【完結済】気付いたらパワプロで適当に育てた選手に転生してた話   作:いちごケーキ

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45球目 自己推薦枠

 

 

 

 

 

2月中旬、春の甲子園まで残り1ヶ月となる中、轟監督がジャージを着た謎の中学生らしき人物を連れてきた。

誰だろうと部員達が困惑している中、真田キャプテンが話しかけた。

 

 

「あれ、太平くんじゃん。何でここに……?」

「俊平くん……いや、キャプテン! 俺、自己推薦枠で薬師高校に入学出来たんですよ。もう入学が決まったんで、見学させて貰おうと思って来ました!」

 

そんな制度あったか? そう疑問に感じている部員達。

片岡コーチもそう感じたらしく、彼を連れて来た轟監督に質問していた。

 

 

「轟監督……これは、どういう事ですか」

「あー片岡コーチ。彼は夏の甲子園の前から、熱烈に薬師高校を希望していたらしくてですね……

 

学園祭とかに全部通って理事長に気に入られたらしく、1人だけ自己推薦枠で入学出来る事になったんですよ

そういう枠今まで無かったらしいんですが、急に偏差値が上がっちゃって入れなくなったら可哀想だと思ったらしく……

 

それで太平は入学が内定してるんで、どうせなら練習に参加……じゃなかった、体験マネージャーとして来ても良いよって言ったんですよ」

 

部員達はその言葉を聞き、ヒソヒソと話し始めた。

適当な薬師部員達ですら、それはマズいんじゃないかと疑っているようである。

実際、これはアウトに近い。高等学校新入生徒の野球部入部および練習参加に関する規定に記載されている、練習参加解禁日は3月25日。

今は2月なので、明らかに前倒しにしてしまっている。

 

 

「……それ、アリなの?」

「分からん」

「それなら、推薦枠の後輩も呼ばなきゃダメじゃね?」

 

実際の所、部員達は練習参加に関する規定なんて知らないが、1人だけ許すのは不公平じゃないかと感じていた様だ。

公平さが足りなくないか、といった話をしだす部員達に、轟監督はニヤッと笑って話し始めた。

 

 

「それは違うな。早く部活に参加……じゃなかった、マネージャーみたいに来させてくれって、俺に交渉してきたのは太平だけだった

別に真田のイトコだから優遇したんじゃなくて、ルールスレスレを狙いたい奴が太平しか居なかった訳!

 

大体、現実ってのは動いた奴が得するシステムなんだ!」

 

『はぁ……』

 

現実は動いたら得をするんだという轟監督の持論を聞き、そうかな? そうかも……と、あやふやに納得した部員達。

その反応を見て、轟監督はたたみ掛けるように話し出す。

 

 

「早くからの部活参加は禁止されてるから、太平はボランティアのマネージャーとして参加してるだけ

俺らの隣でバット振ってたりするけど、マネージャーがお遊びでやってるだけだから、そこの所ヨロシク! ……当然、1人でも出来る事以外はさせちゃダメだぞ」

 

「良いんすかね、それ……」

「そんなルール有るなら辞めたほうが良いんじゃ……」

「誰も漏らさなきゃバレないか……?」

「いっそ来たい中学生全員入れてあげたら?」

「いや、来ていいよって言ったら困る奴もいそうだし……県外から入学する人とか」

 

ヒソヒソと相談している薬師部員達。だが太平にはバレバレである。

そんな彼らを見ながら、彼は瞳を輝かせてこう言った。

 

 

「俺、先輩方の野球に凄く憧れてて……! 参加させて貰えて嬉しいです!」

 

俺達ってセンバツ決まってるのに大丈夫か?

太平がキラキラした目でそう言った瞬間、先輩の彼らの意見はコロリと変わった。

彼らはノリとテンションで生きていた。

 

実際、太平はガチで薬師高校の野球に憧れを持っている。

市大三高との戦いに、従兄弟の所属するチームが勝ったと聞いて驚愕。

俊平くんってガチで野球やってたの?! そう驚きながら薬師対青道との試合を見に行き、彼らの素晴らしいスイングに憧れを持ったのだ。

 

家が薬師高校と近かった事もあり、野球部の練習試合は毎回毎回見にきていて、薬師野球部を気に入って見に来ていた理事長とも意気投合。

急に偏差値が上がってしまって入学できないかもしれないと嘆く彼を、哀れに思った学園長が特例で自己推薦枠で入学させてしまったのである。

 

 

「そう? ありがと……!」

「マネージャーならOKでしょ」

「真田の従兄弟だけあって、素直で可愛い!」

「真田家って人に好かれやすいんだろうな……」

 

野球部の先輩方に、素直で可愛い後輩と一瞬で認識された真田太平。一部部員は、真田家の驚異的なコミュ力に恐れ慄いていた。

真田って大体人間関係で得してるよな……それに、雷市や北瀬と伊川にも1番好かれてるし……人たらし一家ヤベー!

