【完結済】気付いたらパワプロで適当に育てた選手に転生してた話   作:いちごケーキ

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薬師高校の打順

1番 伊川(セカンド)
2番 北瀬(センター)
3番 轟(サード)
4番 火神(レフト)
5番 結城(ライト)
6番 三島(ファースト)
7番 秋葉(キャッチャー)
8番 米原(ショート)
9番 真田(ピッチャー)→友部

打撃力だけを考えて入れていった恐怖の打線です。敵味方問わずですが。
外野はセンターの北瀬が広範囲を守り、内野はセカンドの伊川が守る。後はピッチャーが何とかしてくれという責任放棄守備になります。
まあ既に関東大会出場は決まっているので、最悪負けても仕方ないと割り切っています。




69球目 挑戦

 

 

 

 

4月にしては肌寒い気候の中、5回戦目で戦うのは青道高校。

合宿させて貰ったり、吹奏楽部を貸し出して貰ったりと、かなり縁のある相手である。

 

もう何年も甲子園に出場出来てないらしいが、それは彼らの実力が無い事を意味はしない。

春のセンバツ準優勝の稲城実業や優勝校の薬師高校など、同地区に強豪校が多過ぎるという不運が大きいのである。

 

 

……そんな相手に、轟監督は若干ナメプみたいな発言をかましていた。

 

 

「今日の試合、5回まで真田、6回からは友部で行く予定だ!

この試合は甲子園なんて賭けちゃいねーが、全部勝って気持ちよく関東大会に行きてーからな……頼んだぜお前ら!!」

 

『ハイ!』

 

当然この発言には理由がある。

準決勝で戦う可能性が高い帝東高校、成孔高校、市大三高のどれかと、決勝で戦う予定の稲城実業の2校に対してエースを起用する予定だからである。

 

流石に、甲子園を賭けた戦いでもないのに北瀬に3連投なんてさせられない。

だから青道高校と戦う今回は、エースを温存するしか無いのである。

 

 

 

 

1回表、青道高校の攻撃は1番倉持。

俊足を活かした盗塁は、カルロスと並んで西東京1の実力だ。

元々はスイッチヒッターだったが、落合監督の命令で左打席に専念する事になっている。

 

 

___バシッッ!

 

「ストライク!」

 

薬師バッテリーは、インハイギリギリにカットボールを選択。これを見逃して、倉持はノーボールワンストライク。

 

 

___バシッ!

 

「ボール!」

 

次の投球、薬師バッテリーは顔面スレスレを狙ってストレートをぶん投げた。

倉持は慌てて避けて、判定は当然ボール。初回から危ないボールを投げるなよとイライラしながら、彼は冷静に今のボールに対してどう動くべきだったか考えていた。

 

 

(危ねーな! ……いや、いっそ掠らせて出塁するべきだったか? いや、大量得点大量失点の薬師相手にやってたらキリがねぇか)

 

 

そうやって、彼の思考にノイズが混じってしまったのが良くなかったのか、倉持はあっさり三振。これで、ワンアウトランナー無し。

 

 

 

 

次の打順は、2番小湊。

木製バット使いだった気がするが、いつの間にか金属バットになっていた。ミート力が売りの選手である。

……薬師高校のメンツは知らないが、実は小湊も落合監督の命令で金属バットに強制変更させられていた。

 

 

___ガギン!

 

まだ金属バットに適応出来ていないのか、当たりは鈍過ぎるボテボテのゴロだが、上手く2・3塁方向に転がした小湊。

サードかショートは、ちゃんと捕球して送球できるか? そう言った感じで観客達から注目されていた。

 

……だが、何故かセカンドの伊川が飛び出している!

 

 

「俺が取る!」

「カハハハ……任せた」

 

小湊が打つ直前、なんだか嫌な予感がしてサード方向へ飛び出していた伊川。

彼は何となくサードに来る感じがしたとしか考えていなかったが……実際の所、無意識に小湊の視線で察していたらしい。

元々の守備位置を放棄して、全力でサード方向まで走っていた。リスクを恐れる伊川とは思えない動きである。

 

真剣に、積極的にやっていれば怒られない環境が、彼の潜在能力を活かしつつあるのだ。

彼の守備力も走力もBまで上がっている為、ギリギリ打球に追い付いていた。

そのままファーストへ送球し、なんとか2番小湊をアウトにする。

 

 

「助かったぜ始! 三振取るつもりだったんだけどなー」

「いえ、真田先輩が割と仕留め掛ってたお陰です!」

 

三振を取るつもりがゴロにしか出来なかった真田は、機転を利かせてアウトを取ってくれた伊川にお礼を言った。

真田は、またアウトを取るのに失敗しちゃったなーという雰囲気である。

そもそも、こんなボテボテのゴロを取れない薬師野手陣の問題が大き過ぎるのだが、そんな事を試合中に考えたりはしない。

 

……というか真田はムービング使いなので、普通に考えたらゴロを量産するタイプのピッチャーなのだが、チーム事情で三振を狙うしかないのである。

これで多分、プロスカウトからの評価が悪くなっていると思われるので可哀想な話だ。

 

