とある鏡面の魔法使い   作:nonose

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0話 夢のひととき

 

「魔法はね、イメージが重要なんだ」

 

 ──どこか見覚えのある丘で、銀髪の少女が私にそう言う。

 コレは……、夢だろうか。私がこうして、彼女と2人で喋った記憶は、あまりない筈だ

 

「イメージ……?」

 

 不思議そうにそう喋る、私も、当時から考えればありえない光景だった

 丘の上に座り込む、彼女に向けて言った私の言葉が、彼女の少し長い耳が聞き取って、少しピクりと揺れた。

 

「そう、イメージ。魔法は想像出来る範囲のことを現象として起こしてくれる、逆に言えば、想像できないことは実現できない。最も魔法式の解明も必要がないわけじゃない。其れを置いておいても、想像する力ってのは、魔法においてとても重要なんだ」

 

 ──こんなことを彼女が言っただろうか

 やはり、コレは夢なんだと改めて気が付かされる。何と言うか、彼女が私に向けて魔法のことを喋るときは、もっとふわふわとしていた気がする。

 

「もし、それが想像出来る現象なら、なんだって魔法に起こせる……ってこと?」

 

「まあでも、魔法の使い手の熟練度にも寄るよ。あまりにも規格外じみた魔法まで想像だけで使えるかは分からない。あくまで、魔法の威力と安定性を補強するのと、発動に必要なカギってだけ」

 

「そう、ですか」

 

「レフィリ」

 

 ──長らく聞いていなかった、その声音で名前を呼ばれる。私も、夢の中の私も、少しビックリしながら肩を跳ねさていた。

 その綺麗で、でも少し冷たさと温かさを同時に感じてしまうような、不思議な声。

 

「……はい?」

 

「魔法は好き?」

 

 ──魔法は嫌いだ

 私と彼女を繋いでしまったモノだから

 

「……どうかな、人の使う魔法を見るのは好きだけど」

 

「そっか、だからこそ、レフィリの得意な魔法は『ソレ』なんだろうね。まあ私としてはあまり、戦闘では多用して欲しくはないんだけどね」

 

「アナタは、私の魔法はお嫌いですか?」

 

「いいや、良い魔法だと思うよ。君が、もしエルフみたいに長生き出来るなら、スゴイ魔法使いに慣れたかもしれないね」

 

 ──やっぱり、夢だ

 彼女が、私にこうして褒めてくれたことはない気がする。面と向かって、こうして目を向けて、微笑むように、そんなことを言うなんてこと、いままでも……そしてこれからも有り得ない。

 

 でも、夢でも彼女にそう言ってもらえるのは───

 

「それなら……良かった、です」

 

 

 ──とても嬉しいことだ

 

 

 

 

 ◆

 ◆

 ◆

 

 

 

 

「……で、わざわざ呼び出してどうしたんだよ。ツンツン不幸少年」

 

「ツンツン不幸少年って俺のこと!? ……て、いやそうじゃなくて。お前、前に魔法だのどうだのって言って見せてくれたことあるだろ?」

 

「ああ、そんなこともあったね。かつてはただの能力者だと思われていたみたいだけどね」

 

「いや、それは悪かったよ」

 

「まあ、事情は何となく察してはいるよ不幸少年くん。そこのシスターについてだろう? 最初に言っておくけど、私にはどうすることも出来ないよ」

 

「ん? 何か勘違いしてませんこと?」

 

「……こちらこそ、ん? って感じなんだけど。キミもとうとう、行くとこまで行ったね。まさかシスターを誘拐するだなんて、罰当たりも甚だしいじゃないか。日本は八百万……と言っても、外国じゃそこら辺厳しいでしょ」

 

「本当に何言ってんの! 違いますけど!」

 

「なんだ違うのか、またどっかで女の子引っ掛けて来たのかと勘違いしちゃったよ。それで結局、用事ってなに? 私もあんまり暇じゃないんだよね」

 

「ごめん、それは分かってるって。まあこのシスターについてなのは、間違いないんだ」

 

