【完結済】気付いたらパワプロで適当に育てた選手に転生してた話   作:いちごケーキ

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レポート提出期限が迫っているので、暫く投稿頻度が落ちます。コメント返しも多分遅れます
感想をくださった方がいたら、楽しく読ませて頂く時間位は取れるのですが、返信する余裕がないと思われます。必修の単位が掛かっているので…
休みになったら、頂いたコメントに返信させて頂く予定です。すみません


77球目 ベンチ入りメンバー

 

 

 

 

春季大会では青道高校に負けてしまったが、春のセンバツ優勝校として関東大会への出場が決まっている薬師高校。

 

明日はその、関東大会へのベンチ入りメンバー発表日。

1軍メンバー24人の内、4人だけが落ちる事になる為、1軍だけは少しピリピリしていた。

2軍や3軍は、まあ関係無いのでどうでも良いかと思いきや……3軍の薬師ファンモドキは盛り上がっていた。

 

 

 

彼ら3軍メンバーは、片岡コーチの指示通りに筋トレ室で筋トレをしながら、休憩時間はくっちゃべっていた。

 

そんな彼らは、自分は関係ないと分かりつつも、楽しげにベンチ入りメンバーの予測を話していた。

3軍にいる事を不甲斐なく思う選手もいるが、北瀬選手や伊川選手に轟選手の活躍を見に来ただけの部員も、薬師高校には多いのである。

野球初心者でも入学さえすれば入部出来る、春のセンバツ優勝校という肩書は伊達ではない。

 

 

「関東大会出場メンバー、お前は誰になると思う?!」

「まあ2・3年生の先輩達はほぼ当確で、火神と結城、それに友部は確定だよなぁ

火神と結城は明らかに天才だし、友部は次期エースとして起用したいのか、積極的に試合に出してるしな」

 

楽しげだが適当に話す1年生と、冷静にベンチ入りメンバーを考察する1年生、それを聞いている1年生もいる。

彼らは他人事ながら、明日のベンチ入りメンバー発表を楽しみにしていた。

彼らは、薬師高校の投壊野球が好きなのである。出来れば打撃が良くて守備が悪い奴が選ばれないかなーと思いながら、彼らはくっちゃべっていた。

 

 

「残りの5人も、推薦入学者の誰かだろうなー。誰が来ると思うよ」

「うーん、まず由井は来るんじゃないか? キャッチャーとしてもバッターとしても優秀だし

まだ北瀬先輩のボールは全然取れてないらしいけど、164kmのストレートがヤバすぎるだけと思う」

「確かに由井は来そうだよなー」

 

ベンチ入りメンバーについて考察している中、1人の部員が由井は入りそうだと話し始めた。

元々神童と呼ばれた有名プレイヤーだし、名前に見合った実力はあると思ったからである。

 

他の1年生もそれに賛同し、じゃあ残りの枠は4人だなと言った空気になった。

関係ない1軍ベンチ入りメンバーを考察するよりも、自分がどうやったら2軍に上がれるかを考察した方が良いと思うが……

 

そんな緩い空気の中、1年生の1人が、他の選ばれそうな部員は彼だろうと話し出す。

 

 

「俺は奥村もベンチ入りすると思うな! あいつのキャッチング上手くね? 正捕手争いに食い込める奴だと思うけど」

 

奥村も選ばれそうだという意見に、微妙な顔をした彼ら。

確かに奥村が並外れて野球が上手いのは認めるが、それ以外の所がダメダメだから怪しいなと思ったのである。

 

 

「いや……奥村も優秀なんだけどなぁ

先輩にケンカ売ったりするし、キャッチャーしかやらないって言ったんだろ? 選ばれる可能性は低そうだよなー」

『だよなぁ……』

 

実力はあるのに勿体ねぇなーという、微妙な空気が流れる。

彼ら3軍生の大半は、3年生になってもベンチ入り出来る気がしていないのだ。

 

努力も才能も足りないので仕方ないとも言えるが、もう少し、夢と希望を持って部活をした方が良いのではないだろうか?