そう思いつつ真田と中の良い彼ら。やはり真田家はポテンシャルが高い。

 

なんとなく太平歓迎ムードになってきた彼らを見ながら、片岡コーチは苦言を呈していた。

 

 

「轟監督。今回は既に許可してしまった様なので、見逃しますが___監督の軽卒な判断が、薬師高校の総意になります。今後は許可しない様にお願いします」

「ういっす……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真田先輩の従兄弟が来るようになってから少し経ち、部員達が彼に慣れてきた頃。

ジャージを着た謎の少年が現れ、元気よく挨拶をしだした。

 

 

「こんにちは! 体験練習に来た、火神大我だ!」

『……はぁ?!』

 

 

いや、お前誰だよ。監督がまた安請け合いしたのか? 部員達は困惑していた。

監督の顔を伺ってみると、明らかに驚愕している。マジで無断で来たのかコイツ……そう気付いた部員達は珍妙な動物を見るような目付きで彼を見ていた。

 

というか、朝の7時にこんにちはっておかしいだろ。

それ以前に、断りもなくグラウンドに入って来たのによく堂々とできるよな。

それに初対面の先輩にくらい、敬語を使ってくれよ……

 

脳内でツッコミが停滞している彼らを見ながら、太平は彼に近付いて、部員達の総意を代表して質問した。

 

 

「いやいや、火神大我くんそりゃダメだろ! ……ちゃんと学校のアポは取ったのか?」

 

 

太平の言った、学校に来るなら許可を取れというのは明らかに正論。

だがマネージャーとして参加という、グレーゾーンを追求する様な事をしている太平が言える立場ではない。

 

けれどそんな事は綺麗さっぱり忘れている部員達は、大きく頷いて賛同していた。

彼らは、太平の事を既に部員だと判断しているのだ。かなりアホだと思われる。

 

 

「アポ……アポって何だ?」

「火神の所属している中学生かシニア、もしくは薬師高校の許可を取ったのかって意味だよ」

 

太平が火神に、日本の常識を分かりやすく教えてあげていた。体験練習に来る場合は、学校の許可を取らなければならないという話である。

まあ体験練習は既に終わっているので、許可が取れる訳がないのだが……

 

 

「そんなの必要なのか?! 薬師高校の体験練習って、誰でも参加できるって聞いたんだけど!」

 

誰から聞いたのか分からない、謎の常識を語る火神。

確かに薬師高校の体験練習は申し込めば全員参加出来たが、それは期限内に申し込んだ場合の話である。

 

 

「誰でも参加できるって言ってもなー。日にち決まってたし、ソレ終わってるし……」

「嘘だろ?! ……そこをなんとかしてくれさい! 俺、この部活入りたいけどベンキョーできなくて……パワーには自信あるから!!」

 

 

苦笑いしながら、太平は話し始めた。常識破りな奴だけど、酷い人間性をしている訳じゃないと感じたからである。

日にちを間違えて押しかける位、凄くバカなんだろうなぁ。頭が可哀想な人間なのかもしれない。

背丈もあるし、筋肉も凄い付いてるから、入学出来れば戦力になるかもしれないな。入学出来れば……そう考えていたのである。

 

「無理だよ、多分。悪いけど。だって、推薦枠もう全員埋まってるからな……」

 

彼らの話を聞いていた轟監督。何かを思いついた顔をしている……この顔を見た一部の部員は、何やら嫌な予感がしたようだ。

そして彼は、急にトンデモナイ事を言い出してしまった。

 

 

「いや……仕方ねぇ。特別に入部テストしてやる!」

『はぁ?!』

 

轟監督は入学テストの実施を宣言し、部員達の度肝を抜いた。

なんか勝手に学校に来て入部したいって言った奴を、マジで入学させる気なんですか?!

