薩摩武士が異世界をぶっ壊す   作:wakaba1890

5 / 7
第5話 紛い神の正体。

『・・・・・』

 

「。。。。。」

 

「....む」

 

空間に響くような話し声が聞こえ目を開くと、東元は赤と黒が混じったような海?池?の上で浮かんでいた。

 

「...地獄か。」

 

今までの知識から推測するに、今置かれている状況はまさにソレだった。

 

「...しゃっしぃのぉー、賊を絶やしたり、汚職を犯した役人を切り殺したり、外国に御された藩を滅ぼしたりのぉ....うん。やっぱ、わしゃ良い事しかしちょらんのに...」

 

彼は短い人生を足早に振り返っては見たものの、何も地獄に落ちる言われはなかったようだった。

 

「...それに、右半身も問題ないのぉ..」

 

おそらく、あの時勝ったとしても良くて瘴気を浴びすぎた右半身は不随確定だったが、なぜか体は万全でむしろ前よりも調子が良かった。

 

「...ん?」

 

「おはよ。起きた?」

 

すると、記憶に新しい何か柔いものが彼の後頭部の下に敷かれ、突然目の前にやけに顔が整った、まさに深淵の奥底を象徴するような黒い長髪の、見るもの全てを狂わしそうな妖艶な女が覗き込んできた。

 

「....地獄の番人か?それとも、悪魔け?」

 

「えー、私をあんなのと一緒にしないでよー。」

 

洋書と通説から導いた彼の想定は外れたようだったが、ソレらと会ったことがあるかのような、口ぶりの彼女は不服そうに頬を膨らませていた。

「だったら、誰や。」

 

「もー、忘れっちゃたの?東元さんを殺したのは私なのにー」

 

彼女はたわわな胸をプルンプルンとさせながら、肩を落としていた。

 

「....あー、あの紛い神か。」

 

一拍かかったものの、東元は案外すんなりとその事実を受け入れていた。

 

「っ...あんまり驚かないんだね...君みたいな人間は初めてだよ。」

 

あまりに素直に受け入れられた彼女は、一瞬目を見開いていたが、驚きよりも感心の方が勝っていた。

 

「...それと私は正確には紛い神じゃないよ。私の名前はトゥラン・ラウニ。よろしくねー」

 

「..おう、よろしくって...敵け?」

 

前の世界でも昨日の敵はなんとやらという言葉はあるが、この状況はそれとは異質だった。

 

「うん、けど今はもう殺し合えないよ。私たちは一心同体だからねー」

 

「....で、いつまでここに居れば良い?」

 

異様に物分かりがいい彼は、今自分が死んでいない事も、おそらくどれだけかはわからないが、この禍々しい水に浸かっていたお陰で一命を取り留めた事など、大体を理解しており、出来れば早くここから出て皆に顔を見せたかった。

 

「.... うーん、説明のしがいがないなぁー。とりあえずは、私の説明が終わるまでかな。」

 

そして、なおも彼女は彼の容態が不服そうだったが、答えることは答えた。

 

「そうけ、じゃあワシはそれまで寝ちょるわ。」

 

おおよそ長くなりそうな空気がしたため、彼は居眠りがてらに聞くことにした。

 

「って、東元さんが聞くんだよっー」

 

「うぐっ...わはったへぇ...」

 

一々反応が芳しくない彼は、彼女に顔を両手で挟まれて起こされた。

「よろしい!じゃあ、私は・・ーーー」

 

彼女が言うには、まさにシレイたちと同じように西の大陸から、東の大陸を支配する魔族で構成された、ヨスガルド帝国に闇ルートを介し送られ、とある実験の実験体として研究されたらしい。

 

そこで彼は人間の奴隷という点に引っかかった。

 

「・・人でないと、成立しない実験か。」

 

「ご名答。」

 

先の報告会から、わざわざ危険な島を渡ってでも、奴隷を運ぶ価値があると言った時点で魔族が関わっているのは筋が通っていた。

 

「その実験は...」

 

「女神を作る実験。」

 

「神は、神に似せて人間を作った。か」

 

彼は洋書で読んだ一文を呟いた。

 

「そうそう、まぁー魔族はまた別次元なんだけどね。それで、私はその実験の中で最高傑作だったの。」

 

「へぇー」

 

彼女がいくらこの世界で女神に最も近づいた存在だとしても、彼にとってはそれくらいの感想だった。

 

「むっ、調子狂うなー...クレムリン教会だったら五回ぐらいは気絶死しそうなのに...まぁ、それでね...」

 

(...クレムリン教会?)

