【完結済】気付いたらパワプロで適当に育てた選手に転生してた話   作:いちごケーキ

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学校を提供してくださった読者様、ありがとうございます!
展開の都合上で、大幅に設定が変わってしまってすみません。
この展開がダメだった場合は、提供者様が仰ってくだされば学校名を変えます


打順は
1番伊川(セカンド)
2番三島(ファースト)
3番北瀬(センター)
4番火神(ライト)
5番米原(ショート)
6番森山(レフト)
7番雷市(サード)
8番真田(ピッチャー)
9番秋葉(キャッチャー)

どこからでも殴り掛かれるマシンガン打線です


84球目 意外

 

 

 

 

青道高校相手に6回コールド勝ちした薬師高校だが、明後日にもまた試合がある。

英気を養えと、試合当日のスタメン組の午後と次の日はもちろん休み。

 

明日伊川はアメリカに留学する事を想定し、英語の勉強をしようと思って本屋にTOEICの本を買いに行く様だ。

現代の様にインターネットで通販が出来ないので、妥当な選択である。

北瀬はそれに付いていって、ついでに新作のゲームを買う予定らしい。

甲子園優勝校のエースである北瀬が、ゲームを買った所で遊ぶ時間はあるのだろうか……?

 

 

 

試合に出ていない選手達は当然の様に練習があり、今日はバッティング練習を中心にやるらしい。

そんな状況でも、練習がない選手は外出出来る薬師のゆるゆるさに、一部の部員は救われていた。

 

 

北瀬とバッテリーになる事が期待されている由井も、熱心にティーバッティング練習をしていた。

 

 

___カッキーン!

___カッキーン!

 

毎回毎回遠くまで飛ばす由井を見て、同じく1軍のパワプロが羨ましそうに話しかけていた。

 

 

「すげぇな由井! なんかどんどんパワーが付いてきてるんじゃないか?!」

 

まだ練習中な由井だったが、1軍選手のピッチャーが相手なので一旦手を止めてにこやかに返答を返していた。

話していれば何かのコツを手に入れられるかもしれないし、交友を深めるのも無駄にはならないと感じたのである。

 

 

「ありがとう! なんか最近パワーが付いてきてるんだよね、成長期かも?」

「へぇ羨ましい! なんかコツとかあるのか?」

 

 

由井はパワプロの言葉を聞いて、俺のパワーが上がった原因って何だろうとかなり悩んだ後、もしかしたらと口にした。

 

「…………コツって言う程ちゃんとした意見じゃないんだけど、北瀬さんとピッチング練習をし始めてから、パワーが上がった気がするんだよね

明確な危機意識が、筋肉を成長させたのかも? それか、先輩達みたいな打撃をしたいって思って、見取り稽古が出来たのかな?」

 

 

(なるほど……! 先輩達と練習をするっていう練習方法もあるのか。上級生に話しかけるのは少し緊張するけど、やってみる価値はあるな!)

 

その言葉を聞いたパワプロくんは、なるほど一理あるかもしれないと思いながら、先輩達となるべく一緒に練習しようと考えていた。

 

パワプロくんの潜在能力も合わさり、北瀬達との友情タッグでスター街道まっしぐらである。

 

 

「なるほど……! ありがとう、やってみるよ!」

「いやまあ、普通に俺の成長期かもしれないけどね?」

 

そんな事を話している最中、轟監督がやって来て由井に話しかけてきた。

 

 

「おーい由井、ちょっと今良いか? 監督室で話したい事があるんだが」

 

その言葉を聞いた由井は、ヤバい、今サボっていた事を怒られるのか? と内心焦りながら慌てて返事を返していた。

 

 

「大丈夫です! ……あ、パワプロくん、監督に呼ばれたから行ってくるね!」

「いってらっしゃーい! ありがとうな!!」

 

由井がそう思っている事に気付かなかったパワプロくんは、ニコニコしながら由井を見送り、自分の練習に戻っていった。

良い事聞けて良かったー! みたいな顔をして普通に練習に戻っていったが、サボりだと思われたかなとビビっている由井が可哀想だと思わないのだろうか?

