【完結済】気付いたらパワプロで適当に育てた選手に転生してた話   作:いちごケーキ

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色々調べたのですが、形態が良く分からなかったのでなんとなくで決めた額になります。
読者様に指摘されたら訂正します。適当ですみません。


ダイヤのAⅡ
58球目 メジャーリーグ


 

 

 

 

 

春のセンバツ決勝戦が終わった直後、薬師高校の部員達はレポーターに囲まれていた。

色々な所から質問が飛んでくるので、真田キャプテンがフォローする事が間に合っていない。

 

 

「轟監督! 春の甲子園優勝についてのご感想をお願いします!」

「疲れがめっちゃ残る中、生徒達は良くやってくれました……! マジで感動してますよ……!」

 

「北瀬くん! 球速最高速度更新と一試合個人全打席HR記録、並びに1試合HR個人最多記録更新おめでとうございます!」

「ありがとうございます」

 

「雷市くん! 大会最多本塁打、北瀬くんと同時更新おめでとうございます!」

「カハハハ……アリガトウゴザイマス!」

 

「伊川くん! 今日の試合の感想を教えてください!」

「まさか1週間練習しただけで、佐藤が捕球出来る様になってたとは思ってませんでした」

「それ言っちゃダメな奴!!」

 

ちょっとした問題を起こしながら、母校に紫紺の大優勝旗を持ち堂々と帰還していく野球部とテニス部。

まるで夢を見ている様だと、夢見心地な心境のまま帰還して、疲れから直ぐに爆睡した。

 

 

 

 

 

 

 

 

甲子園が終わった次の日。家に帰ってもやる事がない北瀬と伊川は、1日だけ帰るのは面倒だからと寮に残っていた。

というか3人位は家に帰ったが、それ以外の部員は残っている。疲れすぎていて、わざわざ家まで動きたくなかったのだ。

明日から春季大会があるから、疲れを全力で癒やしたかったのもある。

 

北瀬と伊川は特に疲れていないが、当然今日の練習は禁止されているので、白Tにジーパンと日常生活なら無難な格好をしながら部屋でダラダラしていた。

 

 

 

 

 

北瀬が昨日の激戦を一方的に伊川に話している時、非常に慌てている監督から急に携帯に電話が掛かってきて、珍しく1人で来いと監督室に呼び出された。

 

 

 

慌てて監督室に向かうと、部屋のドアの前に監督とコーチが立って待っていた。

轟監督と片岡コーチは、珍しく緊張が隠せていない。それに監督が、そんな服を持っていたのかと疑問に思ってしまう様な、真面目そうなスーツ姿をしている。

実はそんな真面目なスーツを持っていなかった轟監督は、片岡コーチのスーツを借りて着ていた。体格的にそこまで問題なかったらしい。

 

 

 

何が起こるんだと混乱しながら、なぜか監督が開けてくれた監督室のドアに恐る恐る入る。

そこには、裕福そうな服を着た優しげな白人の男と、厳つくて背の高い白人の男がいた。

 

監督室の椅子に座るよう促がされ、普段は座る事に躊躇しない北瀬だが、白人2人の妙なオーラに押されて中々座れなかった。

 

 

「コンニチハ、私はマリナイズのスカウト、エディー・C・ヘンソンです。コチラは通訳兼護衛のニコラ・J・キャンベルです。ヨロシクネ」

「ニコラとお呼びください。北瀬さん、宜しくお願いします」

 

目を泳がせながら着席した北瀬。

マリナイズなんて知らねぇし、結局マジでどこの誰なんだよと内心思いつつ、北瀬は場の空気に流されて比較的真面目に返事をした。

 

 

「こんにちは。俺は北瀬涼です。宜しくお願いします……?」

 

何も分かっていないという顔をしている北瀬に対し、エディは優しく微笑んでこう語った。

そして通訳のニコラが、その言葉を翻訳している。

 

 

「単刀直入に言おう。北瀬をメジャーリーグのマリナイズにスカウトに来た。我々は、君の求める条件の多くを飲む準備がある」

 