 

なんか一瞬、不穏な用語が飛び交ったが今はスルーした。

 

「...てか、なにゆえそげん実験を?世界でも滅ぼしたいのか?」

 

神様を人工的に作り出すというのは、外国の宗教家からしたら卒倒しそうな案件であり、そして、そこまでして何がしたいのかが疑問だった。

「・・女神を邪神にして、女神を討つ。」

 

「....そりゃ、面白いのぉ」

 

ようやく、紛い神改め、トゥラン・ラウ二の話に興味が持ててきたところで、体を起こし赤黒い湖の上に胡座をかいた。

 

「ようやく、興味が出てきたみたいだね。私、嬉しい。」

 

トゥランは、妖艶に微笑みながら頬に右手を添えていた。

 

「で、世界でも滅ぼすのか?」

 

「うーん、まぁ、魔族さんたちは結果的にそうなっても良いって魂胆らしいね。」

 

「....妙じゃのぉ、魔族らはそこまで追い込まれておるのけ?」

 

それを聞いた東元は一拍考えた後、確かに魔法やユニークスキルなどを持っている強力な人間はいるにしても、"世界を壊す"賭けに至るまで現状追い詰められているようには思えなかった。

 

「今は西と東の大陸で均衡を保っているけど、どうしても人間にしか授かれない女神の天恵がすっごく厄介なの。」

 

「...成程。いずれは届きうるということか」

 

やはり天恵というのは種族間の能力格差を覆しうる破格のものであり、サイコロが投げられ続ければ、いずれピンゾロが揃うことも、そしてピンゾロが蓄積すれば魔族の王である魔王にも届き得ると容易に想像できた。

 

「うんうん。やっぱり...東元さんは面白いね....」

 

短い話の中でも、大枠を捉え大局的に世界を見据えている東元に、トゥランは恍惚とした表情を浮かべていた。

 

「?....して、先の戦い。最高傑作の割りには随分とおざなりだったな。」

 

話と関係ないことはどうでも良い彼は、それよりも魔族の帝国が総力を費やして出来たであろう擬似女神であるならば、この世界に来たばかりの東元であれば容易に御せたのは想像に難くなかった。

 

「はははっ...まぁ、魔族の最高幹部数人と戦って、魔王と一戦まみえたからねー、いやいや不甲斐ない。」

 

「....魔王と?」

 

ドクンっと、数多の戦で武勲をあげども、ある日を境に静謐に悟ってしまった魂が再び震えた。

 

そして、それと同時に前の世界ですれ違うように相見える事のなかった、ある男を想起した。

 

「....うん。その魔王から呪い、弱体化魔法、状態異常魔法、深淵魔法、対神峰術とかたくさん受けちゃってね...魔王さんはなんとしても私を生け捕りにしたかったんだろうけど、まぁーおかげで寸前で転移できたんだけどねー」

 

「擬似とはいえ、生命力の象徴でもある女神はそれくらいでは消耗せども、堕ちぬか。」

 

「うんうん、そんなとこかな。」

 

彼の飲み込みの良さを見てさらに陶酔に沈んだ恍惚さを深めながら、彼女は大筋の経緯を話した。

 

「して....・・ーー」

 

その後も、魔族の事、東の大陸を支配しているヨスガルド帝国の事など諸々の情報を交換し、そろそろ目を覚まそうとした時、ふとその事を想起した。

 

「・・てか、なんで女神にもなりえたお前が、ワシに敬語なんぞ使っちょるのけ?」

 

「あー、そういえばだったね。それは君が私の核を食べたお陰で、私は東元さんの従者になったんだよ。」

 

「む?てぃむとは違うのけ?」

 

確かにてぃむ民も従者とも言えるが、彼女の東元との関係とは異なるように聞こえた。

 

「うーん、仕組みは同じだけど違うかなー、テイムは肉体的なもので、主従契約は魂の契約。まぁ、東元さんのテイムはちょっとおかしいけど....」

 

