【完結済】気付いたらパワプロで適当に育てた選手に転生してた話 作:いちごケーキ
2番 伊川(セカンド)
3番 北瀬(ピッチャー)
4番 轟(サード)
5番 火神(レフト)
6番 三島(ファースト)
7番 結城(ライト)
8番 米原(ショート)
9番 由井(キャッチャー)
1番カルロス
2番白河
3番早乙女
4番山岡
5番多田野
6番矢部
7番神宮寺
8番江崎
9番成宮
成宮は薬師に対抗する為に、スタミナ練習ばかりしていたので打力は衰えています。少しでもエースのスタミナを温存する為に、下位打線に回されたという事もありますが……
準決勝が終わり、寮の自分の部屋に帰った北瀬達。
彼がストレッチをしている最中、由井は明日の試合が怖い気持ちをねじ伏せて、北瀬さんに質問をした。
「北瀬先輩……明日、俺がキャッチャーとして受けるって事を知ってますか?」
「えっ、マジ? それじゃ、稲城実業相手にストレートしか使えなくね? ……いや別に、由井が悪い訳じゃないけど」
監督から聞かされていなかった北瀬。
由井の言葉を聞いて、北瀬はバカスカ打たれまくって薬師が負けてしまう想像をして、少し顔が青くなっていた。
ストレートだけで相手を打ち取るとか、出来る訳無い! 監督は何を考えているんだろう……
そう考えながらも、北瀬は由井の事をフォローしようとはしていた。何の慰めにもなっていなかったが。
「いえ、ストレートしか捕れないのは俺の努力不足です。すみません」
「そんな事はないよ! 由井が毎日頑張ってるのは、俺だって良く分かってるから」
高校野球という勝負の世界において、甘過ぎる事をほざいている北瀬。
なんなら、キャッチャーが取れない下手くそなボールを投げる自分が悪いとすら考えていた。
最近なんて、由井とピッチング練習をしている最中、そりゃ伊川だって捕り辛いボールなら捕るのが面倒になるよなぁと思い始めていたのだ。
北瀬はどちらかと言うと、自責傾向のある人間である。だからといって、164kmの天才ピッチャーが悪いとは普通考えないと思うのだが……野球の知識が薄い事が、ここでも祟っていた。
由井は先輩の、君は悪くないと言うその反応を予想していた様で微妙そうな顔をしていた。
内心、捕れないキャッチャーである自分が悪いにも拘らず、情けを掛けられるのが嫌がっていたのだ。
確かに彼は人当たりは良いが、実力相応にプライドを持った選手である。
「ありがとうございます……今は言いたいのは、それじゃなくて
___明日、ストレートを振り抜いて欲しいんです。俺が捕れないからって手加減しないで、ちゃんと」
「…………」
その言葉を聞いて、困惑した北瀬。
彼は何も考えず、由井のキャッチングに付き合って投げていただけなので、自分が手加減して投げれば由井が簡単に捕れる可能性にそもそも気付いていなかったのである。
中学時代はちゃんと捕れてたらしい由井が捕れないのは、俺がなんか捕りづらいボール投げてるのかなぁ位しか分かっていなかった。
だから同じ部屋にいる伊川に対して、テレパシーで質問した。
(ちゃんとって何だ?)
(……俺に投げる時と同じ感じで、ストレートを投げろって意味じゃね? 手加減して球速を落としたりするなって言葉
まあ、全力ストレートは駄目だと思うけど)
「元々、そんな事するつもりはなかったよ? なんのメリットもないし」
「……? そうですか、ありがとうございます! 俺明日、少しでも北瀬さんを活かせる様に頑張りますから!!」
手加減して投げる事になんのメリットも無いという言葉に困惑しつつ、由井は北瀬がしっかり投げてくれる事にお礼を言った。
キャッチャーとして、ピッチャーに公式戦で変化球を投げるなと言ってしまう自分に、背筋が凍る様な恐怖を覚えている。
それでも……試合に出られるなら、少しでもこの人を活かしたプレーがしたい!
