【完結済】気付いたらパワプロで適当に育てた選手に転生してた話   作:いちごケーキ

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42球目 体験練習前半

 

 

 

 

 

 

 

高校野球のオフシーズンとも呼ばれる12月、薬師野球部は筋トレやバッティングにスタミナ特訓、ついでに守備練習に励んでいた。

12人しかいない為、何人か疲れると機能しなくなる守備練習は、どうしても偶にしか出来ないのだが……

 

普段通り練習した彼らに朗報。突然、轟監督が普段通りの顔のまま初耳情報を言い渡してきた。

 

 

「明日は新1年生の体験練習があるから、そのつもりで来いよー。お前らには守備はやらせねぇから、バンバン打てよ! 推薦決まった奴に辞退されると困るからな!!」

 

薬師高校野球部が体験練習をするという話を聞いた彼らの大多数は、えっ俺達の部活にそんな制度が出来たのか? と困惑しながら凄く喜んでいた。

うわーすげぇ、まるで強豪校みたいだ! 甲子園ベスト4とは思えない軽いノリで、新しい新入生が来るのを喜んでいた。

 

喜ぶのも当然だ。なぜなら薬師野球部は、部員12人+兼部の幽霊部員6人。春の甲子園に出られたとしても、野球初心者のテニス部が出る可能性すらあるのだから。

 

 

「ハイ!」

「俺達にも後輩が……!」

「見学者何人位来ると思う?」

「20人位は来るんじゃないか?!」

 

盛り上がりムードな中、体験練習とやらを良くわかっていない北瀬、伊川、雷市。

楽しそうな所を邪魔したくないと思った彼らは、コソコソお互いの情報を交換していた。

 

(伊川、体験練習って何?)

(さぁ、俺達野球部の体験って事かも? 何の為にするかは分からん……)

 

「……雷市、体験練習って何だか分かるか?」

「カハハハ……分かんない……」

「だよなぁ……わざわざ入学したい学校の部活を体験しに来るとか、意味分からん。受験シーズンまで2ヶ月位しかないのに、そんな事してる暇あるのか?」

 

そんな彼らに気付いた真田先輩が、興奮する部員達から抜け出してわざわざ教えに来てくれた。

 

 

「そりゃこれから俺達の野球部に入りたいって奴は、学校を選ぶ条件に強くて自分に合う野球部に入りたいってのが多いだろうからな! 時間を使ってでも俺達を知りたいんだろ!」

 

真田先輩の言葉に納得したような顔をしながら、彼らは返事を返した。

 

 

「なるほど、確かに学校とかの雰囲気は大切ですね!」

「説明してくれて、ありがとうございます!」

「カハハハ……サナーダ先輩、ありがと!」

 

 

 

 

 

 

次の日、300人、いや400人を超える人垣の前で、片岡コーチが何やら力説していた。

とんでもなく人数が多いが、野球歴に関係なく来たい人は全員許可を出したらこうなったらしい。

薬師高校は、強い人を細かく調べる人員がいないので仕方ないのである。

 

 

「薬師高校野球部、体験練習に集まってくれて、ありがとう。今回は、俺達がどういったチームであるかを体験して貰う事になる

 

野球部への入団試験は来年一杯行わない予定だ……だが入学時に、甲子園出場校として多くの入学希望者が集まり、定員より大幅に人数が集まる可能性がある

絶対に野球部に入りたい者は、まずは勉学を優先してほしい

 

見学体験に来た者の中から、1人から3人程度、薬師高校野球部に必要な人間を推薦させて貰う

 

今集まって貰ってる人の中には、既に推薦が決まっている人が7人いるので、そこに追加する形になるだろう

この体験で優秀な成績を出さなくても野球部に入部する事は可能だが、日々の成果を発揮すると考えて頑張って欲しい。以上だ」

 

『はいっ!』

 

 

片岡コーチから話を引き継いだ轟監督が、不真面目な性格を隠せないままこう話し始めた。

 

 

「じゃーまずは野球部の施設の紹介だな。いっぺんに紹介するには人数が多すぎるから、こっちで適当に決めといた

人数多すぎて、今日来た人の書類を受け取った時に整理番号渡したんだけど、あの紙に上級生の名前書いてあるから、その部員の所に集まってくれ

 

上級生相手でも分かんない所は積極的に聞いてけよー、次の機会は入学してからだからな!

