【完結済】気付いたらパワプロで適当に育てた選手に転生してた話   作:いちごケーキ

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49球目 耐久力

 

 

 

 

1回裏、薬師高校の攻撃は1番秋葉。

だから応援するべきなのは秋葉の筈なのだが、場内は北瀬コールに包まれていた。

 

 

『北瀬!! 北瀬!!』

『北瀬!! 北瀬!!』

 

163kmがそれだけ衝撃的だったのだろう……その重い球で主砲をノックアウトされた、青森安良の部員達は渋い顔をしていた。

 

 

 

一方薬師高校は、この歓声を喜ぶ人と気にしない人の2択に分かれていた。

 

「北瀬コールが凄まじいな……」

「秋葉ー! 一本打てよー!!」

「流石俺達のエース、格好いいな……!」

「俺の番になったら三島コールしてくれねぇかな」

「それは無理じゃないか……?」

 

 

___カキン!

 

くだらない事を部員達が話している間に、秋葉はツーベースを放つ。そして打席にはこの男。今大会打率10割の伊川である。

1球2球とボールゾーンに投げてきた相手バッテリーを見ながら、伊川はこう考えていた。

 

あー、これ敬遠する系か。良くある事だよな。なぜか薬師高校野球部としてはやらないけど、ある程度の成果は出そうだよなぁ……俺達もやれば良いのに。

 

伊川はぼーっとしながらくだらない事を考えながら打席に立っていた。

それでも打てるから、彼の脱力した顔は掲示板ではなんらかの精神統一だと誤解されている。

 

 

 

そしてスリーボールノーストライク、これは絶対フォアボールになるだろうと考えられていたが……森安良エースの舞元は、アウトコースに失投をしてしまった!

 

 

___カキーン!

 

伊川はあっさりホームランを打った。

どうせ北瀬や雷市が返してくれるだろうと考え、伊川はホームランを打とうとは考えていなかった。

だが、薬師高校クリーンナップに投げるには余りにも甘過ぎるボールが来たので、咄嗟に打ち切ってしまったのである。

 

(あーホームランか、打つ気は無かったんだけど……まあ良いや。2点入ったし)

 

やる気のない顔を続けながら、伊川はグラウンドを小走りで一周した。

甲子園でホームランを打ったにも拘らず、特別感を感じていないのが観客達に丸わかりな程、面倒くさいジョギングの様に走っていた。

 

 

「良いぞ伊川ー!」

「ナイスホームラン!」

「3連続ホームラン狙えよー!」

「俺も打つから4連続だ!」

「相手ピッチャー、何回降板するかな?!」

 

だが観客達も、薬師のベンチも大きく盛り上がっていた。

当然だ。ホームランで盛り上がらなければ、何の為に試合を見に来ているのか分からない。

いやその場合、北瀬の163kmを見に来ているのかもしれないが、細かい理屈は置いておいて良いだろう。

 

 

 

 

 

次の打順は、3番北瀬。

ボルテージを上げている会場の雰囲気と違い、北瀬は明らかに動揺していた。

 

 

「行けー北瀬ー!!」

「薬師高校の打撃を見せてくれー!」

「163kmホームランバッター! お前は最高だー!!」

「日本の救世主ー!!」

 

「…………」

 

だが伊川のホームランに注目していた薬師部員達は、熱気に当てられた観客達は気付かない。

そもそも、相手がカット打ちという若干卑怯な事をして自爆しただけという認識だから、北瀬が責任を感じていると気付かなかったのだ。

 

 

___バシッ!

 

「……ストライク!」

 

 

___バンッ!

 

「ボール!」

 

 

___バシッッ!

 

「ストライク!」

 

 

 

 

北瀬は、簡単にツーストライクに追い込まれた。というか、振る素振りを見せない。

 

俺は、失敗をしてしまった。

まさかボールを全力で投げただけで、バッターが怪我をするとは思わなかったんだ。

不良相手なら兎も角、スポーツを真剣にやっている人を怪我させてしまうのは、絶対に駄目だ。

こんな事をしておいて、よく伊川にフェアプレーとか言えたよなぁ……

 

 

甲子園に重きをおいていない北瀬は、自責の念に駆られたまま動けない。

 

 

___バンッ!

 

「ストライク! バッターアウト!!」

 

 

「切り替えていけー!」

「そんな事もあるでー!」

「北瀬、なんか打つ気が無かったな……」

「さっき相手が怪我したからか?」

「惜しいぞ北瀬ー!」

 

先程の163kmのインパクトからか、全く動こうともしなかった北瀬に、観客達は温かい声援を送っていた。

 

 

 

 

 

 

 

だが薬師高校のメンバー達は、北瀬の不調に気付いていた。

 

今まで、北瀬がメンタルで打撃不振になった事は無かった。だけど今回は、気付けば絶不調に陥ってしまったのは何故だろう?

