幼馴染ちゃんを笑顔にしたかったけど失敗しちゃったオリジナルウマ娘ちゃんが、仲直りを果たすまで。   作:・。・

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最終話です。




 〇

 

 

 

 真剣勝負の世界において手加減はあってはならないことだ。したほうもされたほうも誰も幸せにならない、そんな行為。

 

 それなのにあいつはあのレースでそれをした。なんとも思っていなさそうな顔で、手加減をして勝たせたアタシに祝福の言葉を掛けてきた。

 

 正直理解できなかった。意味が分からなかった。あいつはなんであんなことをしたのか。

 

 あいつとの付き合いは短いわけじゃない。だからなんとなく言いたいことも分からなくはないくらい。だけどこれに関しては全く理解できなかった。

 

 それに、アタシは手加減が嫌いだ。勝負の場でやることじゃない行為。それをあいつがしたという悲しさ、アタシ相手に本気を出してくれなかった悔しさ、見下されてると思った怒りとかの色々な感情が溢れてしまって、思いっきり怒鳴ってしまった。

 

 やってしまった後、後悔した。そこまで乱暴な感じじゃなくてもよかったんじゃないかと。もっとゆっくり問いかけていけばよかったんじゃないかと。

 

 謝ろうと思った。そこで仲直りして、ゆっくり理由を聞きたかった。でも謝ろうと思った時には、あいつはもういなくなっていた。

 実家に帰ったらしい。休校ってわけではなくて、自主休みみたいな感じ。まぁ、あいつは多少勉強に遅れが出てもすぐに取り返せるだろうからそこは大丈夫なんだろうが……。

 

 心に残り続けるもやもや。貯め込んでおくよりは解決法を一緒に考えてもらいたい。ということで、トレーナーに相談してみることにした。

 

「……へぇ、手加減ねぇ。表情とか身振りからはそうは見えなかったが」

「いやしてた、間違いなくな。あいつはやろうと思えば圧勝できたはずなんだ」

「なるほどなぁ。まぁ確かに、情報より遅いなとは感じてた。だからあの日、あんなに怒ってたのか」

「それはどうでもいいだろ……。まぁそんなことより、トレーナーはどう思う? あいつが何で手加減をしたのか。なんでアタシを勝たせたのか」

「……そうだなぁ」

 

 考える素振りを見せるトレーナー。だが、いい答えは思いついていなかったようだ。

 まぁ確かにそうかもしれない。付き合いが長いアタシ自身が全く分かっていないから。

 

「……うーん、発想を逆転させてみたらどうだ?」

「発想を……?」

「そう。何故手加減をしたのかを考えるんじゃなく、そもそもなんでその子はレースをしていたのか、とか」

「何でレースをしていたのか……」

 

 少し、考える。確かにあいつは元々レースに興味は無かった。なのに急に入ってきた。よくよく考えれば、これがきっかけってのは思い当たらない。

 最初はあいつもアタシの気持ちを、レースの楽しさを分かってくれたからかと思っていた。だけど、その前提が違っていたとしたら……?

 

「もしかして……」

 

 ある一つの可能性が頭に浮かぶ。

 

「……何か、思いついたか?」

「一つだけ。正直信じられていないけど」

「聞かせてくれるか?」

 

 トレーナーに促され、アタシは言葉を続けた。

 

「あいつはきっと……アタシを勝たせたかったんだと思う」

 

 一周回ってシンプルな答えだった。あのレースで手加減をしてアタシを勝たせたんだからそりゃそうだろうと言われればそう。だから、重要となってくるのはその理由。

 

「なるほど、シンプルだな。じゃあお前を勝たせた理由は?」

「そこはまだわかんねぇ。だけど多分、あいつはハナっからアタシと勝負する気なんてなかったんだ。

 でもおかしいんだ。レースの楽しさ、勝負をして勝ったときが最高だって宣伝してきたのに、自分はその勝負も勝利も手に入れようともしてないだなんて……」

「ふむ……」

 

 またトレーナーは考える素振りを見せる。まだアタシの中では理由は纏まってないけど、トレーナーなら上手くまとめて良い答えをくれるんじゃないかと思って、トレーナーが話すのを待った。

 

「……あー? いや、これ……なのか?」

「! 何か分かったか!」

「あいや、分かったというか……一つ聞きたいんだが、その子との付き合いは長いんだよな?」

「あぁ、幼馴染ってやつになるな」

「関係性は?」

「前まではいい方だった。今は……あの日から会えてないな。今までなら毎日は会ってたんだが……」

「そうかぁ、なら可能性はあるかもしれないな……」

 

 一人で納得した様子なトレーナー。置いてけぼりにされた気がしてイラっとしたので、そのイラ立ちを隠さず詰める。

 

「なぁ、教えてくれてもいいんじゃないのか?」

「……おっとすまん。じゃあ話すな。この考えが正しいとしたら……」

 

 ごくりと喉を鳴らす。強い緊張がアタシを支配した。

 

