【完結済】気付いたらパワプロで適当に育てた選手に転生してた話   作:いちごケーキ

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前回アンケートに答えてくださった読者様、ありがとうございます!
4月時点に入れたい内容が沢山あって、どれを書こうか悩んでいたのですが、投票頂いたお陰で決められました!

活動報告にコメントを下さる方や感想をくださる方、イイネを付けて下さる方や評価を入れてくださった方に、誤字報告を下さる読者様、そして読んでくださっている読者様、本当にありがとうございます!
頂いた言葉や投票結果を、何回も見直しています!
ここまでやってこれたのは、見てくださっている読者様がいるからです。これからも完結まで投稿していく予定なので、出来ればよろしくお願いします!


75球目 稲城実業vs青道高校

 

 

 

 

 

今日は春季大会決勝戦、稲城実業vs青道高校の試合がある。薬師野球部は、偵察がてら全員で試合を見に来ていた。

ちなみに、別にレギュラー達で固まれとかいう指示は出していないのだが、何となく普段のメンバーで集まった結果、1軍・2軍・3軍でキレイに分かれていた。

 

 

 

 

 

火神と結城、奥村と瀬戸のコンビは敵情視察とは言いつつも、何やかんやこれから始まる試合にワクワクしている様に見える。

 

 

「やっぱり、先発ピッチャーはこの人しか居ないよなぁ……! 都のプリンス、成宮鳴!」

 

春のセンバツの活躍で、都のプリンスというニックネームが付けられている成宮。

ちゃんと鳴ちゃんフィーバーも起こっていたので、ファイアーフォーメーションの薬師vs都のプリンス成宮鳴として盛り上がっていたらしい。

 

 

「ああ……変化球の切れ味鋭く、ストレートの球速は現在150km。決勝戦を戦うなら、この人しかいない」

「光舟もやっぱり、成宮さんを評価してるよな! 確かにあの人スゲェし! ……まあ、北瀬さん程のインパクトはないけど」

 

ちょっと見ただけで分かる、天才的なピッチャーな北瀬と比較された成宮。

その言葉を聞いて、あの北瀬センパイと比べられる位凄いピッチャーなのかと、火神がソワソワしながら質問した。

彼は、相手は勝てねぇ位強い方が良いと考える様な、戦闘狂系の選手である。

 

 

「ナルミヤメイって、スゲェピッチャーなのか?」

 

瀬戸は、火神ってリトルから有名だった成宮鳴すら知らないのかと驚きながら説明した。

まあ彼はアメリカ帰りで、野球に対しての考え方の合わない弱小校から追い出された元野良プレイヤーだから仕方ない。

 

 

「そりゃそうだよ! 成宮さんのストレートは150km、変化球だってキレキレだし。ドラフト競合が予想される、凄いピッチャーだよ……あ、そっか。そりゃ火神はアメリカ育ちだから知らないか」

 

その言葉に、火神はフムフムと笑顔で頷きながら質問した。

 

ちなみに笑顔の理由は、同じ地域だから強い成宮と戦えるんだなと思ったからである。

戦えるかどうかはくじ運で決まる可能性があるが、稲城実業が春のセンバツ準優勝校。どちらかが格下に負けなければ、基本戦う事になるだろう。

いやまあ同地区に、青道高校や市大三校といった強豪校も存在するが、現在の戦力で言えば格下扱いしても問題ない。

 

 

「へ、そうなのか! それでさ……マイルで言うとどれ位だ?」

「えっ? 分かんねー……悪いな」

 

火神の一言に、答えられなかった1年生達。推薦入学者達なので、あまり成績は良くなかった。

まあ、マイルの計算は高校受験に関係ない気がする為、成績が良くても変わらなかったかもしれないが。

……ちなみに、150kmは約93マイルである。

 

 

 

 

 

そんな雑談をしていたら、試合開始時間となった。

1回表は、成宮が相手バッターを薙ぎ倒していく展開と言って良いだろう。

その光景を見て、俺達が21点取られて負けた青道が?! と火神は目を白黒させていた。

それだけヤラれたのは、野手陣の怠慢によるものが大きいのだが……まあ火神からすれば、そんな事を考える余裕は無かっただろう。

 

 

「マジかよ! セイドウのバッター掠りもしねー!」

「成宮さんの伝家の宝刀、チェンジアップも使わずに三者三振か……これは青道、かなりキツいんじゃないか?」

「……次は俺達が勝つ」

「チェンジアップは、ピッチャーへの負担が少ない変化球……もし真田先輩がこのボールを覚えたら……!」

 

 

 

……

 

 

 

