天才少女有栖ちゃん(憑依) 作:ロリロリローリコン
「ごきげんよう堀北さん、一回目の集まりでは待たせてしまったので、少し早く着かせてもらいました」
「……そう」
一回目の時とは違って、最後にこの場に着いたのは堀北鈴音を始めとしたDクラスの生徒だった。
既に自身のクラス以外の生徒が集まっているという状況にほんの少しだけ違和感があったのだろうが、彼女は直ぐに表情を切り替えた。
「遅れている生徒は居ないな……時間だ」
葛城くんのその一言で、第二回目のグループディスカッションが開始される。
「ごめん、最初に発言良いかな?……一回目の時に疑われたけど、Dクラスの中にはこのグループの中に優待者は居なかったよ、信じるか信じないかは自由だけれど。僕から言えることはそれ以上も以下も無いかな」
「はッ、そりゃあ疑われたら否定するしかねェよな?それをわざわざこの場で言うってのは、疑ってほしいですって言ってるようなもんだぜ?」
「うん、だから信じるか信じないかは自由だって僕は言ったよ龍園くん。そして他の人の言葉よりも早く僕達Dクラスに発言をした龍園くん達Cクラスもまた、怪しいんじゃないかな?優待者のことに敏感になってると僕は思ったよ」
まず最初にこの場の発言権を取ったのはDクラスの平田洋介か。事前に相談していたか?怪しまれていた当人である堀北鈴音が否定しないのは、策略としては凡策のように思えるが。
とはいえ龍園の言葉に対して強かに返す彼は、どうにもDクラスというよりはBクラス寄りの全体的に優秀な生徒のように思えるが。はてさてどの様な採点でDクラスに所属されたのだろうか。
気にはなるが、それでも“彼”程じゃ無いな。
「如何にも良い子ちゃんみてえな言葉だな、なァおい静かだな?鈴音、警戒でもしてんのか?らしくねェなぁ、もっとお前の声を聞かせてくれよ」
「馴れ馴れしくしないで頂戴。それに貴方を警戒している訳じゃないわ、勘違いも程々にしてもらえる?」
「あ?」
「坂柳さん、貴女は私達Dクラスの中に優待者がいる。そう考えていると思ってるのだけれど、それは今も変わらないという事で良いの?」
龍園の威圧に意に介さずあくまで有栖との話し合いを望んているらしい、私という有栖を見つめるその視線は、対抗心と決意を込めたような視線のようにも思える。
私、というより”坂柳有栖“に対抗意識でもあるのか?それは構わないが……ともあれ、ここで話し合いを終わらせる事はできる。
その証拠にBクラスの神崎隆二は静かにこの場を静観しているし、龍園は敢えてDクラスに向けて言葉を交わしている。
疑いをかけられている状況にどう否定するのか興味がある。それが誰かの入れ知恵なのか、それとも堀北鈴音本人の言葉なのか探りたい。
付き合ってみようか有栖。
「どうでしょう?少なくとも、私はDクラスの中に優待者がいると、そう思っている事は否定しませんよ?」
「だとしたらそれは違うわ。証言だけで足りないというのなら、証拠も提示出来るわよ」
「なるほど、ではその証拠の提示をお願いしてもよろしいでしょうか?」
「簡単よ、互いにこの場で誰にも見えるように携帯を見せて、学校側から来たメールを見せ合うの。これなら私たちDクラスの生徒が無実であるという事がわかるわね?」
「なるほど、確かに堀北さんのその言葉には否定する要素はありません。それと同時に提示されたその携帯が本人のモノであるかどうかという事も否定出来ないと思いますが」
「そうね。でもこの場で見せることが出来ると私は言っているし、今からそれを実行しても良い。その上で坂柳さん、貴方が優待者でないと言うのなら貴女も携帯を見せてもらえないかしら」
「ふふっ、良いですよ?ですが私だけで宜しいのですか?」
「いいえ、私を含めたDクラスの生徒三名の携帯を提示する代わりに、他クラスの生徒も携帯のメールを見せて頂戴、出来るわよね?だって貴女達の中に優待者は居ない、そうでしょ?」
なるほど。
一転して堀北鈴音はDクラスの身の潔白を証明する代わりに他クラスも証明してみせろと攻めの姿勢でこの話し合いに望む様だ。
堀北鈴音の思考は分かる、私が思うに彼女はこの場で携帯を提示するつもりは無い。だが強気に出ることでDクラスに優待者は居ないと印象を付けようとしているのだろう。
二回目のグループディスカッション、お互いに信用出来るか出来ないかは未だ不明。そんな中信用しあってこの場にいる生徒全員が携帯を取り出して提示する事は無いだろうと考えての発言だろう。
リスクはあるが、警戒心の強い龍園や守備的思考の強い葛城くんにはこの言動は効果的だと思われる。
前者は言わずもがな、自分以外を信じていない為。葛城くんもまた性格的に自分のみならず他Aクラスに生徒を巻き込む事は良しとしないだろう。
仮に、私が実の父である理事長に無理を言ってこの豪華客船の試験に参加してなかった場合消去的に葛城くんが指揮を取る事になる。その時は無駄なリスクを追わない戦略を好んで行動していただろう。
リスクの多い作戦だ、堀北鈴音の人物像には当てはまらないとも言えないが……ほんの少しのアドバイスは受けたのだろうか?
