起源:超常の惑星 作:銀河大総統アドピン・ヒュルラー
太陽系軍議会独立国の独裁者、大元帥カナオ=ミュシェルは現在、前FTL文明から脱しない祖先の故郷、地球を観測する研究者の代表と通信による面会を行っていた。
「それで?地球はちょっと治安が悪いとは言え、平和になったのに宇宙開発に力を入れてないと言うの?」
「はい、その通りです閣下。何処もかしこもヒーローと騒いでおります。ヒーローとヴィランの戦いは一種のプロパガンダであり、力を示す機会であるのは分かりますが……愚かとしか」
「目の前の娯楽にしか興味は無いか……我々が苦労して独立を維持し、隣国を平定して銀河の列強として名を轟かせていると言う傍らでごっこ遊び……笑えないね」
カナオのその言葉に研究者はビクついた。
「いっその事……地上軍の派兵を検討すべきかな?議会でも維持派と制圧派に分かれて鬱陶しいしね」
「しかし閣下……どんなに愚かでも地球は我々の故郷であり、地球に住む者達は我々と連なる種族。それを力強くで制圧した所で遺恨を残すかと」
「……貴方も維持派なの?」
カナオのその言葉に研究者は黙り込むとカナオは机の人差し指で何度か軽く叩いた後、溜め息をついた。
「分かった……貴方の考えに任せるよ」
「ッ!?ありがとうございます!あと……厚かましい事ですが要望がありまして……」
「要望?」
「士官学校の学生を二、三人程を我々にお預けください」
カナオはそれを聞いて唖然とした。
士官学校は将来的に有望な将兵達を輩出する為の機関。
その士官学校から貴重な人材を三人程くれとはどう言う了見なのかとカナオは首を傾げる。
「何に使うの?」
「実はですね……かねてより、我々はある人物に注目していました。ヒーロー、オールマイトです」
「あぁ……あの筋肉モリモリマッチョだけどガリガリ男でもあるあの」
カナオはうっすらと思い浮かべるオールマイト像にそう言うと研究者は続ける。
「そのオールマイトが後継者を作ったそうです。何でも個性を譲る事で力を与える……とか」
「個性を譲る……何度も観測された事だけどまた見る事になるなんてね……後、数十年は見ない或いは無くなると思ってたよ」
カナオはそう言ってニヤリと笑う。
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太陽系軍議会独立国の首都、ホープタウン。
宇宙人類が超常黎明期の混乱によっておかしくなりつつある故郷の地球を捨て、新たな世界への希望を持って文字通り一から全て作り上げられた軌道上居住地であり、国の首都が置かれている。
ホープタウンの士官学校では16歳を迎えようとしている若者が三人がランニングをしていた。
「な、なぁ!ちょっと走りすぎじゃねぇか!?」
「へばるの早ぇぞ!無駄にサボってるからそうなるんだ!」
「いやいや!!もうかれこれ三時間走ってるかね!?流石に疲れるからね!?」
「二人共!喋ってないでちゃんと走ろうよ!」
「「お前は少しは汗かけよ体力女!!」」
少年二人と少女一人によるランニングしながらの漫才が行われる中、そこへ士官の男がやって来た。
「アースト!レイス!ミレーヌ!来い!!」
「「「え?」」」
呼ばれた三人はいきなりの事に混乱するもそこは長く厳しい訓練を受けてきた士官候補生だ。
理由が全く分からない様な命令でもすぐに切り替えて瞬時に動き、士官に着いていった。
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士官に着いていった三人はガチガチに緊張し、三人同時に敬礼を行った。
「士官候補生のあ、アースト=ストームウルフです!」
「お、同じく!レイス=ヤマザキです!」
「お、おお同じく!ミレーヌ=ロクセーヌです!」
「よろしい。まぁ、緊張しなくても良いよ。気軽にすると良いよ。さて、何なら置いてある椅子に適当に座ってても構わない。あ、何か飲み物がいるかな?」
「「「(出来るか!仮にも大元帥閣下の前で!?)」」」