攻守が交代し、稲城実業の攻撃。

由井と太平と北瀬が、雑談を交えながら試合観戦していた……伊川も近くで見てはいるが、あまり興味がそそられない様である。

もしくは、1人で話さずに見たいのかもしれない。

 

青道のピッチャーが10番の沢村である事を、由井が少し驚きながら話した。

沢村も剛腕投手とある程度エース争いが出来る位に優秀なピッチャーとなっていたのだが、やはり降谷には敵わなかった様である。

いや、落合監督の育成計画によって背番号が決められたのかもしれないが……部員達も、降谷がエースという事に異論は無かった。

 

 

「先発ピッチャーは沢村さんですか……剛腕投手の降谷さんの可能性が高いと考えていたんですが」

「昨日の成孔学園で、確か降谷が先発してたよねー。だからかな?」

 

何故か1軍メンバーがいる場所に紛れていた太平が、由井の発言に返答していた。

1人だけ1軍のいる場所に堂々と紛れ込む図太いメンタルは、割と野球向きかもしれない。

 

 

「なんか……稲城実業全員が、ホームラン狙いみたいですね」

「へー、そうなんだ。面白い試合になりそうだな!」

 

由井は神妙な顔をしながら口にしたが、北瀬は面白そー! という顔で笑っていた。

彼は鉄壁の様な守備を見るのも好きだが、長打の一撃を見ることも好きなのだ。

青道高校の守備相手なら、硬い守備も長打もどちらも見られるんじゃないかとワクワクしていた。

 

 

「北瀬さんは、稲城実業高校の打撃をどう思いますか?」

「? 普通に……ホームラン狙いってカッコいいと思うけど。由井は?」

「俺は、チームの特色に合ってないと思います。彼らは今まで、どちらかと言うと繋ぐ打線が特色でした。それを急に変えてきたとは思えないんですが……」

 

どこかチグハグな稲城実業打線を見て、由井は硬い顔を崩さずそう話した。

 

薬師高校の様に、リスクを飲み込んだ大振りではない。どこか焦っている様な、無理に薬師高校に似せた様なバッティングだと由井は感じていた。

 

薬師高校の打撃力を見て、自分達も真似しようと生徒が考えた可能性が高いと、由井は認識している。

表面上でしかない大振りを、真似した所で打撃力が上がる訳でもないと思うのだが……

薬師高校という学校の影響力を、由井は改めて実感していた。

 

 

 

……

 

 

 

「9回裏まで、0-0で来ちゃいましたね……」

「この場合、ランナーってどうなるんだっけ?」

 

西暦2018年だった中学生の頃は、タイブレーク制度が適応されていたと何となく知っている北瀬。

今ってどうだったっけと、由井に尋ねていた。ちなみに、タイブレーク制度の適応は2015年からである。現在は2006年なので、その制度が適応される事は無い。

 

まあ投壊野球の薬師高校に北瀬は所属している為、タイブレーク制度があろうと無かろうと、彼のピッチング内容は変わらない気がするが。

 

 

「この場合のランナーは、とにかく1点を欲して動く事になると思います。均衡が崩れた瞬間、直ぐに試合が決定付けられますから」

 

由井の言葉に、へーそうなんだという顔をした北瀬。俺だったらあの場面に立つのはプレッシャー掛かるかもなと考えながら、適当な返事を返していた。

ちなみに彼は、あまり1点の重みと言うのを理解していない。ホームラン打てば確定1点ゲットできるよなー位の感覚である。

普通のバッターはそんな簡単にホームランなど打てないのだが、彼はそのことに気付いていない。薬師の投壊野球に、感覚が汚染されている。

 

 

「そうなんだー、じゃあピッチャーは大変そうだね。1回ゴロ打たれただけで、試合が終わっちゃうかもしれないんだから」

「北瀬先輩……青道も稲城実業もゴロでランニングホームラン打たれたりはしないんで、先輩が考えてるよりは楽だと思いますよ!」

「……?!」

「あー確かに。じゃ大丈夫だな!」

 

北瀬の、1点を欲して動くようになる事を知らなかったと言う発言に、ドン引きしていた由井。

そこに太平が、ゴロランニングホームランは無いだろうと一見当然に聞こえる発言をした。

由井は一瞬、何言ってんだ当たり前だろうと考えたが、それが薬師の公式試合であったことだと気づいてしまった。

 

薬師の守備は酷いとは知っていたけど……流石に不味すぎだろ、良く北瀬先輩怒らないな! あぁ、やっぱりこの人も、人の良すぎる先輩たちの1人なんだなあぁと妙な納得をしていた。