 彼はそう言って、彼女の前に、先程から興味深そうに『鏡』をペタペタと触りながら睨めっこする、安全ピンでツギハギにされた修道服を着たシスターを見る。

 

 シスター側も、呼ばれたことに気が付いたのか鏡を見るのをやめて、彼女の方を見る。

 

「因みにだけど、その鏡はただの鏡だから、見ても意味ないよ。魔力の痕跡くらいは残ってるかもしれないけどね」

 

「それは分かってるんだよ。ただ魔術式も何も無く、ただの鏡から、人が出てくるなんて思ってなくて」

 

「まあ、君たちの魔術とは根本的に体系が違うからね」

 

「あれ、やっぱり訳知り顔なのか?」

 

「まあね、私も魔を扱う人間だし、こちらの魔法についても少し触れてはいるよ。と言っても本当に齧った程度だけどね」

 

「魔法じゃなくて魔術なんだよ」

 

「ああ、ごめんごめん。君たちはそういうの気にする手合いだったね、忘れてたよ」

 

「なんだか馬鹿にされてる気がするんだよ」

 

「気の所為だね。ところで、困ったことってのは、このシスターの処遇についてかな、説明をしてくれるととても助かるんだけど」

 

「ああ実は────」

 

 彼はそう始め、シスターとの邂逅から、その末に起きた事故、そして彼女の話す意味のわからない話。

 魔術と語るモノや、10万3000冊の魔導書について、その末に、かつて似たような力を持った女が居たことを彼は思い出し、こうしてその女を呼び出した……という顛末を話した。

 

 

「ふぅむ、なるほどね。さてはキミ、考え無しってよく言われないかい?」

 

「その件は本当に反省しております……。それはもちろん心の底から」

 

「シスターちゃんが可哀想だね。それでシスターちゃん……ええと、インデックスちゃんだっけ?」

 

「うん、合ってるんだよ。そっちは……」

 

「ああ、名乗り忘れてたね。私はレフィリ、家名は無いよ。産まれとかは察してね、日本じゃないことだけは確かだけど」

 

「レフィリ……、貴女は魔術師なの?」

 

「私が魔術師ではないことは、貴女が1番わかると思うけどね。さっきも言ったように、根本的に違うからね。それでも私を呼称するものがあるとするなら、『魔法使い』と呼ぶといいよ」

 

「魔法……」

 

「そう魔法、と言っても内容量とかは君たちの使う魔術と一緒だよ。出力とか過程が違うだけ。結果は一緒だね」

 

 彼女……レフィリがそういうと、インデックスは納得したような、していないような微妙な表情をしながら首を傾げていた。

 

「まあ気にすることは無いさ。問題は1つでしょ? 恐らくそこのバカ、基、上条君は私に君の世話を焼いて欲しくて呼んだわけだ」

 

「バカ!?」

 

「否定できる要素、ある?」

 

「……ない、ですね」

 

「ならよろしい。まあ結果から言えば、受けてあげなくもない」

 

「えっ、いいの?」

 

「構わないよ。何をするかにもよるけどね。この学園都市から抜け出したい……と言うなら簡単だし、追ってくる魔術師を撃退しろ……と言われたら少し難しいね」

 

「前半はわかったけど、後半はなんで? これだけの力を持ってるなら、多分もっと底は深い筈なんだよ。間違いなく、あの魔術師にも勝てる……と思う」

 

「まあ、可能性はなくも無いね。それも1人ならの話だけど。向こうが気が付いてるかは知らないけれど、何度か彼等の存在は把握していてね。あんなにバカスカ魔力を使われたら嫌でも目に入るってもんさ」

 

 そう言いながら、レフィリが思い出すのは昨晩、インデックスを追いかけ学園都市中を跳び回っていた2人。どうやら、その2人というのがインデックスの言う魔術師らしかった。

 

「男の方なら、まあ多分何とかなるかもしれないね。ただ問題はもう1人の方だね。あれは底が知れない、性質的には"女神様の加護"を受けたモンクとか、聖職者が近いのかな。そういう感じの雰囲気がする」