だとしたら、そのアドバイスをしたであろう綾小路清隆は、この試験の全貌を掴んでいる様に思えない。
この試験のからくりは一見難しそうに見えて単純な解答だ、灯台下暗しとも言う。
誰しもが考えうる思考故に、それが解答であると確信する情報を自身の所属するクラスの手札では100%断言は出来ない、しかし一度“こう”と考えれば、他に当て嵌まる法則性も無いのだ。
……ブラフか?敢えてここでの最適解を堀北鈴音に教えないことで、自分の正体を隠そうとしているのだろうか。
呑気だね、綾小路清隆。
それとも無人島の時と違って、この場でcpを稼ぐ方針では無いのだろうか?いまいち彼が何をしたいのか分からない。
何がしたいんだろう?こればかりは本人に直接聞くしかないのだろうか。
同じグループでない以上どうしても関わることができないが、それならそれでも良い。
……うん。そろそろ終わらせよう。
「その通りですね、Aクラスはそれに異論はありませんよ?……龍園くん、貴方はどうしますか?」
「く、くくっ……!」
私のその言葉に龍園は笑いを堪えるかのような表情をする、この状況を楽しむ様なその表情に、堀北鈴音は訝しむ様な表情をしていた。
彼にとって、いやDクラスを除いたこの場にいる生徒にとって、この状況はもはや茶番の様なものになっている。
「……何がおかしいの、貴方」
「ははっ!おいおい、笑わせんなよ、せっかく笑い堪えていたって言うのによ……!」
「……趣味が悪いぞ龍園、堀北は十分頑張っていた。それは事実だ、笑うような事じゃない」
神崎隆二が気まずそうな顔で龍園にそう指摘する。
異様な空気に包まれたこの場にますます不可解だろうな、Dクラスには私は交渉していない。それはその方が効率的に有栖が盤面を支配出来ると考えたからだ。
私はこほん、と改めて声を整え改めて宣言する。
「竜グループの優待者は櫛田桔梗さん、貴女ですね?」
⭐︎
今回の試験の鍵は、干支の動物の順番と割り振られた生徒たちの名字だ。
単純なグループ分けをするなら数字でも良い、何故干支にしたのかを考えれば、その法則性に気付く事は簡単だった。
分かりやすくシンプルな法則、けれどもこの法則が試験の答えだとした場合、Aクラスの生徒の情報だけでは断定する事はできない。
何よりファーストペンギンとして投票するのには明確な根拠が無ければ投票し難いのも事実、他クラスの情報は必要だと考える。
だから私はDクラスを除いた竜グループに割り振られた龍園と神崎隆二を前持って呼び出し、自身のこの試験に対する答えの思考を開示して交渉する事にした。
この場にいるには私と龍園に神崎隆二、そして予想出来る状況の中で、危険に襲われる可能性も兼ねて鬼頭くんも近くにいる。
呼び出しを拒否される事も考えては居たが流石に杞憂が過ぎたな。そこまで大胆に行動出来る程、私の行動を無視することは出来なかったのだろう。
「……なるほど、坂柳の語るその法則は確かに信ぴょう性の高いものだ」
「はっ……オマエのソレが正しいなら竜グループは櫛田桔梗が優待者って事になる訳だ。で?それを教えて坂柳、オマエは何が言いてえんだよ」
訝しむ様な二人の視線に、私という坂柳有栖は臆する事なく冷静に思考を開示する。
この交渉は私が整えたが、だからといって自分の思考を隠す事は意味のない行為だ。ある程度彼らに譲歩する必要がある。
「先ずは大前提として、私はこの試験の全てのグループの結果を結果1に統一させたいと思っています。お互いの信用の為にも試験中に投票をしない事を約束して頂き、その上で優待者が誰であるか共有して貰えますか?勿論、先ずAクラスから共有させて頂きます」
「その法則が本当か確かめる為にも共有して欲しいという事だな、だが安易に決めたくはない。それにその提案に乗った場合、CPは獲得出来ない」
「気が合うなァ神崎?語り損だったなぁ坂柳、てめえのその考えは有り難く参考にさせて貰うぜ?」
そういって龍園はその場から離れようと足を動かそうとしたので、私は見せびらかすように携帯を取り出していつでも“送信”を押せる様に手を動かした。
送信先はAクラスグループチャット、送信内容は既に記入済み。
私はこれを押すだけでこの試験を終わらせる事が出来る。
