【完結済】気付いたらパワプロで適当に育てた選手に転生してた話   作:いちごケーキ

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4球目 基礎知識無し

次の日、朝練は昨日と同じ様に走り込みをして、午後練はバットの振り込み。

俺達も同じ事をするんだろうと思っていたが、部室にいる

監督に呼び出されたので2人で彼のもとに全力ダッシュした。

 

 

 

『失礼します! ……おはざーす!』

 

前の監督と違って、部内での立ち位置は高いから真面目に挨拶をした。

ヤンキー座りを無意識の内にしそうになったが、相手は不良ではなく大人だと思い出して、真面目そうな感じがする正座を選んだ。

ヤンキー座りよりはマシかもしれないが、叱られている訳でもないのに木の床に正座するのはおかしい事に気付いていなかった。

 

「そんな床の上で正座しなくても良い。てきと〜に楽にしてて良いよ」

「あざーす!!」

 

楽にして良いと言われたので、素直にあぐらをかく。やっぱりこれが落ち着くわ。完全に無意識だが、2人はヤンキー座りが落ち着く身体になっていた。

 

「でだ。お前らの昨日の投球内容、アレワザと?」

 

投球内容がワザとって何の事だ? 2人は何の事か、さっぱり分からなかった。

 

『……?』

 

だが分からないと言ったら殴られるかもしれないと思った彼らは沈黙、それが正解だと思い込んだ。

北瀬はアイコンタクトで、沈黙が正解なんだみたいな名言の漫画がなんかあったよな、何だっけ? と聞いた。

それを伊川は完全に察知して、あーあの無限休載の漫画だよと答えた。非常に精度の高いこのアイコンタクトは、いっそ何かに活用出来ない物だろうか。

 

「だから、打ち負け無いと思ったからストライクゾーンの低めにボール集めたのかって聞いてんの!」

「えっ、その普通に考えて、低めにボールを集めれば、打たれないと思って……」

「あの、態々ボールゾーンに投げるのって、意味あるんですか?」

 

(低めに投げれば打たれない可能性が高いなんて、俺如きが自惚れ過ぎたかなぁ)

 

北瀬はそう答えた後、投球内容の悪さを理解してないのに殆ど正しい理由の後悔をした。

伊川は、ボールゾーンに投げさせない配球をした事を責められているのだと言葉尻から気が付き、内心震えながら投げる意味を聞いた。

 

正確に言うなら低めのストライクゾーンにしか投げなかった事だが、それよりも問題なのは、パワプロCPUに脳味噌を侵されている事だ。

北瀬の球ならとんでもないボール球を投げても、見てから振れない速度なので空振りしてくれる筈なのだが、彼らは暫く気付かない。

 

 

 

 

(あーこいつら、バッティングピッチャーとかに慣れ過ぎてて、試合勘ってモンが全く無いんだな)

 

まさか練習内容以前の問題、ゲーム脳に問題があるとは気付かなかった。そもそも轟親子の家にはゲーム機が無いから、パワプロなんて物は知らない。だから気が付く訳が無い。

まあ、何のせいで試合勘が目茶苦茶なのかと言う事は些細な事なので、気付かなくても良い話だ。それに本人達は実際試合経験が無いので、あながち間違いでは無い。

 

「ボールゾーンに投げる事で打ち気を逸らしたり、空振ってくれたりすんだろ。常識だよジョーシキ! まあ殆ど試合経験無いならしゃーない。でだ」

 

そういえばパワプロでも、そんな効果があった気がする……雀の涙だけど。彼らはまだ入部2日目なので、ゲーム脳から抜け出せていなかった。

 

「これじゃ今の所、伊川をキャッチャーとしては使えない。まあ渡辺も今の所北瀬のボールは取れないだろうから、そん時だけはやって貰うが……

で、北瀬もピッチャーだけど試合に出さない時があるのは余りにも惜しい。だから、2人共サブポジションを決めて貰う

北瀬は肩の強さ的に外野で良いか?」

 

確かに俺等の打撃けっこう良かったし、試合には出した方が良いかもな。スタメンがどれ位の強さか知らないから、実際の所良く分からないけど。

暴力的な才能に無自覚なまま、強豪校を轢き殺す予定の彼らは(もしかしたら俺ら以上の打撃能力がある先輩いるかもしれないし。昨日投げてた投手は控え程度かも?)なんて戯言を真剣に考慮していた。

そこまで投手が揃っていたら既に強豪校だ。その場合、部員勧誘なんてしてなかっただろう。

 

「はい、大丈夫です」

「よし!……伊川はセカンドか外野だな。どっちやりたいとか有るの?」

 

セカンドは小学生の頃やってたんだよな。どうせなら北瀬のボール取るかと思って、中学時代はキャッチャーやってたけど。ならセカンドが妥当かな。

 

