【完結済】気付いたらパワプロで適当に育てた選手に転生してた話 作:いちごケーキ
日時が変わってもメンバーは変わらない為、どこかで似たような事が起きている裏設定です。
寮に入ってから1週間と少しが経過し、北瀬達が轟親子達との寮生活に慣れてきた頃。追加で9人……つまり野球部全員が寮に入る事になった。
引率する轟監督と、ついでになぜか学園長。内心推している薬師野球部からの寮の評価を見に、わざわざ案内する事にしたらしい。
学園長は薬師高校経営以外にも多くの仕事を持っていて忙しい人物なのだが、好奇心には勝てなかったらしい。80歳近いおじいちゃんなのに、パワフルな人間である。
「スゲー何だこりゃ! 俺達が強豪校みたいだぞ!!」
「俺達って一応、甲子園ベスト4だけどな」
「ハハッ、流石は轟親子! こんな事になるなんて、俺全く思ってなかったっす!」
テンションの高い部員達、特に三島と真田先輩。ノリが良い彼らは、新しい寮に大興奮だった。
学園長はソレを見ながら、喜んで貰えて良かった! サイフにはちょっとダメージだったけど、やはりワシの財布から出して正解じゃった。薬師野球部はワシも育てた……と、年甲斐もなく内心大はしゃぎだった。
「おいおい真田ァ。俺じゃなくて目の前の学長に感謝してくれよ? なんせポケットマネーから出してくれたんだからよ!」
「ちょっと轟監督、それは一応言わないでおいてくださいよ……部活動平等の観点からしたらアレなんで……」
「あっそうっすね、すんません!
ただ、来年からは部員が増えまくると思うんで、今更な気がしますがねぇー。大人の建前って事っすかね」
建前を取り繕えない轟監督は、雇い主の学園長に対しても建前だとバッサリ切り捨てた。
まあ学園長は今年の薬師野球部に脳を焼かれている為、少なくとも彼が生きている間は轟監督は安泰だ。けれど、それを知らない轟監督はもう発言に少し気をつけた方が良いと思われる。
全部の施設を監督と学園長に案内してもらった彼らは、俺達の薬師野球部に凄い設備が出来た! と喜んでいた。
一部の計算が早い部員は、寂れかかっているとはいえ一応都内の大きなアパートを全買い取りってどれ位お金が掛かったんだろうと疑問視もしていたが。
ちなみにそのお値段は、寮や使っていなかった教室の改装、教師を3倍にした事を含めると、甲子園フィーバーの人数が10年位続かないとペイ出来ない額だった。
そもそも薬師高校は、学費が公立並の激安校を売りにしているので儲けはあまり出ていない。だから極貧の雷市も普通に通えていたのだ。
普通に赤字の可能性がある改築だったが、天国にお金は持っていけないと考えている理事長が、死ぬまでの最後の贅沢として決行していた。
青道高校などの数校から、薬師高校の高額買取を提示されていたのにも関わらずの大出費なので、理事長の息子達は渋い顔をしていた。普通に理事長の独断専行だ。
「じゃあ、そろそろワシは帰るわー」
『あざっしたー!』
70過ぎにも関わらずパワフルな学園長を、何となく薬師高校っぽい人だなぁと思いながら部員達は挨拶をした。
異常にノリが軽くてテンションが高いのは、薬師高校ではなくて薬師野球部だけなのだが……そんな事は彼らの知った事では無いようだ。
まあ確かに、校風も無くはない。だが彼らほど明るい人間は、薬師高校内でも少なかった。真田や三島等の薬師有数のネアカや、平畠や伊川という薬師有数の高偏差値集団が在籍している事が大きい。