いや、内心を由井は表に出していないから仕方ないのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

由井が緊張しながら、監督室のドアをノックしていた。

彼は今まで監督室に入った事が無い為、何の用で呼ばれたのかと不安がっていたのだ。

実際の所、轟監督は重要な話では無くとも気まぐれで監督室に呼んだりするのだが、そんな事を由井は知らない。

 

 

「失礼します!」

 

丁寧にドアを締めて入室すると、そこには轟監督と片岡コーチが待ち構えていた。

 

轟監督が、普段通りの顔をして由井を招き入れた。

 

 

「よし、良く来たな! あー、普通に椅子に座ってくれ」 

 

話をするだけなのに、本当に座って良いのかな? と思いながら、由井はおずおずとソファーに座る。

たかがソファーに座るだけといえばそうなのだが、元々彼は体育会系所属なので、その雰囲気に汚染されている所もあった。

 

 

轟監督が、話しながらニヤニヤして、トンデモナイ事を言い出す。

 

 

「関東大会で決勝戦に進んだら、多分稲城実業と当たるだろ?

これはなるべく内密にして欲しいんだが……初回、お前をキャッチャーとして起用しようと考えている」

 

まさかの、まだストレートしか取れない捕手を起用するという話であった。

 

嘘だろ?! 何でそうなる? ……もしかして、俺が北瀬さんの投球はストレートしか取れない事なんて、監督の耳には届いてないのか?!

由井は混乱しながら、そんな事を考えていた。

その予想は違う。轟監督や片岡コーチの耳にも、由井が北瀬のボールに苦戦している事は届いていた。

それでも、監督は決勝戦で由井を起用しようと考えているのである。

 

 

「あの、俺……まだ北瀬さんのボール、ストレートしか取れないんです。すみません」

 

申し訳ないといった雰囲気を出しながら正直に話す由井に対し、そんな事知ってるよという顔をしながら監督はこう答えた。

 

 

「そんなの、こっちだって分かってる

ストレートだけで、どこまで行けるかを試したいだけだ。実際、北瀬にはそれだけの力がある

まあ所詮関東大会だし、ボコボコに打たれても良いぞ! ヤバくなったら変えるからな!」

 

「はい、分かりました!」

 

元気良く返事をした由井だが、本当にそれで良いのか? と内心悩んでいた。

大エース北瀬さんの球種を制限して、打たれまくったら申し訳なさ過ぎると考えていたのである。

 

ちなみに、片岡コーチも渋い顔をしていた。

1年生キャッチャーを育てたいとはいえ、流石にそのやり方はどうなんだと思っていたのである。

まあ、変化球を全部取れないキャッチャーを起用するのは、博打にも程があるだろう。

正捕手らしき人物のリードが酷すぎるから起きた、珍事である。

 

 

 

 

 

 

 

守備が酷いとかマトモなキャッチャーがいないとか、細かな困りごとはありつつも、薬師高校は3回戦まで進んでいた。

関東大会3回戦の相手は千葉尚大附属で、昨年度の夏始めて甲子園に出場した新たな強豪校である。

 

 

試合直前、轟監督が真面目な顔をしながら、ツッコミ所のある発言をしていた。

 

 

「相手は甲子園に1回しか出場してない新星! 俺達は2回出場してるから勝ってるぞ!

とにかく打て! 俺達にはそれしかねぇし、それが強みだ! 全力で相手ピッチャーをボコボコにしてやれ!!」

 

『ハイッ!』

「いや、出場回数が1回か2回かって誤差範囲じゃないっすか……?」

 

 

 

 

 

 

グダグダな話をした後、先行は薬師高校。関東大会打率10割の男、伊川が打席に立つ。

 

相手ピッチャーは3年生の右腕、秋吉。サイドスローながら最速138kmの直球で押す選手である。

途中まで直球の軌道で急速に曲がる高速スライダーとカットボールに高速シンカーを投げ分ける、煮ても焼いても食えない狸のような投球術を武器としている。

脳みそが筋肉で出来ていそうな薬師打線からすれば、苦手かもしれないピッチャーだ。

 

 

___カキーン!

 

だが伊川にとっては相手の技術力など関係なく、簡単に長打を放っていた。

まあ成宮や本郷から簡単にヒットが打てる選手なので、当然と言えば当然だろう。

 

 

 

ノーアウトランナー2塁の場面で、打順は2番三島。

普段は5番か6番を打っているが、今日は監督の気まぐれで2番を打つ事になっていた。

 

 

___パシッ

 

「ストライク! バッターアウト!」

 

(くそっ、思ったよりボールが後から来てたぞ……? まあ仕方ねぇ、次は打つ!)

