【完結済】気付いたらパワプロで適当に育てた選手に転生してた話 作:いちごケーキ
日時が変わってもメンバーは変わらない為、どこかで似たような事が起きている裏設定です。
頑張って調べたのですが、システムがよく分かりませんでした。ご指摘を頂けた場合は修正して、この話は「読まなくていい、書きたかったけど掛けなかったシーン」に入れます
3年生も引退してしまい、そろそろ秋季大会が始まるだろうと気合を入れている薬師部員。
まだがらんどうな寮で、割と楽しく共同生活を送っていたが……普段通りに練習に明け暮れているある日、轟監督から衝撃的な1言が飛び出した。
「春のセンバツ出場校を決める、秋季大会ってあるよな……?」
「ありますね」
「そういえば、いつ位から始まるんですか?」
全く普段とは違う、まるで強豪校の監督の様にただならぬ雰囲気を醸し出す彼に、思わず萎縮する薬師部員達。
いや確かに、轟監督は新星、甲子園ベスト4の薬師野球部監督であらせられるのだが、普段の雰囲気からはとてもそうとは思えない。若干うらぶれたおっさんである。
___その監督から、最悪の、衝撃的な1言が飛び出す。
「……アレ、国体と被ってて出られませんでした!」
『ハァ??!』
部員達は絶叫した。
嘘だろ、そんなバカみたいな話が有り得るのか? 俺達って割と凄いチームだったよな、それが1回戦も出れずに敗退したのか?!
部員全員が、いや、伊川以外の部員全員の気が狂いそうになっていた。当然だ。彼らは甲子園に出るために、苦しい練習をやり続けていたのだから。
年に2回しかないお楽しみのボーナスタイムが、負けてもいないのに無くなってしまったのだ。混乱して当然である。
むしろ監督やチームメイトに罵声が飛び交わないだけ、彼らの人間性は良いとすら言える。
「待ってくださいよ監督! 一応俺達って、甲子園ベスト4スよ? マジで秋季大会1試合もできないんすか?!」
薬師野球部は少人数とはいえ、強豪校を名乗れる筈の、甲子園ベスト4のチームである。
……まさか、秋季大会で1回も出れずに負けるなんて事が有り得るのだろうか?
思わずドッキリの看板を探す。だが無情にも、笑い話に出来るような結末は訪れなかった。
「しゃーねーだろ! 国体呼ばれてたんだからよ! うちには弱小校相手に戦ってくれる便利な2軍は居ねぇんだからな!
……そもそも正捕手が居ねぇーチームが、どうやって勝ち抜けば良いんだよ?!」
轟監督の悲痛な叫びに、同じ位悲痛な顔をしていた部員達は少し落ち着いた。
確かに……俺達には控え部員なんていない。どう考えても、どちらかの試合にしか出られなかっただろう。と部員達は考え始めた。
いや最低人数の9×2チームで出場すれば行けたかもしれないが、国体にソレで出るなんて正気の沙汰じゃない。交代要員無しで行けばなんとかなるが、スタミナの無いベンチメンバーは持たないだろう。
それに、いくら俺達の主砲陣が強くても、流石に分裂は出来ない。そんな馬鹿げたチームで勝ち進むのは無理があるよなぁ。馬鹿げた試合を量産している彼らだが、その辺は普通に現実的だった。
春の甲子園に繋がるけど勝ち抜けるか分からない秋季大会と、甲子園よりは小さい大会だが絶対に出場できる国体のどちらが大切か……難しい問題だ。
薬師野球部は苦しげに、困った顔をしていた。
そもそも国体に出られるチームが、秋季大会用のメンバーが足りないという事が中々無い話だろうから、調べても前例が無いだろう。それなら結局、俺達が選べたらどうしていただろうか? 薬師部員達は分からなかった。
それに、正捕手だった渡辺先輩はもういない。今の所薬師高校には、キャッチャーの勉強をしてきた部員は1人もいないのである。
今回の秋をなんとかするとしたら、三島か秋葉か伊川にやらせるしかない。
三島と秋葉は結局、昔からの幼なじみ相手なら何とかできるだけで真田先輩のキャッチャーは難しいだろう。
伊川も似たような理屈だ。マズいリードを全て剛速球で誤魔化してきただけで、真田先輩のキャッチャーは出来ない。
まさか全て北瀬に投げさせる訳にもいかないし、そうなってくると3人はピッチャーがいないと回らないのだ。
そして、仮に真田先輩をピッチャーとして起用出来たとしてもたったの4人。2チームに分けて大会に出すなんて、正気の沙汰じゃない。どちらも直ぐ蹴散らされて終わっただろう。
結局、俺達はどうすれば良かったのかと少し悩んだが、最終的に彼らは思った。
……結局俺達じゃ決めきれなかっただろうし、監督決定をしてくれて良かった! どうせどちらを選んでも後悔するなら、轟監督が選んでくれた方が諦めがつくだろうし!