将来、俺って薬師野球部だったんだって自慢出来るなー!

そんな俗に溢れた希望を持って部活に望んでいる人もいたが……幾ら何でもやる気が無さ過ぎるだろう。 

 

 

そんな微妙な空気の中、太平は敢えて大きな声ではしゃいで見せた。

 

「まー誰がベンチ入りした所で、先輩達が大活躍する事には変わらないけどな!」

「確かに!」

「だよなー!」

 

ベンチ入りメンバーが誰であろうと試合は変わらないという、今までの話が無意味になるような事を言い出した太平。

だが微妙な空気を吹き飛ばすその言葉に、何となく乗っかる部員も多かった様だ。

 

 

 

そんな中北瀬が、筋トレ室に忘れ物をして取りに来たが、誰もそれに気付かない。

下級生が盛り上がっている場所を避けながら、無くしたタオルを探している。

彼は無言で入室した為、誰も気付かなかったのだ。

 

 

そのままの雰囲気で太平が話題をジャックし、ネットで調べていたら見つけた、気になった出来事を話しだした。

 

 

「というか、北瀬先輩や伊川先輩に轟先輩達って、U-18出場メンバーに選ばれてたけど、合宿辞退したらしいよな」

「あぁ、言われてみればそんな時期だったよなー」

「俺も、何で北瀬先輩達がU-18に選ばれてないんだろーとは思ってたけど……そういう事だったんだ!」

 

太平の言葉に、なるほどねーと納得する1年生達。

大なり小なり、先輩達が合宿に行かない事を不思議がっていたのである。

まあ先輩達の誕生日を考えると、来年もU-18に出られるから選ばれなかったのかなぁと考えている1年生も多かった。

 

だから太平の情報を有難がりながら、1人の1年生がぽつりと言った。

 

 

「やっぱり先輩達も、春季大会に勝ちたかったのかなー。炎上して負けちゃったけど……」

 

そんな暗めの雰囲気が漂う1年生に、意を決して話しかけた北瀬。どうしても気になる事が有ったらしい。

 

 

「悪い、ちょっと良いか?」

『北瀬先輩?!』

「……もちろんです! どうぞ!!」

 

「ユー18って何だか分からないんだけど、やっぱり有名な大会なのか? 青森安良の舞元先輩にも、合宿来なかったなってメール貰ったんだけどさ……」

 

その言葉に、あんぐりと口を開けた1年生達。

まさか、日本最速の大エース、北瀬涼がU-18を知らないとは思いもしなかったのである。

 

驚愕と言った表情をしながら、1年生の1人が答え始める。

 

 

「え゛っ、U-18知らないんですか??

いやすみません! ちょっと驚いちゃったというか……

 

U-18っていうのは、18歳以下の野球選手が12カ国から集まって戦う試合で、今年は9月17日から9月27日にかけてキューバで開催される予定です」

 

 

やっぱり有名な大会だったんだな、知らなくて恥ずかしいと思いながら、北瀬はお礼を言った。

 

 

「へー、そんなのあるんだ! ありがとう」

「……北瀬先輩は、U-18について何か聞いていないんですか?」

 

流石に本人に知らせないで辞退させるのは問題じゃないかの考えた下級生達。

彼らの嫌な雰囲気には気付いた北瀬は、なんでU-18について俺が聞いてないと下級生は嫌なんだろうなと思いながら、普通に思った事を答えた。

 

 

「特に何も……まあ野球部あるのに無断欠勤って訳にもいかないし、別に良いけどな!」

 

その言葉を聞いた下級生達は、北瀬先輩は薬師野球部の為なら、大きな大会に出られなくても良いって事か?! と驚いていた。

 

勝手にU-18の合宿を辞退されていた事が判明したのに、別に良いって言えるのは凄いなぁ。

まぁ北瀬先輩なら、今回の合宿に参加しなくても選ばれるだろうけど……まあそう考えているなら、許すのも理解できるな。

 

