異世界TS転生曇らせ愉悦部員が失敗するだけの汚話   作:アスタロット

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私は自由だ、支配から解放されたんだ

 

彼は生前、出先で遊郭を巡る事を趣味の一つとしていた。

出張で、旅行で。

勿論それらの愉しみは、それなりに値が張るものだ。

だが、金に糸目を付けることはなかった。

サラリーマンにも関わらず、それだけの余裕が彼にはあった。

 

彼は平素、性処理をする相手には困らなかった。

しかし彼は”プロは侮れない”と考え花街へ向かった。

その後”アタリ”だの”ハズレ”だのと、心のうちで反省会とするのも醍醐味としていた。

 

彼は旅行においては殆ど、自身に近しい女性を伴った。

多くは、彼を慕って付いてきた女だ。

それでも、彼は花街へ向かった。

 

彼は如何にして、遊び場へ行ったのか。

無論、女を連れて行く事も無い。

 

答えは、至極簡単である。

宿部屋に彼女を放置したのだ。

あれやこれや、と装着させた上で。

 

彼が遊郭で極上の情婦を、文字通り消費している間、宿に残された女は…

時には、両手足を拘束されて。

時には、目隠しされて。

時には、貞操帯を付けられ。

時には、連れてきた女二人のある部分を装具で繋げたまま。

あらゆる状態で放置された。

 

その行為は彼女達から、好評であった。

彼女達にとって、彼にされる事は全てが気持ちが良かった。

放置され待たされ続ける事も、また喜びの一つであった。

その時間が長ければ長い程、彼に愛された時の悦びが増幅された。

曰く、その快楽で脳が焼き切れる、と。

 

彼は旅先で、彼女達に手を出すことは殆ど無かった。

旅の最中は女達にとって御預けである「待て」が、御褒美の「ヨシ」に変わる事はなかった。

それは決まって、旅先から戻った後である。

つまり旅の最中、女らは放置から解放されても常に焦らされ続けていたのだ。

 

いよいよ出先から戻ると、彼は自らのテリトリーで、彼女達の燻り続けた情欲を爆発させた。

 

その快楽の奔流により、彼女達のうち幾人かは再起不能になる。

正気を失い狂乱する者、気をやり過ぎた者の多くが社会生活を送れなくなった。

果ては激しい運動により、心の臓が止まる者もいた。

彼はその度に惜別の思いで、再起不能となったその幾人かを処分した。

後処理には、色々と労を費やした。

だが出先でそれを行うよりは、無理難題ではなかった。

 

「※※さん、いってらっしゃい。ああ、寂しいなぁ。でも無事に、彼女の新たな人生の門出を見送れた。この程度の労力は安いものだね」

 

彼は笑みを浮かべながら独り言ち、また一人を見送った。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

魔王との会談を終えた勇者一行は、仮宿となっているサティアの私邸へ戻った。

緊張感から解放された彼等は、各々に程度はあるものの一様にぐったりとしていた。

 

「ふぅ…皆さん、ありがとうございました。魔王陛下との会談も無事に済んだ事ですし。私達にも幾分か、ゆとりが出来ましたね」

 

ティアナは軽い溜め息はつきながら、パーティーメンバーを労った。

アルト達から見れば、ティアナは然程疲れている様には見えない。

仲間達を気遣うのは、余裕の現れである。

 

「確かに…さすがは魔王、恐ろしい男だった。ティアナがいなかったら終始圧倒されていた所だよ」

 

「アルトさん、そんな事おっしゃらずに。お気になさらず」

 

ティアナは聖人然とした佇まいで、アルトに応えていた所。

 

「ティアナには悪いけど、アンタがお漏らし聖女で助かったわ。魔王が冗談の通じる相手って分かったし」

 

アーシャはティアナの失態が場を和ませたことに対して、感謝を述べた。

その表現は、些か婉曲的ではあったが。

 

「くっ…うう、その話はもう勘弁してくださいよぉ、アーシャさん。皆さんも、頼みますから絶対に言いふらさないで下さいね!特に教会関係者には!私にも体裁というものがございますので!!」

 

「それは変態小便垂れ聖女、キサマの心構え次第だ」

 

弁明するティアナを茶化したのは、魔族の将サティアだった。

 

「(クソッ…サティアめ、このデカ乳アホ魔族女が…犯すぞ)」

 

「ん?オイ、今何か言ったか?」

 

「ん゛ん゛っ!!ヴェッ、マリモ!……あ、そうだ。この辺にもぉ、孤児院があるらしいですよ。お許し頂けるならば、私はそこへ向かおうと思います」

 

「人助けか?ティアナらしいな。なら俺達も行こうか」

 

ティアナは強引に話題を切り替えた。

それに相槌を打った勇者アルトは人格者である。

 

「いえいえ、結構ですよ。パーティー揃い踏みで向かうのも仰々しいでしょう。皆さんのお手を煩わせる訳にも行きませんから」

 

ティアナは遠慮するように、アルトの提案を固辞した。

 

「それでも人足は多い方が良いだろう。魔族との交流もできる。私達の仲だ、遠慮はいらんぞ」

 

仲間の一人である姫騎士のエリナは、それでも彼女を気遣って助け舟を出した。

 

「チッ……い、いえ!いえいえエリナさん!いえいえ!本っ当に結構です!私一人で充分なんで!ねっ!本当!マジで大丈夫ですから!皆さんクソガキとか苦手でしょ!?私は得意なんですよ、クソガキとメスガキの相手。なんたって聖女ですから!保育士の元カノとかに色々と話聞いてるし!ねっ!じゃっ!善は急げって言いますから、私イきますね!じゃ!れっつらごー!!」

