【完結済】気付いたらパワプロで適当に育てた選手に転生してた話 作:いちごケーキ
春季大会4回戦目を迎えた薬師高校。
相手はくじ運が良かったまぐれ勝ちの学校で、東京荘苑坂高等学校といい、近所からはヤンキーが多いことで有名な高校らしい。
どこかで聞いたことが有るような特徴だ。
それこそ昭和の時代は、極亜久中学の様に酷かった。
だが現代になるとそこまでではなくなり、喧嘩にヒカリモノ持ち出したり指名手配犯が極稀にうろつく半犯罪者養成学校程ではなくなったらしい。
というか、日本3大治安が悪い中学校と呼ばれる極亜久が酷すぎるだけである。
基本喧嘩の類は校内で収まっており、辞任する教師が多かったり程度に収まっている。それでも酷いが。
3回戦の内容は、元テニス部の佐藤が調べてきた内容によると、控えめに言ってラフプレー戦だったらしい。
攻撃でも守備でも積極的に相手の足を踏もうとしてる疑惑があった上、死球は2回有った。
そして、やり過ぎた1人が退場させられている。
その情報を聞いた轟監督は、どうせ勝てる相手だし、守備よりも怪我に気を付けろと話していた。
大丈夫、北瀬なら多少変な守備をしても何とかしてくれると太鼓判を押している。
ちょっとエースに対してヒドイ気もするが、本人は気にしていない為まあ良いのだろう。
ちなみに元テニス部の佐藤は、野球部マネージャー兼新設した新聞部同好会の部長になっていた。
薬師野球部に同行させて貰った、甲子園の景色が忘れられなかったらしい。
そもそも彼は将来記者になりたいらしく、テニス部は新聞部が無かったから消去法で入った部活だった為、未練は無かった。
テニス部の顧問からしても別に2軍が多少居なくなろうとも構わない為、やりたい事があるならと快く送り出してくれたのだ。
片岡コーチに許可を取り、マネージャーとして働きながらその光景を記事にしていくと決めていた。
まだ拙いこの記事は、薬師野球部の名声もあって全国ニュースに乗る程の盛況を得る事になる。
当然、有名な新聞会社からも佐藤の名前が知られる様になり、佐藤の人生を大きく変える出来事になった。
一部の上級生は、どうしてこんなに有名になったのに女マネージャーが居ないんだと嘆いていたが、当然ながら佐藤の責任ではない。
偏差値が急激に上がり過ぎて、生半可な気持ちでは入学できなくなってしまった事に原因がある。
新入生200人内、131人が野球部で50人が吹奏楽部、19人がその他になっている。
受験戦争はギリギリの戦いの場合、強い意志を持っている奴が勝つらしい。
絶対に全国1の野球部に入りたい・吹奏楽で応援したいと考えた新入生達は、努力に努力を重ねて大幅に学力を上げる事で薬師高校に滑り込んだ人も多かった。
……なんだか男女比率がおかしい気もするが、仕方ない話だろう。
そして野球部以外の部活は、存続の危機に立たされていた。可哀想な気もするが、野球部があまりにも目立ちすぎたし仕方ない。
野球部以外の上級生達はそう考えているので全く悔しくは思わず、仕方ねーと笑っていた。
試合が始まり、3回裏までで大方の観客達の予想通り、31対0と圧倒的な大差を付けられた苑坂高校。
身体に受けた場合、確実に無傷では済まないだろう圧倒的な豪速球に、喧嘩で怪我しなれている彼らは逆にビビっていた。
あんなのぶつけられたら、俺達どうなっちゃうんだよ?! といった雰囲気を醸し出している。
彼らの様に、ぶつけようと思ってぶつけて来るピッチャーでは無いのだが、そんな事を彼らは考えない。
……いや、キャッチャーはやりかねない性格をしているが、流石に親友の言う事だろうと北瀬が拒否する可能性は高いだろう。