そう部員達は考えていたが、そのうち理由は分かった。

……ああ成る程。青森安良の人が、打とうとして怪我してしまったからだな。

 

そんなに酷い怪我だったっけな? 

実は薬師部員達は、青森安良主砲の怪我の具合が分かっていなかった。

スコアボードに乗ってた、北瀬の163kmしか目に見えてなかったから覚えてないのである。

 

酷い怪我だったのだとしたら、気持ちは分からないでもない。

外野から見てると、カット打ちをした末の自業自得な気もするけど……俺だって相手に怪我させたら動揺するしな……

優しい部員達は、北瀬が打とうとすらしなかった事を脳内ですら責めなかった。

 

それでも、エースでクリーンナップの北瀬が不調のままでは困る。どうやって立ち直らせれば良いんだろうか。

 

 

 

「北瀬、考え過ぎるなよ」

「……そりゃ、試合中だもんな。悪い」

 

北瀬はふと、今は全国規模の大会の最中だと思い出した。

不安と申し訳なさが滲み出ている顔をしながら、無理に笑顔を作って、わざと適当に謝った。

俺は身体に不調を抱えていないし、精神面に問題もない。だから安心してほしい、一応エースの俺はまだ行ける。

そんな事を考えながら、北瀬はなんとか返事を返した。

 

だが、伊川が言いたいのは試合内容ではない。口にしたいのは、北瀬を安心させる言葉だ。

……そもそも伊川は野球に大して関心がないので、勝敗云々はどうでも良かった。

ただ彼は、苦しんでいそうな北瀬を心配しているだけである。

 

 

「あれは相手の自業自得だ

……観客達だって相手の4番にヤジ飛ばしてただろ? 詳しい事は良く分からないけど、多分グレーゾーンのプレーだったんだろうな。ソレで怪我をしたなら、相手が100悪い」

 

伊川の言葉に、かなり納得した北瀬。

確かに、相手打者は嫌そうな顔をしていた気がする。もしかしたら、卑怯じみた作戦を遂行するのがいやだったのかもしれない。

 

それに、そもそも人間がボールをバットで打った如きで、骨折までする筈がない。

多分元から4番さんは虚弱体質だったんだろうな。たまたま俺のボールが原因で折れただけで、元々どこかの怪我していたんだろう。

……じゃあ、俺のせいじゃないかな。怪我を隠して試合に出た、青森安良の4番が大体悪い。

 

 

 

北瀬の考察は、全く持って的外れだった。

青森安良の4番は元々怪我なんてしていなかったし、身体が特別弱い訳でもない。

そして、普通はカット打ちしただけで骨折するとは思わない。

正々堂々ルールに則った動きをしてる以上、北瀬が悪い訳ではないが。青森安良4番の怪我の9割は、彼に原因がある。

 

北瀬達は、自分のヤバいポテンシャルを自覚した方が良い気もする。そして北瀬は、伊川の悪い方向にズレた感覚を信用し過ぎない方が良い。

 

 

ちなみに後続は、雷市はツーベースヒットを打つも、5番三島と6番真田が連続で討ち取られ攻守交代。

ド派手な攻撃だったが、結局2点しか取れずに1点差にしかならなかった。

 

 

 

 

 

 

 

2回表、青森安良の攻撃は5番蕪木。

主砲と同じで、彼もカット打ちが得意な選手である。まあ1回表で主砲の手首損傷を見ているから、同じくカット打ちをしようとはしなかったが……

 

(ど真ん中来い、ど真ん中来い……!)

 

そう考えていた蕪木。運良くと言っていいのか、薬師高校キャッチャーの実力故か? 本当にど真ん中にボールが飛んできた。

 

 

___ガギーン!

 

まぐれ当たりに成功した蕪木だが、160km台のストレートに完璧に標準を合わせる事は出来ず、鈍い音が場内に響いた。

明らかに打球に伸びがなく、ゆっくりと落ちていくボール。普通の守備なら100%アウトである。

 

(来い来い来い、エラー来てくれ!)

