【完結済】気付いたらパワプロで適当に育てた選手に転生してた話   作:いちごケーキ

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82球目 超高校生級

 

 

 

 

1回裏、0-4でツーアウトの場面で、打撃力特化の1年生結城がバッターボックスに入る。

 

 

「遠慮なくホームラン狙えよー!」

「ツーベースでも良いぞー! 俺が返すから!」

「結城ー、頼んだぞー!」

「やっぱホームラン狙いで行けよー!」

 

ゆくゆくはメジャーに……というより、北瀬さんが高卒メジャー行きなら、俺だって高卒でメジャーに行ってやると決心している結城。

パワーが売りの彼は、当然ホームランを狙いに行っている。

 

 

(僕はエースなのに、4点も取られた___だから、これ以上は打たせない!)

 

 

___バシッッ!

 

「ストライク、バッターアウト! チェンジ!!」

 

 

スロースターター気味な降谷は、ここで漸く持ち直した。

4点も取られてしまったと言うべきか、全力の薬師相手に4失点で済んだと言うべきか悩みどころである。

 

絶対的エース不在と言われ続けた青道に、遂に現れた剛腕ピッチャー降谷暁。

だが同地区に、メジャー級の怪物北瀬が同世代に現れた事から「遅すぎた天才」と不名誉な呼ばれ方をすることもあった。

……同地区に北瀬という即メジャークラスの天才が居ながらも、彼に才能が無いと言う者はいない。

 

降谷もまた、超高校生級の怪物なのである。

まあ中学の頃の実践経験不足が祟っている所はあるが、それでも尚名門青道高校の絶対的エースと呼ばれる実力はある。

実は、変速サウスポーの沢村という選手もエースを狙える器なのだが、強さが分かりにくい彼に注目している観客はあまり居なかった。

そもそも今の西東京地区は、薬師と稲城実業の2強なので。

 

 

 

降谷に三振にされた結城は悔しがっているが、直ぐに持ち直して2回表の守備に向かった。

彼は、1回1回に拘り過ぎるよりも、次の野球に全力を尽くそうと考えているからである。

まあ全力を尽くした所で、彼の守備がかなり悪いことに変わりは無いのだが。

 

 

 

 

 

 

2回表、青道高校の攻撃は5番御幸。冴えわたるリードや、狙い撃ちが特徴的な選手である。

 

 

___ガギッ!

 

初球から読みを当ててきたバッター。だが北瀬の球威に負け、打ち上げてしまった。

 

目の肥えている観客達は、一瞬これはアウトになるなぁと思った。

むしろ、あの剛速球相手に外野まで飛ばしただけ褒められるべきかもしれないとすら感じていたが……

 

 

「……あーっ、またエラーかよ!」

「薬師だからなぁ」

「見てられねぇー!」

 

 

打ち上げてしまったとは言いつつも、ボールはライト結城の所へ飛んでいき、落球。

慌ててセンターの秋葉がフォローしにいくが、結果的にはスリーベースヒットを打たれてしまった。

 

 

「……すみません」

「別に良いよー! 惜しかったな!」

 

薬師の崩壊守備に慣れていない結城はピッチャーに謝り、簡単に許してもらえていた。

北瀬からすれば崩壊野球は慣れっこなので、そもそも謝られる必要すら感じていなかったのだ。

 

むしろ脳内で、今のキャッチは惜しかったなぁ……85点! なんて高得点を付けていた。

彼の味方守備への期待値は、ゴロやフライを取れたら万々歳といった感覚だ。

味方をバカにしているのではなく、ナチュラルに野手はそんな物だと思っている。

 

 

 

 

 

ノーアウトランナー3塁で、打順は6番前園。パンチ力のある大ぶりな選手である。

 

 

___バシッッ!

 

「ストライク! バッターアウト!」

 

だが彼は、ゴロを打つのに必要なミート力は高くなかった為、あっさり三振。

MAX164kmを打つのは厳しかった様である。

 

 

 

ワンアウトランナー3塁になり、次のバッターは東条。バランスの良いオールラウンダーで、打撃や肩の強さが特徴的な選手だ。

 

 

___ガギッ!

 

「カハハハ……!」

 

しっかりゴロを打った東条だが、サード轟が珍しく機敏な動きを見せダブルプレー。

これで、スリーアウトチェンジ。

 

 

「スゲー! 2回無失点じゃん!」

「公式戦だと初じゃないか?」

 

「ナイス雷市ー!」

「三島も動き良かったぞー!」

「ガハハハ! これ位、エースになる男として当然ですよ!」

 