 

 

ちなみに、北瀬の疑問に感じていたタイブレーク制度の有無については解決していない。

まあ試合を見ていれば、少なくとも10回には使われない事は分かるから、別に分からなくても良いのかもしれない。

 

 

そして、全く打撃音が聞こえない試合に飽き飽きしている伊川。うつらうつらとして目を擦りながら、どうにか起きていた。

ガチ系の1年生達の前で爆睡するのは難しかったらしい。

 

 

 

 

試合は結局、少しだけ浮いてしまったチェンジアップを痛打した、降谷のソロホームランによって青道高校の優勝となった。

降谷をドラフト1位で送る事によって、首を切られないようにしたいと内心考えている落合監督としては、最高に素晴らしい結果だっただろう。

 

ただこの試合により青道は降谷のワンマンチームだとか、10回1失点のエースを援護しない稲城実業だとか、酷い言われ方をすることが増えてしまったらしい。

まあ、薬師の味方ピッチャー破壊守備とか、悲しきゴロモンスター北瀬とかのあだ名よりはマシかもしれないが。

……強豪校モドキだと開き直っている薬師上級生達はノーダメージなので、やはり可哀そうなのは薬師打線と比べられ続ける同地区の学校だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

部員達が寝静まった頃、轟監督と片岡コーチは監督室で定期報告回の様な事をしていた。

最初の数回は飲み屋に行って話していたのだが、借金持ちの轟監督の金銭事情を考慮して、こう行ったやり方になっていた。

 

轟監督は最初は雑談から始めようとと思ったのか、よく考えると強豪校の監督として注意しなくて良かったのかと言うような適当な発言をした。

 

 

「今日の1軍達は、やっぱり自分のやらない試合に興味なかったみたいですね。伊川なんて眠そーな顔してましたよ!」

 

轟監督は、よく言えば抜くところは抜く教育方針である。

対して2・3軍を指揮する片岡コーチは、全員が集中して試合観戦をするような空気を作り上げていた……同じ部活所属なのに、まるで別の学校の様に空気が違う薬師野球部は大丈夫なのだろうか?

絶対、昇格してきた部員が困惑する未来しか見えない。

 

まあ指導方針が違い過ぎることや、お互いの指導を改善し合う様な時間的余裕がないこともあり、結局1軍は轟監督が指揮するもの、2・3軍は片岡コーチが指揮するものみたいな共存方法になってしまっているから仕方ないのだが……

 

 

「2・3軍の選手は、真剣に試合を見ていた様に感じられました。やはり実力が高い選手の試合を見る事は、彼らにとって大きな刺激になると思われます」

 

片岡コーチの頼もしい言葉に轟監督は、やっぱりこの人はチームをまとめ上げる事が得意だなぁ、元々不真面目な俺じゃそうは行かないだろうと感心しながら本題の1つに入った。

 

 

「なるほど、良い空気じゃないっすか! 1軍を脅かす様な選手が出てくれば更に良いですねー

今の所、上級生達と推薦入学者、後田中が1軍でやってますけど……ここからポジションを脅かしそうな選手はいそうですか?」

「ポジションを脅かす所までは、今の所行っていませんが……打撃能力の高い大和、守備や走力が高い岩崎、最近2軍に上げた、肩の強さが持ち味な錦織も面白い選手です。」

 

その発言を聞いた監督は、2軍にも掘り出し物とか居たんだーと少し酷い事を考えながら返事をした。

3軍のミーハーな選手モドキを見慣れ過ぎて、あまり2軍には期待してなかったのである。火神や由井、結城などの良い選手を推薦で取れている為、他が育たなくてもあまり問題が無かったことも大きい。

 

 

「なるほど……時間が空いたら、その選手を重点的に見ていくことにします!」

 

聞いていた限りだと守備能力が高い岩崎が面白そうだが、何かしら1軍に上げられないような弱点があるのだろうと薄々察していた轟監督。

実際、後で岩崎のミートGパワーGの打力を見て、これはスタメンになるのは厳しそうだと感じていた。打撃の薬師で、1人だけ打線の止まりどころを作ってまで使いたい守備力ではなかったのだ。

 

 

 

 

そんなことはさておき、そろそろ話題を変えようと思った轟監督は、昨日あった出来事を笑顔で話し出した。

 

 

「そういえば昨日、また真田を見に来たスカウトが居ましたよね! あいつもやはり、プロになれる器!

あいつを活かしきってやれない事は俺の責任もありますから……このままならプロに行かせてやれそうで、安心していますよ!