そうやって自己完結した下級生達は、北瀬先輩って規格外だなぁと改めて感じていた。

 

 

そんな空気の中、忘れ物のタオルを既に見付けていた北瀬が、お礼を言いながら立ち去る。

 

 

「……俺探してたタオル見つかったから、そろそろ練習に戻るよ。U-18について教えてくれて助かった! ありがとう!」

 

『お疲れ様です!!』

 

 

 

ちなみに轟監督が勝手に断った理由は、主力に3人も抜けられたら大変な事になってしまうと考えたかららしい。

 

ちょっと酷い話だが、まあ彼ら3人は理由を言われていたら納得したと思われるので、まあ別に良いのかもしれない。

報告を怠る性質は、何とかした方が良いと思われるが……

 

 

 

 

 

 

 

 

久しぶりに飲み屋に来た、轟監督と片岡コーチ。

今から、あまり生徒達には聞かれたくない話をする様である。

 

 

「ビール2つとウーロン茶、串揚げセット3つください」

「ご注文確認させていただきます、ビール2つとウーロン茶1つ、串揚げセット3つでお間違えないでしょうか……少々お待ちくださいませ!」

 

店員に酒や串揚げを注文した後、まず轟監督が口を切り、ベンチ入りメンバーに付いての前提を確認し始めた。

 

 

「さてと……前提として、ベンチ入りメンバーに2・3年生は全員入れる予定ですが、片岡コーチはどう思いますか?」

「その判断は正しいと思います

今の2・3年生より優秀な新入生は、今の所人数が少ないので妥当かと」

 

轟監督の言葉に、片岡コーチも妥当だと話した。

今の2・3年生をベンチ外にしてまで、追加で入れたい1年生は居ないのである。

というか2・3年生合わせて12人しかいないので、そもそも1年生の枠は十分空いていた。

 

 

「ですよね! 後は火神・結城・友部・由井は当確だと思うんですが、どう思いますかね?」

 

轟監督は、次にベンチ入り当確の1年生について話した。彼ら4人は決定で、残りの3人が問題だと考えていたからだ。

 

 

「私もそう思います___それと、実力を鑑みれば奥村も妥当だと」

 

こんな片岡コーチの言葉に、微妙な顔をしながら轟監督は反論した。

確かにあいつは上手いし、ベンチに入れたら使える可能性はあるけど……人間関係が上手くないんだよなといった考えである。

 

 

「うーん……奥村はキャッチャーしかやらないって公言していて、使い辛いんですよね

それに北瀬・伊川と揉めたのか、何かギクシャクした印象を受けますし……」

 

2・3軍を指揮している為、奥村の確執を知らなかった片岡コーチ。

だが彼は、北瀬や伊川との確執があっても、奥村をベンチ入りメンバーにするべきだと主張した。

 

 

「なるほど、奥村は人間関係に問題があるという事ですね

 

___ですが私達が、上級生達の感情によってベンチ入りメンバーを決めるような真似は、よろしく無いかと

チーム全体が、上の言う事だけを聞く様になりかねない。それに、ただ只管に努力している部員達に、申し訳が立たないと思います」

 

片岡コーチの言葉に内心、理想論で言えばそうだけどさぁ……実際生徒達の人間関係って、チームの士気に関わるじゃん?

そんな事を考えて、微妙な顔をしている轟監督。

 

だが監督は、奥村の優秀さだって認めている為、ベンチ入りは絶対にさせないとまでは言わないで、ボソボソとした声で話しだした。

 

 

「まぁ理想論で言えばそうなんですけどね……でも実際、主力メンバーが嫌っている相手がベンチにいると、やり辛くないっすか?