超どうでも良い事を聞いても良いぞ。パンツの色とか聞かなきゃ、怒る奴はいないだろうさ

 

特に、北瀬と雷市に当たった奴。めっちゃ口下手だから、分からない所は頑張って質問し続けてくれ。他人に説明する才能が終わってるから」

 

『…………』

 

轟監督がいう、来ている中学生全員の憧れである北瀬と轟は説明が下手くそという話を聞いて、凄く微妙な顔をする彼ら。

えっ、この話って笑う所かな? でも先輩の事を笑ったと思われる訳にも……そうやって、一部の中学生は困った顔をしながら聞いていた。

 

というより、パンツの色を野球部の先輩に聞く奴がいたら頭おかしいだろ。ソイツがぶん殴られてもざまあみろ位しか思わないぞ。

まあ、それ位なんでも聞いて良いってお墨付きという事か。かなり自由な校風なんだな、薬師高校って。理解力の高い一部の中学生達は、早くもそう解釈していた。

 

 

せっかくならクリーンナップの方々から話を聞きたい気もするが、説明が下手では困ってしまう。

つまり、伊川さんが1番当たりって事か! ……まあリードはかなりアレだけど、守備が苦手なのは先輩方の殆どが変わらないし、打撃力は歴代高校生最強クラスだもんな!

そんな事を考えながら、どの上級生の名前が書いてある事は分かっているが、なんとなく自分の整理番号を見直す中学生。

 

俺はどんな行動をすれば良いのか、本当に上級生に質問しまくって良い空気なのかとずっと困惑している彼ら。

学校によっては、上級生にはハイしか言ってはレベルで厳しく学校もあると分かっているのに、こんな緩い空気だと言われれば困惑もするだろう。

 

キャプテンである真田が、部員達の助けを求める空気を察知し、彼らを代表して苦笑いしながらこう言った。

 

 

「ちょっと待ってくださいよ! 俺達そんな事するなんて聞いてないんですけど……説明内容全く考えてないっすよ」

 

その言葉を聞いた中学生達は、この部活は上の指示が適当なのかもしれないと考えていた。

轟監督は真田の言葉に対して、片岡コーチからの冷たい視線を浴びながら、子供っぽい口調でこう言った。

 

 

「いやだって、お前らに事前に説明したらさぁ。ぜってー野球サボって説明練習するじゃん

 

今来てる奴なんて、大体そこそこ強くて入りやすい野球部に入りたいだけなんだから、施設説明なんてどうでも良いっしょ!

寧ろ、そのままの先輩達の空気がしれて丁度いいじゃん? こういうノリが嫌な奴は、薬師高校に来ても不幸になるだけ!

 

……ほら、問題ないでしょう!」

 

 

「カハハハハ……このクソ親父!!」

 

少ない上級生として、監督達の隣に立たされていた薬師野球部一同。轟監督の、普段通りの適当な発言に呆れていた部員達。

 

特に、人と話す事が苦手だと自覚している雷市がブチギレていた。というか監督に掴みかかってキレていた。

 

ふざけんな、俺そんな急に言われても説明できねぇよ! 説明はちゃんとしろ、このバカ親父!

 

よく考えると監督の独断ではなく、説明ではなく練習に専念させたいという轟監督の意見に渋々了承したコーチも関わっているのだが、そんな事を彼らは気付かない。

またやりやがったこの適当監督。そんなシラーっとした空気を漂わせながら、一応雷市を止めに言っていた。

 

 

「やめろバカ! 体験練習に人来てるんだぞ、下級生見てるんだぞ!」

「止まれ雷市! 気持ちは分かるが!」

「めちゃくちゃだなぁ、この親子……」

「バカお前らも止めろって!」

「うわぁ、お空綺麗だなぁ……」

 

(てか、人数妙に多くね?)

(見学だから、ここから希望者は10分の1位に減るだろうけど……それでも40人は来るだろうな)

(マジ? ……甲子園効果?)

