったのは残念ですが、元弱小校な俺達ですし寧ろ良くやった方だと思います」
実際に考えていたのは碌でもない事だった伊川だが、昔から持っていた誤魔化しスキルによって、レポーター相手にはそれっぽく言える様だ。
細かく話せばバレてしまうだろうが、高校球児相手にそこまで記者は求めてこない。
「確かに薬師高校は、秋の県大会2回戦負けから甲子園ベスト4ですからね! 素晴らしい大躍進だと思います!」
「次の春の大会、北瀬くんと伊川くんはどういった試合展開にしたいですか?」
記者Aの質問に答えた直後、記者Bの質問が飛んで来る。この速度では北瀬に、マトモな回答が出来る筈も無い。
あれだけ試合で観客に囲まれていたから慣れるかと思いきや、話しかけられた訳でもないので特に変わらなかった。
観衆慣れと、観衆からのブーイングへの恐怖で差し引き0と言った所だ。
「本郷くんみたいな選手になれたら嬉しいです」
マグレだが、自分が負けた相手を褒め称える様な回答をした北瀬。ピッチャーとしての実力なら逆に勝っている彼だが、自分の投げる打席に立てる訳でもないので気付いていない。
「……8回4失点と、本郷くんは凄い試合をしてましたから。北瀬は彼みたいに失点を減らせたらなと、思っているんだと思います」
すかさず北瀬の回答を補足する伊川。これなら就職の面接でも、全く困らないのではないだろうか……まあ野球でこれ位の恩恵しか得られなかった場合、受験の勉強でもしていた方がマシかもしれないが。
「確かに、薬師高校相手に4失点は凄いですね!」
彼らの発言を上手く纏める記者達。流石スポーツ系の記者だ。愛想の悪い相手にも慣れている。
記者の補填は正しくなく、彼らは自分達相手に4失点が凄いと思っているのでは無かったが。4失点は、普通の人にとって完投1失点位の感覚だった。
全く取材されるのが好きではない彼らにとって、最悪の時間はまだまだ続く……
「ようやく取材終わったなァ」
「決勝もうすぐだよな、見に行かないか?」
人が居ない事を確認した後ぽつりと呟く伊川。甲子園決勝が迫る中取材を受けていた北瀬は、内心一緒に見に行きたい気持ちを抑えてそう聞いた。
「じゃあ行くか……その後、真田先輩のお見舞いの物も買わなきゃな」
「そうだな……シンクの大優勝旗は手に入らなかったしなぁー」
甲子園ベスト4のチームの癖に、決勝がどうでも良いと思っていた伊川。だが北瀬が行くならと、行くことにしたようだ。入院している先輩を1人忘れていて、後で慌てる事になる。酷い。
ちなみに甲子園でも一切勉強を欠かさなかった伊川。
勉強方法を教えてくれる人がいなかった為か根本的に勉強方法が分かっていない彼は、教科書の全文をひたすら暗記する事でなんとかしていた。
この苦痛な作業に加え、ゲームとSNSと部活を毎日欠かさずこなし続けていた彼の平均睡眠時間は、遂に3時間を下回っていた。
目に隈ができない体質だし、体調で気分が変わらない伊川だから誰にも気付かれていないが、実はピッチャーの北瀬より肉体は追い込まれている。
「ああ……次の春は、大しこん旗を手に入れたいな」
「そうか。運が良いと良いな」
甲子園優勝の可能性を運で片付ける伊川。伊川のリードが治れば大幅に勝率があがるのだが……根本的に野球に興味がないので理解していない。
___そんな彼らの野球人生は、後2年位は続く。
とりあえず1年夏は完結です!
見ていただきありがとうございました!
続きのルート再投票です。票数の分かれ方微妙で悩ましい為、2択でアンケートを取ります。できれば再投票お願いします。
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青道合併・ハッピーエンド
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薬師高校・ノーマルエンド