 

 

 

ツーアウトランナー無しで、打順は白州。

尖った性能を持つ所がなく地味だが、打撃良し守備良しの優秀なプレイヤーである。

 

 

「……ボール、フォア!」

 

臭い所はカットし、8球まで粘ってフォアボールをもぎ取る事に成功していた。

 

 

 

ツーアウトランナー1塁で、打順はエース兼主砲の降谷。

最速154kmのストレートを投げる怪物で、北瀬がいなければ高校最速のピッチャーである。

 

バッターとしても長距離砲として優秀で、エースで4番という言葉に相応しい男だ。

……落合監督は内心、元薬師クリーンナップに勝って甲子園に行くのは厳しいと考えている為、降谷をドラ1として排出して知名度や名声を稼ぐ事を狙っている

 

 

___カッキーン!

 

気温が高いと調子が悪くなるこの男は、肌寒いからか今日は調子が良いのである。

真田から確定ホームランを奪い取り、涼しい顔をしてダイヤモンドを回っていた。

打って当然だと考えているのではなく、感情が表情に出づらいだけなのだが、そんな事を薬師部員達は知らない。

 

真田は、苦い顔をしてチームメイトに謝っていた。

 

 

「初回からホームラン打たれちまった、悪いな……」

 

「ドンマイドンマイ! 良い球来てましたよ!」

「マグレってありますからね……」

「カハハハ……どんまいサナーダ!!」

 

珍しく、野手陣がピッチャーを励ます展開。

彼らは2点取られた事など対して気にせず、そんな事もあるよねといった扱いをしていた。

 

どれだけ失点しても、それ以上に得点すれば俺達の勝ちだからな! ……まあそもそもの話、真田先輩本人はそんなに失点しないけど!

だいたい、上級生の反応はそんな感じだった。

 

1年生達は、初回からあっさりホームランを食らってあ然としていたが……楽勝ムードを漂わせ続ける先輩達を見て、薬師高校のムードを掴み始めていた。

正確に言うなら、楽勝ムードではなく何とかなるさムードなのだが、そんな事を後輩達は知らない。

春に全国制覇したばかりの先輩達が、何年も甲子園に行っていないチームに負けると感じなかったのである。

 

 

 

5番のチャンスに強い御幸は、ランナーがいない場面ではそこまで強く無いのであっさり凡退。

これでスリーアウト。次は薬師高校の攻撃になる。

 

 

 

 

1回表、薬師高校の攻撃は1番伊川。彼はあっさりツーベースヒットを放ち、北瀬への投球を待ち構える。

 

 

___バシッッ!

 

「ストライク!」

 

歴代高校公式記録で、2位の剛速球を放つ降谷。1位は北瀬本人なので、彼からすれば見たことがない速球使いに見えている。

そして、今日の降谷は絶好調。良く自滅するが、調子が良い時は手が付けられないタイプのピッチャーである為、今日の降谷の脅威度は非常に高い。

 

 

(あー……なんか今日調子悪いんだよな。降谷さんのボール打つのなんて、マジでキツいんだけど)

 

連戦や一昨日の揉め事もあり、実は今日絶不調に陥っている北瀬。

誰にも言っていないが自分で調子の悪さを自覚している為、駄目だこりゃと内心感じていた。報連相が出来ていない。

 

 

(伊川ー、コレ自力で打つの無理だわ。手伝ってくれ)

(分かった。どうすれば良い?)

(うーん……じゃあバントのフリするから、盗塁して3塁まで行って。その後フライ打ちに行くから1犠打って感じでお願い)

(オッケー)

 

よくよく考えるとかなり難しい事を、伊川に要求する北瀬。本人達は、難しいと思われる事に気付いていなかった。

甲子園に出場していない為あまり知られていないが、高校最強クラスの天才キャッチャーである御幸に対して、伊川は盗塁を決められるのだろうか……?

 

降谷が投球動作を始めた瞬間、北瀬はバントの構えを取った!

 

 

「サード!」

「ストライク!」

「……セーフ!」

 

あまりバントや盗塁が警戒されていなかった事もあり、甲子園でもそこそこ速い程度の走力Bである伊川は、剛速球&肩Aを相手になんとか盗塁を決めていた。

 

 

「またアイツらは、全く指示出してないのによー……良いぞ北瀬、伊川ー! やりたい事はガンガン試せー!」

「北瀬先輩、伊川先輩! ナイスです!!」

「でも、カウント悪くしてまで進む必要あるか?」

「良く分かんねぇけど……面白しれーぞー!」

 

ちなみに、降谷はボール球を投げてランナーを刺そうとしたから、北瀬が上手くやれば逆にカウントは良くなっていた筈だった。

だが、北瀬は全くバントの練習をしていない為、ボールが来てもバントの姿勢を取り続けてストライクを取られている。

 