その行動に気付いた龍園は、獣のような反射神経で私のその腕を掴もうと私に向かってくる。
思考ではその行動を予知していたが、やはりこの体は反射的にその行動に対処する事は出来ない。
「_____ッ!離せや、飼い犬が」
「離れろ、龍園……!」
掴み掛かろうとしたその腕を鬼頭くんが察知し止める。睨み合う様な両者の表情は対照的で、鬼頭くんは静かに怒りを露わにしており、龍園は愉しげな表情だ。
……やっぱりこうなるか、図書館の時から片鱗は見せていた。鬼頭くんを護衛として付けていて正解だったな。私が身体的に不利を抱えていようとも龍園には些細な問題ですら無いのだろう。
学生、この日本に生きる人間として、安易に暴力に頼るその癖は如何にも、私個人の考えでは歪だと思ってしまうが……ふふっ。
”異物“である私の方が歪かな?
「櫛田桔梗が竜グループの優待者である事は先程の会話でほぼ確信しています。法則にも沿っている以上、貴方がこの交渉のテーブルから降りると言うのなら、この場でCクラスの優待者を当てる様、各グループのAクラスの生徒に送信します」
「はッ……!やってみろよ?だがそれで勝ったと思うなよ、俺にした事をそのままテメェらに返してやるよ」
「そうですか。所で神崎くん、この試験をAクラスの圧勝にする事は、今すぐにでも出来るのですが、Bクラスには面白くない結果ですよね?」
「あ、あぁ。それはそうだが……何が言いたいんだ?」
「龍園くんが交渉のテーブルに着かないと言うのなら仕方ありません。お互いに優待者の情報を共有しその上で私はBクラスとCクラスの2グループを、BクラスはAクラスとDクラス、そして残ったCクラスの1グループの優待者を当てましょう。これで全ての結果は3になり、両者のCPの溝を50ポイント分埋めた上でお互いにメリットのある状況が作れます」
「……っ!坂柳、テメェ……ッ!」
私の狙いに気付いた龍園くんは睨み付けるように私にその蛇の様な狡猾な瞳を向ける。
そんな彼を私は坂柳有栖として憑依しつつも、冷ややかな目線を向けてしまう。
ある程度彼らに譲歩する必要がある。だが過度に譲歩する必要もない、私は有栖の頭脳を信頼しているし、この法則性に間違いはないと踏んでいる。
そしてそれに真っ先に気付きこの交渉の場を作った段階で飛車角王手、交渉はするが交渉のテーブルから降ろすつもりは無い。
反撃も許さない、今この場で私と有栖が欲しいのは「勝利」ただ一つ。
「……っくそが」
龍園くんは掴まれていた腕を強引に振り解くと、苛立ちを隠さないまま正方形の部屋の壁に寄りかかる様に、その場に留まる判断をした。
……AクラスとBクラスの両方がPPとCPを稼ぐ展開は流石に許容出来ないか、恩を着せるやり方を私が取る以上、三クラス共闘でAクラスに立ち向かう構図も作りにくいと判断したな。
それで良い、ここで留まる判断が出来ると思っているから、私は君を交渉の場に呼んでいる。
「テメェの戦略に乗ってやるよ坂柳、癪だがな」
「なんだと?……待ってくれ、まだBクラスは了承していないぞ」
「ですがそれは一之瀬さんの最終決定が無ければ今すぐこの場で優待者を当てる事も出来ない、そうですよね?神崎くん」
「それは……」
一之瀬帆波ではなく、神崎隆二を呼んだ理由はこの場で決定を促さないためだ。
彼女がこの交渉の場で私の思考の開示を聞き、即座に優待者当てに動こうとする確率は低い。だが無いとまでは言わない。
私は一之瀬帆波と関わっていく中で気づいたが、彼女は一般的に善良な人間である事は事実だが、その正義感は行き過ぎている正義感のようにも感じた。
それには理由があると踏んでいる。生まれ持った先天的な思考から善良であれとしている訳ではない。それがどう転ぶか些か不明確だった。
「12グループ全てが結果3で終わる場合、得られる450CP、これは月に45000PP、合計して180万PPになります、他クラスから優待者を全て当てられた場合得られるCPは300CPに変動します、ここまでは分かりますか?」
「……あぁ」
「では次に全てのグループが結果1で終わる場合、支給されるPPを合計すると全てのクラスに共通して2250万PP。結果3で終わった場合Bクラスが所持している現在のCPを加味しても2250万PPを集めるには、凡そ1年程の月日が掛かります。さて神崎くん、何方の結果の方が恩恵が多いと判断しますか?」