北瀬はメジャーと聞き、まず有名漫画を連想した。

その後でめちゃくちゃ有名な場所のスカウトじゃねえか、何で俺なんかをスカウトするんだと困惑。

とりあえず、本当に自分が考えている地域にある有名な大会のスカウトなのかを質問する事にしたらしい。

 

 

「アメリカにある、日本野球より大きいという噂のある?」

「そうだよ。北瀬は、アメリカの野球にあまり詳しく無いみたいだね」

 

一見責められている様にも聞こえるが、マリナイズのスカウトを名乗っているエディの温和な雰囲気により、北瀬はそう思わなかった。

単純に詳しくないという事実を言っていると見て、問題なかったみたいだと、少しだけホッとしながら話していた。

 

 

「すみません。野球にもあまり詳しくなくて……」

 

ペコペコ謝る北瀬。

彼をみながら、日本人は謝りすぎだなぁ、メンタルは思っているよりも弱そうだと内心冷静に判断しながら、スカウトのエディはニッコリ話す。

 

 

「なるほど。圧倒的ポテンシャルで野球をやってきたという事だね?

……私達は、君の持つ圧倒的素質に敬意を示すつもりだ。最低でも1年20億円、複数年契約なら更に支払ってみせよう

北瀬の才能を、最高峰のリーグで活かしてみるつもりはないか?」

 

「??!」

 

考えた事もない言葉に、理解不能な金額を提示され、北瀬は完全に思考が停止していた。

メジャーって、あの有名な野球の聖地か? 甲子園より世界的に見たら有名だよな。

漫画のタイトルにもなっているアレに、俺なんかを誘っているのか?

それに20億って言ったら、人生の給料何回分だろう?? 意味が分からない。

 

話の壮大さに困惑している北瀬。

ちなみに、普通メジャーでは複数年契約の方が、基本価格は安くなる。

どうしても北瀬と複数年契約をしたかった彼らが、譲歩した様に見せて長期契約に持ち込む為の作戦だった。当然北瀬は気付いていない。

 

 

 

宇宙猫の様にキョトンとして明らかに不可解な事を聞いたという顔をした後、その言葉が持つ意味を何となく理解して、動揺で声を酷く震わせながら疑問を口にした。

 

 

「それは……ジンバブエ・ドルです?」

 

ジンバブエ・ドルとは、100ドルで0.5円の、殆ど価値がない貨幣の事である。

金額などに困惑した北瀬は、そういった契約で騙して海外に俺を連れて行く気だと早合点したのだ。

翻訳者はちゃんと20億円と口にしているのだが、衝撃的な言葉の羅列に動揺していた北瀬はそれに気付かなかった。

 

 

「いや、日本円で20億だ。説明が足りなかったね」

 

完全に混乱している北瀬は、轟監督を縋るように見つめた。嘘だよな、いっそ彼らが偽物だと言ってくれといった雰囲気である。

 

北瀬は、彼らの話は明らかに嘘だろうと思いつつ、スカウトのエディが持つ問答無用の説得力に内心ゴリ押されているのを自覚していた。

 

 

「轟監督……この人達って、本物ですか??」

「おいおいおい。本場のスカウトにこれ以上失礼な事言うなよ……? 本物だ。間違いない」

 

轟監督はダラダラと冷や汗をかきながら肯定した。

メジャーどころかプロにもなれなかった監督2年目の俺が、メジャーのスカウトと話すとか無謀にも程があるだろうと明らかにビビっていたのだ。

北瀬自身の変な発言で、折角纏まりそうなプレミアチケットが無くなってはならない。そう考え、慌ててフォローしたのである。

 

よく考えれば轟監督は、彼程の逸材がその程度の発言で前言撤回される事は無いと理解できただろう。

だが、余りにもメジャーのスカウトという言葉に飲まれていた彼は、スカウトの細かい言動に毎回感情を揺さぶられ続けていたのだ。

高校野球の教え子がメジャーのスカウトからオファーされるなど、殆どの監督が経験しない事だから、緊張し過ぎても仕方ないと言える。

 

