仮面ライダーマギア   作:眼鏡侍

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お待たせしました。

少しリアルが落ち着いたので更新です。
……相変わらず変身までが長くなってしまう……!


ep:1『転入生は仮面の魔導士』①

 

マギスタル。

その発見は、文字通り世界を変えた。

 

ある日、とある秘境で発見されたその結晶体は既存の科学を凌駕する力を秘めていた。

 

魔力と呼ばれる事になったそれは、条件さえ整えば火、光、果ては核とありとあらゆるエネルギーを生み出す夢のようなもの。

そして魔力を元に引き起こされる様々な奇跡を、人々は『魔法』と呼んだ。

技術の発展、未来のためにと世界中の誰もがその夢の石を求めた。

 

やがてマギスタルが人々の手を渡るようになると、魔法は本当に科学を凌駕し始めた。

エネルギー問題は解決の目処が立ち、誰もが夢見た御伽噺の力を手にすることを喜んだ。

 

魔法が世間を賑わせた『魔導黄金期』が始まり──そして、悲劇は起きた。

 

『アビスハザード』の始まりである。

 

多くの犠牲を生み、甚大な被害を齎したその大災害は数年の後終結。

 

悲劇を繰り返さない為に、各国は連携。

マギスタルのエキスパートである『魔導士』を養成する教育機関を生み出した。

 

それが、『マギアカデミア』である。

 

◆◆◆◆◆

 

マギアカデミア・日本支部。

 

マギスタルの採掘量が比較的多いこの国にも、当然ながらその学校は存在している。

『魔導士科』、『騎士科』、『工房科』の三つからなるこの学校には千を超える学生が在籍している。

 

そしてその巨大な校舎の最上階、学園長室にて。

学園長である石神悠禅(いしがみ ゆうぜん)は目の前に立つ少年と対面していた。

 

「長期遠征ご苦労だったね、御剣(みつるぎ)君」

「いえ。騎士団として、当然のことをしたまでですので」

 

長身で細身ながら少しも崩れることのない姿勢は長年鍛えられてきた賜物だろう。

藍色の髪は丁寧に整えられ、後ろでまとめられている。

白いローブと胸元に輝く剣の紋章が施されたブローチは、彼が騎士科の所属であることを示していた。

 

「これが我が校の至宝と呼ぶべき魔導具……『サーキュラスドライバー』だ」

「これが…、伝説の魔導具」

「ああ。適合したのは我が校では君が初めてだ」

 

御剣と呼ばれた少年が手にしたのは、不思議な形状の魔導具だった。

 

形状からしてバックルであろうことはわかるのだが、表面には複雑なラインが彫り込まれた円形状のパーツが二つ並んでいる。

中央部には何かを嵌め込むための窪みが存在し、右側面には持ち手部分にスイッチが付いたトリガーが備え付けられている。

 

「それはマギスタルの力を最大効率で引き出し、使用者を大幅に強化する為のデバイスだ。今はまだ使いこなすのに時間がかかるだろうが……それはいずれ、君の力となるだろう」

「ありがとうございます、学園長。これからも、さらに精進して参ります」

 

表情を変えず答える御剣に満足気に頷くと、石神は一つの書類を取り出す。

 

用紙には転入届と書かれており、そこには一人の少年の写真と経歴が記載されていた。

 

「それは…例の転入生ですか?」

「ああ…君と同い年だ。彼は少々訳ありでね、できれば君も仲良くしてやって欲しい」

「……分かりました」

 

御剣は失礼します、と一言残し踵を返してそのまま退出した。

 

それを見送った石神はため息を一つつくと、懐から一つのペンダントを取り出した。

その中には三人の男性が写った写真が収められていた。

 

「……もうすぐ奴が来るか、騒がしくなるな」

 

◆◆◆◆◆

 

「はぁ…」

 

マギアカデミア正門。

春先の陽気な天気とは不釣り合いなため息をつきながら、土元満(つちもと みつる)は校舎への道のりを歩いていた。

 

魔導士科の証である黒いローブと杖が彫り込まれたブローチを揺らしながら歩く彼の周囲はほんの少しだが淀んでいるかのようで、周りの生徒もそんな満を避けて歩いていた。

パーマのかかった亜麻色の髪や、黒い丸縁のメガネもくすんでいるように見える。

 

「今日…休めばよかったかなぁ…」

 

ぽつりと、そんな言葉を呟く。

今ならあの人も学校には来ていない筈。

その前に引き返そうとして──、

 

「土元ぉ、どこ行くんだー?」

(あぁ……終わったぁ……)

 

正面から歩いてくる集団を見て思わず天を仰いだ。

 

身に纏っているのは満と同じ魔導士科の制服。

だが制服を着崩し、髪を派手な色に染めたその姿は彼等を不良だと思わせるには十分だった。

 

その中で満に呼びかけた─先頭に立つ魔導士科の男は、軽薄な笑みを浮かべたまま歩み寄ると無遠慮に満と肩を組むように腕を乗せ、逃げ道を塞いだ。

取り巻きの生徒もそれを取り囲むように立ちにやにやと笑みを浮かべる。

 

「おっ、おおぉぉあぉおはようございます…、久住(くずみ)先輩……っ」

「おいおいそんな怖がるなよ〜、何も取って食う訳じゃないんだからさ」

「でっ、ですよねっ、アハハハハハ……」

(絶対嘘だぁぁぁ!!先輩が超ヤバイ人なの知ってるんですよ僕ぅぅぅ!!!)

