【完結済】気付いたらパワプロで適当に育てた選手に転生してた話   作:いちごケーキ

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学校の展開提供をくださった方、ありがとうございます!展開が多少変わってしまってすみません


85球目 機動破壊

 

 

 

3回戦で、5回裏までを無失点で抑えた真田キャプテンは、内心割と感動していた。

相手の打撃はかなり下手くそだったとはいえ、甲子園クラスのチームを、俺が無失点で抑えるなんて……!

それにほぼ三振で抑えられられたし、今回の俺ってけっこう凄いんじゃね?!

 

内心そう考えていた真田キャプテンだが、あまりホームランなどを打てなくて落ち込んでいる様にも見えるチームメイトには言わなかった。空気を読んだのである。

そのせいでチームからは、薬師野手陣に足を引っ張られつつも6回無失点という偉業を忘れられてしまうが……ちゃんと、プロスカウトは見ていたのだ。

炎上守備を有しながらも、三振を取りまくって得点を与えなかった彼の雄姿に、スカウトからの評価が1段階上がったという。

 

 

 

 

 

 

 

北瀬は、昨日の3回戦にも出場したピッチャー兼バッターなので休息を取りつつ、暇つぶしに1・2軍の練習を眺めていた。

普段は1軍と2軍は別の場所で練習しているが、今日は1軍の選手の半分位が休息を取っている為、合同練習をしているのである。

 

今日は轟監督が1・2軍へ指示を出していて、片岡コーチは3軍の練習に参加していた。

指導の意見が所々合わない彼らだが、別に相手の事を嫌っている訳ではないので、一応協力し合えるのだ。

まあ2人共同じ場所にいると、指示の意見が合わなくて苦労するのだが……

 

 

 

尊敬するメジャー級のピッチャーである北瀬が練習を見ている事で、2軍の選手達は緊張していた。

1軍の選手達は慣れているので緊張まではしなかったが、普段の練習ではずっと見られている訳ではないので、普段通りの練習なのにメリハリが付いたと言っても良いだろう。

 

 

そんな雰囲気の中、休憩中に1軍の選手であるパワプロが、空気を読まずに北瀬先輩に話しかけていた。

 

 

「北瀬先輩! ちょっと質問良いですか?!」

「良いけど……どうした?」

「北瀬先輩のピッチングって長打を出されないじゃないですか、あれのコツを教えて欲しいんです!」

 

北瀬はその言葉を聞いて、悩みながらも何とか答えていた。

ぶっちゃけ、平行世界の彼らの能力を受け継いだだけだから、北瀬に詳しい知識などある訳ないのだが……北瀬は真剣に考えていた。

 

 

「それは良いんだけど。コツって言われても、何となくで投げてるからなぁ……

うーん、強いて言うなら、指の掛かり方かなぁ?」

 

ふと、中学生の頃のボールの持ち方と比べて、指の掛け方が違うかなと思って話した北瀬。一応、話せる事はあったらしい。

 

 

「どんな感じですか? 出来れば見せてください!!」

「良いよ!」

 

ピッチャーとしての肝になる、指の掛け方を見せてくれと頼んだパワプロくんに、即了承した北瀬。

別に自分如きの技術を独占したいとは考えていない為、野球の事なら簡単に何でも教えてしまうのだ。

相変わらず、感覚のズレている人間である。

 

 

「なるほど! 北瀬さんの手が大きいからか、特に中指の掛かり方が俺と違う様な……」

 

 

こうしてパワプロくんは、重い球のコツを覚えた。

いくら何でも、覚えるのが速すぎると思われるのだが……

北瀬が惜しみなく投げ方を見せてくれたとはいえ、ここまで急速に技術力が上がって来ているのは、パワプロくん本人のセンスも大きい。

彼も才能がある選手なので、中学生の頃弱小校にいたハンデが有っても、ぐんぐん成長してしまうのだ。

 

 

 

 

 

 

関東大会準決勝、薬師高校の対戦相手は大方の予想通り白龍高校。

攻撃的走塁を軸とした「機動破壊」が売りで、平均塁間タイム4.1秒と驚異的な数値を残しているチームだ。

 

 