4回表ノーアウトランナー無しで、苑坂高校の攻撃は3番門脇。
苑坂野球部の全員がそうだが、彼は特にフラストレーションが溜まっている。
こちらの攻撃は全く通用せず、相手の攻撃はバッティングセンターの様に打たれていく展開に腹が立っていたのだ。
その場面で、打てない自分達ではなく強い相手にムカつく所が彼らの悪い所である。
___ガギ
「カハハハ! ……あっ」
「捕れねーよ!!」
危なっかしいが、ボテボテのサード方向へのゴロを何とか捕球した雷市。
だが送球はあらぬ方向へと飛んでいき、バッターは2塁へと進んでしまう。
北瀬は、酷い守備を披露した雷市に対して楽しそうな表情のまま声援をかけた。
「ドンマイドンマイ! 惜しいよ雷市ー!」
「カハハハ、次は取る!」
酷すぎる守備だが、北瀬はもう慣れっこだ。
大差が就いている現状、ちょっとしたミスに残念がる気持ちすら湧いてこなかったらしい。
やっぱり色んな変化球を投げられるのは楽しいなぁと思いながら、ニコニコ笑っていた。
ノーアウトランナー2塁で、打順は4番和泉。
ピッチャーもキャッチャーも、ヘラヘラ笑いやがって……喧嘩だったらボコボコにしてやれたのにと内心ブチギレている。
北瀬も伊川も極亜久中学出身の鉄人なので、彼が3人がかりで殴りかかっても勝てない事は知らない。
割と優しい北瀬相手なら逃げ出せば追いかけて来ないだろうが、伊川を奇襲したら腕の一本は覚悟しなければならないと思われる。
___ズバッッ!
「ストライク、バッターアウト!」
そんな意気込みを持っていようと、彼はゴロを打たせようとしている(影山の)リードですら空振り三振にさせられていた。
薬師高校と戦えるだけの実力が、彼らには根本的にないのである。
ワンアウトランナー2塁で迎えるのは、5番の相川。
彼は普通に、薬師バッテリーは何故かゴロを打たせようとしてくるから、相手の思惑通り打ってエラーを狙えば良いと気付いていた。
苑坂高校の生徒としては頭脳派である。
___ガギーン!
なんか割と良い感じにバットに当たり、ボールをフライの様な感じで掬い上げていた。
残念ながら、薬師高校の中では1番硬いライトの秋葉に飛んでいった為エラーは無いだろうが……
それでも、ランナーを3塁に進塁させる事に成功していた。
意表返しに1点だけでも取りたい苑坂高校としては、値千金の一打だっただろう。
ツーアウトランナー3塁で打席に立つのは、6番の中澤。
どちらかというとミート力が高いバッターだが、パワーが足りなくてゴロになりがちな所が弱点である。
……そう、元々ゴロを打ちやすいのだ
当然の様に北瀬のスライダーをゴロにして、全力で1塁に向かっていた。
(俺が取る!)
(オッケー任せた)
打球はピッチャーとキャッチャーの中間位に転がり、ピッチャーの北瀬が拾う。
その後すぐ距離が近いホームに送球し、これでチェンジになるかと思われたが……
「退けやオラーッ!!」
バッターが当てた瞬間ホームに突っ込んで来た3塁ランナーが、ホームで捕球した伊川を弾き飛ばそうとタックルをしかけて来てしまう。
楽勝ムードで見ていた轟監督も、これには唖然。
明らかにアウトの打球で、重戦車の様に跳ね飛ばして無理やりセーフをもぎ取ろうとするクソ野郎に慌てていた。
1点ビバインドの場面でもないのに、ここまでするか?! 伊川逃げろ! 1点位くれてやっても良い、とにかく怪我だけはするな!
そんな事を考えて青ざめていた観客達に対して、伊川は苑坂高校の様にろくでもない事を考えていた。
あれ、これは半年前位に、成孔高校の試合で見た時考えたタックル対策の動きが使えるな……!