 

ガタガタと震える満のことを無視して久住と呼ばれた男は続ける。

 

「俺ら今度の課題で純度の高いマギスタルが必要でさぁ」

「は、はぁ……」

「土元が持ってるやつ、ちょーっと俺らに貸して欲しいんだよねぇ」

「えっっ!!?」

 

肩が跳ね上がる。

さらにその後身体の震えが大きくなり、誰から見ても満が動揺してるのが伝わった。

 

「お前がAランクのマギスタルを持ってるのは知ってるんだよ。大事そうに磨いてるのを見たって奴がいるからな」

「えっと…その……」

「ちょっとの間だけでいいんだよ、な?」

 

迂闊だった、と後悔する。

面倒事が起きるからと父に釘を押され、誰にもバレないようにしていたのによりにもよってこの男にバレるとは満も予想だにしていなかった。

辺りに視線を向けても、道ゆく生徒達は皆、巻き込まれないように距離を取っている。

 

しかし、満はそれを非難することはしなかった。

もし自分が同じ立場なら、同じように避けていただろうから。

 

(誰かが風紀委員や騎士団に連絡してないかな…)

 

半ば諦めながらそんな事を思い浮かべた時だった。

 

「おーい!ちょっと道聞きたいんだけどー!!」

 

背後から唐突に声が掛かった。

 

久住や取り巻き達が振り向き、それに釣られて満も同じ方向を見る。

 

「お取り込み中ゴメンな!学園長がどこいるか聞きたくってさ」

 

駆け寄ってきたのは一人の少年。

 

180はありそうな高身長、赤銅色の髪は短く切り揃えおり整った顔立ちで人懐こい笑みを浮かべている。

身に纏うローブは魔導士科、満や久住と同じものだ。

首にはペンダントがかけられており、その先端には透明な輝きを放つマギスタルが嵌め込まれていた。

 

突然の乱入者に久住達は怪訝な表情を浮かべるが、それに気づいていないのか少年は続ける。

 

「………あれ、聞こえて……る、よな?学園長ってどこに〜…」

「聞こえとるわなんだテメェ!」

 

取り巻きの一人が声を荒げて少年を威嚇する。

その剣幕に怯え周囲の生徒達はそそくさと校舎へと走っていった。

 

「あ、良かった聞こえてた。それで学園長は」

「今俺らは大事な話をしてるんだよ!邪魔すんな!」

「邪魔したのは謝るからさ、せめて場所だけ教えてくれって!な?」

「お前いい加減に……」

「やめろテツ」

 

だんだんとヒートアップしていくテツと呼ばれた取り巻き。

彼は久住に一声かけられただけで「ウス」と一言だけ言いあっさりと引き下がった。

 

久住は少年に向き合うと再度軽薄な笑みを浮かべて話しかける。

 

「見ない顔だが、もしかして転入生か?」

「そそ、草薙玲央(くさなぎ れお)ってんだ、よろしくな!」

「そうかそうか…なぁ草薙ぃ」

 

そこまで言うと久住はゆっくりと玲央を──正確にはペンダントに嵌め込まれたマギスタルを指差した。

それを見て満は思わずあっ、と声を出しそうになる。

 

「それ、マギスタルだよなぁ…実は俺達困っててさぁ、ちょっとだけ貸しちゃあくれないか?」

(やっぱりぃ……!)

 

気づけば取り巻き達は玲央にじわじわと距離を詰めていた。

こうして人数差で追い詰め、マギスタルを借りる──そういう名目で奪う。

それが久住の常套手段だった。

 

(草薙って人!お願い!逃げて!)

 

満が必死に視線を投げかける。

届くはずがないというのは自分でも分かっていたが。

そして当の玲央はきょとんとした表情を浮かべ、

 

 

「え、普通に嫌だけど」

 

 

キッパリと言い放った。

 

「………あ?」

 

空気が凍りついた音が聞こえた気がした。

これには満だけでなく、久住の取り巻き達ですら唖然とした。

中にはこの後の惨劇を予想して狼狽えてる者すらいる。

しかし、玲央はそんな空気もお構い無しと更に続ける。

 

「これ師匠から貰った大事なやつでさ、それを初対面のよく分かんない人に渡す事は出来ないんだよ、ごめんな?」

「いや、ちょ…っ」

「大体困ってるならここにいるあんたの友達に借りればいいじゃんか、こんだけいるんなら流石に誰かお目当てのマギスタル持ってるんじゃないか?」

「待って待ってちょっと待って」

「……あ、もしかしてみんな砕けちまった感じ…?あ〜それはなんか、悪いこと言ったなぁ……ごめん」

「待ってって言ってるじゃんなんなの君ぃ!!!??」

 