そんなチーム相手に戦う間際、轟監督は好戦的に笑いながらトンデモナイ作戦を口にしていた。

 

 

「相手は機動破壊を売りにしてるチームだ___でも、俺達には関係ねぇ! 走塁に対応する必要は無い。総得点で上回れば良いだけだからな! ……行くぞっ!!」

 

「おう!!」

 

そう。盗塁を阻止出来ないのなら、初めから対応するなという無茶苦茶を言いだしたのだ。

確かに薬師高校の捕球能力を考えると、どう考えても盗塁阻止なんて出来ないが……それにしても思い切りが良すぎるだろう。

盗塁を阻止しないと言う事は、バッターがゴロを打っただけで3塁まで進まれてしまうと言う事である。

それでも尚、対応しない方がマシと思われる薬師守備陣は、もっと危機感を持った方が良い。

 

 

 

 

 

 

1回表、白龍高校の攻撃は1番九条。とにかく足の速さが自慢で、出塁されたら失点を覚悟しろと言われる程である。

 

対して薬師高校は、エースの北瀬がマウンドに立った。明日の稲城実業戦で登板する予定なので、2連投になる。

だがまぁ、薬師高校には使えるピッチャーが少ない為仕方ない。

一応、もし点差が付いたら三島を登板させようという話にはなっている。

 

 

___バシッッ!

 

「ストライク! バッターアウト!」

 

薬師バッテリーはあっさり三振をもぎ取り、快速自慢をアウトにした。

いくら足が速かろうとも、塁に出さなければ関係ない。

今回は北瀬の剛速球で、ゴロを狙うリードをされようともアウトにしていた。

 

 

 

 

2番バッターは宮尾。彼も快速が自慢の選手で、塁に出たら怖いと言われる選手だ。

……というか、白龍にはそういう選手しかいない。

白龍の佐々木監督はスピード狂なので、そう言った選手ばかり集めてきているのだ。まあ、薬師の打撃偏中と似たような物である。

 

 

___ガギ

 

打たせるリードに補助されて、どうにかゴロを打った宮尾。

当然の様にショートの米原がお手玉して、簡単に塁を陥れる事に成功していた。

 

 

「うわー惜しかったなぁ」

「米原先輩、ドンマイです!」

 

薬師高校のファンブルした側、された側はこういった発言をしていた。

いくら何でも、平凡なゴロを捕球ミスしておいて惜しかったなぁは自軍のピッチャーを舐め腐っている気もするが、そういうチームだから仕方ない。

北瀬も明るい声で、ドンマイですと言っているので。

 

 

 

 

ワンアウトランナー1塁で、打順は3番美馬。

白龍野球部のキャプテンであり、強肩強打でバットコントロールも優秀。

さらに脚力を活かした守備範囲の広さも捨てがたいという完璧な選手だ。そして、もちろん足も速い。

 

 

そんな選手である美馬だが、初球はバントの構えを取った。

リードが下手くそな相手キャッチャーに圧を掛けて、ミスらせる作戦である。当然、盗塁も成功させる予定だ。

 

 

だが北瀬や伊川は、相手のバントを全く気にしていなかった。

 

(おっ、バントでランナー進めるつもりか? じゃあワンアウト貰えるな!)

(そうだな、バット目掛けてストレートだ。ランナーは気にしなくて良いし、とにかくワンアウト貰うぞ)

 

 

___ガッ!

 

「?!」

 

揺さぶりを掛けるだけで、本当にバントをする気は無かったバッター。だがピッチャーに金属バットの根本を狙われた事で、避けきれずに本当にバントになってしまった。

恐るべし、北瀬のボールコントロール力である。

 

バントには慣れている薬師高校は、ファースト三島がボールを掴んで送球し、余裕でアウト。

ちゃんとショートがフィールディングをしっかりやってくれたので、余裕だった。

 

 

ランナーは余裕で2塁に進塁してしまったが、薬師野球部は全く気にしていない。

いっそノーリスクでアウト取れてラッキーという、謎の余裕すら感じられる。

まあ彼らにとってはランナーが進まれるリスクより、アウトを1つ取れたリターンの方が大きいので、自然な反応なのかもしれない。

薬師野手陣は、大体飛んできたボールが捌けないので……

 