他責思考になっても全く責められないこの場面で、最終的には相手を責めない性質が、薬師高校野球部の良い所であった。……少し思い切りが良すぎる気もするが。
元々最悪な学校にいた北瀬達が、落差で落とされて懐いても当然な先輩方であった。一切野球に興味が湧かない伊川すら、毎日7時間以上の練習がある野球部を辞めたいとは思い切れない程に。
ちなみに北瀬と伊川は、野球の大会は夏の甲子園しか知らなかった。北瀬がショックを受けていたのは、デカい大会に出られない事実を聞いたからである。
「……マジすか!」
「言われてみれば、日程が被ってますね……」
「まぁ数試合位無くても良いけど」
『それは無い』
伊川の適当な1言に、基本テキトーな薬師部員すらツッコミを入れていた。
それなら俺達は何のために野球の練習をしているのか分からない。伊川も何やかんや、野球が好きだから毎日ここまで練習してるんだろ?
……まあ伊川はお兄ちゃんっ子だから、もしかしたら北瀬に付いて来てるのかもしれないけどな。
ちなみに誕生日が北瀬の方が先なので、書類上も北瀬が兄だった。そして幼い頃に北瀬に救われた伊川は、北瀬の事を大切な兄でもあると考えていた。
北瀬も幼い頃に出会った時のイメージで、何となく自分の事を兄貴だと考えていた。
やっている行動は伊川の方が年上っぽい気もするが、そんな事は彼らにとってどうでもいい話だったのだ。
伊川はわざわざ、部員達に水を差す様な発言を積極的にはしてなかった。だから薬師部員は、伊川が本気で野球が好きではない事を知らない。
いつも一緒にいる北瀬すら、伊川も何やかんや野球が好きだろうと勘違いしていた。
察しない薬師部員ではなく、自分の事を言わない伊川が悪い。というか、そもそも伊川は自分の思考を理解して欲しいと考えてもいない。
伊川は、大切な人達にはなるべく良い顔をしていたいと思っている。
「しゃーない! 諦めて夏の甲子園を狙おうぜ!!」
「部員増やせば良かっただろー!」
「もうちょい勧誘しててくれよー!」
既にある程度、彼らは怒りを飲み込んでいたが……それでも多少の不満は出ていた。
というより悲鳴に近い。だって彼らはまさか、甲子園ベストにもなって秋季大会に1回も出られないなんて思っていなかったのだ。
強豪校らしい部員が1人もいなかった結果、割と弱小校気分を引き摺っていた為反応はマシだったが、本当の強豪校だったらどうなっていた事か。少なくとも監督の辞任では済まなかっただろう。
……まあ、強豪校なら起きるはずもない事件だったが。
「だって! やる気のない戦力外を、無理矢理試合に出しても仕方ないもん! 俺らって注目されてんのにソレは駄目だろ!」
『まあ……それはそう』
そもそも、秋季大会と国体が被っている事に気付いた部員は1人もいなかったのだろうか?
……監督が考えているだろうと思い、全員誰も考えていなかった。実際監督は部員達の事をしっかり考えた上での結論だったので、その結論でも一応間違いでは無いのだが。
「そもそも、俺達が甲子園出られたのってあんたら親子のお陰ですしね。最後まで付いて行きますよ!」
「仕方ないっすねー、夏の甲子園目指して頑張りましょう!」
「……ったく、これだから雷市の親父さんは……」
真田先輩や北瀬や三島が、それっぽく話を締めた。
北瀬達が引退するまで後1年以上あるが、真田先輩と一緒に戦えるのは夏の大会で終わる。
次の大会は勝ち続けて、なるべく先輩達と一緒にいたいと、少し伊川ですら思った。
秋季東京都高等学校野球大会10月7日から試合
国体は10月6日から開幕式で10月8日から試合
そして元弱小校である薬師には恐らくシード権が無いです
……調べている最中、人数の少ない薬師高校が両方出るのは無理な気がしました。ご指摘があれば変更させていただきます。
↑完全にこうだというご指摘は無かったのですが、読者様は秋季大会も出場した方が良いと考えている人が多そうなので変更すると思われます。その場合、IFとしてそのままにしておきます