まあ勝てるか分からない強豪相手じゃないけど、練習相手としてはちょうどいい。
そう考えた伊川は、考え無しのゴミを見つめる様な冷め切った表情をしていた。殺意の波動がほんの少しだけ漏れている。
身体ごと突っ込んで来た相手を、ミットでガードする感じで頭付近に設置。
自分の目線はミットで隠して狙いはバレない様にしながら、衝撃を受け流し易い姿勢を取った。
「ウガッ?!」
伊川がしっかり相手走者を見ていなかった事で、予想よりもランナーの頭が上にあったらしい。
これではガード出来ないと気付いた伊川は、本能的に慌ててミットを上に上げた……これで、相手ランナーの顎をかち上げてしまう。
「…………アウト! スリーアウトチェンジ!!」
ホームに突っ込んだ門脇は、軽い脳震盪でフラフラ倒れていたが、どうにか立ち上がって来た。
点を取る筈がアウトにされ、攻撃までされてしまった彼はブチ切れ。審判に猛烈に抗議し始めた。
「___おいおい審判! こいつ明らかに俺の頭をかち上げただろ! ずりぃじゃん、やり直しだ!!」
「そうだそうだー!」
「卑怯だぞー!!」
「こんなの無効だろー!!」
その言葉に、苑坂高校の部員達は同調。
喧嘩慣れしている彼らは、薄々伊川が頭を狙った事を察していたのである。
だから正当な抗議のつもりだったが、今のプレーが他の人からどう見えるかは察していなかった。
当然、薬師高校を見に来ている観客達は何の抗議をしているんだとざわめいていた。
観客達から見れば、荘苑坂がどうして抗議しているのか全く以て理解不能だったからである。
「あれ、何だ苑坂高校の奴ら? 抗議してるのか??」
「嘘だろ?! あんなクソみたいなホームイン狙いで自爆しておいて抗議するのかよ?!」
「卑怯だぞ苑坂ー!」
「伊川が怪我したらどうしてくれる!!」
「クソヤロー!!」
実際伊川が咄嗟に、相手の怪我狙いのラフプレー返しをしたのは事実なのだが、流石にそんな事に審判達は気付かなかった。
まあ気付いていても、明らかにアウトな場面で突っ込んだ門脇の自業自得扱いしただろうが……ラフプレー返しに気付いていない審判は、めちゃくちゃブチギレていた。
「君達……! 自分からラフプレーを仕掛けておいて何だ、その言い草は!! スポーツマンシップという物が無いのかね?! 最低限のモラルが保てないなら、この場に出て来るな!!
今のプレーは絶対にアウトだ!
次怪しい事をしたら、審判員が警告を発したにもかかわらず、故意に、また執拗に反則行為を繰り返したとして、フォーフィッテッドゲームで退場させるぞ!!」
明らかに捕球とアウトを確信して突っ込んだ門脇。
対して自分を守る為に防御姿勢を取りながらボールを溢さなかった、偶々頭をかち上げてしまった様に見える伊川。
審判達が、どちらの肩を持つかなんて分かりきっている話である。
「伊川センパーイ! 大丈夫ですか?!」
「苑坂ーっ、卑怯だぞー!!」
「なんて奴らだ……!」
「伊川先輩が大丈夫そうで良かった……!」
薬師ベンチやスタンドからも、後輩の心配する声や怒りの声が鳴り響いていた。
俺達の伊川先輩に、なんて酷い事をしやがるんだ! 明らかにアウトの場面で突っ込みやがった!
しかも自分からぶつかりに行って、勝手にミットにぶつかって抗議するなんて、本当に人間性が欠如している輩だな!
伊川先輩の手が怪我したらどうしてくれる! お前らなんぞが損なって良い人では無いんだぞ?!
伊川の体育会系とは思えない温厚な聖人ムーブもあり、後輩達は大騒ぎしてブーイングまでしている者もいた。
相手に対して失礼な、強豪校に相応しいとは言い難い態度ではあるが……プロ注の伊川に対してのあまりのラフプレーを目撃している観客達らは、流石にコレは当然の抗議だと納得していた。
伊川の性格を知っている上級生ですら、流石に彼が頭を狙ったとは気付いていなかったらしい。
彼は身体が頑丈だから大丈夫な気もしていたけど、怪我がなくて良かった。苑坂高校って酷いなぁ位の感覚である。
そんな殆ど有り得ないシチュエーションを練習をする位なら、他にやれる事が幾らでもあると常識的な判断を脳内で下したからだろう。
まあ、伊川は身体能力と喧嘩慣れによって、ほぼ練習無しでも出来てしまったが……そんな事を彼らは知らない。
(うわぁ、伊川やりやがった……あの構えは故意だろ……)
何年も一緒にいる北瀬だけは、相手の頭に手の軌道を置いて自爆を狙う動きが、良く伊川が喧嘩殺法で意図的に使っていた動きだったので、悪意溢れたプレーだと確信していたらしいが……
そんな伊川を不利にする事は一言も口にしなかった為、一生気付かれないと思われる。
4回裏の薬師高校の攻撃は、この試合は危険過ぎると見た轟監督が、クリーンナップに凡退を指示。
明らかな時短戦略の上に伊川の打率10割が崩れてしまう事態となったが、致し方無しと見られたらしく轟監督への非難は飛んでこなかった。
それに、薬師高校は31対0と圧勝ムード。これで負けることは有り得ないと、この場にいる誰もが考えている……実際、その意見は正しい。
前みたいに人数が不足しているなら兎も角、人数一杯まで部員が揃っている全国優勝しているチームが、マグレで春季大会4回戦まで来たラフプレーチームになど負けないだろう。