 

「あれは……聖人って呼ばれてる人達だと思うんだよ」

 

「まあ見たところ、身体能力の向上とか五感の向上とかだろうね。それに加えて、魔術で身体を強化してる。魔力を使って対抗してくるならまだいいけど、あれで殴られようものなら、うん打つ手がかなり厳しいね」

 

「てなると、学園都市から出してやるのが1番か? だとしても、どうやって出すんだ? ここは学園都市だぞ? 警備だってある」

 

「……はぁ、だからキミはバカだなんだと言われるんだ。キミの先生が可哀想だね。上条くん、私が何でどうやって、この部屋に来たのか忘れたの?」

 

「────あっ、そういうこと」

 

「そ、私がいれば学園都市外にある鏡に繋いで、彼女を外に出してやることが出来る」

 

 レフィリはそう言って、虚空から鏡を1枚取り出し、彼女が一言「『鏡面を操る魔法』」と唱える。たったその一言で、鏡は鏡面が波打つ異様なものへと変わり、レフィリがその鏡へと手を突っ込めば、インデックスの持つ鏡から彼女の手がぬるりと生えてきた。

 

 1度見ていたインデックスも、何度か見た事のある上条当麻も互いに、そのホラー味ある光景に、少し肩を跳ねさせていた。

 

「まあこのように……と言っても、向こうに置いてきた鏡が壊されてなければの話だけど。流石に長距離の移動となると、ちゃんと魔力を込めてないと移動できないんだよね」

 

 上条当麻やインデックスの反応に、満足したのかイタズラ成功と言ったように、白い歯を見せながら笑っていた。

 

「例えて言うなら、目印を兼ねたアンカーのようなものだね。そこに打ち込んで、あとは私が魔力探知で探してその鏡に繋げてやれば…………ほら、この通り」

 

 鏡から1度手を引き抜いた彼女が、またもう一度腕を突っ込むと、今度はインデックスの持つ鏡からは、その腕は出てこず、何処かへの鏡へと腕が消えていってしまった。

 

 インデックスたちには、その行き先が学園都市外かは、判別のつきようがないが、言いようのない納得感がレフィリにはあった。

 

「──てことは、もうこのシスターは学園都市にいる必要が無いってことだよな? 直ぐにでも、向こうに送り返してやりゃいいんだもんな」

 

 上条当麻の期待の眼差しに射抜かれながらレフィリは1つ、思い悩んでいたことがあった。

 彼女の言う通りであるなら、確かにインデックスを学園都市の外へと『魔法』の力で、連れ出してやることが出来るのは間違いない。

 しかし、彼女の考えている1つの不安点が、上条当麻のその良い様に、ふたつ返事で、うんとは返せなかったのだ。

 

「なにか、問題があるのか?」

 

「うーん、そうだね。ああ言った手前申し訳ないけど、いますぐは無理だ。問題点は3つある」

 

「3つもあんのかよ!」

 

 そう驚く上条当麻とは裏腹に、インデックスはその『問題点』に少し思い当たりがあるのか、彼女は俯いて暗げな表情だった。

 

「うん、1つ目の問題は、私のこの魔法には距離に応じて時間と魔力を消費すること。なので、行き先から1番近いところを探さなきゃいけないんだけど、インデックスちゃんの格好から見るに、行き先はやっぱ外国でしょ? それがなんでこんなところに居るのかは分かんないけど、其れはまあ良いでしょう」

 

「そして2つ目、魔力を持つ人間を運ぶ場合は魔力を馴染ませないといけない。この馴染ませる行為っていうのは、私にだね。運ぶ相手の魔力を覚えてあげないと、多分どっかで弾かれちゃって、永遠に現世には戻って来れないんだ」

 

「最後に3つ目、このままインデックスちゃんを外に出したら、まず上条くんが魔術師たちに命を狙われる危険性がある」

 