そもそも彼は、多分バントなんて出来ない。いくらパワプロ能力があっても、1度もやって無ければ出来ないのである。

逆に言えば、数時間位練習しただけでバント出来るようになるという事でもあるのだが……やはり才能の暴力とは恐ろしい。

 

 

___ガギーン!

 

「……セーフ!!」

 

「悪くはないぞー、悪くは!」

「惜しいぞー! 北瀬ー!」

「次はホームラン打てよー!」

 

伊川の盗塁の後、北瀬は宣言通り犠打を放って1点を返した。

一応1点取っている筈なのに、ベンチからは野次が飛んできているが……自他共に投壊打線と呼ばれる彼らでは仕方ないだろう。

 

 

 

 

「カハハハ……カハハハハ……! 降谷、打つ!!」

 

ワンアウトランナー無し。ネクストバッターズサークルから、高笑いをしながら轟が現れる。

ちなみに彼は、自分が笑っている自覚が無い。楽しい楽しい打撃の時間に、テンションが上がって無意識に笑っているのだ。

 

 

___カキーン!

 

『わああぁぁ!』

「良いぞ轟ー!」

「コレを見に来たんだよ……!」

「降谷相手でも盛大なホームランだなー!」

 

剛速球の降谷からでも、盛大なホームランを放った雷市。

やはり彼は、高校最強打線の主砲であるだけの事はある素晴らしいバッターだ。

 

 

 

 

あっさり2-2同点に追いつき、打順は4番の火神。

 

上級生12人と監督コーチに理事長位しか知らない事ではあるが、彼は呼んでもいないのに体験練習に訪れ、真田キャプテンからホームランを打って推薦入学者に滑り込んだ過去がある。

火神は、甲子園クラスのピッチャーから1打席で打てる、天才的なホームランバッターだ。

 

 

___カキーン!

 

バットコントロールも1年生春の段階でBと良い、優秀な天才バッターとして長打を放つ。これは2塁打になるだろうと思われたが……

 

 

「うおおぉぉ!!」

 

「嘘だろ?! 3塁狙うのかよ?!」

「ギリ行けるか?!」

 

火神は2塁打では満足出来なかったのか、3塁コーチャーの指示を無視して全力で3塁を狙った。

走力Bと、甲子園選手の平均より上の速度を活かした走塁。

セーフかアウトかギリギリの所だったので、審判は少し悩んでいたが……判定はどうなるか?

 

 

「……アウト!」

 

「惜しいぞ火神ー!」

「次も狙えよー!」

「足速えーな!!」

「ナイス長打!!」

 

ギリギリの所で、審判はアウトを宣言した。もしかしたら、サード金丸の自然なアウトアピールが効いたのかもしれない。

火神は、そういった細々とした動きは苦手だった。

 

薬師ベンチは、暴走気味だった火神を暖かく迎え入れた。あくまで、全力で試した結果ならそれを歓迎する姿勢だ……元下剋上狙い弱小校のらしい、アグレッシブな判断である。

 

ちなみに火神は後々、3塁コーチャーを無視したのではなく見えていなかったと話す。

ついこの間まで1人で練習していた為、他人の指示を見ながら走る事が出来なかったらしい。

 

 

 

 

ツーアウトランナー無しで、打順は5番結城。

 

火神と並ぶ、新入生の中で1番薬師らしい選手である……つまり、素晴らしい打撃力とかなりマズい守備力をしているという事だ。

地元の選手にも拘らず、リサーチ不足で危うく推薦を出せない所だったが、彼本人が体験練習に訪れてくれた事で発見出来た。

 

ちなみに、青道高校の元キャプテンの弟らしい。ライバル校の主将の弟を見つけられないなんて、どういったスカウト方法をしていたのだろうか?

 

 

___ガギン

 

残念ながら、彼はミートEと推薦入学者の中では平均的な技術力だったので、普通に打ち損じてゴロを放ってしまった。

薬師野手陣相手なら余裕でセーフだったかもしれないが、実際の相手は青道高校である。

あっさりボールを捕球されてアウト。これで攻守交代である。

 

 

「ドンマイドンマイ!」

「惜しい!」

「次があるぞー!」

「結城くん、惜しかったよー!」

 

「…………次は打ちます」

 

上級生達は呆気なくアウトを取られた結城も暖かく迎え入れていた。

惜しかったなー、次はホームラン打とうぜ! と言った反応である。上級生達はホームランが好きなのは分かるが、それを無意識に後輩にまで求めるのはどうかと思われる。

 

何となくその流れに乗って、ベンチ入りしている1年生達もテンション高く結城を迎え入れていた。

……だが自分に対して理想の高い結城は、内心若干嫌がっていた。

 

俺ならもっと上手くやれた筈だ。だから、俺が失敗したなら罵声でも飛ばしてくれ。と言った考え方をしていたらしい。

俺は将来メジャーでプレーする男、まだまだこんな程度の実力では足りないと考えているのである。

 

……まだ1年生なのに、この男はあまりにも理想が高かった。その理想が吉と出るか凶と出るかは、まだ誰にも分からない。

 

 

 

 

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