 

バタバタというコミカルな効果音を響かせながら、ティアナはサティアの私邸を飛び出して行った。

 

「速っ!オイ、勇者よ。あの変態糞聖女、またロクでも無い事やろうとしてるんじゃないのか?」

 

サティアはティアナが去った方向を、ジットリと見遣りながら訝しんだ。

 

「そうだな、ティアナに悪意は無いと思うが…サティアの言う通りかもしれない。気付かれないよう例の孤児院に行ってみるか」

 

「良いわね!じゃアタシが隠匿魔法使ったげる!完璧なのは張れないけど、距離を取っていれば有効だと思うわ」

 

「助かる、アーシャ」

 

勇者一行はティアナの後を追った。

 

 

♦︎

 

目的地の近くまで先回りしたアルト達は、孤児院の近くで身を潜めた。

傍目からすれば、主に異邦人で構成された男女がコソコソとしている怪しい集団に見える。

が、魔将サティアがいる事により、大きな騒ぎにはならなかった。

 

「あ、ティアナが来たぞ!あの例の孤児院に入っていった!サティア、本当にあそこが例の孤児院か?」

 

「うむ、そうだ間違いない。アレこそが我が主、魔王陛下のご慈悲により運営されている孤児院だ」

 

「へぇ、なんだ。ティアナも聖女らしく、しっかりしてるじゃない」

 

ティアナの聖人らしい行動に、アーシャは久しぶり感心した。

 

「なら問題ないな。サティア、この事を魔王に伝えてくれ。ティアナは人間と魔族、信仰の違いを超えて分け隔てなく救いを施す聖女だと」

 

「うむ、承知した。陛下も喜ばれるだろう」

 

それからアルト達は、孤児院の近くで暫く待機した。

 

「よし、変な事にはならないと思うし、俺たちも行くか」 

 

アルトが帰還を促そうとした瞬間である。

 

「あ、孤児院から誰が出てきた…ん、あれは…ティアナ…じゃない?」

 

「サティア、アンタあれが誰だかわかる?魔族っぽいけど」

 

「いや、あんな魔族は見たことがない」

 

「それにしても、かなりの麗人だな」

 

「いや、俺が見るに、あの体型…うん、あの尻とくびれに…一目では分からない、隠された巨乳、あれは間違いなくティアナだ」

 

アルトが孤児院から出てきた魔族らしい人物を、ティアナであると宣った。

 

「「「…」」」

 

アーシャ、エリナ、サティアはアルトを軽蔑の目で見つめた。

 

「いや!なんでみんな黙る!?三人だってティアナの裸体を散々見てるじゃないか!サティアなんてこないだ俺達を押し退けて、酒酔いティアナを抱き潰したくせに!」

 

「うっ…あっ!!そ、そうだ!わ、我が魔王曰く、力無きは、其れそのものが罪。弱者は強者に喰われるがさだめ。つまり!酒に弱いアヤツもまた同罪よ!」

 

「アンタ、それカッコよく言っても、アタシ達を弾き飛ばして意識のないティアナを犯してただけじゃない」

 

皆がティアナ(仮)の変わり様に驚く中、アーシャは至って冷静だった。

 

「待て、アルトの言うことが本当なら、ティアナ変わり過ぎではないか!?いつもの男装よりもカッコいいじゃないか!何なのだ、アレは!」

 

男装のティアナを見慣れているエリナは驚愕を隠せなかった。

 

「うっ…うう…カッコいい……ティアナ、なぜその姿で私に構ってくれないんだ」

 

エリナは膝をつき項垂れた。

 

「ほらほら、落ち込まないエリナ。アンタは充分魅力的よ」

 

「うぅ…すまない、アーシャ」

 

アーシャは頭垂れるエリナに寄り添い、励ました。

 

「しかし、凄まじい変わり様だな」

 

アルトは腕を組み、半ば感心していた。

 

「アレは知らぬ者が見れば、魔族の貴人と見間違えるぞ」

 

「そっか、サティアでも見間違えるか。顔はよく見るとティアナだが…頭髪も灰色だし、髪型も短すぎる。しかも、いつもの男装以上にピッチリなスラックスだな。瞳も良く観察すると人間のソレじゃない…まるで邪眼じゃないか。どうなっているんだ。我ながら、本当にティアナかどうか怪しくなってきたぞ」

 

アルトは頭を抱え唸りながらも、件の人物を目で追っている。

 

「変態アルトの心眼も自信を無くすって、余程のことね…でもアンタ、ティアナに関しては妙な所で勘が良いし。アタシも、アレがティアナだと思うわ」

 

アルトは決心をつけ、三人に向き直った。

 

「みんな、後を付けてみよう!アーシャは引き続き隠匿魔法をよろしく!孤児院でのティアナの行動も気になるけど、変装したティアナを見失っちゃ意味がない!」

 

結果として、勇者、魔法使い、姫騎士、魔将の凸凹パーティーは継続して、ティアナの後を追った。

 

 

一方その頃。

勇者アルト達を魔法で、人知れず遠目に監視している者がいだ。

抜かりのない魔族の君主、魔王である。

食事中の彼ではあったが、彼等の珍劇により最後は我慢ならず噴飯した。

 

食べカスが盛大に顔面に飛び散った、対面の妻エキドナは大いに怒った。

 

魔王は泣いた。

 

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