「そうそう。花火も買って来たから、グラウンドででもやってくれや」
「マジすかやった! あざーす!」
「楽しそうだなぁ!」
「学園長て神っすね?!」
昭和の人間なので、学校のグラウンドで花火をする事を自ら推奨した学園長。校風によっては停学物だろうが、薬師高校は許可を取っていればOKらしい。
急に楽しげなイベントが発生したので、ノリの良い彼らは高校生らしくはしゃいでいた。
学年関係無く騒いでいる彼らを見ていたら、とても甲子園ベスト4の超強豪校部員とは思えないだろう。
「花火かぁ、楽しそうだな! 北瀬」
「それな! 野球部でやるなら凄く楽しそうだ!」
「雷市に涼に始、線香花火でどっちが長く持つか対戦しねぇー?」
真田先輩がソワソワしている天才共に勝負を持ちかける。
「4人だけで楽しそうな話しないでくださいよ! どうせなら全員でやりましょう!」
「俺もやりたい!」
「俺も! ……そうだ! 罰ゲームで線香花火が最初に落ちた3人は、明日の分の洗濯する事にしないか?」
『乗った!』
野球部花火大会が始まり、まず線香花火を始めた。
誰が最後まで残れるかを競っていた薬師部員だが、あまりにも雷市が下手過ぎた。別に線香花火が得意な訳でもない真田先輩が、見かねて自分の花火をおなざりにしながらアドバイスしている。
「そうだそ、雷市。ちょっと傾けた感じで揺らさないで……あっ」
「カハハハ……落ちた……」
真田先輩は頑張ったが、雷市がやはり真っ先にダウンした。これに監督はプンプンだった。ブーブーと不満げに喚いていて、ノリが良い部員達の一部は若干引いていた。もういい歳なのに、子供が線香花火落としただけでここまで騒ぐか、普通……
「雷市ィ、お前が真っ先に落とすんじゃねーよ! 主砲だろ!」
「うるせー親父! 野球と花火は関係無ぇっての!」
「おいおい押すなっ! あ……」
「監督が2番目ですね……洗濯お願いします!」
真面目な筈の平畠が、真っ先に洗濯を監督任せにしてきた事に少し驚く監督。
あれ。俺って一応、部で1番偉い監督だったよなと嫌そうな顔をしていた。単純に洗濯がしたくないだけかもしれないが。
強豪校の監督とは思えない程、轟監督に威厳が無いのが悪いのかもしれない。部員達は監督の事を、4年生位の先輩扱いをしている節があった。上下関係が今の所緩いので、そんな事がまかり通ってしまうのだ。
轟監督はカリスマが無い訳ではない。彼ら親子が、野球に対してだけ見せる純粋な熱意。それが彼ら野球部の原動力となっているのだ。
尊敬はしているのだが、素直に尊敬しているとは言い難いテキトーな性格の監督なだけである。
そういった緩い雰囲気が、元弱小でやる気がなかった薬師部員が言う事を聞いている理由かもしれないので、一長一短だが。
「俺がやるの?! 一応監督なのに」
「でも監督……罰ゲームの話した時に乗ったって言いましたよね?」
「そうだー!」
「1人だけ逃げるのはズルいっすよー」
「分かったよ……」
そんな話をしている時、地味に三島の花火と伊川の花火、どちらが先に落ちるかのデッドヒートを繰り広げていた。
じっとしてられない性格の三島と、個体差で線香花火の球が大き過ぎた伊川。どちらかが洗濯をしなければいけない。
(先輩達に頼まれたならともかく、こんな形で雑用をするのは嫌だ……!)
(俺は負けねぇ! なぜなら俺は、エースで主砲になる男!!)