「....そうか。よろしくの!!」

 

「うんっ、私たちは一心同体だよ。ふふっ」

 

この時、正直どっちでもいいと思ってた東元は、女神にも成り得た彼女の核を喰らった事の意味を未だ知る由もなかった。

 

そうして、紛い神に倒された東元は、黒髪ロングの女になった紛い神からその柔いお膝の上で治療を受けていた。

 

「・・東元さんから離れて下さい!」

 

「えー、嫌です。」

 

無防備な彼を良いことに、我が物顔で彼の頭を撫でている紛い神はシレイに応対していた。

 

「なっ!元はといえば、あなたのせいですよ!!」

 

「まぁ、ソレは否定しませんが。」

 

「じゃあ!東元さんを渡して下さい」

 

シレイの言っていることは正論であったものの、それ以前にシレイは会話の場に立てていなかった。

 

「では、もう少し近くに来たらどうですか?」

 

「...あ、あなたが離れたら考えます!」

 

シレイはろう助とろう十郎の後ろから、顔をひょこりと覗かせながら彼女とレスバしていた。

 

「...シレイ殿。あちらの方は主を治療しているかと思うのですが...それにろう十郎の腕も治してもらいましたし。」

 

紛い神が東元を本拠点に連れて行く様を見届けていた、ろう助はシレイを静かに諭した。

 

「むっ、そ...それは、わかっていますけど...」

 

しかし、シレイの気持ちもわからんでもなかった。

実際、先まで東元が戦っていた者が甲斐甲斐しく彼を治療しているというのは、気持ちの整理が追いつかないものである。

 

「...良い仲間を持ったのね。」

 

シレイのみならず、ここへ案内される最中も今にも斬りかかってきそうな、彼と同じ風体の町の民ないしは年端の行かない子供まで、そして、彼女を諭しつつも下手な動きをしたら容赦しないと言った様子の彼の臣下たちを見て、ふと彼の頭を撫でながらそう呟いた。

 

「ちょっトォっ!気安く触らんといて下さいっ!!」

 

再び、紛い神の動向に怒った彼女はろう助を盾にしながら抗議していた。

 

「....んぁ...うるさいのぉ...せっかくねちょるのに...」

 

実は数十分前に全快していた彼は、シレイの魂の叫びに起こされた。

 

「東元さんっ!!」

 

「「主っ!!」」

 

「東元っ!」

 

東元が目覚めるのを待ち侘びていた、可愛い仲間たちは一斉に彼に飛びついた。

 

「...宵々、重いのぉ。」

 

「死んだかと思いましたよぉ....うぅっぅ...」

 

シレイは顔面鼻水だらけになりながら、彼に縋りついていた。

 

「ごほんっ...まぁ、主なら生き返ると思いましたぞ。」

 

「嘘つけ、こいつ責任とって切腹しようとしてましたよ。」

 

ろう助は念話から、終わるまで近づくな。と主の命を受けていたが、それでも眼前で主を見殺しにしたのは事実であり、それは切腹ものと断じていた。

 

「なっ!おいっ、ろう十郎!」

 

「くかかっ....心配かけたな。ろう助、ろう十郎、シレイ、皆。」

 

もふもふの狼二匹と、ビビリで仲間思いの女を抱き返しながら再会を分かち合ったが、それも長くは続かず、彼女に引き戻された。

「こらこら、まだ本調子じゃないんだから、まだ私のお膝で寝ましょうね。」

 

「いや、数十分までに全かっ...ぶふっ...」

 

彼女に後ろから抱きしめられというか、豊満な胸の海に沈没しそうになった。

 

「?...主、して、そちらの方は...」

 

先まで戦っていた相手であったが、今の様子を見る限り今は敵対しているようには見えなかった。

 

「あー、ワシの新しい臣下じゃ。」

 

「やっほー、よろしくねー」

 

「「「えぇぇぇぇぇっ?!」」」

 

東元の答えは、彼らの想像の5倍程飛び越えていた。

 




名前: トゥラン
称号:・・・・・・
スキル:・・・・・
加護:・・・・

体力: ・
魔力: ・
筋力: ・
耐久力: ・
敏捷性: ・
知性 : ・
運: ・
?:・
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。