「確かに、プライベートポイントを稼ぐという一点においては、圧倒的に結果1で終わった方がメリットがある、だがそのポイントはあくまでも個人間でのポイントだ。クラス順位が変動するポイントではないだろう」
「時に、好きなクラスに移籍するには2000万PP程必要だと以前聞いたことがあります。クラス移籍に於いてポイントが設定されているという事は、仮に何かしらの事情……分かりやすく中間テストでの赤点などで退学になる際にもPPによる介入が出来ると判断します」
「いや、だが……」
「今この場で話した事を一之瀬さんに電話などで相談しても宜しいですよ?この場に呼んでいただいても構いません」
「……少し待ってくれ」
神崎隆二の一存では決め兼ねない判断だ、彼は非常に悩むだろう。そして悩んだ結果、双方にとってのメリットを思考した時、この交渉に乗らなかったとして、この試験でのAクラスの標的がBクラスへと変わるだけだと早々に気付くはず。
……この場の交渉権の全ては私が握ったと判断して良い。
王手。
あとはこの試験を畳むだけだ。
「では改めて。この試験における誓約書を用意しました、内容を確認して頂いて、不明点や疑問、不満な点などを擦り合わせましょうか。ふふっ……ある程度は譲歩しますよ?」
⭐︎
この二回目のグループディスカッションが始まる前に、既に私はBクラスとCクラスとの交渉を“完了“している。
「……そう思うのなら今この場で優待者を当てれば良いでしょう?」
「結果1を目指す以上、この場で当てることはしませんよ?そしてそれは、この場にいるDクラス以外の生徒には了承して貰いました」
「何ですって……?」
この場にいるDクラスの生徒以外は既に櫛田桔梗が優待者であると分かっている。状況を掴めないのだろう、強気な態度と一変して堀北鈴音は困惑した様子だ。
「堀北さん、私は全てのグループを結果1に導きたいと考えています。そしてそれは実行出来ると踏んでいます。そこで誓約書を用意させて頂きました。どうでしょう、お互いに協力関係を結びませんか?」
誓約書の内容は以下の通りだ。
『1・各クラス代表者を決める、代表者はお互いのクラスの優待者を共有し、試験終了後に結果1を目指す旨を各クラスのグループチャットなどで生徒に告げる事。
2・お互いのクラスの優待者が干支の法則性と一致している場合、試験終了を待たず答えを学校に告げる事を禁止する。
3・上記の禁止行為を行った場合、優待者を当てられたクラスは当てたクラスの優待者を当てる他、禁止行為を行ったクラスは違約金として一学期末月までに1000万PPを他クラスそれぞれ振り込む事。
4・以上の事が約束出来ない場合、代表者は退学する事。
5・この誓約書の控えは代表者がそれぞれ控えている事。』
「……っ、まさか本気で……?」
私は堀北鈴音の視線に改めて視線を合わせて言葉を告げる、堀北鈴音は悔しそうな表情を隠すように顔を下に向けて、その様子を見ていた櫛田桔梗の表情を有栖の優れた観察眼は見逃さなかった。
この二人には確執がある、断定は出来ないが一方的な確執に近いかもしれない。
とはいえ関係のない事だ、誓約書の内容を読み込んだのだろう堀北鈴音は、改めて私に向けて言葉を続けた。
「……っ、待って坂柳さん、貴女は本当に結果1に出来ると、そう思っているの?はっきり言うわ、それは不可能よ。貴方は自分のクラスや他クラスの中から裏切り者が出ないと信じていると言うのかしら」
「裏切られないように準備はしましたよ、それは誓約書を見れば分かると思いますが」
……やはり堀北鈴音も正攻法以外の方法を知らない人間だ、とはいえ能力は高いのだろう、協調性の無い葛城くんのような印象を感じる。
だが今回の試験は思考能力の他に、組織力や団結力といったものも重要だと考えられる。それが整っていないのなら正直言って……この試験ではまず遅れを取る筈がないよ。
「後は貴方がこの誓約書にサインして頂き、Dクラスにこの旨を周知させて貰えばこの試験、全てのクラスがメリットのある結果に終わります」
「だからってクラスポイントを諦めろって事……?」