 

だが、薬師の守備陣なら可能性はある。

バッターは内心、本気でエラーを起こしてくれると信じている訳ではないが、運良くエラーを起こしてくれるコトを祈りつつ全力で1塁まで駆けていった。

 

 

___ポトッ

 

「やべっ、どこいった?!」

 

そしてライト兼ピッチャーの真田が、ボールを落とした上で見失ってしまった。

……コレが薬師高校のファイアーフォーメーション。どんな打球でも、三振を取らなければエラーで1点取られてしまうかもしれないのである。

そんなこんなで、バッターの蕪木は3塁を回って本塁へ帰還。

 

戦っている青森安良のベンチメンバーが憐れんでしまう位、余りにも酷い守備陣だが、あくまで北瀬は笑顔のままである。

 

 

「ドンマイです、真田先輩!」

「悪りぃな、次はちゃんと取るわ!」

 

ニコニコの笑顔で、ランニングホームランをキメられた真田を慰める北瀬。

そもそもミスをした真田も本気で落ち込んではいないので適当に言っているが、もし部員の誰かが暗い雰囲気になっていたら真剣に慰めていただろう。

北瀬はそれ位野手陣に甘く、三振を取れなかった自分の責任だと本気で思い込んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

お笑い守備を披露しまくっている、薬師高校の惨状を見ながらベンチで休憩している、青森安良のエース舞元。

見ている所、薬師高校は何をしても本気で怒ったりしない。せいぜい軽い野次を飛ばしてからかう位だ。

だから、薬師高校の野手陣は反省しない。優秀なピッチャーに全ての責任を被せ、ヘラヘラ笑って見ているだけである。

 

エース北瀬は、あれだけ素晴らしい選手なのに、全員で足を引っ張り続けている。

まあキャプテンの真田などは、ピッチャーが本職だという言い訳は出来なくもないが。それにしても、少し位部員達を叱ったら良いではないか。

 

この惨状で1言も怒らない北瀬は、本当に人が出来ている。

俺なら100遍ぶん殴っても足りないが、彼は全く怒っていない。本気で赦そうとしているのだ。

……もしかして、北瀬は聖人の生まれ変わりではないだろうか?

 

 

怒りっぽい舞元は、何をやらかしても笑って赦す北瀬の内心が分からない。だから、半ば本気で北瀬の事を聖人認定していた。

実際の所北瀬が有り得ない位優しいというよりは、本気で怒る程野球に熱心ではないというのが正しいのだが、それに舞元は気付かない。

 

 

……

 

 

8回表、脅威のスタミナを持つ舞元の影響もあり、7対6と非常にロースコアゲームになっていた。

薬師高校が少しだけ勝っているが、この点差ではいつひっくり返るか分からない。

 

 

ツーアウトランナー2塁で、打順は9番舞元。

無念の離脱をした主砲真貝のバットを手に取り、脳内でこう呟いた。

 

(真貝の事は全く好きじゃないけど、アレは悔しいやろな……俺が仇を取ってやる)

 

このピッチャーは性格が悪いが、骨まで折れたにも拘らず観客達からガン無視された真貝に憐れみを抱いたようだ。

そういう感情を真貝の前で出せば、もう少し仲が改善していた気がするが……

後ついでに、真貝の執念がバットに取り憑いて打てたりはしないかなと考えていた。迷信深い性格をしている。

 

 

 

簡単にツーストライクと追い込み、北瀬-伊川バッテリーが選んだのは全力ストレート。

 

打たれる訳がないという程強くもないけど、これを打たれたら仕方ない。

そういった気持ちで、北瀬は全力でインコースに投げ込んだ。

 

ボールは思い描いた軌道を描き、バッターの胸元へ飛んでいく。

 

 

___バキッ

 

腕を振った瞬間まぐれ当たりが出たが、金属バットが耐えられず根本で折れ、ピッチャーに飛んでいった!