「それって、どういうことなんだ……? その魔術師って奴らは、インデックスがここに居ることを知らない筈だろ?」

 

「んー、所感としてはそうは思わないね。学園都市まで追ってこられる時点で何らかの措置をインデックスちゃんに施してる筈だよ」

 

 上条当麻は、レフィリのその言い草に、説明を求めようとするが。レフィリは、其れは本人に聞いた方が早いと、インデックスに説明を急かせた。

 

 

「うん、レフィリの言う通りなんだよ。あいつらは多分、私の『歩く教会』の力を探知して、追ってきてるんだと思うんだよ」

 

「うんうん、因みにその歩く教会、改めインデックスちゃんの修道服だね。それをぶっ壊しちゃった輩が居るらしいんだよね」

 

「──えっと、その……つまり?」

 

「うん、君の浅はかな考えのせいで、インデックスちゃんが何者かとココで接触したってのは伝わってるんじゃないかなってことだね?」

 

「おぉぉぉぉぉ……! 嘘だろぉぉぉおおお!!」

 

「いやぁ、不幸だ不幸だと言っていたけれど、その不幸を自身の手で掴み取っちゃうなんて。カッコイイね! 破滅願望でもあるのかな?」

 

「や、やめてください……いまその言葉は上条さんに効く……」

 

 己の行動に、今年最大の後悔を抱えつつ、お決まりの『不幸だ』と叫びたいところだったが、レフィリに言われた通り、自身の行動が招いた現状だった為に、嬌声をあげ呻くことしか出来なかった。

 幻想を壊すその右手も、後悔のある現実は壊すことは出来ないのだ。

 

 

「とにかくだね。解決策を練ろうか」

 

「でも、迷惑を掛ける訳にはいかないんだよ。命だって危ないかもしれないし……」

 

「うん、でもまあ何とかなるでしょ、上条くんも手伝ってくれるだろうしね」

 

「うぇ!? 俺も手伝うのかよ!?」

 

「乗りかかった船は何とやら、がこの国の言葉だろう? 可愛い1人の女の子助けないで、何が上条当麻か」

 

「人のことを何かの代名詞にするのはやめてくれませんかねぇ!? 俺はヒーローでもなんでもないんだぞ!?」

 

「でも困ってたら助けてあげるでしょう、君なら?」

 

「……ぐっ、確かに目の前で困ってるヤツが居たら、何かするのも、やぶさかではないというか……なんというか」

 

「ま、インデックスちゃん、この子はこんな感じの子だから安心して頼っていいよ。上条くんってば女の子だったら見境なしに助けちゃう、そんなすけこまし野郎だからね」

 

「そ……そうなんだ」

 

「ちょっとそこ!? 引かないでくれます!? てか、そもそもの話が嘘だからな!? そんな都合よく助けたりしてねぇから!」

 

「いや、うん……人の事を助けてあげることは、とってもいいことだと思うんだよ? でも、ちょっと身の危険を感じるから、少しだけ距離を……」

 

「おぉい! 信じてんじゃねぇか!」

 

「上条くんがボケナスハーレム朴念仁クソバカ野郎なのは、置いておいてだね」

 

「置いておかれるんでせうか……」

 

「そう置いておいて、まずは2人の魔術師の出方を見よう。相手がどんな攻撃方法を取ってくるか分からない。なので、今回は上条くんを先発に、様子を見ようと思うんだ。キミなら大抵の敵なら、その右手で打ち消せるだろう?」

 

「まあ、そりゃそうだが。この右手が打ち消せるのは異能の力までで、物理的な攻撃は打ち消せないぞ?」

 

「まあ向こうが物質攻撃や打ち消せないほどの質量攻撃を浴びせてきたら、私が間に入るよ」

 

「けど、向こう側が来るとは限らないぞ?」

 

「いやぁ、絶対来るでしょアレは」

 

「その自信に満ちた顔は何でなんですかねぇ」

 

「んー、そうだね。長年生きてきた、カンかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





リーニエとレッサーのキャラ造形すこ
性格面は一方通行
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