 

 

 

そんな事もありながら、とりあえず中学生を先輩毎に分ける事に成功した薬師野球部。

どこから誰が説明しに行くかを相談し、とりあえず寮の部屋×3組、寮の筋トレ室、食堂、図書室、監督室、洗濯室、グラウンド、雨天練習場、学校、学校の筋トレ室に別れて説明していく事になった。

というか、場所毎に上級生が別れて説明すれば良かったのでは無いだろうか? 監督達が思いつかなかったのか、何か理由があるのかは、彼らは知らない。

 

 

 

そうして、彼らは何も始まっていないのに無駄に疲れながら、部活の施設紹介を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

「北瀬涼のクジを引いた人、34人……よし、集まったみたいだから、まずは寮の部屋に行きます!」

『ハイ!』

 

「えっと、キャプテンになるべく話をしろって言われてるから、話をしながら説明します! 質問がある人とか、うるせぇ黙れって思った人がいれば言ってください……!」

 

明らかに部員1人で説明する人数ではない、30人超えを相手に北瀬は頑張って喋っていた。近くで聞いている人は少し五月蝿いが、遠くで聞いている人はギリギリ聞こえる位の音量である。

中学生達は、初対面の甲子園でめちゃくちゃ活躍した先輩が話しかけてくれているのに、うるせぇ黙れって思って言う奴がいたら人格破綻者だろうなと思いながら、とりあえず北瀬の話を聞いていた。

 

 

「寮の部屋はこんな感じ。ここは俺と伊川っていう1年生の部屋です……人数多いから、全員が覗いてから移動します!」

 

急な見学らしいにも拘らず、しっかり整理整頓された部屋を見てこの人達は綺麗好きなんだなと感じた中学生。

綺麗好きなのもあるが、家庭の事情で整理整頓に慣れている事が大きいだけであるのは知らない。

ちなみに北瀬は、彼自身も伊川も知らないで来ている人は沢山いるだろうと考えているのでこう言った説明になった。

実際は、知らないで来ている生徒は1人もいないと思われる。そんなバカは、何の為に新たな強豪校へ来たのか分からないし、そもそも北瀬と伊川を知らないままこの学校を調べる方法が殆ど無い。

 

 

「えっと、パソコンは伊川が勝手に持ってきた奴です。寮の付属では無いので、持ち込みたい人は勝手に持ってきてください!

……でも大量に持ち込んで、同じ部屋の部員からクレームが来ないようにしてください。ヤバい量の持ち込みがあった場合、上級生に言ってください!

 

部屋割りは新入生の数によって変更される予定で、2人の上級生が何人かの下級生を管理する形になる予定です!

 

多分、温厚な先輩や同級生が多いのであんまり起きないと思いますが、パシリが多すぎるとかのクレームがあったら真田先輩か平畠先輩か俺に言ってください! 一応副キャプテンなので!

でも、1回パシられた位なら出来れば文句を言いに来ないでください! ムカツクと思いますが、出来ればよろしくお願いします!

 

……はい、ここまでが寮の部屋になります! ここから先は食堂になります!」

 

 

 

 

北瀬の話を聞いている下級生は、持ち込みが自由なのは良いなと思ったり、下級生の管理をするって何だよと怯えていたり、1回パシられただけで密告する奴いたら阿保だろと困惑していたりした。

その時、下級生の1人が質問しようとした。

 

 

「あの……2人の上級生が何人かの下級生を管理する形って具体的にどういう事ですか?」

 

他の下級生が気になっていても聞けなかった事をあっさり聞いた彼は周囲にギョッとされていた。初対面の先輩に、その強豪校特有の闇みたいな事を聞くか? という意味である。

だが北瀬は、確かに説明してなかったなと思ったらしく、全く怒ってはいなかった。寧ろ、悪いなと考えているであろう空気を醸し出している。

 

 

「ああ、説明が足りなかったな……悪い!

 

寮が出来てから数ヶ月だから、伝統もルールもあやふやなんですよ! 基本的な事は、確か学校のホームページに乗ってるけど、細かい事を判断するのは今の上級生って決めたらしいです

 

例えば、伊川はたまに寮の調理室を使って魚を捌いて料理する趣味があるんだけど、これからの部員が沢山食べ物を持ち込んだら場所を圧迫して禁止されるかもしれないらしい……

そんな感じで、問題が出てきたら上級生の権限で禁止していきます! 逆にルールの解釈の質問とかあったら聞いてください、大体の事は上級生判断で許可、却下していきます!