非常に珍しい、2回まで無失点という状況に1番驚いていたのは本人達であった。

2・3年生達からすれば、この先高校野球では2度と起きない珍事の様に見えていたのだ。

 

掠った当たりでも、簡単に後ろに逸らしてしまう薬師守備陣。

北瀬と伊川のパワプロ能力により、大多数の部員に打撃に特化した筋肉が付いているので仕方ないと言えば仕方ないが……はたから見ると、北瀬が可哀想になっても仕方ないだろう。

 

 

 

 

2回裏、薬師高校の攻撃は8番増田。

一応下位打線ではあるが、流石は投壊野球の薬師出身という事で、ホームランの狙えるバッターである。

 

 

___バシッッ!

 

「ストライク、バッターアウト!」

 

「惜しいぞ増田ー!」

「増田さーん! 次はホームランお願いします!!」

「狙いは良かったですよー!」

 

「あー! 今のボールだったわ!!」

 

だが流石は剛速球投手というべきか、呆気なく青道高校のエースの代名詞、MAX154kmのボールに手を出させられてしまいアウト。

本人もこれは見逃していればボールだったと分かっていた様で、悔しげな表情を浮かべながらベンチに戻っていた。

 

 

 

ワンアウトランナー無しで打席に立つのは、9番米原。

どちらかと言うとミート力の高い選手だが、薬師らしい豪快なスイングに見える打ち方のバッターである。

 

下位打線なのに、並の強豪校のクリーンナップを凌駕する打撃力の持ち主だが、ショートなのに守備力が悪過ぎる選手でもある。

 

まあ1年前位に、消去法でショートに選ばれた選手なので仕方ないとも言えるが、流石にもう少しどうにかならなかったのだろうか?

恐らく、ホームランを打つ自主練習の時間を守備に使えばマシになっていただろうが……本人は守備に興味がないから仕方ない。

守備に全く興味がない甲子園優勝選手という、類まれなる属性を持っているプレイヤーだった。

 

 

___ガギッ!

 

変化球を見分けたのか、縦スライダーに何とか当てたが、タイミングが合わずに威力不足の打球を放ってしまっていた。

ショート倉持の守備範囲に飛んでいってしまい、あっけなくアウトにされてしまう。

これで、ツーアウトランナー無しになった。

 

 

 

この回は追い詰めた青道高校だが、打順が1番秋葉になってしまう。

彼もドラフト上位指名が予想される、強力なバッター陣の1人である。

 

薬師高校の中ではホームラン数は多くないが、素晴らしいミート力で安打を量産していた。

まあ、伊川の様な10割バッターではないが、あんな人外と比べても仕方ないだろう。

 

しかも、守備も悪くない。別に全国クラスの選手として良いと言える程では無いが、薬師高校の選手と考えると飛び抜けている。

ド派手に打撃能力を上げたい気持ちを抑えて堅実な守備をしてくれる秋葉に、部員達はもっと感謝すべきだろう。

守備が酷い上級生達は特に。

 

 

___カキン!

 

「ナイス秋葉ー!」

「ナイスです秋葉センパイ!!」

「でも長打になってないよー!」

「ホームラン狙っても良いんだぞー!」

 

薬師部員達は、茶々を入れながら秋葉を一応褒めていた。褒めているのか怪しい言葉もあるが、恐らく称賛している……気もする。

いや薬師高校の上級生の大半は、ホームランに狂わされた打撃マシーンだから、これ位当然だと思っているのかもしれない。

 

 

 

ツーアウトランナー1塁の場面で、打順は2番伊川。打率9割超えの、相手ピッチャーからしたら悍ましいバッターである。

 

 

(さっき四球狙いで怒られちゃったし、ホームラン狙いに行くべきか? ミスったら嫌だけどなぁ……)

 

伊川はそんな事をぼんやりと考えながら、ホームラン狙いのバッティングをツーストライクに追い込まれるまで続けた。

 

 

___カキン!

 

(と思ったけどムリだわ。普通にヒット打と)

 

ツーストライクまで粘ったが、この荒れ球剛速球ピッチャー相手にホームランを打つのは無理だと判断。普通にヒットを打った。

ヒットを打つのを普通にと言うのはおかしい気もするが、伊川からするとヒットなんて簡単な事だから仕方ない。

 

 

 

ツーアウトランナー1・2塁で、打順は3番北瀬。

超パワーを持つ選手で、甲子園で同じチームの轟と歴代最多ホームラン数を競い合ったりしている。

 

 

___カキン!

 

「あーあ、ホームランにならなかった!」

 