 

「いいや、疑ってくれても結構だとも。騙され難い人間の方が、私達にとっても有難い

 

___それで君は、メジャーで野球をする事をどう思うかい?

どんな返答であれ、私達は君を待ち望んでいるんだ。言いたい事を言って良いさ」

 

「……一生掛かっても稼げない額を、本当にたった1年で頂けるなら、まあ……海外は怖いけど……

でも、俺は、伊川とまだ野球がしたいので、どうしようかとも……」

 

大金を提示された緊張でめちゃくちゃな文法になりながらも、何とかスカウトに自分の気持ちを説明した北瀬。

北瀬にとっても20億は魅力的だが、楽しい野球を伊川と続けたい気持ちも大きいのだ。

だからスポーツ推薦で大学に進学して、後6年位伊川と野球がやれたら良いなと思っていたのである。

 

そんな北瀬の不審な態度や、メジャーへ難色を示した発言にも拘らず、スカウトはニコニコ笑いながら衝撃的な発言をした。

 

 

「ああ、打率10割の伊川か

彼も良いバッターだ。もしかしたら、キャッチャーの才能もあるかもしれない

それなら一緒に連れていけば良い。彼もトリプルAで調整すれば、直ぐメジャーリーグに行ける素質がありそうだ」

 

 

「その……トリプルAって何ですか?」

「分かりやすく言うなら、メジャーリーグの1個下の下部組織かな

メジャーリーグと比べて待遇は悪いが、彼と君は家族だから、そちら経由で金銭を与える事は可能だよ」

 

その言葉を聞いて、取り敢えず信頼している伊川に話を聞きに行こうと考えた北瀬。

気持ちを落ち着ける時間も欲しいと考えたのもある。

20億とかいう大金の契約を任された凄い人に、大事な話の途中にごめんという顔をしながらも、伊川を呼びに行っても良いか聞いた。

 

 

「……伊川は敷地内にいるので、相談は可能ですか?」

「良いとも。ゆっくり探しに行ってくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バッタバッタと足音を立てながら、北瀬は全速力で寮に向かっていた。

そして、今の所北瀬と伊川の2人部屋になっている場所に辿り着き、荒々しくドアを開ける。

 

うるさいなぁ、もうちょい静かにドアを開けてくれれば良いのに。そう考える伊川は事態の重大さに気付いていない。

明日の授業の予習をしていた彼は、北瀬の方をチラリとも見ずに話しかけた。

 

 

「お帰り。轟監督に呼び出された要件は終わったのか?」

 

監督の人間性はある程度信用している伊川は、1人で呼び出された北瀬の事を珍しくあまり心配していなかった。

 

 

「大変な事になった! 取りあえず監督室に来てくれ!!」

「?!」

 

北瀬のめちゃくちゃ慌てている発言を聞いた伊川は、その場では何も聞かずに監督室に直行。

 

監督室に辿り着いた後、荒々しくドアを開けてズンズンと入っていった。北瀬に何が起きたのか何も分かっていないのに、目茶苦茶怒っている。

 

 

「轟監督! 北瀬に何があったんですか?! ……えっと、貴方方は……?」

 

慌てて入ってきたので気付かなかったが、明らかに気品のある外国人が部屋にいた事に遅れて気が付き、慌てて愛想笑いをして誤魔化した。

えっ、何? この人達と北瀬に何が起きたんだ……? 取りあえず偉そうだから媚売っとこうと、伊川は真剣に考えていた。

 

 

 

 

「コンニチハ。私ハ、マリナイズのスカウト、エディー・C・ヘンソン。コチラは通訳兼護衛のニコラ・J・キャンベルです。ヨロシクネ」

 

「宜しくお願いします。俺は薬師高校の1年生、伊川始です。」

 

彼はそもそもメジャーの意味が分かっていなかったが、取りあえず凄い人だと判断して真面目にハキハキと返事をした。

 

