【完結済】気付いたらパワプロで適当に育てた選手に転生してた話 作:いちごケーキ
30分調べても分からなかった為、とりあえずそんな感じだと思って書いてます。違ったらすみません、訂正します。
春季大会2日目。
薬師野球部は朝っぱらから試合があり、軽いウォーミングアップをして試合に臨もうとしていた。
相手は弱小校の、恋が浜高校。
1回戦を運良く勝ち抜いたチームで、薬師高校に勝てる可能性は1ミリも無いと言えるだろう。
轟監督は、試合前にテキトーなナメプ発言をかましていた。
「相手は弱いから、怪我しない様にだけ気を付けて良い感じに勝ち上がろうぜ!」
『はい!』
気を付ける事は怪我だけという、明らかに相手を舐め腐った発言。
強豪校の監督とは思えない言い分だが、11対1でコールド勝ちした西部より更に弱いと確信しているのである。
だから問題なしと、轟監督は確信していた。
片岡コーチは相手を舐めた発言に渋い顔をしていたが、止めるほどではなかったらしい。
コーチも実際の所、負けることは有り得ないと考えていたからだ。
「今日のスタメンはこれで行く!
1番レフト・秋葉
2番セカンド・伊川
3番ライト・北瀬
4番サード・轟
5番ファースト・三島
6番ショート・米原
7番センター・平畠
8番キャッチャー・奥村
9番ピッチャー・友部
まあ少しでも負けそうになったら交代してくから安心してくれ。
後、大差が付いたら積極的に代打起用していくから、そのつもりでいてくれ!」
『ハイ!』
相手は超弱小校とはいえ、1度も組んだことがない1年生バッテリーに公式戦を任せて大丈夫なのだろうか……
その結果は、この後の試合が決めるだろう。
一方その頃、恋が浜高校野球部のメンツは頭を抱えていた。
「うへーっ! 次の対戦相手、春のセンバツ優勝校じゃん!」
「虐殺されるだろコレー、もう不戦敗で良くないか?」
不戦敗という言葉に内心賛同していた部員達だが、流石にそういう訳にはいかなかった。
「でもなぁ……勝てないからって戦わないのもダサいよなぁ……」
「俺達に逃げ場はないのか……」
「彼女ちゃんにダサいって言われたらどうしよう……」
試合直前にも拘らず、グダグダと逃げたいなんて話している恋が浜の選手。
そんな時、キャプテンが変な事を言い出した。
「……いや待てよ? 薬師って、打撃は強いけど守備ボロボロだって言うじゃん。1点なら俺達でもとれんじゃね?