だから俺の身体を気遣ったり、キャッチャーが捕れないかもしれないなら手加減してあげようなんて、北瀬さんには考えて欲しくない。
北瀬さんがそういう事をする人じゃなくて良かったと、由井は考えていた。
実際の所、それで由井が怪我しにくくなると知っていたら躊躇なくやりかねない先輩だが、幸か不幸か彼はそれを知らない。
関東大会決勝戦は2勝1敗の相手、稲城実業高校。
薬師高校の轟監督は珍しくビシッとした風体をして、自チームを鼓舞していた。
「相手は、甲子園の決勝で戦った稲城実業。確かにスゲェチームだ___だが、俺達のやる事は変わらない!
打撃戦を制せ! 行くぞお前ら!!」
「おうっ!」
一方、ほぼ同時刻の稲城実業は、個人個人で精神統一の様な事をしていた。
基本的に協調性がない選手ばかりなのである。
そんな時キャプテンの福井が薬師高校のオーダーを見て、不思議そうに話し出した。
「あれ? 薬師のオーダー、1年生キャッチャーが打線に入ってるね」
「おいおい……俺達相手に、1年キャッチャーの試し打ちかよ?」
プロ上位指名が噂されるカルロスは、1年生キャッチャーが打線に入っていると聞いて不満げな声を出した。
その言葉に、稲城実業のエース成宮は一見にこやかに見える声で話しだしたが……途中でガラッと雰囲気が変わった。
「ふーん? まぁ確かに伊川のリードは酷いし、誰でも良いから新しいキャッチャー使いたいのは分かるけどね!
___思い知らせてやるよ。目の前にいるのが誰か」
1回表、稲城実業高校の攻撃は1番カルロス。
走攻守の三拍子揃った優秀なプレイヤーで、ドラフト上位指名が噂されている。
そんな彼相手に、由井は緊張しながら北瀬に、まずは1球、外側低めいっぱいにと指示を出した。
___バシッッ!
「ストライク!」
カルロスは外角を狙っていたので、バットにはかすりもしない。
___バシッッ
「ストライク!」
由井が次に指示したのは、外角低めからボール1個分だけ外側にズラしたストレート。
北瀬の素晴らしいコントロール力によって、前回と全く同じに見える軌道で外角を抉った。
___バシッッ!
「ストライク! バッターアウト!」
次は普通に、対角の内角高めの指示を出した。
カルロスは目が全く慣れずに手を出せず、見逃し三振。
「嘘だろ?! ストレートだけでアウト取れた……よく分かんねぇけど、ナイス由井!!」
「ありがとうございます! 北瀬さんの球威のお陰です!」
薬師バッテリーがキャッキャと盛り上がる中、カルロスは呆然と立ち尽くしながらこんな事を思っていた。
(手も足も出なかった……そりゃそうだよな。164km相手だ、そんな事もある
それにキャッチャーがマトモな思考をしてたら、こんな守備能力でド真ん中に投げさせる筈がねぇ
……こりゃ、伊川がキャッチャーとして出てくるより大変な事になったんじゃねぇの?)
ワンアウトランナー無しで、打席に白河が立つ。
ノーボールツーストライクと追い込んでから、最後の1球。
___バッ、ガシャン!
怪物球威に超長打跳躍が乗った164kmを、後ろに逸らしてしまった由井。
ランナーは振り逃げで、ワンアウト1塁になった。
キャッチャーは慌てて、何も悪くないピッチングをした先輩に謝った。
「すみません!!」
「ドンマイ、そんな事もあるさ!」
「……次は捕りますから!!」
今までも何回も逸らしてたとはいえ、公式戦に出て直ぐに逸らしてしまった事に由井は落ち込みつつも、気を取り直して次のバッターを迎える。
ワンアウトランナー1塁で、打順は3番早乙女。左打ちのバッターで、ミート力が高い選手である。
___バシッッ
「ストライク、バッターアウト!」
今の投球で、先ほどのボールを後ろに逸らした大失態によって、北瀬さんが調子を崩したりはしていないと分かった由井。
まだまだ北瀬さんとバッテリーを組むには実力が足りないとはいえ、今は俺が組んでいるんだから少しでも彼に相応しいキャッチャーになりたいと、必死の形相でキャッチし続けていた。