というか、通訳と護衛ができる人を雇うなんて、どれだけハイスペックな人間なんだろう? 取りあえず、怒らせたらヤバい人だ。

伊川は脳内で騒々しくドアを開けた事を後悔しながらも、冷静な顔を装って、彼らに事態の説明を求めた。

 

 

「それで、マリナイズ? のスカウトのエディーシー・ジョンソンさんは、北瀬にどういったご要件があるのでしょうか……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

北瀬にした説明と同じ様な話を聞き、非常に動揺しながらも伊川は彼にこう勧めた。

 

 

「……北瀬、この話は絶対乗るべきだと思う。野球選手はリスクが高いと思ってたが、1年で20億も貰えるなら話は別だろ」

 

伊川の言葉を聞いて、ホッと安心した北瀬。

まあそうだよな、俺も薄々そう感じてたんだ。俺より頭の良い伊川が言うなら、間違いない。そう考えながら、北瀬は伊川の結論を聞いていた。

公務員になりたい伊川にとってはデメリットがある事も聞いているので、心配もしながらだが。

 

 

「でも何となく、伊川も連れて行く事になっちゃったけど……まあ嫌なら来なくても仕方ないんだけどさ」

「俺は良いよ。家族待遇で最低限飯が保証されてる間だけ、アメリカに入れば良いからさ」

 

「……分かりました。サインします」

 

人生を決める話を、伊川が肯定した瞬間即決した北瀬に驚いたスカウト。

兄弟である伊川に大分に依存しているなぁ、人間関係には特に注意を払わないと、大変な事になるかもしれないと内心憂鬱になっていたが……

 

 

 

片岡コーチは伊川の決断を聞いて、内心心配しながらこう質問した。

 

 

「伊川、本当に良いのか

___お前の夢は、叶わなくなると言う事だぞ」

 

スカウト達は、伊川に夢があったなんて聞いてないぞという顔をしながら、ハラハラと彼らの会話を見守っていた。

絶対に契約すると決めている北瀬が、伊川の夢を尊重して来米してくれなくなったらマリナイズの宝の損失である。

 

頼む、夢は諦めてくれ……! ちょっとゲスい事を考えながら、真剣に話を見守るスカウト達。

 

伊川は動揺していたが、公務員というちっぽけな夢を諦める事には頓着せず、優しい片岡コーチにこう話していた。

 

 

「良いです。俺の夢は、20億と比べる価値なんてありません。北瀬にチャンスがあるなら、それを掴ませます」

 

伊川の言葉を聞いて安心したスカウトは、サインをしようとペンを探そうとしている北瀬と伊川に、にこやかにこう言った。

 

 

「ありがとう

……だが少し待ってくれないか?

まだ条件を詰めていないから……複数年契約ならもっと融通できるし、金銭面以外でもメジャー選手には特権がある。そこを話してからでも遅くない

それに、契約できる日付は決まってるからな___安心してくれ、20億から給与を下げるつもりは無いさ」

 

 

かなり誠実なスカウトは、契約に前向きな北瀬達にもしっかり条件を説明していた。

 

この誠実な説明は、スカウトの元々の性格も関係しているが、そもそも彼らマリナイズ陣営は、北瀬はサイ・ヤング賞を取る選手になると確信していたのである。

2年後に来て直ぐ活躍出来るかは、メンタル面の問題もあるから分からない。

だが彼は、将来絶対に活躍するであろう特大の原石。最初の支払いを渋って、印象を悪くする訳にはいかない。

 

 

 

この時代は、俗に言う25歳ルールがなかった。

暫く年月が経つと、25歳以下の選手には500万ドルまでしか支払ってはならないというルールが検討される様になる。

 

が、この世界では結局採用されないと思われる。

年齢で縛ろうにも、日本からやって来た北瀬が活躍し過ぎたのだ。

彼は元々、プロになるなら日本でだろうと考えていたにも拘らず、高額な年俸に釣られてアメリカに来てくれた。

そういった選手が、またいつ誕生するか分からない。だから、年齢で報酬を渋るべきではないという世論に押し勝てないのである。

 

 

 

 

 

 

 

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