サクッと攻守を交代して、5回表。
点差は31点なので、荘苑坂は22点以上点を取らないと、5回コールド負けになってしまう。
明らかに負けムードで観客達から罵声が届いている荘苑坂高校だが、ヤンキーとしてのプライドや連帯感からか1点取ることを諦めていない様であった。
……だが、その程度の心持ちでは実力差はどうともならず、ツーストライクまで追い込まれたバッター。
そんなザコに対してでも影山リードを守り続けている薬師バッテリーは、予定通りボール1個分位ボールゾーンに投球した。
___バシッッ!
「……ストライク! バッターアウト!」
彼らはボールだと確信して投げたにも拘らず、なぜか審判はストライクを宣言。
数々の悪質なラフプレーを行っていた荘苑坂高校に対抗する、審判の判断だった。
観客達も北瀬-伊川バッテリーが驚いている事に気付いているので、あれはボールだっただろうと気付いている。
だがラフプレーを続けて来る荘苑坂の自業自得だと確信しているので誰も審判の判断を不満に思わなかった。
寧ろ1番驚いているのは、酷いプレーには審判が報復を行う可能性を知らない北瀬達。
審判の判断ミスかどうかが分からず、困惑しながらテレパシーで話し合っていた。
(これ、審判の判断ミスか? もしくは急にボールゾーン判定の判定が変わったのか? それとも抗議した荘苑坂への嫌がらせか?)
(さぁ……伊川のラフプレーも気付いてないみたいだし、タックルへの報復の可能性もありそう)
(とりあえず、1球様子見てみるか……)
___バシッッ!
次の打者には、最初はストライクゾーンとボールゾーンの縫い目辺りに投球させた伊川。判定されるまで結果は分からない、審判任せの動きである。
これの判断で、審判がどう判断しているのかを検証しようとしている。
「ストライク!」
そして、審判は間髪入れずストライクを宣言。
これで北瀬達は、とりあえず審判の故意判定である事を確信した……なぜそうなったかは分かっていないが。
……
「ストライク! バッターアウト! 試合終了!!」
その後、北瀬達は普通の投球に戻してあっさり試合は終了。
最後は捕球ミスによってセーフかアウトか怪しい怪しいゴロだったが、審判にあっさり試合終了が宣言されていた。
審判達は、スッキリした顔をしている。
光の野球おじさんである彼らは、あまりにも酷いラフプレーをプロ当確のスタープレイヤーに行う荘苑坂にめちゃくちゃ腹が立っていたのだ。
1点も取れないでコールドにされてザマァと内心思いながら、清々しい顔で試合を終えさせていた。
「ありがとうございました!」
「……チッ、ありがとう、ございましたァ!!」
バカが集うヤンキー底辺高の荘苑坂野球部は最後まで悪役を貫き、各自舌打ちしながらも一応挨拶を行っていた。
極亜久中学なら乱闘に縺れ込ませていたと思われるので、まだマシ……ではあるが、そんな最底辺と比べても仕方ない。
観客達から荘苑坂への罵声が鳴り響きながらも、堂々と退場していった彼らだった。
むしろ将来、俺達はやってやったぜ! みたいな武勇伝扱いをしている部員もいるかもしれない。
面倒事はあったがサクッと勝った薬師高校。
ベンチ入りメンバーの後輩達が精力的に動いている事で、かなり撤収作業が早くなっている。
そんなに熱心な野球人ではない為、サボりという程ではないがダラダラと撤収準備に取り掛かろうとしている北瀬と伊川。
一応後輩達には押し付けず、普通に作業を進めようとしようとしている伊川に、轟監督がストップを掛けていた。
「おい伊川、お前は怪我の可能性があるから適当に座っとけ。少ししたら、俺と一応病院に行くからな」
「えっ、俺絶対ケガしてないと思うんスけど……」
「俺もそう思うが、アドレナリンで何とかなってるだけかもしれんからな。一応だ、一応!」
「うす」
喧嘩で怪我慣れしている伊川は、自分は無傷であると確信していた。
だがまあ、人の命令に逆らいたい程病院が嫌いな訳ではない為、適当に返事をして座っていた。割と面倒だなぁと内心思ってはいるが。
手持ち無沙汰な伊川は、試合終盤で気になった事をキャプテンの真田先輩に聞いてみた。
先輩は撤収作業中だけど、普段より片付くのが早いから、少しの時間話す位なら良いだろうというと思ったからである。