 

あ、伊川がたまに作ってる料理を摘みたい人は、ザルに金額貼ってあるからできればそこに払ってください! ……払えない人は仕方ないけど。

あいつの料理は基本赤字でやってるから、けっこう美味しいと思います!」

 

意外と上級生の管理内容軽いみたいだな! 中学生達は安堵していた。

問題が出てきたら上級生の権限で禁止というのは、どれくらいのレベルで問題扱いされるかは分からないが、少なくとも伊川先輩は魚を捌いて料理するのを許可されたと言う事だ。

当然の話だが、厳しく管理があっても薬師高校を選ぶ生徒は多くても、当然優しい上級生がいる方がありがたいだろう。

 

そして北瀬先輩が話している、打率9割超えの伊川さんが作る料理か、気になるな……そんな空気を察知したのかしてないのか。

北瀬もソワソワし始めたのを見て、推薦入学者の1人である由井薫が質問した。

 

 

「そんなに、料理が美味しいんですか?」

 

「ああ、下手な外食より美味しいと思うんで……

あっ、レンコンチップス作り置きあるって言ってたから、摘みたい人は摘んでいいですよ! のり塩、コンソメ、カレー味の3種類あるから選んでください!」

 

『えっ……? いただきます……』

 

北瀬の意外な一言を聞いた中学生達は、本人に無断で摘んで良いのかなと思いながら、勧められるがまま一枚貰った。

食べたかったら入部したらと言い、けど先輩の手料理なんて殆ど食べられないオチだろうと思っていた彼らだが、早速貰って良いらしい。

本当に美味しいのかなと考えている殆どの中学生が、レンコンチップスを食べた事がない。何だコレはと思いながら、とても薄いソレを、パリッと食べる。

 

 

「サクサクですね!」

「うわ……うま」

「野菜なのに美味しいですね……!」

 

うわウマ! 手順を1つも飛ばさない伊川が、水にさらして水気を取り、スライサーでスライスしたそれはパリパリしていてとても美味しい。

ポテチみたいな感じだが、揚げたてなのかパリッパリでレンコンの風味と味付けが程よくマッチしていて、コンビニで売っていたらぜひ買いたい代物である。

 

 

「よし……皆食べ終わったから、次は図書室に行こう!」

『はい!』

 

うまっ、この先輩良い人だな! 単純な人間はそう思っていたが、真面目だったり先の事を考えられる人間は、コレは本当に大丈夫なのかと心配していた。

大丈夫だ。伊川は常識がズレていて危険行為もするが、基本的に寛容な人種である。

 

というか、ヤバい奴に慣れすぎていて悪意がなければ大概の事はそんなミスもあるよな、仕方ないと言って許してくれる。

特に北瀬のした身勝手な行為なら、相当マズい事をしても全部許してくれるだろう。よって下級生に後々文句がつけられる可能性は0だ。

 

 

 

 

「ここが図書室です! マンガなどの書籍を持ってきて、共用利用する事も可能になります! でも基本的には伊川か平畠先輩が勉強に使用しているだけです!」

『そうなんですか……』

 

中学生達は、この部屋はいるのだろうかと思いながら何とか返事を返した。

実際、野球部に必要かは怪しい部屋であった。早い段階で談話室の様に使われる様になるこの部屋は、理事長の説明ミスによって作られたに近い物である。

理事長は忙しい人間なので、野球部の寮に大金は掛けても時間は掛けられなかったのだ。

 

 

……

 

「ここが監督室です! 細かい問題なら上級生に相談して欲しいですが、大きい問題の場合はここにいる可能性が高い轟監督か片岡コーチに相談してください!」

『ハイ!』

 

ここは普通の監督室。新しい建物なのでピカピカだが、それ位しか特質するべき所がない。

1年生達も元気よく返事を返した……実は、監督達は監督室の中まで案内しろとは言っていないのだが、ちゃんと説明していない彼らが悪いと思われる。

 

……

 

「ここが筋トレ室です! 見れば分かると思いますが、筋トレをする部屋です! 誰でも使えますが、沢山使いたい人がいる場合は譲り合って使用してください!」

「利用する場合の注意事項はありませんか?」

 

この先輩は怖くないと判断したのか、普通の中学生がルールを質問していた。

その発言を聞いて、北瀬は器具の使い方を説明しろと言う事かと悩み、詳しくないんだよなぁと困っていた。

勿論そういう意味ではない。上級生を優先しろとか、3軍は使うなといった暗黙の了解の話を聞いているのである。

 

 