後は故障だけ気を付けて、じっくり基礎を固めさせていきましょうかね」

 

故障させた事も、優秀なゴロピッチャーとしての能力が活かせない環境な事も、結局は自分に責任があると考えている轟監督。

彼だって、監督という立場の人間が全てを間違えないとは思っていないが、それでも口惜しく感じてはいるのだ。

 

真田は怪我の事を、俺の責任だとは考えていないし……言った所で彼の重荷になるだけだから言わないが、割と申し訳なく感じてはいる。

スタミナが無い訳じゃ無いのに、完投できないのは怪我の影響だからだ。まあ医者が言うには、怪我は数年たてばほぼ完治する可能性はあるらしいが。

それでも彼が、大きな不利益を被った事に変わりはない。

 

 

片岡コーチは轟監督の言葉に共感し、青道高校で育てきれなかったエース候補を思い出しながら、今話題に上がっている真田についての所感などを述べた。

 

 

「真田はあまり、自分に自信がないようですが___彼も確かに、プロに値する器です

だからと言って贔屓をして良い訳ではありませんが、怪我持ちの真田は十分に注意を払って育成する必要があるでしょう……

今年から選手層は厚くなりましたが、轟監督は彼のライトへの起用は控える方針でしょうか?」

 

片岡コーチの予想通り、轟監督は真田をピッチャー専業にさせる予定だった。

今までは人数が足りなく、無理矢理にでも両方熟してもらうしか無かったが、今ならどちらかに専念させられるからである。

 

真田はピッチャーとしてもバッターとしても良いので、どちらに専念させるかは少しだけ悩んだが……

薬師にはピッチャーの駒が足りない事を考慮すると、どう考えても真田には投手に専念して貰った方が良いと轟監督は判断していた。

本人がどちらをやりたいのかは分からないが、まあ極端にやりたいポジションがある訳ではなさそうだから俺が決めちゃお、という若干適当な判断である。

 

 

今は誰も知らないが、真田の本来の資質的にはピッチャー向きだったので間違った判断では無かった。

真田本人は今、割とホームランに脳味噌が支配されている為、試合に出られる回数が減るのを内心残念がっていたが……優秀な後輩がいるから仕方ないと考えて何も言わなかった。

薬師高校は、報告・連絡・相談の出来ないチームである。

 

 

「まーその予定っすね! 無理に真田を使わなくても、大田とか火神とか、結城とか使えば大丈夫そうですし

いやー良かった良かった! 良い1年が入学してきてくれたお陰で、選手への酷使をあまりしないで済みそうですよ!

とは言っても、北瀬はこれからも連投させてしまうでしょうがね……」

 

轟監督の発言に対し一部賛同しながらも、片岡コーチは北瀬の起用に関して訂正を入れた。

 

 

「確かに、怪我リスクのある真田を無理に起用しなくても、優秀な選手が沢山いますから。私はその意見に賛成します

それと……確かに北瀬は身体が強い選手です

___ですが、それに甘え続ける様な起用をし続ける訳には行きません。選手達の肉体は、我々が思う以上に酷使されている可能性がありますから」

 

真面目な片岡コーチらしい言葉だったが……実の所、選手を壊すような育成をしがちなのはコーチの方である。

自分の肉体が頑丈だった事や選手を信じ過ぎてしまう事、この人の為に勝ちたいと思わせるモチベーター能力によって、日頃からの無理な練習が祟って故障してしまう選手が割といるのだ。

 

轟監督は熱血コーチと比べて適当な指示を出すことはあるが、あくまで内心、実業団所属だった頃に培った冷静な判断能力で指示を出している。

真田が故障したのは、彼の天才性と今までの練習不足が祟った事が大きな要因。

真田の故障は、かなりハズレ値の能力を持った選手だったので防ぐ事が難しかっただけで、本来轟監督は怪我をさせにくい指導者である。

 

 

薬師高校の場合、優秀な選手が無理に練習を詰め込んで故障する前に1軍に行く可能性が高いから大丈夫かもしれないが……轟監督も注意した方が良い。

 

 

「まあそうっすよねー。だからと言って、強豪校相手に北瀬を使わないのは難しいでしょうが……

それに、ライトに誰を置くかは難しい問題っすね。大田なんかは実業団からの誘いも既に多くありますし、将来性のある火神や結城を使うべきか……でも守備が酷すぎるんですよねぇ」

 

プロを目指していない上、既に実業団当確に近い大田よりも下級生を使うべきかもしれないという、若干卑怯な事をいう轟監督。

まあ上級生達ばかり使った挙げ句、後々暗黒期になるチームなんてよくある事なので、必ずしも間違った判断という訳では無いが。

 