ツーアウトランナー1塁で、打順は4番の山岡。
長打力が自慢のバッターで、その火力は薬師高校の下位打線に匹敵する。
……というか、春のセンバツ準優勝校の主砲に匹敵する火力を持つ下位打線って冷静に考えるとヤバいのではないだろうか。まあその分、守備力を犠牲にはしているが。
___バシッッ!
「ストライク!」
「セカンド走った!」
「セーフ!」
初球からランナーの白河が走ってきたが、MAX164kmを取るのに精一杯だったキャッチャーは反応出来なかった。
悔しげにしている由井だったが、轟監督は「それで良い! ランナーなんて、打たれなきゃ関係ねーからな!」という驚きの指示が飛び出した。
今の由井にそこまで求めるのは酷だと、分かっていたからである。
___バシッッ!
「ストライク、バッターアウト! チェンジ!!」
それでも、ランナーが進んだ所で、打てないなら意味がない。
北瀬-由井バッテリーは、圧倒的球威で相手バッターを捻じ伏せた。
「由井、ナイスリード! マジで助かったよ!」
「いえ、そんな事は……北瀬さんの怪物ストレートのお陰です!」
「そんな事無いって! 普段は全然取れねぇし」
「……北瀬さんにナイスリードって言って貰えて、嬉しいです!」
北瀬は、何でストレートだけで三振3つも取れたんだ? と困惑しながら、多分由井のお陰だろうと察して褒め称えていた。
対して由井は、自分のリードが素晴らしく思えるのは正バッテリーである伊川さんのクソリードのせいだと分かっている。
だから微妙そうな顔をしながら、最終的には北瀬の言葉を受け入れていた。
試合中に、北瀬さんの勘違いを正すために時間を使う訳にはいかないからである。
1回裏、薬師高校の攻撃は1番秋葉。ミート力が非常に高い、プロ上位指名が1年生の頃から噂されるバッターである。
___バシッッ!
「ストライク! バッターアウト!」
だが、都のプリンスと呼ばれる成宮に、呆気なく三振を取られてしまう。
これは秋葉が悪いのではなく、流石はドラフト競合が噂されるピッチャーという事だろう。
「惜しいぞ秋葉ー!」
「次はホームラン打ってよー!」
「だから俺は、ホームラン狙うタイプのバッターじゃないっつの!」
ネクストバッターズサークルにいる伊川とベンチにいる北瀬達に即野次を飛ばされ、思わず内容にツッコんでいた。
俺は安打を量産する系のバッターだから、こんなピッチャー相手にホームラン狙わねぇよ! という心境である。
他の上級生達も似たような野次を飛ばしていたので、もう彼には諦めて貰うしかないだろう。
薬師野球部は、何故かホームランダービーを開催している様なチームだから仕方ないと。
ワンアウトランナー無しで、打席には2番伊川。
関東大会でも打率10割を記録しているバッター相手に、成宮は闘志を燃やしていた。
(伊川って確か、1度も三振取られた事無かったよな? ……じゃあ俺が、初めてアウトを与えた男になってやる)