 

 

「?! ……いってて」

「北瀬ー、ダイジョウブか?」

 

「嘘だろ??!」

「ヒィッッ!!」

「今顔面に当たらなかったか?!」

「ヤバいヤバい!!」

「バット作った会社何処だよ?!」

 

根本だけ折れたバットを、もろに顔面で食らった北瀬。痛そうにしている。

観客達は大きな悲鳴を上げ、北瀬の事を不安そうに見ていた。

流石に理性が働いていたのか、今折れたバットを使用していた舞元に非難が殺到しなかったのは良かった事だろう。

 

 

「北瀬! 大丈夫か?!」

「北瀬、しっかりしろ!!」

「涼、今冷やすの持ってくるから!」

「真田は今すぐ肩を作れ!」

「……分かりました」

「俺冷やすの用意しときます!」

 

だが、それを見ていた伊川だけは心配していない。この程度で、北瀬が大怪我をするとは思っていないのだ。

折れたバットが顔面に直撃とは言っても、威力は不良がバットを使って殴った時より弱い。

これ位なら、俺達は何回も経験したから大丈夫。

伊川は経験則から、北瀬の無事を確信していた。

 

 

 

「そんな心配しなくても。別に俺、特に問題ないっすよ?」

 

北瀬は、なんともないのに本気で心配してくれる仲間達にちょっと照れながら、身体はなんともない事を伝えた。

だが轟監督や片岡コーチ達は、心配そうで苦々しそうな顔をしながら交代を告げた。

 

 

「今はなんともないかもしれないが、後でどうなるか分からない。真田に交代だ」

「……まあ真田先輩にマウンドを譲るなら、仕方ないですけど……」

 

甲子園で投げ続けたい。でも真田先輩の事は信頼しているから、仕方ない。真田先輩も投げたいだろうし。

そういった顔をしている北瀬に、片岡監督はこう言葉をかけた。

 

 

「病院に行って、検査をする事が先決だ

___明日からも、エースとしてこの場に立ちたいのであれば」

 

「はい、分かりました……」

 

なんともないのに、皆大げさな対応するなぁ。試合に出れないのは残念だけど、仲間が心配してくれるのは嬉しいな。

 

そんな表情を隠さず、北瀬は仲間達にこう告げた。

 

 

「俺は今日、試合に出れないと思います

ベンチで楽しく見てるんで、ホームラン10本以上お願いします!」

 

「……任せとけ!」

「バンバン打ってやる!」

「打順一周しないとな!」

「どれだけホームラン見たいんだよっ」

 

なんとかテンションを回復させた薬師高校。

最後の攻撃で、10本のホームランを打つ事を誓った。

 

 

 

8回裏、薬師高校の攻撃は3番代打山内。

薬師高校の人数不足が祟り、外野で離脱者が出たらまずはこの人だと確定している。

典型的なパワーヒッターでホームランを打つのが得意だが、守備はかなり荒い。ザルと言う事だ。

 

 

 

そんな情報を思い出しながら、青森安良のエースが腕を振りかぶった!

 

 

___カッキーン!

 

「うっしゃあ1本目!!」

 

「ナイス山内ー!」

「ホームランはカッコいいぞー!」

「次は雷市だ! 行けるぞ!!」

「後9本!!」

 

薬師高校のテンションは一気に最大近くまで上がった。

ホームランはやっぱり格好いいな! これなら北瀬の言ってた10本行けるかもしれない!

 

 

 

 

一方、青森安良のエースは、明らかに暗い顔をしていた。

キャッチャーが慌ててタイムをとり、青森安良スタメンの全員がマウンドにやってくる。

 

 

「おい舞元! 普段の見下してくる顔はどうした!」

「舞元さん、大丈夫っすか」

「薬師相手に単発ホームランは仕方ないぞ!」

「ピッチャー交代したいか?!」

 

薬師打線相手に8回まで投げ続け、肉体が悲鳴を上げている所で相手エースにバットを直撃させ、次の回で控え相手にホームランまで打たれてしまったのだ。

完全に心が折れた訳でもないが、それに近い状態となってしまっていた。

 

 

 

「レフト尾田くんに代わりまして、ピッチャー弥吉くん。ピッチャー弥吉くんです」

 

弥吉は、けして悪いピッチャーではない。だが、エースと比べると1枚劣る。

そんなピッチャーを、超重量打線相手に出すとどうなるか……大分マズい事になる。

 

 

___カキーン!

 

___カキーン!

 

___カキーン!

 

___カキン!

 

___カキン!

 

___カキン!

 

___カキーン!

 

 

「薬師スゲェー!!」

「これを見に来たんだよ!」

「今日何人ピッチャー逝くかな?!」

「8回までは良い勝負してたのに……」

 