その辺は善人過ぎる片岡コーチも一応弁えている為、無言で返して終わった。

言いたい事は理解できるが、そう言った決め方は宜しくないのではと考えている様だ。

ただ試合の采配を決めるのは監督だと考えている為、めちゃくちゃ怖い顔面を強張らせたままで終わっていた。

 

 

轟監督はこの半年位で片岡コーチの眼圧に慣れている為、黙っているだけだなと判断して、ついでに過去の選手の話を始めた。

片岡コーチは知らないプレーヤーの話だが、まあ半年前まで薬師高校の選手だったのだから良いだろうと考えたのである。

轟監督は、どうでも良い事を割と話すタイプである。

 

 

 

 

「社会人野球といえば、1年の夏までは小林って選手がいたんですよー!」

「存じています。俺が青道高校に在籍していた頃、キャプテンをしていたショートでしたね」

 

轟監督の言葉に即答したコーチ。

轟監督はそれを聞いて、そう言えば片岡コーチは、真面目な人なんだから戦って負けたチームのキャプテン位覚えてるか、と思った。

 

……当たり前の話である。片岡コーチを、薬師高校の適当さと比べないで欲しい。

いやまあ、片岡コーチも今は薬師野球部の一員だが。

 

 

知っているなら話は早いとばかりに、轟監督は彼の現在の活躍について語っていた。

監督として始めて育てた選手の事なので、凄く楽しそうに話している。

 

 

「そうそう! 薬師にしては守備範囲が広かった下位打席の選手だったんですが……なんか聞いた話では、サードでスタメン出場してるらしいんですよ

日本ガスの人からは、思ったより守備力なかったけど思ったより打撃力があったと言われてましてね。小林は守備型の選手だと思ってたんですがねぇ?」

 

投壊野球に慣れきってしまい、ミートBパワーC、守備力D捕球Cの小林を守備型の選手だと思い込んでいた監督。

まあ当時、薬師高校では1番守備が上手い選手だったので、その考えでも問題なかったのかもしれないが……流石に指標がおかしい。

たった半年で、感覚が狂わされまくっている。

 

 

「なるほど___確かに青道高校の監督としては、打撃型のショートとして認識していましたね。それに、天才達を纏められている優秀なキャプテンだとも考えていました

薬師高校に赴任してから、北瀬や伊川、雷市は自己主張が弱いと分かったので、前キャプテンの功績では無かったのかもしれないとも思いましたが……」

 

「まー、小林は普通に良い奴だったんですけどカリスマがあった訳では無いですね。その点で言えば、明らかに真田の方が良いっすよ

不真面目な所もある奴なので、完全にキャプテン向きかと言われると怪しいですが……」

 

轟監督は前キャプテンの微妙な能力をぶっちゃけながら、真田もキャプテンとして完全に向いている訳じゃないけどなと所感を述べていた。

 

その言葉を聞き、選手全員の人間性を育てていく片岡コーチは、その言い草はどうなんだと少しだけ嫌がりつつ一応相槌を打っていた。

片岡コーチの生徒を信じ抜く性格は美徳だが、少し潔癖過ぎる人間かもしれない。

 

 

まあ小林前キャプテンが轟監督の発言を聞いた所で、ですよねーとしか思わないので問題ない気もする。

半年で成り上がった弱小校に、カリスマのある3年生が都合良く在籍していたりはしなかった為、消去法キャプテンだと本人も自覚していたのだ。

 

いや、小林前キャプテンが居た頃に片岡コーチが入れば、少し強豪校のキャプテンとしての自覚が出たかもしれないが。

その頃は薬師野球部なんて注目されていなかったので、そんなIFはありえない。

小林は、数多くいる実業団選手の中でも打撃が優れているが、なんか影の薄い選手として何年も君臨し続けるだろう。

 

 

ちなみに片岡コーチが、轟雷市だけ名前で呼ぶのは監督と被っているからである。

真面目な性格から見て、名字で選手を呼ぶのが似合っている片岡コーチだが、別にそれに拘っている訳ではないからだ。マトモな効率重視の判断だろう。

 

 

 

 

今日もあくせく働きながら、こうやって意見をすり合わせていく轟監督と片岡コーチ。

2人は考え方がかなり違う為、完全に意見を一致させるのは難しいだろうが……逆に相手の悪い所を補える、いいコンビになるかもしれない。

 

彼らは甲子園優勝という目標の為に、性格が合わないなりに擦り合わせて行こうと、日々努力していた。

思想や方針が合わない2人だが、これからの薬師の為に頑張って欲しい。

 

 

 

 

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