俺達相手にエースはぶつけて来ないだろうし……」
その言葉を聞いた部員達は、流石にムリだろと小馬鹿にした笑いで否定していた。
「ムリムリ! 守備が弱いって言っても強豪校だしなぁ、俺らが敵う相手じゃねーよ!」
「もしお前が1点取れたら焼き肉奢ってやるよ!」
「お、言ったな? 1本打って食べ尽くしてやる!」
言った本人すら冗談で口にした、甲子園優勝校から1点取るという内容。
まさかそれが叶ってしまうとは、恋が浜高校の部員達は誰も予想していなかった……
1回表、恋が浜の攻撃。薬師高校を見に来た観客の多さに、弱小校のお遊び野球部でしかない彼らはビビっていた。
ここで変なミスしたら一生笑い者だぞ……と思ったからである。
実際そんな事は無いだろうから安心してほしい。
何をやらかしても、強豪校にも拘らず大量にエラーをする薬師高校にインパクトを全部持っていかれるからだ。
対して友部は、流石はシニア強豪出身。2回戦とは思えない観客の多さを全く気にせず、堂々とした態度でピッチングを開始した。
___バシッ!
「ストライク! バッターアウト!」
バッティングセンターの球と違い、癖のある球速133kmを打てる実力は無かったようで、途中で投げたカーブに惑わされクルクルしていた。
ワンアウトランナー無しで、恋が浜の2番が打席に立つ。
大した実力のないバッターで、本人もマトモに打てる気がしないらしい。
___ガギ
ピッチャー友部は、確実に討ち取ったと確信したボテボテのゴロ。打球はサード真正面。
……そう、エラーと送球△を持つ雷市へ飛んでいったのだ。
「アッ……」
トンネルした雷市。彼がミスする可能性を見越して前の方にいた北瀬だが、1塁を刺すには遅かった。
「セーフ!」
入部3日目、始めての公式戦で討ち取った当たりを消された友部。
しかも、雷市がボールに触ってないから記録はヒットである。その上雷市は、謝る姿勢も見せずにヘラヘラ笑っていた。
雷市はいくらエラーしても怒られない事に慣れすぎて、ピッチャーに悪いとすら殆ど感じていなかった。
プロでも活躍するであろう上級生相手だと分かっているが、流石にイライラした友部。
そんな彼は、ベンチから上がるヤベェ声を聞いて、エラーに対しての諦めを覚えた。
「雷市ー! 後4エラーまでだからなー!」
「ホームラン打ってチャラにしろよー!」
……そう、上級生の誰もがエラーを全く気にしていないのである。
普通なら罰走で許されるかどうか位の酷いエラーだったが、薬師というチームは全く気にしようとも考えていない様であった。
確かに薬師野球部の守備は酷いと知って入学している。
一試合の最大エラー記録は30近く、毎試合毎試合野手陣が炎上させていた。
分かってはいたけど……本当にヤバいなコレは。
薬師野球部は強いけど、守備が酷すぎるから進学したくはないと言う友人のピッチャーは確かに割といた。
それなら逆にベンチ入りメンバーを競うライバルが少ないんじゃないかと思い、思い切って進学した事で入部3日目から公式戦に出られているが……コレは酷すぎる。
まあ、守備はアレでも甲子園優勝チーム。本来なら俺の実績で入れるチームじゃないのは確かだから、そういう意味では凄くありがたい話だけどな。
推薦の時期も甲子園ベスト4を取っていた薬師野球部が、俺を推薦で取った理由は明らかにピッチャー不足だろう。
だから欠点は仕方ない、仕方ないと思うしかない……友部はそうやって、なんとか自分を納得させようとしていた。
あまりにも酷い守備を目撃し、友部-奥村バッテリーは三振を取るしかないという共通認識を持った。
恋が浜の3番を三振に打ち取り、強豪シニア出身のの貫禄を見せつけたが、まだツーアウトである。
___ガギーン
三振を取りたいという想いだけではダメだった様で、運悪くセンターへのフライを放たれてしまう。
薬師センターの大田も取ろうとはしたが……目線を上に上げた時、たまたま太陽とボールが被ってしまい完全に見失っていた。
強豪校とは比べる事も出来ない足の遅さを持つ、恋が浜の4番だろうとホームに軽々と帰れてしまう程ノロノロとボール探していた。
コレでランニングホームランを打たれたことになる友部は、あまりにも可哀想である。
あまりにも酷い味方野手陣によって、完全に目が死んでいる薬師バッテリー。
どうにか5番を三振に取りスリーアウトチェンジ。弱小校相手に1点取られはしたが、入部して3日目の割には頑張ったのではないだろうか?
___カキーン!
___カキン!
___カキーン!
……
___ガギ
「アウト! スリーアウトチェンジ!」
「……どんだけ続いたよ薬師の打席!」
「17打席か、ハンパないな!」
「やっぱり薬師と言ったら打撃だよなぁ!」
「下位打席までホームランを打てるって所にロマン感じるよなぁ!」
薬師高校の攻撃は、1回だけで17打席も続いて13点も取ってしまった。
後1人打者が出ていれば、完全に打者2巡してしまう所立ったのである。
というかアウトを取られたのは1年生だけで、上級生は全員ツーベースかホームランを打っていた。