三島は自信過剰気味な事を考えながら、絶対に負けられないと内心メラメラしていた。
160kmと高校最強バッター両方に勝とうとする鋼のメンタルはちょっとバカに見えるが、北瀬や伊川は特に見習うべき精神力だろう。
まあ、線香花火と野球には何の関係も無いのだが……
「そういやさぁ。三島は今日の飯何が良い?」
「ハンバーグ! マジかありがとう! ……あっ」
伊川は三島の集中力を乱そうと、大人げないささやき作戦に打って出た。夜ご飯を作る予定の伊川に尋ねられ、身体を使って喜びを表しながら答えてしまった三島。
当然、線香花火はポトっと落ちてしまった。
「よしっ、ささやき作戦大成功!」
「テメー……やりやがったな!」
ニヤッと笑いながら騙した事を堂々と告げる伊川に、当然キレる三島。伊川の肩を揺らしながらムカッとしていた。それに対し、悪い悪いと軽く謝りながら、少し卑怯な事を言っていた。
「悪いなぁ、勝負は買ったもん勝ち! まあハンバーグは作るけどさ、だから揺らすなって……あっ」
三島に揺らされ、伊川の線香花火は直ぐに落ちてしまった。
自分の身体を操作する事が得意な為、たかが線香花火だろうと普通ならこんな簡単に落とさないのだが。
三島に揺らされている上、使用している線香花火の火が強く、見栄えはともかく勝負には不適切だったのが離脱の原因だった。
今度は三島が高笑いする番だった。
「ガハハハ! 悪は滅びた!」
「こんなのアリかよ! ……無効じゃね?」
物理的に揺らされて落とされたのに納得がいかない伊川が、思わずそう零した。ただでさえ物がハズレだったのに、こんなのってアリかよと感じたのだ。
だが、部員達は冷たかった。
……伊川はそう考えたのだが違う。部員達はその場のノリと、三島への悪行と、前回の轟監督への採決で決定しただけである。つまり9割伊川が悪いと言う事だ。
そもそも、たかが線香花火大会で熱くならない方が良い。まあ他人不信ぎみな伊川が心からはしゃげる程、薬師高校の先輩達に慣れたという事でもあるから良いかもしれないが。
「監督も雷市にやられて負けたし、アウト!」
「まじスかー! まあ、罰ゲームは回避したしいっか……」
確かに轟監督も雷市にやられてたな。でもアレは、雷市を煽った事が悪くね? と自分が使用したささやき作戦を棚に上げてブツブツ言いながらだが、伊川はなんとか自分を納得させた。
その後は人数不足に喘ぐ薬師高校で、内野全般の控え扱いの福田、外野全般の控え扱いの山内が相次いで離脱。
少し時間が立つと、今の所特質すべき所がない、薬師下位打線の米原が無難な順位で花火を落とした。
この辺で、ピッチャーが投げる時のセカンドである増田が自分のクシャミで落としてしまう。ついでに後輩の秋葉とキャプテン最有力候補だった平畠も巻き込んだ。凄く威勢の良いクシャミだったのだ。
これで勝負は佳境に入る……ジリジリと持ち手が無くなっていく線香花火。
これは持ち手が無くなるまでの勝負かと思いきや、突如突風が吹いた事で、レフトの森山、ショートの米原がほぼ同時に舞台から去った。
線香花火王決定戦は白熱した! 花火慣れしていて風を読む真田先輩対、絶対に揺らさない身体能力の鬼北瀬。
どちらが勝ってもおかしくないと、ゴクリとつばを飲み込んだ薬師部員。
風が強く吹いている……その時! 巻き荒れるグラウンドの砂が、北瀬の線香花火に直撃した!
「よっしゃっ! 俺の勝ちだな!」
「完敗です! 真田先輩」
「北瀬も凄かった。もし立ち位置が逆だったら、結果は違ってたかもな」
「真田先輩……!」
お互いの健闘を称え合う、素晴らしい光景。薬師部員達は感動でうるっとして、彼らの健闘を拍手で迎える。
「凄かったです真田先輩!」
「ナイスファイト北瀬!」
「惜しかったぞー!」
「真田先輩って凄い!」
冷静そうな平畠や伊川も、彼らの健闘を称えて盛大な拍手をしていた。
……やっているのは、たかが線香花火だったが。
そして煩い。遊んでいるのが人のいないグラウンドで良かったと思われる。
「面白かったぜ!
……だがまー、空気を読まねぇ風が強くなって来やがった。花火の続きは別の日で撤退だ!」
『了解でーす!』
こうして、薬師部員達は先輩後輩関係なく更に仲良くなり、これからの寮生活でも円滑な関係が保証されていた。
北瀬も伊川も、凄く楽しかったらしい。特に伊川は将来レポーターに薬師高校の1番の思い出を聞かれた時、この線香花火大会を上げる程この白熱した勝負が楽しかったようだった。
レポーターの言ってほしかったのは甲子園の思い出だったが、伊川は深く考えていなかった。
裏設定に近い北瀬くんの日常
6時〜 部活開始
8時〜 学校スタート
(真面目に受けずに宿題と筋トレタイム)
15時〜 部活開始
20時〜 伊川とゲーム
22時〜 明日の支度・寝る
1番好きなキャラは誰ですか?
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北瀬
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伊川
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雷市
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雷蔵
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真田
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三島or秋葉
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その他部員
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無回答