三人が連れて来られたのは大元帥カナオの執務室で、若者を見つめる良い笑顔をしたカナオが自ら飲み物を用意しようとする姿を前にイメージとはかなり違う事を知った。
独裁者であり、艦隊戦の大英雄と謡われるカナオ=ミュシェル。
数多くの星系での艦隊戦に参戦し、敵艦隊を尽く撃破、リヴァイアサンと呼ばれる銀河における怪物の討伐と言う大功績を打ち立てた事で民衆及び政界に置いても強い信頼感が持たれている生きる大英雄だ。
学校の教科書にも嫌と言う程にその功績が載せられており、軍人を目指す者なら誰でも憧れを抱く存在。
そんな人物が軽い感じに話してくると言う時点で若者参入のイメージは壊れてしまった。
三人は緊張の最中、いつの間にか入れ終えたカナオにブラックの珈琲を手渡され、三人はガチガチになりながらも受け取って取りあえず一口飲む。
「あ、美味しいです!」
「ブラックなのにそこまで苦味が無い!」
「俺、ブラック苦手だけどこれならいける!」
三人は口々に言い終えた後、すぐに正気に戻って青ざめるとカナオは嬉しそうに笑っていた。
「そうかそうか。それは何よりだ。アルティア産の珈琲豆を使ったんだが正解だったね」
カナオはそう言って三人の為に入れた珈琲の次いでに入れた珈琲ほ香りを楽しみながら一口飲むと本題に入った。
「緊張も解けたみたいだから本題に入ろうか。単刀直入に言うよ……君達には地球に行って貰う。地球の観察拠点の研究者かのご要望だ。何でも研究対象のオールマイトと言うヒーロー。それが後継者に力を……技能を譲ったそうだ」
「え、技能を譲る!?」
「譲れるもんなんですか!?」
「そんなの聞いた事がない!?」
技能とは地球で言う異能或いは個性の事だ。
カナオ達の祖先は超常黎明期に入って暫くしてから宇宙へ飛び出した事でカナオ達にも超常の力を持つ者が圧倒的に占めていた。
超常黎明期が何故、起こったのかと言う研究の末に技能は譲る事は出来ない、個人の特異な力として認識され、戦闘に向いた者なら軍への召集が決まり、戦闘以外で尚且つ発展に役立つなら生かせる職業に割り振られる等と地球動揺に太陽系軍議会独立国でも将来を左右する程だ。
勿論、何れにも向いていない技能もあるので基本的に選ぶ事が出来る。
「それを知る為に君達を地球……日本の雄英高校のヒーロー科の生徒として入学し、後継者と接触する事。我々の正体は悟られてはならない。もし、悟られたら……古い宇宙人のイメージイラストみたいに両手を持ち上げられて連行された挙げ句、解剖されると思ってくれ。質問はあるかな?」
カナオのその説明に三人は唖然としつつミレーヌが軽く手を上げた。
「あ、あの……閣下」
「なに?」
「私達はその……士官学校を卒業すらしていないのですが……何故、私達が?」
「単純に成績が良く、優秀だと聞いているからかな。それに地球の雄英高校は17歳から入学試験を受ける事になる。君達は歳が丁度それだ。それと試験は一発勝負だ。戦闘に向いてなさそうな研究者に行かせても仕方ないし第一、17歳どころかおっさんだよ?学生よりも教師にしかなれなさそうだし、ヒーロー免許と呼ばれる物の伝は無い。故に頭脳面でも戦闘にも優秀な17歳の君達が選ばれた。異論はあるかな?」
カナオから出てくるマシンガンの様な説明に三人はこれ以上、何も言わないでいるとカナオはそれを異論無しと受け取った。
「では、訓練生諸君。君達に地球にあるヒーロー専門校、雄英学園に潜入し、オールマイトの力の継承について調査せよ。無論、現地には君達を支援する潜入調査員もいるから気軽にやってくれ。以上、大元帥として命令する。さぁ、早く帰って準備する様に。詳しい内容は現地の観測拠点の責任者に聞く様に」
カナオはそう笑顔で三人に言うと三人は動揺しながらも命令であるならと受け入れつつ、その場から去った。
残されたカナオは一息つくと目の前の書類にサインする。
内容は……隣国、ヘルティアン共和理事国への侵攻作戦と書かれていた。