三年間を駆け抜け、ひと段落つける前の、ある日のできごと

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ダイイチルビーの育成を終えた勢いで書きました。育成目標は全勝、温泉旅行と育成完了後の時系列です











ダイイチルビーと歩んだあとに

「いかがされましたか」

 

「ああ、いや……そろそろだからさ」

 

 トレーナー室にて今後のスケジュールの確認中、ふと時計を見た自分にルビーが声をかける。来週はURA賞の発表日だ。表彰されるのは最優秀クラシックウマ娘や最優秀シニアウマ娘などの各部門、そして──年度代表ウマ娘。

 

(……ルビーは選ばれるだろうか)

 

 それは最優秀スプリンター、についてではない。春秋スプリントに春秋マイルとこの一年の短距離界をルビーは無敗で駆け抜けた。この部門に関してはルビーが獲ることはほぼ決まっているようなものだ。問題は短距離路線の軽視、そして王道路線での活躍バ──

 

(無敗の二冠ウマ娘、トウカイテイオー……)

 

 前評判に違わずその才能を発揮した天才。ダービー後に怪我が発覚したことで三冠の夢は潰えてしまったが、それでもその残した蹄跡は大きい。彼女は間違いなく最優秀クラシックウマ娘に選ばれる。短距離路線と王道路線の注目度の差は大きい。ならば、そのまま……

 

「ずっと険しい顔をされていますよ」

「何か思うことでもあるのですか」

 

 思考の海に沈んでいたところをルビーに引き揚げられる。なんでもない、と言おうとしてもう一度彼女を見る。

 

「そろそろURA賞の発表だな、と思って」

 

「であれば何を悩んでいるのでしょう」

 

 抱いている懸念を伝えたが、それでもルビーは澄ました顔で言う。

 

「ええ、ですから貴方は堂々としていれば良いでしょう」

 

「貴方のこれまで頑張ってきたではないですか」

 

 思わず背筋を伸ばす自分にルビーはさらに言葉を重ねる。

 

「マイルCSのとき──貴方は自らの力で舞台を整えた。一族の皆さま、記者の皆さまを貴方が動かした」

 

「貴方は私のトレーナーです」

 

「──ああ、ごめん」

 

 その通り、自分はダイイチルビーのトレーナーだ。“彼女”の玉条を、強い想いを知っている。ならば悩む必要などないだろう。たとえ、今は認められずとも、

 ──残した結果に変わりはないのだから。

 

 

 ️ ️ ️

 

 

「では、ありがとうございました」

 

 打ち合わせをしルビーとのトレーニングを終え、トレーナー室へ戻る。

 

「ん、あれは……?」

 トレーナー室の前にはたづなさんが立っていた。労りの言葉のあとに口頭では説明できないことだ、とだけ残して書類を渡して帰っていった。

 

(中身はなんだろう)

 

 丁寧に封を切って、中身を確認する。

 

「……えっ!」

 

『URA賞受賞のお知らせ

(前略)

 この度、貴君の担当ウマ娘がURA賞を受賞したことをお知らせします。発表日と授賞式の段取りと、つきましては──

 説明を読み飛ばしページをめくりながら、一番知りたい情報を探す。

 

「……あった」

 

 最優秀ジュニアウマ娘

 クラシック路線・ミホノブルボン

 ティアラ路線・ニシノフラワー

 

 最優秀クラシックウマ娘・トウカイテイオー

 ……

 

 最優秀シニアウマ娘

 クラシック路線・メジロマックイーン

 ティアラ路線・ダイイチルビー

 

 最優秀スプリンター・ダイイチルビー

 

 ……

 ……

 

 年度代表馬・ダイイチルビー

 

 

 以上の者とそのトレーナーは一週間以内に発表用のコメントを書くようにお願いします』

 

 ……──良かった。ああ、本当に、

 

「良かった」

 

 

 ️ ️ ️

 

 

 録画しておいたこの前の授賞式と、インタビューの様子を見る。今はちょうど乙名史記者とダイイチルビーのシーンだ。

 

「最優秀シニアウマ娘、最優秀スプリンター、そして年度代表ウマ娘への選出おめでとうございます!」

 

「はい。ありがとうございます」

 

「去年の活躍は大変素晴らしいものでした! 多くの人々がその活躍を、華麗なる一族の輝きに注目していました! なにか去年の活躍の背景に特別なことはございましたか?」

 

「いえ、特別なことは何もしておりません。ただ一つ、華麗なる一族は新たな象徴を“スピード”と定めました。

 それに従い私が為す使命、私の最たる輝きを、走りによって皆さんに見せられたのなら──それは非常に喜ばしいこです」

 

「なるほど、なるほど……素晴らしいです!! 次にトレーナーさん。貴方は──」

 

 プツンとテレビを切る。コツコツと、ルビーの足音が聞こえる。思っていた以上にテレビに見入ってしまっていたらしい。そろそろトレーニングの時間だ。

 

「……別に消す必要は無いでしょう」

 

「いやでも君が来たということは、もう時間だろう?」

 

「……トレーナーさん。貴方には休息が必要だとこの前の旅行で言ったではないですか」

 

「ありがとう、ルビー。でもやっぱり大丈夫だよ。さあ早くトレーニングを──」

 

「……気分です。私が、貴方と一緒に居たいのです」

 

 こちらを見て薄く、彼女が微笑む。彼女はシニア級が終わったとき……否、温泉旅行に行ったときから思っていたがやはり変化が起きている。使命だけにこだわらず、より優しくなったし、ケイエスミラクルやダイタクヘリオスのような友達ともよく一緒に見かけるようになった。

 

「それに今年の抱負もまだ決めてはないでしょう」

 

 三年間ルビーを担当して自分のことを少しだけ好きになれた。不相応な立場から一緒に歩むことで彼女には迷惑ばっかりかけていたが、成長できたと思う。それと同じように彼女に起こっている変化が、自分と一緒に居たからだったらとても嬉しい。

 

「ありがとう。じゃあ見ながら決めようか!」

 

 華麗であれ、至上であれ、常に最たる輝きを。“華麗なる一族”の、そして“彼女”の玉条を、決して忘れずにいよう。

 












地の文に頼り切りなのは自覚してます。

ケイエスミラクル、ダイタクヘリオス、メジロパーマーなどの舞台組やその関係者はほとんど持っていない関係でルビーとルビトレ二人で話を回しました。

短距離界の新星としてバクシンを登場させる予定でしたがなんか良い雰囲気になったのでそこで締めました。

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