でも……この監督は、やると言ったらマジでやる。部員達はどうなる事やらと頭を抱えていた。

 

監督も一応、思い付きで言ったという程適当ではない、

火神大我は身長190cmに加え、実用的な素晴らしい筋肉が付いていた。

それを見た監督は、性格も案外マトモっぽいし、現段階で実力があった場合は推薦枠にねじ込んでしまおうと考えたのである。

……ちなみに推薦枠は限度一杯使っているので、ねじ込むとしたら理事長に土下座嘆願するしかない。

 

 

「入学したいなら、2番手ピッチャーの真田のボールを1打席で打ってみせろ……スリーストライクまでにヒットを打てば、俺の権限で何とかしてやる!」

 

 

 

薬師高校という、一応甲子園ベスト4のチームが俺達だ。

その成果に相応しい先発の、上級生の真田先輩のボールを打ったら合格って、実質ムリでしょ。部員達は困惑した後、急に納得した。

 

……なるほど、諦めさせる為の試験だな? そう考えた彼らはホッとして、一応勝負を最後まで見届けるかというムードになる。

 

だが、火神はその空気に気付かず、キラキラした瞳をしながらニカッと笑った。

 

 

「マジで?! 言って良かったー! ありがとう、クルマ監督!」

「いや、轟監督だからな? ……まあ良いや、早く準備しろ。こっちは何分も待つ程ヒマじゃねーぞ」

「うお、分かった! ます!」

 

 

……

 

 

ピッチャーの真田キャプテンと急造キャッチャーの秋葉が定位置に付き、勝負を開始しようとする。

真田先輩は火神の為もあり、わざわざ宣言してから投球を開始しようとしている。

中学生相手に不意打ちかましちゃったらダサ過ぎる。

 

___パワーに自信があるんだろ?

じゃあ2番手ピッチャーの俺のボール位、打ってみろよ。無理矢理入学したいなら、それ位のセンスを見せてみろ!

 

自信があるんだか無いんだか微妙なモノローグを脳内で流しながら、真田先輩は全力で投げた。

彼は、甲子園ベスト4の薬師高校キャプテンである誇りもあるが、1年生5人に負け続けている事により自身の才能に見切りを付けかけている内面もある、微妙なプライドの持ち主だ。

 

 

「じゃあ、行くぞ!」

「おう!」

 

 

___カッキーン!

 

結果は、グラウンドの柵を通り越して校舎まで飛んでいく盛大なホームラン。真田達はあ然としている。

 

よく知らない謎の不真面目(?)中学生から、甲子園に出場しているチームのキャプテンが盛大なホームランを打たれたのだ。混乱だってするだろう。

 

 

「うわぁ……この状況、前にも有ったわ……」

 

完全にホームランを打たれた真田。悔しがりつつも、彼は笑顔を浮かべていた。

 

そして、雷市や北瀬との出会いを思い出したキャプテン。

半年前位もこんな感じの事あったよなー、一流の奴ってマジでスゲェ。俺なんかのボールなんて、サクッとホームラン打っちゃうんだからさ。

……俺も、彼らと肩を並べられる位、もっと強くならなきゃな。

 

そう考えながら、真田キャプテンは火神大我に握手を求めた。

 

 

「お前スゲェな……完敗だわ! 俺がキャプテンの真田俊平、4月からよろしくな!」

 

火神も手を握り返し、好青年だと分かるニカッとした笑顔で挨拶を返した。

 

 

「お前のボールも凄かった! 真田だっけ……4月からよろしくな!」

 

なんとなく、良い感じの雰囲気が流れ出している。

薬師高校の部員達も、また天才が来ちゃったよと思いながら、新たな新入生を歓迎していた。

 

 

「火神大我。お前の実力は、薬師野球部入学に相応しい

___だが、上級生には敬語を使え。後輩として正しい態度を心がけろ」

「うん! 悪いな! 気をつける……です!」

 

片岡コーチの注意を聞き、火神はヘンテコな敬語で何とか話していた……今は判明していないが、彼は帰国子女で日本語に不慣れな為、敬語が使えないのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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  • パワプロ・パワプロ君・ラッキー入学?
  • 黒子のバスケ・火神・帰国子女の天才
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