「じゃあセカンドやった事あるんで、セカンドでオナシャス!」

「へーそりゃ良い事聞いたわ。あれ、じゃあ北瀬はやってたポジションとか有るの?」

 

やってた、やってたかぁ。まあ、練習試合に出た事あるっていう点ならライトで出てた事あるな。全く練習してないけど。だって毎回試合出る位真面目な奴、俺と伊川位しかいなかったし、まあポジションは流動するよね。

 

「一応、練習試合の時先輩ピッチャーが来てたらライトに移ってたっス」

「……なるほどねー、そりゃこっちとしてはラッキーだな」

 

練習試合に来てたらって、どういう事だ……? そうかなるほどね、サボってて練習の来ない奴が居たんだろう。元監督も論外だが、チームも崩壊してやがったという事か。

よくそんな環境のチームからこんな凄え奴が二人も出てきたよな、才能って怖。

野球に全てを捧げて来た俺だが、全盛期でもこの2人よりは弱かっただろうな。いやマジで、野球って才能の世界だわ。だからこそ、そんな奴らをどう使うか、どう攻略するかってのが面白いんだけど。

轟監督は、ニヤリとしながらそう思った。

 

 

 

 

 

入学してから数週間、俺達はひたすら野球ばかりしている。いや本当に野球とついでに授業位しか受けていない。クタクタで、体力も気力も限界で、趣味のゲームをする余力すら無いのだ。

というかこれは、野球をしていると言っては駄目かもしれない。筋トレ! 筋トレ! 打撃練習! 筋トレ! 筋トレ! 投球練習! の繰り返しだ。

もう何時間やったんだろう。暗黒ヤンキー時代の3年間の記憶があるからやっていけてるが俺達は本来、春休みの筈だったのになぁ。

いや、マジで、疲れる。

こっそりちょっとだけサボりながら、俺も伊川もげんなりしていた。

 

「真田先輩、お疲れ様です」

「筋トレ、マジで疲れますよねー」

「おー涼に始か。おつかれ」

 

真田先輩は真面目に筋トレしていたのか。凄く真面目だなぁ。どうせ少し位ならやらなくてもバレないんだし、サボれば良いのに、なぁー伊川。だよな北瀬。

いつも通りアイコンタクトで、そんなどうでも良い事を以心伝心していた。

 

「お前らは何してたの?」

『えっへへへ……』

 

サボっていた事を誤魔化そうとしたら、2人とも変な笑いが出てしまった。これじゃあバレバレだ。まあ怖い先輩じゃ無いし、多分そんなに怒られないだろ。でももしかしたらキレるかもしれないなぁ。嫌だなぁ。

 

「ちょっとサボってました、すんません」

「やっぱ練習キツくて、今までガチで練習した事無かったんで身体に堪えて……」

 

真田先輩はドン引きした顔をしていた。えっ、そんな変な事俺ら言ったか? 2人は気付いていなかったが、彼らの打撃はプロすら凌駕している。

こんな選手が練習を録にしてなかったなんて、じゃあ練習したらどうなるんだろうかと考えて当然だ。

 

轟の打撃力は、ずっと練習してた事を考えると、分からんでも無い……? 気がするけど、こいつ等は色々もう違うだろ!

同じ人間なのだろうか、どうなってるんだよ。やっぱ野球は才能なのかな、でも俺も昔より強くなってるしな。

真田はそうやって、うんうん唸りたくなった。

 

「すっげぇな、天才って奴か? まあ分かるよ。うちの練習、慣れてないとすげぇキツいもんなー」

 

真田は少しだけ、彼らに練習しろと言いたくなったが、彼らより実力が劣る状況で言うのは違うだろうと思い言わなかった。客観的に見ると間違った選択だ。

実力がある人間なら何をしても良い訳ではない。弱小校が甲子園に行きたいなら少なくとも、チームは団結していなくてはならない。

本人達が天狗になっているなら聞いてくれなかったかもしれないが、そうでないなら指摘した方が良かった。そういう人間関係への躊躇によるミスは、まだ高校生なんだからあって当然の事だが。

 

 

 

 

 

入部してから1ヶ月が経った。俺達は基本、筋トレしたり部内試合をしたり、伊川は配球を考えたりして過ごしていた。

 

北瀬が無限にホームランを打っているだけではマトモな練習にならないので、手加減してみろと言われて普通のヒットを放ったり、紛れアウトを取られたりしていた。

なる程、こいつ等は手加減は目茶苦茶得意なのか。監督はそう気付いて、伊川に守備が取れるかギリギリの所に打たせたりしていた。

 

 

 

そういう手加減プレーばかりさせているとやってる本人の練習にはならないんだけど、この2人+雷市に只管打たれろって言うのも真田の負担が重すぎるから仕方ねぇな。まあたまには打たせるけどよ。轟監督はそう言った方針だった。