130kmとカーブしかない投手なんて、彼らの良く打っているピッチングマシーン以下だからだ。
これを打ち損じた奥村と友部は残念な打力に見えるかもしれないが、そもそも野球は守る方が有利なスポーツだから仕方ない。
普段の薬師野球部の打力がおかしいだけである。
……
4回表を投げ終わった友部。
68対5とラグビーみたいな大差で勝っている彼らだが、今さっきまでマウンドに立っていたピッチャーの友部は俯いていた。
上級生達は温かい目で見守っていたし、同級生だって点を取られすぎだと非難なんてしていないが、公式戦で4回5点も取られた事がなかった為凹んでいるのである。
実際の所、自分が悪いというより野手陣が最悪なだけだと友部も頭では分かっているのだが、その理屈に心が着いて来ないのだ。
「北瀬先輩……投げても投げても点が入れられて行くんですけど……俺、どうしたら良いと思いますか……?」
凹み続けていた友部。こんなに点を取られた事がなかった友部は、隣に座っている親しくもない大エース北瀬に思わず泣きついていた。
失点以上に得点している為、負けそうではないのだがメンタルに来るらしい。
薬師ではこの先やっていけないのではと考えてしまいそうな精神力に見えるかもしれないが、5点取られてもヘラヘラ笑えるピッチャーの方が頭がおかしいのだ。
普通に考えたらピッチャー失格の成績を叩きだして笑える奴なんて、殆どが弱小校のやる気なし部員しかいないだろう。
むしろ自分がパンクする前に、自ら人に相談してストレスを緩和させようとする友部はメンタル管理が出来ている方だと思われる。
「……まだ取られたのたったの5点じゃん。試合って、10点取られるまではセーフティだよ?」
投げても投げても点が取られるという友部の言葉に、全く共感出来ない北瀬。
たった5点だから抑えてるほうじゃんと思いながら、後輩に対して彼なりの慰めを掛けていた。
北瀬は基本的には心優しい人間なので、落ち込んでいる人がいたら慰めたくなるのである。
偶にヤンキー校出身特有のモラルの無さを発揮したりはするが、性根は凄く優しいタイプなのだ。
10点まではセーフティという北瀬の言葉に、感覚が違い過ぎると困惑した友部。
だが投壊野球の薬師部員としてはこれが正解なのかなと感じて、マジかよと半笑いになりながらも一応同意していた。
「確かに、そうかもしれないっすね……後1回、全力で投げようと思います!」
「よし、頑張れ!」
北瀬が考えている、10点はセーフティというワードは訂正されないまま彼らの会話が終わった。
彼は本気でピッチャーは10点まで取られて良いと思っているので、メジャーに行った時に感覚の違いで苦労するかもしれないが……そんな事を今の彼らは知らない。
立ち直った友部を見て安心した北瀬は、そろそろネクストバッターズサークルに行く準備をしようかなと立ち上がった。
今1番の秋葉が打とうとしているから、直ぐに自分の番が来ると考えたのである。
北瀬は無意識に、めちゃくちゃ薬師野球部の打力を信頼していた。
「じゃー俺はそろそろ打ちに行こうかな、楽しく打ってくるわ!」
「頑張ってください!」
北瀬は楽しみながら、またホームランをぶっ放していた。これ以上死体蹴りをしなくても良いだろうに……
轟監督もそろそろ選手にわざと三振させてこようかと悩んでいたが、軽く打って適当に走っているだけだからスタミナもあまり使っていないだろうと判断して好き放題打たせていた。
……結果5回表でコールド、71対6という化け物みたいな数字を残した試合が終わった。
4回裏で4人も1年生代打を利用した事で、その回は北瀬が思っていたよりは点が取れなかったが、十分過ぎる成果と言えるだろう。
いくら相手が弱小校とはいえ、2・3年生達がここまで全員打ちまくれるのは凄い。
恋が浜の選手達は真っ白に燃え尽きたヤベェ試合は、こうやって終わった。
まあ真っ白に燃え尽きたとは言っても、彼らは後にこれをネタ扱いして武勇伝みたいに話すようになる程度にしか気にしていなかったが。
試合の後、キャプテンに言われて焼き肉を奢ることになった部員もいた。
腹減った後に食いまくられたら破産してしまうと拝み込んで、食べ放題コースにしてもらったらしい。
まだ1年生と考えると優秀な友部は、この程度のバッター相手でも俺が燃えちゃうなら、強豪校相手に10失点で済んでいる北瀬先輩ってやっぱり凄いんだなぁと考えていた。
北瀬が凄い事は前々から分かっているのだが、自分が投げて再確認させられたのである。
新入生達も最初の守備では呆れまくっていたが、その後の大変な活躍を見て、この学校に入って良かったと大多数の人間が思ったらしい。
甲子園だけ見ていると分かり辛いけど、北瀬先輩や伊川先輩に轟先輩以外の先輩達もやっぱり凄まじい打力を持ってるんだ! 俺も教えて欲しい! そう考えた1年生も多かった。
上級生が尊敬されまくる事で、沢山の下級生に話しかけられまくって振り回される様になってしまうと思われる。