「確かに……えっと、自分の出来る負荷でやってください! 俺とか伊川の真似をすると危ないです。筋トレ道具の上でご飯を食べないでください! 拭くのが大変でした

 

使い方が分からない場合は人に聞いてください! 自己判断で間違えた動きは危ないらしいです

 

……あ、これを忘れる所でした! 監督が苛つく事を言ってもここで掴みかからないでください。危ないです……これで大丈夫ですか?」

 

 

北瀬の話を聞いていて、マジで北瀬先輩は寮のルールを知らないというか、まずルールが大して決まってないんだなと察した中学生は、分からない事も多かったが話を切り上げようとしていた。

というか、監督に掴みかかった奴がいたという事だろうな。

いや、理屈は分かったぞ……! 轟監督の息子である、クリーンナップの轟雷市先輩がやったんだな。

そんなめちゃくちゃな事を俺達がしたら大変な事になる、当然するはずが無い、そう考えながら下級生はしっかり返事をした。

 

「大丈夫です、ありがとうございます!」

 

……

 

「ここがグラウンドです! 甲子園ベスト4に入った時に、理事長が綺麗にしてくれました!

……用具のしまい方とかで分からない事があったら、平畠先輩か伊川か片岡コーチに聞いてください!」

 

『ハイ!』

 

何で平畠先輩か伊川先輩なんだと疑問を抱きながら、とりあえず中学生達は返事をした。

ちなみに理由は、細かい事を言われても他の部員では分からないからである。

 

しまい方なんて何となくで良いのに聞いてくると言う事は、その部員は綺麗に仕舞いたいんだろう。その場合、俺達では対応出来ない。

そういった面も下級生は説明して欲しいだろうが、北瀬は気付かない。彼は、これで説明ヨシ! といった顔をしていた。

 

……

 

「ここが雨天練習場です、バットを振ったりピッチングをしたり出来ます!

……ですが! 雨の日は基本的に筋トレ室に籠もっている為、あまり使う事がありません!」

 

『なるほど……?』

 

新入生が来てからは、雨になると筋トレ室がパンクしかねない為ここも使う事になる。

だが今の所全員で行動しようという方針により、あまりここを使わない北瀬は、この練習場を要らない物扱いしていた。

 

適当な扱いをしているけど、この場所は必要じゃないか?

そう疑問に思っている中学生達だが、本気で要らないと考えていそうな上級生に聞いた所で有益な答えは返って来ないだろう。そう考えたのか、ボンヤリとした返事を返していた。

 

……

 

「ここが学校です! 妙に空き教室が多いのは、新入生を沢山入れる為に片付けたからです。学校紹介の場面ではなく部活紹介の場面なので、適当に切り上げます! ……ごめんなさい」

 

……

 

「ここが学校内の筋トレ室です! 寮の筋トレ室が出来る前に作られた物なので、ここは使用している人はいません

カギが付いていますが使わないので、ドアだけ閉めておいて開けっ放しで良いです!」

 

この部屋は、学校にいる間に少しでも強くなりたい筋トレマニア気味な下級生から絶大な支持を得るのだが、この時の北瀬はそれを知らない。

この部屋は実質ゴミ扱いしながら、適当に説明していた。

 

……

 

「これで説明は終わります

……あ、この説明を忘れてました! 夜の11時には寝てください! 絶対寝てください!! 毎日2時間しか寝ていなかった馬鹿がいますが、絶対に真似しないでください!」

 

『……ありがとうございました!』

 

2時間しか寝ていなかった馬鹿ってどんな超人だよと考えながら、それ自体はどうでも良い事なのでスルーして元気に返事をする中学生達。

彼らは、北瀬先輩が説明下手って割と本当なんだな。でも聞いたらしっかり答えようとしてくれてる良い先輩だ、抜けた所はあるけど、この先輩の所属だと良いなと考えていた。

ちなみにだが、人が良い薬師野球部なので、他の部員が対応した所でも大多数の中学生がそう感じていた。

おかしな所は沢山あるが、凄く生活しやすいクリーンな野球部である。

 

 

ちなみに北瀬は、大人数に大きな声で説明した事で少しぐったりしていた。

薬師高校は適当なので、今の所大声で応援しろなどと言われないのである。

多分、下級生が沢山入ってきてから指示を出す時に大声が必要になる為、しばらく一部の部員は苦労すると思われる。

 

 

 

 

 

 

 

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