「惜しいぞ北瀬ー!」

「ナイスです北瀬センパーイ!」

「お前ならもっと行けるぞー!」

「次は頑張れー!」

 

サード方向にヒットを放った北瀬だが、ホームランを打てなかった事に悔しがっていて、それを慰める上級生達がいた。

普通、ヒットを打ったら喜ぶ物ではないだろうか? ……薬師のクリーンナップとしては、ホームランを打たないと喜べないらしい。

 

 

 

これで、ツーアウト満塁。打席には、甲子園歴代最多ホームラン数を誇る轟雷市。

 

 

「カハハハ……絶対、打つ!!」

 

気合十分といった顔でバッターボックスに入った彼は、ギュッとバットを握りしめた。

 

 

___カッキーン!

 

「キター! 確定ホームラン!!」

「良いぞ雷市ー!!」

「やっほーい! ホームランだ!!」

「ホームラン! ホームラン!」

 

「カハハハ……! ホームラン!!」

 

そして、154kmのストレートを完璧に捉えた。

ひと目見ただけでホームランだと分かる軌道を描きながら、センター方向に特大のアーチを描く。

 

これには薬師部員達もお祭り騒ぎである。満塁ホームランとかカッケェ! といったワクワク顔で、雷市を祝福している。

 

観客達もキャーキャーと騒ぎながら、高校最強打線の一撃を楽しんでいた。

 

 

「キター! 薬師4番の一撃!!」

「轟もドラ1確定だろうな……」

「降谷も良いんだけどなー、薬師打線相手は厳しいでしょ!」

「打撃力だけ言えばプロ超えてるんじゃね?!」

 

 

 

 

この後、5番火神と6番三島がヒットを放つも、7番結城が打ち上げてアウト。

ここまでで0-8と、薬師の圧勝ムードが漂い始めていた。

観客達も、これは薬師のコールドで決まるか? といった空気を醸し出している。

 

 

だが3回表に、エラー多発でピッチャーの自責0で3失点と、青道高校にとっての希望となる追い上げを見せた。

 

3回裏は、増田がフォアボールで出塁して米原は三振。

秋葉はゴロでアウトになった後、伊川がツーベースヒットを放つも、北瀬がフライを打ち上げスリーアウトチェンジ。

3-8と、青道勝利の可能性が無くもない点差で3回を終えた。

 

 

 

 

4回表、青道高校の攻撃は4番降谷。

 

___ガギン!

 

鈍い音を立てながら打ち上げてしまったが、運良く打球はレフト火神の方向へ。

 

 

「やべっ、悪い!」

「気にすんな、ナイスファイト!」

 

運悪く太陽とボールの軌道が重なり目が眩んで、火神はボールを完全に見失ってしまった。

秋葉が取って投げる頃には、ランナー降谷は3塁へ。

 

 

 

ノーアウトランナー3塁、チャンスの場面で5番御幸。

 

 

___カキッ!

 

流石はチャンスに強い男というべきか、鋭い当たりでショート方向に打球を飛ばしていた。

まあ普通の野手なら取れなくもないボールだったのだが、薬師のショートが取れる筈もなく、勢いよくレフト方向に転がっていった。

これで3塁の降谷は帰還している。

 

その飛んできたボールを火神がトンネルし、秋葉がまたフォローに回されていた。

ランナーはまた3塁まで進んでしまい、4-8となる。

 

 

 

ノーアウトランナー3塁で、打順は6番前園。本日ヒット無しの彼は、今結果を残せるか。

 

 

___ガギ

 

打球はファースト三島の方向へ、コロコロ転がっていく。

後ろに逸らさない様に慎重にボールを取った三島は、自分で塁を踏んでアウトを取った。

……まあ、3塁にいた御幸には帰られてしまったが。

 

 

「ありがと三島! 助かった!」

「アリだぞミッシーマ!」

「…………」

「カハハハ……ナイスミッシーマ!」

 

ちょっとどうかと思われる守備の鈍さだったが、普段酷い守備をしている薬師野球部の上級生達は彼を褒め称えていた。

北瀬も、ゴロをアウトにしてくれてありがとう! と喜んでいた。判断基準がガバガバである。

 

普段チームを盛り上げようとしている由井は、流石にこの状況に絶句していた。

えっ……今のボールなら、専門外の俺でもホームでアウトに出来たと思うんですけど……これを褒めるんですか……?

そんな事を考えて、野手陣のあまりの守備の酷さに愕然としていた。先輩達の感覚がおかしすぎると、また実感させられていたのである。

 

 

 

 

 

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