「真田先輩、ちょっと良いですか?」
「良いぜ……どうした? 手は大丈夫か?」
少しだけ伊川を心配している真田先輩に、全然大丈夫だと手をひらひらさせながら、審判の判定について質問した。
「全く問題ありません。筋を痛めた感じもないんで
俺、北瀬にボール球を投げさせた筈なんですけど、何故かストライクになったんですけど……アレは絶対ボール球だったと思うのに。何でかって分かりますか?」
伊川の言葉にビクッと肩を揺らした後、興味津々と言った顔で聞いている北瀬。
彼もあの判定に疑問を抱いていたのだ。
対して伊川の言葉を聞いて、そう言えば伊川と北瀬は実質野球歴1年だった事を思い出していた真田。
判定の理由まで分かりやすい説明で、審判の判定の理由を教えてくれた。
「あー……アレはラフプレーへの制裁だ
グレーゾーンな悪質プレーは取り締まり辛いから、代わりに判定で締め上げる暗黙の了解みたいなのがあるんだよな
ラフプレーのイメージが付いている学校だと、関係ない試合でも判定が悪くなる可能性があるかも……?」
そこまで野球に詳しくない真田は、関係ない試合でも判定が悪くなる可能性については疑問形で説明していた。
流石に伊川はあそこまで露骨なラフプレーはしないと思うけど、超注目選手なんだから気を付けてくれよという内心も籠もっている。
伊川から死球覚悟の内角鬼攻めを提案されて実行した真田は、彼の倫理感の低さを割と分かっているのだ。
ルールを破り捨てはしないが、ギリギリのグレーゾーンは良く考えもせずに突いてしまう悪癖の事である。
多分、極亜久中学で学習したんだろうなぁ。
それがプラスに働く事もあるだろうけど、少しずつ改善していった方が良いんじゃないか?
真田は、コレは伊川を尊敬している後輩達の前では絶対に言えないけどな。と言った思考を内心でしていた。
伊川はその言葉を聞いて、今日のタックル返しやピッチャー狙い撃ち打法を思い出して、内心ビビっていた。
特に、ピッチャー狙い撃ち打法の悪質さは相当マズい。荘苑坂のタックルなんかより、明らかに殺意がある攻撃である。
大切な野球部メンバーに迷惑をかけかねない、無駄に危ない行動だったなと感じたのだ。
だが人前なので、なんとか俺には関係ないけどねみたいな顔を作りつつ、少し顔を引き攣らせて返事をした。
「そうなんですか。知りませんでした。そんな暗黙の了解があったとは思いませんでした
……言われてみると、あっても納得出来る決まり事ですね」
伊川の言葉に、そんな事も知らないんだなと内心驚いている1年生達。
2人で練習をし続けていた、野球という競技は素人に近い先輩達なんだろうと推測していた。
極亜久中学時代、彼らは部活時間は目立たない様にコソコソと野球の練習をしながら時間を潰していた為、あながち間違えではないかもしれない。
「別に俺は元々する気は無かったけど……それなら確かにラフプレーはしない方が良いな!
野球ってラフプレーへの規制が緩いのかと思ってたんだけど、違ったんだなー!」
北瀬がそう話したのは、ラフプレーをコソコソと行っていた伊川に対する釘刺しを兼ねていたが……そんな事、入部1週間とちょっとの下級生達は気付かない。
ベンチ入りメンバーの下級生達は、北瀬が死球をぶち当てに行ってたら死人が出かねなかっただろうなと、盛大に顔を引き攣らせていた。
この部活には、実際にぶち当てようとした伊川がいるのだが、外面が良い為バレていなかった。
この言動で、北瀬はヤベー奴かもしれないというイメージが付いた可能性がある。
彼のラフプレーをする気は無かったという言葉が嘘くさかったのだ。
北瀬は、俺は元々する気は無かった(けど伊川はしてたな)という意味を込めて言っていたが、それが薄っぺらく感じられたのである。
実際の所、彼は溝色の中学時代を過ごしても善性が無くならないかなりの善人なのだが、そんな事を後輩達は知らないのだ。
イメージダウンの理由が割と理不尽で、北瀬は可哀想なのかもしれない。
学校を提供してくださり、ありがとうございます!少し展開が変わってしまいすみません
帝東高校vs成孔高校で伊川が立てていたフラグを回収していて、凄い発想力だと思いました!
沢山オリジナル学校を提供してくださる方々のお陰で、割と早い投稿頻度が維持出来ています。ありがとうございます!