また北瀬に球を全力で投げて貰う事で、大幅に雷市の打撃能力が向上した。

 

(やっぱ実践が有ると伸びるなぁ。こんな奴の球永遠に打とうとして、心が折れないのも才能だけど)

 

ちなみに監督は投手としての北瀬にそういった手加減プレーは求めなかった。投手は繊細だから、1度覚えた手抜きは忘れられなくなる可能性があるからだ。

実際の所、本当にやったらそうなってしまったのかはやってないから分からないが、まあ妥当な判断だろう。

 

 

 

それにしても、マジで練習試合少なくないか? 中学時代のチームも殆ど無かったけど、今の部活は真面目な部活なんだしもう少し位練習試合が多くても良いのにな。いや強豪校とかじゃなくて普通のチームだし、こんな物か。

2人は練習中真面目にやってるつもりになりながら、大体こういう感じの事を考えていた。

 

部内の定例会議、監督はニヤッとしながらこう言った。

 

「ゴールデンウィークは群馬に練習試合しに行くぞー。打順はこうだ

 

1番 レフト・秋葉一真・1年

2番 キャッチャー・伊川始・1年

3番 サード・轟雷市・1年

4番 ピッチャー・北瀬涼・1年

5番 ファースト・三島優太・1年

6番 ライト・真田俊平・2年

7番 セカンド・福田・3年

8番 ショート・小林・3年

9番 センター・大田・3年」

 

俺達のチームってちゃんと、練習試合っていう概念があったんだ。というか、何で態々県外に行くんだろう。もしかして強豪校だったりするのかな?……いや無いか。うちみたいな普通の学校に、そんなコネがある訳無い。

てか俺達、ちゃんとした試合でバッテリー組むの何年ぶりだろうな。いや、公式戦では無いけどさ。2人は、ちょっとワクワクしていた。

 

 

 

「地方大会では、これが対強豪校用の基本打線になる。で、戦力を隠す場合は

 

1番 レフト・秋葉一真・1年

2番 サード・福田  ・3年

3番 ピッチャー・真田俊平・2年

4番 ファースト・三島優太・1年

5番 キャッチャー・渡辺・ 3年

6番 ショート・小林・   3年

7番 センター・大田・   3年

8番 セカンド・伊川始・  1年

9番 ライト・北瀬涼・   1年

 

って感じの打線になる予定だ

この場合真田が疲れたら三島と交代で、伊川と北瀬は下手なフリをするのが上手いから下位打線に入れた。当然分かると思うが、理由は注目されたくないからだ。まあ弱小校同士の紛れだと思ってくれるだろ

そういう手加減を雷市は出来ないから、今年の夏は強豪校と以外の対戦では控え扱いだ

後俺達は戦力揃ってないから、誰でも急に試合に出す可能性があるから心構えはしておけよ? 北瀬のポジションに全員代打とかもあるぜ!」

 

『はいっ!』

 

ワクワクするなぁ伊川! 校内試合も悪くなかったけど、やっぱ校外試合は別だよな北瀬!

2人は今日もアイコンタクトで会話が成立していた。

 

そして他の人もこう思っていた。

確かに北瀬は強いけど、ピッチャーなんだから出ずっぱりは無いよな。てか全員代打はヤバくないか。

轟とかとは比べ物にならない位弱いけど、俺達にだって多少の実力差はあるんだ。超ナメプじゃん、勝確の時にやるんだろうなぁ。

……でも、楽しそう。俺達だって試合に出られるんだ!

 

「で、何か質問あるか?」

「何でワザワザ、練習試合で県外行くんスか?」

 

北瀬は思い立った事を直ぐに言った。中学時代ならボコボコにされる所だが、温かなこのチームなら大丈夫だと思ったからだ。

1ヶ月と少しで、先輩達にそれ位の信頼は持っていた。少なすぎると言ってはいけない。彼らにとっては重大な事なんだから。

 

「そりゃ、強豪校に夏の大会まで実力隠す為だよ。稲実に青道、市大三高って強豪校が山程あるからな。そういう意味では、この地区は目茶苦茶ハズレだぜ」

 

へぇ、そんなに強豪校があるんだぁ。と彼らは知らなかった。彼らの中学時代は、野球部ではなく実質喧嘩部だったから仕方ない。それに本人達は自覚してないが、ゲームキャラに憑依して世界線が変わっているので、知らないのも当然だった。ちなみに雷市も知らなかった。

他の人達は、そんなの知ってるよ当然だよと思っていた。まさかチーム内に3人も知らない人がいるとは全く思っていなかった。

 

「群馬なら、まあ薬師の実力がこっちまで知れ渡る事は無いだろう。試合は2回、つうか2校の合同練習に混ぜてもらう感じだ。こんな機会は中々無い、思う存分楽しめ!」

 

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