「はい。脅す訳では無いのですがこの二回目のお話し合いが終わるまでに納得して頂けないのなら、竜グループを加えた他二つのグループをA、B、Cそれぞれのクラスから優待者を当てさせて頂き、結果的にDクラスのみこの試験で損をする様に調整させて貰います、そしてこれはこの場にいる龍園くん、神崎くん及びBクラスのリーダー一之瀬さんの三名に了承して頂いています」
「……っ」
「Dクラスは未だにクラスを纏めている人は居ない様ですが、無条件でPPが獲得出来るとなればそれを拒否する人は居ないと思いますよ?」
懸念点として高円寺六助の存在はあるが、この誓約書を堀北鈴音が飲む場合、違反行為を犯した際の違反金を無視できるほど本能だけで生きている訳ではない。
それに彼はCPよりもPPの方を重視している人間だと思われる。三学年になった際、自分一人でもAクラスに移籍出来る手段を確立させてくる可能性が現状の一学年の生徒で最も可能性が高い人物だ。
唯我独尊ではあるが、明確に不利になるデメリットを無視するような人物でも無い筈、こればかりは絶対とは言えないのだが。
とはいえ彼の行動全てを予知できる訳では無い、起こってからどうするか判断するとして……さて、そろそろ返答を聞かせて貰いたいな。
「……わかった、わ。その条件を飲む、でもこれで負けたとは思わないわよ、坂柳さん」
「ふむ、そうですか」
敵対心を向けられる事自体に何か言いたい事がある訳じゃない、その感情が堀北鈴音の成長に繋がり、結果的に有栖にとっての良い敵対者になる可能性は無いとは言えない。
堀北生徒会長の能力を思えば、その妹である彼女が優秀の域を出ない優等生とは思えない、とはいえ私は有栖の導き手であって、その手を他者に向けるつもりはない。
堀北鈴音が誓約書にサインを書いているのを確認しつつ、心の中で一息付く。
有栖の天才性を他の人達に知らしめる目的は達成出来たと言っていいだろう、イレギュラーが起きない限り私の予想通りにこの客船の試験が終わる。
仮にイレギュラーが起きたとしても、ある程度は予想が付く。その際の対処法も思い付くし、仮に大量のPPが獲得出来ない事態に陥ったとして、そうなった場合でも有栖の頭脳は正しく道筋を私に教えてくれる。
とはいえ少し……疲れたね有栖。
⭐︎
「……微熱、ですね」
朝、起きた私は有栖の肉体の体調が優れない事に気付く。
軽い熱だ、日常生活に支障の無い範囲内だが揺れ動くこの豪華客船では、軽い熱でもそれが転じて重くなる可能性もある。
……一先ずは担任である真島先生に連絡を取るとして。
「体調管理を誤りましたか?……思いの外、“私”自身にストレスが掛かっているの?」
理由はわかる、それは私自身の思考故の問題だ。
何度も思考しその度思う、私は有栖の為に行動しているがしかし、この行動は本来歩んでいた筈の有栖の人生を奪っている事と同義なのでは無いか?
そもそも私という異物は、自身の名もわからない自分は、一体誰で、偶発的であれ何らかの因果であれ何故この坂柳有栖の体に憑依しているのか?
有栖の天才的な思考を持ってしても、確信に至る答えは出ない。故に答えの分からない”未知“という不明確なものは、根源的な恐怖を思わせる。
怖いのか、私は。
「安心させるものが欲しい……言葉にすればしっくり来ましたね」
……体制は整えた、この試験もこのまま順当に終わる筈。
私は良い子でも悪い子でもない、そう自負している。だからこそ両方の選択を取れると考えているし、何方が有栖にとって有益かの天秤を自分なりに測っている。
有栖の身体を借りて私自身の欲求を満たすことは、私の基準では悪い事だ、けれども他でも無い有栖の肉体に負荷が掛かるというのなら、幾分か私自身の欲求を満たす必要があると考える。
といっても、有栖からかけ離れすぎた行動を取るのは余りにもリスクが大きい。
そう考えれば私と有栖が共有して今、自身の欲求を満たす行動を取る選択肢が都合の良い事に幾つか存在する。
「……接触しようか、私も彼に興味があるから」
綾小路清隆、あなたは一体どんな人間なのかな。
相違点13・特別試験の結果
結果1で終わるように尽力しました、これによりCPに変動がなく、その代わり全クラスが大量のポイントを獲得する結果に落ち着きそうです。