 

 

 

ツーアウトランナー2塁で、打席には4番北大路。

打撃力は全体的に高いが特に長打力が良い、主砲らしい主砲だ。

 

 

___ガギン!

 

だがそれでも、北瀬のボールを長打には出来ず、コロコロとサード方向に転がっていく。

雷市はどうにかボールを取って、自分で三塁ランナーをアウトにしようとしたが……

 

 

「……セーフ!」

 

走塁がめちゃくちゃ上手い白龍ランナーによって、セーフにされてしまった。まあ、薬師打線に守備を求めてもどうしようも無いと言えば、その通りだから仕方ないだろう。

走塁の鬼である白龍相手に、薬師の守備で叶う筈が無い。

 

その後、雷市は1塁に投げたが余裕のセーフ。

……というか送球が逸れてしまったせいで、1・3塁ランナーに進まれてしまった。

3塁ランナーには本塁に戻られ、1塁ランナーは2塁に進まれている。

 

 

「カハハハ……」

「惜しかった、キャッチングは良かったぞー!」

 

マジかーと言った顔をしている雷市に対し、ピッチャーは声を掛けた。

あのゴロを取って、交錯した場面はかなり良い守備してたよなという意味である。

 

実際、あの場面でアウトが取れなかったのは、セカンドのフィールディングミスが大きい。

ボールを取った後、自分でベースを踏みに行かなきゃいけなかった事が、今回の敗因である。

 

まあそれでも、その後雷市がやった暴投は、明らかに不味いミスなのだが……

というかこの守備で前回5回無失点に抑えた真田キャプテンは、かなり凄いのではないだろうか?

 

 

 

 

1点先制されてツーアウトランナー2塁、5番伊藤が打席に立った。

割とミート力が高い、走塁の上手い選手である。

本来なら2番に置かれるべき人材な気もするが、白龍野手陣は走塁が得意な選手が多すぎてこの打順になっていた。

 

 

___バシッッ!

 

「ストライク、バッターアウト! チェンジ!」

 

1回表は、結局エースが三振を取ってチェンジ。

くだらないミスで1点取られてしまった薬師野球部だが、何故か喜んでいた。

 

 

「やったー! 今回は1失点で済んだな!」

「勝てる勝てる! バカスカホームラン打ってやろうぜ!」

「カハハハ……ホームラン、打つ!!」

「相手のピッチャー、どんなのだっけ?」

「143kmのストレートと、スライダーシュート持ちだった気がする」

「それなら楽勝だな!」

 

そんな感じで、お気楽ムードのままベンチに戻っていく薬師。

そう……彼らにとっては、1失点など掠り傷に過ぎないのである。

 

毎回打撃で何点も取っている為、これくらいなら全然大丈夫だと思っているのだ。そのうちその考えに足を掬われなければ良いが……かなり問題のある思考だった。

代わりに高校最強クラスの打撃力が手に入ったので、天は2物を与えずといった感じなのかもしれない。

 

 

 

……

 

 

 

彼らの余裕といった空気は、間違いでは無かった様だ。

7回までに薬師打線は16点、白龍は5点しか取れずに、薬師のコールド勝ち。

5回に、ピッチャーを三島に変える余裕すらあった。

 

途中2番手ピッチャーが登板してきたりはしたが、そのお陰で大量得点した訳でもない。あまりエースと実力が変わらなかったので、普通に打ち返していた。

薬師は、それが出来るだけの打撃力を持っている。

 

 

そんな大活躍した薬師打線の奮闘を、観客達は大きな声で讃えていた。

 

 

「薬師ー! お前らの打撃は最高やー!!」

「北瀬も良く頑張った! 守備酷いのに!!」

「轟のホームランも良かったぞー!!」

「伊川も打率10割のまま頼むぞー!」

 

薬師野球部には何の関係もないのに、試合毎回見に来るおっさんファンもかなりいる。

彼らはあまり気にしていないが、彼ら野球部にはそれだけの魅力がある。

 

全てを打撃力で粉砕する薬師野球部の事を、2度と現れる事のない1番星と呼ぶ人もいた。

なんか薬師ファンに、詩的な人がいた様である。

 

 

 

 

 

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