ホームランを3回で7点入れられた辺りで、青森安良は絶不調のエースに交代してきたが、結果は変わらなかった。

 

 

___カキン!

 

___カキン!

 

___カッキーン!

 

___カキーン!

 

___カキーン!

 

___ガキ!

 

___カキン!

 

___カキン!

 

 

……

 

 

___カキーン

 

___カキン!

 

___ガギ

 

 

「薬師最高! コレを見に来てたんだよ!!」

「ホームラン! ホームラン!」

「明日も160km見せてくれー!」

「明日は厳しいだろ……」

 

 

8回裏で16点も入り、明らかに薬師圧勝ムード。

なんで俺が抜けた瞬間、楽しそうなホームラン祭りをしてるんだろう。真田先輩達楽しそうだから良いけどさ!

そう考えながら北瀬は楽しげに、安静な姿勢を保って試合を眺めていた。

彼は試合に出ても問題ない怪我だとは思っているが、皆の意見に逆らえなかったのだ。

 

 

……

 

 

「23対7で、薬師高校の勝ち! 礼!!」

『ありがとうございました!!』

 

挨拶をした後、北瀬は青森安良のエースから話しかけられた。真剣な顔をして口を開く舞元に、思わず少したじろいた北瀬。

青森安良の主砲を怪我させた事怒ってないかな、怒ってても仕方ないけど……

 

 

「おい北瀬、怪我させて悪かったな……バットの点検が甘かったわ」

「いえ、青森安良の主砲さんに怪我させたんで……」

「アレは卑怯な真貝が悪いんや! 俺は正々堂々戦うのが好きやさかい、カット打ちなんて気に食わんわ」

 

青森安良の内部が揉めていそうな事を察知した北瀬。苦笑いをしながら、相手エースの舞元と話している。

 

「前半の舞元さんとの勝負、楽しかったです」

「おお、こっちももっとスタミナ付けてくるわ。楽しみにしとるんやな

……そうや、メアド交換したないか? 俺らはどうせ、U-18で呼ばれるやろ」

 

その言葉に、You18という大会があるのだと勘違いした北瀬は、何となくメアドを交換する事にした。

 

「交換します! 後、そんな大会があるんですね……」

「いやU-18知らんのかい!!」

 

 

 

 

 

甲子園3回戦が終わった後、薬師部員総出で病院に駆け込んだ。

顔面に思いっきりバットが直撃した北瀬の事を、凄く心配していたのだ。

別に部員達が付いてくる必要は無いのだが、どうせ気になって練習が手につかないだろうからと、轟監督と片岡コーチは許可を出したのだ。

 

医者は、軽い言葉で診療結果を告げた。

 

 

「軽くバットがカスっただけでしょうね。もしくは威力が弱かったか。

オデコは少し赤くなってますけど……レントゲンで見る限り、脳に全く影響はありません」

 

『良かった……!』

 

部員達は一安心といった顔をしていた。

あれだけド派手にぶつけたから、本当に心配していたのだ。結果は全く問題なくて、俺達の心配し過ぎで良かったといった声が漏れていた。

 

だが轟監督は、安心した表情を全くしていなかった。

 

 

「いやいや、このビデオ見てくださいよ! 明らかにバット直撃してるんですけど?!」

「はぁ、どれどれ。エッ……??」

 

轟監督が見せた真田母が持ってきてくれたビデオを見る限り、勢いよく折れた金属バットが、明らかに北瀬の頭を直撃していた。

 

 

「いや、マジですかコレ……すみません、精密検査もう1回してみます……」

 

そんなに騒がなくてもと考えていた医者は、明らかに表情を変えて検査し直しを告げた。

だが何回検査をしても、軽くおでこをぶつけたかな位の結果しか出てこない。たんこぶすら出来てないのだ。

何時間も検査をされている、絶対に身体に異常がないと確信している北瀬は、流石に面倒くさそうな顔をしていた。

 

 

「だから大丈夫ですって言ったのに……」

 

どれだけ再検査を続けても全く問題ないという結果が出てしまい、医者や轟監督は、北瀬のあまりの頑丈さに困惑していた。

パワプロ産鉄人の頑丈さなんて、想定外で当然だろう。特に医者は、化け物を見るような目線を隠せていなかった。

 

 

 

 

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