 

三島は悔しがりながらも、堂々とベンチに帰っていった。

薬師野球部は、打てなかった時こそ暖かく迎え入れてくれるチームとはいえ、メンタルが強すぎる。

 

 

 

ワンアウトランナー2塁の場面で、打順は3番北瀬。

タイミングに合わせられればホームラン行けそうだけどなー、と何となく思いつつ、威圧感を蒔き散らしながら打席に立った。

 

ちなみに、威圧感を出しているのは無自覚である。普通に考えたら、高校最強クラスのホームランバッターが出てきたら圧されるのは当然なのだが、彼は気付いていなかった。

 

 

___カキーン!

 

フェンスギリギリまでかっ飛ばした北瀬。これはセーフだと思われたが……

 

 

___バシッッ!

 

「アウト!」

 

センターのダイビングキャッチで、何とかアウトを取れてしまった。

そして、北瀬が打った瞬間飛び出していた伊川は、既に3塁近くまで進んでしまっていた。

慌てて戻ろうとしたが、ギリギリのタイミングでアウト。

 

打席で三振した訳では無いとはいえ、伊川がマトモにアウトになるのは、これが始めてではないだろうか?

これでスリーアウトチェンジになった。

 

 

「うわーっマジかよ?!」

「悪い伊川!」

 

こんな所でヤられると思っていなかった伊川は、思わず愕然としている。

安易に飛び出した自分が悪かったとは思っているのだが、それでもピッチャーライナーを狙った時以外の公式戦で、始めてアウトを取られたので慌てているのだ。

 

 

「惜しかったぞー北瀬ー!」

「伊川もドンマイ!」

「北瀬さん伊川さんも、ドンマイです!」

「次はホームラン打てよー!」

 

薬師ベンチは暖かく迎え入れてくれたが、伊川は落ち込んでいた。

別に自分の事を最強だと思った事は無いけど、何となくアウトを取られるとは思っていなかったのだ。

野球でアウトを取られない前提というのは、めちゃくちゃ自分の事を信頼している気もするが。まあ伊川は多分、野球というスポーツの事をあまり理解していないのだろう。

 

 

 

……

 

 

 

12-0で迎えた7回裏。中々相手ピッチャーを打てなかったが、ようやく打線が爆発したらしい。

というよりも、相手エースが疲れて降板した所を、薬師打線が狙い撃った形となる。

 

千葉尚大附属の外野陣が有り得ない位硬かった為、打っても打っても点に繋がらなかったのも相当大きかった。全員がカルロスみたいな守備をして来たのである。

何があっても長打狙いしかしない弊害が、こんな所にも現れていた。

まあ最悪の場合、轟監督が単打狙いの指示を出せば従っただろうが、それだと打撃のリズムを崩しかねない。

薬師高校は1年前から、試合で監督が指示を出さない方が強いチームだった。

 

 

 

ツーアウトランナー2塁。千葉尚大附属にとって絶体絶命の場面で迎えたのは、3番の角。

絶対に1点取ってやると、彼はバットを短く持ち、握り締めていた。

 

 

 

薬師ピッチャーも、6回から3番手ピッチャーの友部に変わっていたが、千葉尚大附属は1点も取れていなかった。

守備に力を注ぎ過ぎていて、打撃はあまり得意では無かったのである。

 

急造キャッチャーの秋葉は、下級生の友部に挑発の為の手抜き投球を指示した。

 

 

___ぱしっ

 

「……ストライク!」

 

絶好球にも拘らず、狙い球では無かった為見逃してしまった角は激昂していた。

巫山戯んな! 俺らをナメるのも大概にしろ!! という反応である。

 

 

「ストライク、バッターアウト! コールド! 試合終了!!」

 

挑発に乗ってしまったバッターは、最後の最後で呆気なく三振。

これで、千葉尚大附属は関東大会3回戦敗退となった。

 

 

「ナイス友部ー!」

「次は準決勝だ!!」

「雷市も北瀬も、ナイスファイト!」

「今回はあんま打てなかったなー」

 

関東大会3回戦に勝った事を喜びながらも、ホームランが中々出なかったので、不完全燃焼といった顔をしている薬師野球部。

一応12点取っているので、あんま打てなかったという意見は正しくない気もするが……薬師野球部からしたら貧打に入るらしい。

 

ちなみに、投壊守備を相手に1点も取れなかった千葉尚大附属の評判は、荒れに荒れていた。

薬師相手に7回12点しか取られなかったことを褒める観客と、弱小校でも打てる相手に1点も取れなかった事を責める観客で意見が真っ二つに分かれていたのである。

 

弱小校でも打てるという評判は、4番手ピッチャーを使用した時に限ると思われるのだが……そんな事を観客達は考慮してくれなかった様だ。

 

 

 

 

 

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