異世界TS転生曇らせ愉悦部員が失敗するだけの汚話   作:アスタロット

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聖女、魔王に開示する

 

遂に秘宝を二つ揃えたティアナ。

そんな彼女は魔王城の一室にて、報告も兼ねて魔王へ目通りする運びとなった。

 

ただし、サティアを含め、他のメンバーはそこには居ない。

ティアナは何かと理由を付けて、一人で登城したのだ。

 

彼女にとってこの会話は、決して魔王以外の他の誰にも聞かれる訳にはいかなかった。

故に単独。

 

さらにティアナは、防音と認識阻害の魔術を展開する事を魔王に申し出た。

 

暗殺の可能性も僅かに考えられたが、結果として魔王はそれを許した。

彼には、奸計を許さぬ自負があった。

 

「ほう、それが秘宝とやらか。珍妙な形であるが…なんとも面妖な力を秘めておるな」

 

「はい。ご覧の通り本来であれば、口の小さな容器に液体を注ぐための器具ですが…これは注がれた、ある力を濃縮する機能があります」

 

「その面妖な力がソレであると……さては、混沌の類だな?」

 

「ええ、仰る通りです。この漏斗を経由して、混沌の魔力を盃に注ぎます。濃厚な混沌に満たされた盃…それを漏斗と共に、祭壇に捧げる事で儀式は成されます」

 

「聖女が混沌を扱う、か…して、儀式により何が起こる」

 

「平穏が訪れます」

 

「にわかには信じられんな。具体的に申せ」

 

「長らく続いた、魔族と人間による争い。その根源を断ちます」

 

「その根源とは何ぞ」

 

「邪なる神にて」

 

「邪神はいない。遥かなる昔に討滅されておる」

 

「王国や教会すら知り得ない情報を、よくご存知で…ですが、それは誤りです。正しくは、魔族と人間の手により封印されている状況です」

 

「ならば、封印されたままで良いではないか」

 

「混沌を好むかの神は、封印された中でもこの世界に介入してきました。魔族と人間を争わせる為に、あらゆる手段で。このままですと、この和平も長くは続きません。アレは必ず、そうしてきます。なので敢えてその封印を解き、顕現させた上で、確実に殺します」

 

「神殺しか…その力が、貴様らにあると」

 

「あります。霊峰の龍を打ち負かした事で、確信に変わりました。純粋な力では、邪神は龍に劣る筈です」

 

「ふむ…ならば敢えて聞こう、貴様なぜそこまで知っている」

 

「私が神の眷属だからですよ」

 

「それは王国が信奉する神か、それとも邪なる神か」

 

「後者にて。何なら、お見せしましょうか?私の正体を」

 

「いやいい…既に貴様からは、悪しき気配が溢れておる。クククッ…もはや隠す気もないか。これが聖女とはな、とんだ笑い草よ。我が妻は、邪神の眷属により救われたか。して、貴様の目的は何ぞ」

 

「私は…混沌の神により産み落とされた、化け物です。外側は人間ですが、中身は主人の一部で構成されています」

 

「その殆どが失伝している混沌魔術を語るは、そう言う事か」

 

「はい。封印されて動けぬ我が神に代わって…勇者一行に紛れました。そして、争いの火種を撒き、然るべき時に燃やす予定でした。もしくは、和平に繋がる重要人物を、事前に殺害するなど」

 

「我もその殺害対象となっていたか?」

 

「必要であれば」

 

「その悍ましい力を以てすれば、あるいは可能かもしれんが…だからこそ、何故主人に背き、我にそれを打ち明ける。その力なら、その主人の命令を容易に叶えられよう」

 

「愛、ですかね。共に旅をする中で、好きになってしまいました」

 

「化け物風情が愛を知るか」

 

「お恥ずかしながら…あと、陛下に打ち明けたのは、義理です。魔族の聖域へ立ち入る、あり得ない許可を頂きましたし。陛下には、私の全てを明かしても問題ないと判断しました」

 

「律儀なヤツよ。禁域への立ち入り許可は、妻を救った貴様への褒美である。つくづく神の眷属にするには、勿体無い女…いや、化け物か?して、この会話は貴様の主人には届いているのか?」

 

「いえ、我が神も、私の行動を逐一把握することは出来ませんので。まあ、念の為に防音と認識阻害は張りましたが。もしこの会話が筒抜けでしたら…今ごろ私は我が神により、始末されているでしょう。」

 

「だが、いずれは知られるぞ」

 

「構いません。どの道、いずれ私は我が神により喰われます。喰われて養分になる、その前に殺してもらいます」

 

「我が今この手で、貴様を殺してやろうか?」

 

「いえ…出来るならば、愛する者達の手によって」

 

「愛とは難儀なものよ」

 

「個人的な我儘ですけどね」

 

「好きにせよ。ならば、貴様の後任たる術師を紹介せよ。我が妻を放って逝かれると難儀なのでな」

 

「奥方様の診療を継続する、そのお約束ですか。それについてはご安心を。私の後任は、既に決まっているので。あ、勿論ちゃんとした人間ですよ!その新たな聖女が、私の代わりとなります」

 