___カキン!
まあ成宮がどれだけそう考えていても、パワプロチート持ちの伊川には関係なかった様である。
とはいえ、2塁打を打とうと考えていたのに単打を打たされてしまったと、伊川は少しだけ残念がっていたが。
バッターは1塁に進み、打順は3番北瀬。
1試合HR個人最多選手であり、日本球速最高速度更新までしているチート選手であり、その実力からかバッターボックスから威圧感を放っている様に感じられる。
___カキーン!
___バシッ!
「アウト!」
あっさりと長打を放った北瀬だが、センターカルロスのファインプレーによってアウト。
伊川も動けず、これでツーアウトランナー1塁。
「カハハハ……成宮! 打つ!!」
高笑いと共に現れたのは、薬師高校の主砲轟。
パワーやミート力はあれどもムラがある北瀬と違い、選球眼まで兼ね備えたまさに理想の4番である。
___カッキーン!
「カハハ……カハハハ……!!」
「流石は薬師! 豪快なホームラン!!」
「コレコレ! これを見に来たんだよ!!」
「雷市! 雷市!」
『雷市! 雷市!』
彼の持ち味である豪快なスイングで、あの成宮の球をまたホームランにしてしまった雷市。
薬師高校に心酔している一部の観客は、顔を真っ赤にして喜んでいた。
流石は薬師打線、流石は轟雷市といった所である。
ツーアウトランナー無しで、打順は5番火神。
日本中の野球部スカウトが、なぜ彼を見つけられなかったのかと歯ぎしりする程に素晴らしい打撃力を持った選手である。
明らかに守備がアレなので、サード轟と共に左の大穴になってしまっているが……他のチームなら、他の選手がある程度リカバリ出来たと思われる。
___カキーン!
「ファール!」
観客席まで飛ぶ程のアタリだったが、惜しくもファール。
火神はその事に頓着せず、次ホームランを打つことだけ考えていた。薬師高校の打撃理論が、脳裏に染みつき始めている。
___バシッッ!
「ストライク! バッターアウト! チェンジ!!」
高校3強と呼ばれるピッチャーである成宮が、どうにか意地を見せてスリーアウトチェンジ。
薬師ベンチも暖かく彼を迎え入れ、こんな風に声をかけていた。
「火神ー! 惜しかったぞー!」
「次は行けるよー!!」
「ドンマイ火神くん!」
「次もホームラン狙えーっ!」
薬師高校は本当にアットホームなチームである。
ぬるま湯みたいな環境なので、合わない選手もいるかもしれないが……多くの1年生は、このチームに来て良かったと感じていた。
ちなみに高校3強ピッチャーというのは、一等星の北瀬・怪物本郷・都のプリンス成宮の事である。
キャッチコピーがプレイヤーによってかなり違うが、付けた人が違うだろうから仕方ない。
北瀬は、1番イケメンっぽい成宮のフレーズを羨ましげにしていた。まあ、怖い感じがする怪物本郷よりはマシだと考えていたらしい。感覚が野球人とは思えない。
他にも、大阪桐生所属のMAX153kmでスライダーとフォークを使う3年生坂根や、CL学園所属でMAX147kmのカーブとシュート使い3年生の三田など、プロでも活躍するだろうと言われると言われる選手がいる大豊作世代なのだ。
……同世代のドラフト候補からしたら、最悪の話かもしれない。
読者様が活動報告に送ってくださった文章がめちゃくちゃ面白かったので、ここに一部乗せさせていただきます。
私の書いている二次創作より面白い気がします…いつもありがとうございます!
国友広重(監督)
昨年は目も当てられない程悲惨な守備だった伊川と北瀬が改善したのに対し、青道の片岡元監督がコーチとして加わっても尚崩壊したままの守備を見て単純な特化育成をしているわけではなく今下手な連中はバット以外完全に見切りつけてやってるんだろうなと解釈したらしい
「……切れ目のない最強打線に刺激を受けたのは分かる、新しい戦術を模索し試そうしたのも認める、だがあれは自分達と同じ時間を費やした特化訓練によって身についた技術とそれに裏打ちされた自信があればこそ成立する戦術
いくら自分達も鍛えているからと見様見真似で同じことをするのは、自分達を倒した相手を馬鹿にしているのと同じだ」
林田正義(部長)
国友監督と共に稲実野球部を支える監督
栄養学やスポーツ科学が発展した現代においてイチローや松井のようなレジェンド級と同等の才を持ちながら、彼らよりも遥かに優れた育成を施された選手が現れ、いずれそれが甲子園の舞台で立ちはだかることもあるだろうとは思っていたが流石に同地区の無名から降ってわいてくるとは思っていなかった
「真っ当な学校に所属していれば推薦などいくらでも出せたというのに、よりによってあの中学に我が子を送るなどあの子たちの親はどういう神経をしとるんだ、全く…」
成宮 鳴
打の青道相手に10回1失点に抑え込んだことから「成宮10回1失点=1青道」と単位扱いされ薬師の攻撃力の異常さが再確認、結果「春甲決勝では青道190イニング分投げた」と半ば冗談で言われたとかなんとか
やっぱり薬師リベンジ戦は楽しみだったようで今回対薬師に立てた目標は無被本塁打、一桁自責点、伊川の打率10割崩しの三つのようだ
「……自分で言っといてなんだけど普通に考えたら大分低いよねこの目標」
「それは言うな、俺らも死ぬ気でなんとかするから…」
「伊川にあれどうやってんのか聞けないかな?」
「流石に機密だろ」