そもそも奥村は、スタメンに置くような主力では無い訳ですし……」

 

轟監督の言う事にも理解を示しつつ、それでも片岡コーチは熱心に自分の考えを主張した。

 

 

「確かに奥村は今の所、薬師に必要不可欠な選手ではありません

ですが___選手の人間的な成長も信じ、チャンスを与えてやる事が、生徒達を預かる大人としての責任だと私は考えています」

 

「……分かりました。奥村はベンチ入りさせましょう」

 

 

片岡コーチの熱い思いを聞いて、まあ奥村をベンチ入りさせても良いかなと考え始めた轟監督。

そこまでコーチが言うなら入れよう。まあベンチギリギリの人間は、ぶっちゃけ誰でも変わらないしな。

 

最近奥村は、真田や友部にパワプロのボールを積極的に取りつつあるようだし、エース以外は奥村に任せても良いかもしれないと元々考えてはいたのだ。

 

急造捕手その2の秋葉より奥村の方がリードが良さげだし、

現役時代は基本的にDHをやっていた俺には、リードの良し悪しはあまり分からないが、何となく良さそうな事位は分かる。

 

信頼関係があまり構築されていない事が、どれだけ投球に影響するかは非常に不安だが……

所詮甲子園には繋がらない大会だし、ここで奥村の資質を確かめてみても良いだろう。

 

 

 

真田キャプテンと奥村は、割と親密な関係になっているのは、彼ら以外はだれも知らない。

もし轟監督か片岡コーチ知っていたら、絶対にベンチ入りさせるべき選手だと考えていただろう。

しょっちゅう真田と練習している、ちゃんとしたリードが出来る奥村に取らせるのが、お互いを信頼しているなら1番良いからである。

 

 

 

正捕手候補筆頭の由井の方が周囲との連携は取れているが、北瀬のボールを取る練習で手一杯なのだろう。

彼は、他のピッチャーとの投球練習をしている様には見えない。

だから由井の夏の地方大会での起用方法は、エース専用キャッチャー&代打の予定である。

 

北瀬が言うには、そろそろどれか1つ変化球を取れるように挑戦するかと由井と話しているらしい。

夏の甲子園までに、なるべく多くの変化球が取れるようになっていれば良いなと、轟監督達は考えていた。

 

 

 

夏の地区大会優勝でのキャッチャーの構想としては、由井はエースの専属捕手。それ以外のピッチャーは、奥村か秋葉に任せると言った方針になりそうだ。

元々秋葉は外野をやりたがっているので、出来れば奥村が台頭してくれれば良いなとも思っているが……どうなるかはまだ分からない。

 

 

 

こんな感じで、監督とコーチの話し合いは進んでいった。

 

 

「それでは、残り3人を片岡コーチはどうするべきだと思ってます? 俺は、瀬戸・疾風・パワプロ辺りが妥当だと思ってますが……」

「なるほど……未来のエース候補として、試合の空気を経験させて起きたいという事ですか。良いですね

私ならパワプロではなく現状強い花坂を入れますが、轟監督の方針も正しいと思います」

「じゃあそこまで問題ないと言う事で、関東大会ではパワプロを入れちゃいます」

 

そんなこんなで話し合いは終わり、ギリギリの所でパワプロがベンチ入りに成功した。

関東大会で投げる事は無いだろうが、試合の空気を特等席で味わえる事になる。

自分がギリギリの所でベンチ落ちしたと知らない花坂は、パワプロがベンチ入りした事を素直に祝福していた。

 

パワプロと花咲は1軍同士なのもあり仲が良く、誰がベンチ入りしてと恨みっこなしと話していたのだ。

彼らは何となく馬が合うらしい。

 

 

 

………これから関東大会まで2週間、上級生達ははあまり気負う事なく試合に望む事となる。

いくら打力が高くても、絶対に勝てる訳ではないという事は青道との戦いで証明されているが……それでも彼らは迷わない。

 

とにかくホームランだ! スタンドに向かって、打って打って打ちまくり、投壊野球で勝つ!

そうやって彼らは、試合へ思いを募らせていた……ホームランを早く打ちたいなという意味でだが。

 

新入生が入ってもお気楽な気持ちは変わらない上級生達。

良く言えばプレッシャーとは無縁という事だから、まあ良いのだろう。

 

 

 

 

 

 

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