「周到だな。腕前は確かであるか?」

 

「勿論です、プロですから。色々と大変でしたけど」

 

「ならば良し、この話は終いとする。霊峰に挑んだ故、貴様らも疲れたであろう。我が魔族が有する、温泉にでも浸かってまいれ」

 

「えっ!?温泉!?温泉入っていいんですか!?」

 

「許す、存分に癒されるが良い」

 

「感謝の極み!」

 

「それ程に湯が好きか」

 

「温泉は特別!特別なんです!温泉大好き!ばばんばー♪」

 

「気が抜けた。とく去るがよい」 

 

「では!失礼します!レッツゴー温泉!湯けむりに身体を隠しながら、アルト君を誘惑…」

 

「温泉は男女別だ」

 

「なんとぉ!?」

 

 

 

 

 

ー数刻後、温泉にてー

 

 

「っっっづあ゛ぁ゛〜最っ高!あ゛〜…生き返りますねぇ」

 

龍と激闘の末、秘宝を無事に回収した勇者一行。

そんな彼らは慰労も兼ねて、魔族が有する温泉に浸かっていた。

 

「ティアナ、アンタおっさん臭いわよ」

 

入浴の際、ティアナが野太い声を上げたのをアーシャは咎めた。

聖女らしからぬティアナの言動も、今となっては慣れたものだ。

だがアーシャは、幾分か彼女に言いたい事があるようだった。

 

「う゛っ……ち、近頃は禁欲しているんです。これくらいは許して下さい」

 

「いや、アンタが勝手に禁酒やら何やらしてるだけじゃない。おっさん臭い聖女なんて、仲間として嫌よアタシ」

 

事実、酒も飲まなくなり、夜の誘いも断られているアーシャは不満が募っていた。

 

「別に良いじゃないですかぁ…」

 

「ふむ…まさか魔族領に、このような温泉があったとはな。王城の風呂とは違い、湯も特に暖かいし、肌にも良い気がする。なんとも羨ましい限りだ。我が王都にも、温泉が湧き出ないだろうか…いや、いっその事、掘るか?」

 

温泉に感心したエリナは、自国に温泉を作る事を真剣に考え始めていた。

 

「そうだろう!そうだろう!羨ましかろう!この温泉こそが、我ら魔族の力の源!我が王に感謝せよ!特に、そこの変態クソおっさん聖女、感謝せよ!」

 

サティアは自国の温泉が好評だった事に気をよくして、自前の豊かな胸を張り、自慢げにしている。

 

「おっさんなんて!サティアさんヒドいっ!いいですか!湯船に入る者は、皆こうして”あ゛あ゛ぁ〜!!”って言うんですよ!これは温泉に対する感謝の意、謂わば礼儀なんですよ!」

 

ティアナは温泉への想いを、仲間の女性陣に熱く語った。

まるで、入浴が当たり前の習慣であるかのように。

 

「そんなの知らないわよ。そこのドM姫騎士や変態クソおっさん聖女様ならまだしも、一般通過村人のアタシなんて、お風呂になんか滅多に入れなかったのよ?」

 

「えっ…アーシャさん、お風呂入らなかったんですか?え、ちょ………ええ…まあ…その、臭いのも嫌いじゃないですよ」

 

「お風呂に入れなくても、井戸水で身体くらい洗うわ!!クッソムカつくわね、どつくわよ!この変態クソおっさん聖女!そのバカでかい胸に付いてるピンク色のソレを握り潰してやろうかしら、ああん!?」

 

無意識に煽るティアナに怒ったアーシャは、鷲掴みにしようと両手を大きく広げた。

 

「えっ、じょ冗談ですって」

 

「おりゃ!!潰れなさい、この駄肉がぁ!!」

 

「だから、やめっ…あっ…いっづ…ちょ、アーシャさん握力、ヤバっ…やめっ…」

 

「アタシも強くなってんのよ!アタシの魔術的ハンドパワーを味わいなさい、どりゃ!!」

 

「ちょ待てょ…ぃでっ…マジで潰れ、やめいっ………ぃぎゃあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

アーシャの筋力は、ここ最近の激戦により飛躍的に成長していた。

アーシャの物理的ステータスアップが存外であったティアナは、不意の激痛に泡を吹きながら、叫声を上げた。

 

「ティアナ、いいなぁ…私もアーシャに抓られたいなぁ」

 

「人間には変態しかいないのか…」

 

エリナは平常運転だし、サティアは自らの事を棚に上げて人間を蔑んだ。

 

 

 

ー同時刻、男湯にてー

 

「ふぅ…良い湯加減だ。温泉が身体中に染み渡るってのは、こう言う事を言うんだな。女性陣は皆んな向こう側だし、なんて気楽なんだ。あ〜、最高。こんなにゆっくり出来るの久しぶりで、魔王さんには感謝しなきゃなぁ。………ん?なんか向こう側が騒がしいなぁ。女湯か?」

 

“潰れなさい、この駄肉がぁ!!”

 

“ぎゃあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…”

 

「うん、気のせいだ。何も聞こえない」

 

勇者アルトは、何も聞かなかった事にした。

 

 

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