満、我慢できずに絶叫。

こんなに大声を出したのは恐らく数ヶ月ぶりである。

なお玲央は『え、俺ぇ?』と言わんばかりの表情で満を見つめた。

 

「…………は、ははは…」

 

そうこうしているうちに久住が俯き、笑い声を漏らす。

それを聞いてみるみるうちに青ざめていく満達。

久住は一人だけ分かっておらず首を傾げる玲央を睨みつけ、いつの間にか手に持っていたマギスタルを突きつける。

 

「舐めやがってぇぇぇ!!!」

「お?」

 

久住の体を経由して光が徐々にマギスタルへと集まり、赤い光を放ち始める。

そうして腕を掲げ、全力で叫んだ。

 

『敵を焼け──ファイア!!」

 

詠唱と共に光はバスケットボール大の炎の塊に変化する。

久住は得意げな表情を浮かべ、そのままその炎の塊をぶつけようと腕を振りかぶり──。

 

「は?」

()()()()()()()()()()()()()()

 

拳はそのまま顔面に突き刺さり、久住は盛大に吹き飛ばされた。

取り巻き達は唖然とした様子で飛んでいく様子を目で追い、その場で固まってしまう。

 

「やっっっべぇ……」

 

そして殴った当人は冷や汗をこれでもかと流しながら自分の拳を見つめる。

 

重苦しい空気の中、最初に動いたのは玲央だった。

 

「………じゃあ俺他のやつから聞くわ!あいつ殴っちゃってゴメンな!!」

「は……?あっ、ちょっと待てコラァ!!」

 

我に帰った数人が玲央を捕えようと腕を伸ばす。

しかし玲央の右手はペンダントの先端にあるマギスタルに伸びていた。

 

『ブースト!』

 

次の瞬間、玲央の体が文字通りブレた。

取り巻き達の手は空を切り、捕えることができずに終わる。

圧倒的な速度で振り切った玲央は、そのまま道中にいる満をひったくる様に抱える。

 

「……へ!?なんで!?」

「友達借りてくなー!!」

「いゃちょ待ってぇぇぇぇぇ………………」

 

あっという間に見えなくなる二人を呆然とした様子で見送る取り巻き。

彼等は騎士科の生徒達がやって来る十数分の間、呆然とした様子で立ち尽くしていたという。

 

◆◆◆◆◆

 

数分後。

走ってその場を離脱した玲央達は、正門から少し離れた場所にある庭園を訪れていた。

ここは学生達の憩いの場として、多くの生徒達に利用されている。

魔法の力で咲き誇る四季折々の花を眺めながら、玲央は小脇に抱えたままの満に話しかけていた。

 

「いやー危なかったなー、普通に魔法ぶっ放して来るなんて」

「…………………」

「つい反撃しちまって逃げてきたけど、正当防衛ってことで許してくれねえかなぁ…」

「………………………」

「ようやくこの学校に来れたんだし、即退学ってのは嫌なんだけど……なぁ、あんたはどう思う?」

「………………………………」

「あれ、おーい?」

 

いつまでも返事がない満を訝しみ確認してみる。

 

「うーん…うーん……」

「やっば」

 

案の定というべきか、満は泡を吹いて気絶していた。

慌てて近くにあったベンチに座らる。

そのまま待つこと数分、彼はゆっくりと目を開けた。

 

「……あれ、ここ…庭園?なんで……?」

「あー、目覚めたぁ…良かった」

「僕…学校休もうとしたら久住先輩に絡まれて…それ、で……」

「あ、あの人先輩なのかぁ…もっとまずいことしちまったなぁ…」

「そうそう、本当にどうすれ、ば……?」

 

するとギギギ…と錆びついた機械のような動きでゆっくりと横を向く。

 

「さっきは大丈夫だったか…」

「ななななななにしてくれてんの君ぃぃぃ!!!」

「うぉっ!?」

 

突然両肩を掴み叫び出す満に思わずのけぞってしまう。

そしてそのままぐわんぐわんと大きく揺さぶられた。

 

「どうするんだよ完全に目をつけられたよこれからどうすればいいんだよーーーー!!!」

「わ、分かったから落ち着けって……っ!」

 

想像以上の力で振り解くこともできず、玲央はそのままなすがままとなる。

終わりだーー!と混乱して叫ぶ満だが、ここでさらに追い討ちがかかる。

 

『全く、魔導士だってんならもう少し優雅に構えろってんだ』

「そんなこと言われたっ……て?」

 

突然掛かった声に思わず辺りを見回す。

しかしいくら探しても自分以外にいるのは謎の転入生と、()()()()()()()()()()()()()()()()()──。

 

「……え、もしかして今の」

『ようやく気づいたか。まぁ他に候補もいないもんなぁ?』

「あれ、師匠起きてたのかよ」

『いつまで経ってもお前が起こさないから何があったかと思えば…また面倒ごとに首突っ込みやがって』

「いや、今回は別にいいだろ」

「………マ」

「ん?」

 

ふと満を見ると、彼はわなわなと声を振るわせ玲央の持つマギスタルを指差していた。

 

「マギスタルが喋ったぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!?」

 

土元満。本日二度目の絶叫であった。

 




次回変身できるよう頑張ります。
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