 

「──お前、すごく愛されてると思うぞ」

「…………は?」

 

 

 思わず、ずっこけそうになった。

 そして目で問いかける。何を言っているんだと。ふざけて欲しいわけではないぞと。

 

「……なんだその目は。言っとくけどな、こっちは真剣だぞ? 真剣に考えた結果、この考えに至ったんだ」

「はぁ、じゃあ聞かせてくれよ。あいつがアタシを勝たせようと思った理由を」

 

 今度はアタシがトレーナーに言葉を促す。一回頷いて、トレーナーは続けた。

 

「まず、だ。あの子とは幼馴染で、関わった年数は長い。そして、レースへの勧誘も長くやってきた。違うか?」

「いや、違くないな。合ってる」

「人はあるものに勧誘するとき、自分の感想を主軸にして伝えることが多い。『勝負をして勝てるのか楽しい』ってお前が言ってたみたいにな」

「そうだな。アタシもそうした」

 

 ここまでは情報の整理。でもここからどうなるのだろうという想像が出来なかった。

 しかし次の瞬間、思いもしない言葉がトレーナーの口から放たれた。

 

「なら、その子はこう思うんじゃないか? 『勝負をして勝つことがお前にとって最高の喜びだ』って」

「っ!」

「んで、理由は分からんがその子はお前を喜ばせたかったんだろうよ。だから敢えてそんなレースをした。今思い返せば、あのレースの展開は実にお前好みだったろうしな」

「……」

 

 思い当たる節があった。

 レースの何が楽しいのか聞かれたとき。そして──あのレースの最後のあいつの言葉。

 

『ねぇ、よろこんでよ』

 

 あいつは、アタシが勝って喜ぶことを期待してた。一方アタシはあいつと"勝負"をすることを期待してた。

 

 つまり最初から──あいつはアタシと同じところにいなかったんだ。

 

「……なぁトレーナー、どうすればいい……?」

「ん?」

「どうすれば……あいつはアタシを"相手"として見てくれるようになると思う?」

 

 あいつは昔から何でも出来ていた。競う相手はいなかった。レースでくらいそんな相手になれていると勝手に思ってた。

 

 だけど現実はどうだ? アタシはあいつにとって勝ちたい相手ではなく喜ばせたい相手。言い方をオ悪くすれば下に見られてる存在だ。

 

 あいつに届きたい。あいつと対等になりたい。そのためには──。

 

「まぁ、強くなるしかないな」

「……やっぱりか」

 

 トレーナーが言ってくれた。

 そう、強くなるしかない。アタシの実力を上まで届かせにいくしかない。

 

「んじゃ、明日からその方針でトレーニングをするか」

「! いいのか!?」

「本当ならもう少し後の時期からし始めるつもりだったが……目標がトレーニングをしていない今がある意味ではチャンスでもあるし、何よりお前がそれを望むならな」

「そうか……!」

 

 怠けているわけではないだろうが、今トレセン学園に来ていないということはやれても自主トレーニング。ここでトレーニングするよりも遥かに効率は劣る。追い越しにいくなら今だろう。

 

「だけど、相当苦しいと思う。これからかなりトレーニングをハードにして、ぎりぎりまで追い込んでいく予定だ。そうでもしないと、多分その目標の子には届かないと思う」

「やるぞ」

「……うん。気持ちよいな、その返事。なら明日から頑張ろう。こっちでも色々トレーニングを立てる予定があるから、今日は解散な」

「分かった」

 

 ──そして、地獄のようなトレーニングが始まった。

 後から聞いた話だと、このトレーニングは身体が出来上がってきたであろう一年後から実施していくつもりだったらしい。そうじゃなきゃ体が耐えれないかもしれなかったからだそうだ。

 

 だけど、アタシは耐えた。トレーナーも耐えられるように計算してメニューを組んだそうだが、それでもここまで食らいつけたことに驚いていた。

 

 その結果、アタシはかなり強くなれた。レースも勝ち続けた。

 全ては、あいつと"勝負"をするため。並び立つため。こんなんじゃ足りないと内心で思い続けてた。

 

 ある日、G1レースへ出ることを表明した。

 最高の大舞台。実力を見せつけるには十分すぎる場所。奇しくも、あいつと最後に戦ったレース場だった。

 

 今のアタシをあいつに見て欲しかった。並び立ってきていることをアピールしたかった。

 だからあいつの母さんに頼んで、見てもらうようにしてもらった。結構大雑把なところがあるから不安でもあったけど、もう絶対見ていると思い込み続けた。

 

 迎えたレース。勝つことが出来て、なんと勝利者インタビューの機会も貰った。

 

「──戻ってこい。そして、"勝負"をしよう。いつまでも待っててやる」

 

 全部ぶつけた。アタシの思いを。レースのこと、あいつのこと、全部。

 

 後は待つだけ。やるべきことはやった。だけどここで満足しない。その時が来るまで上へ上へ目指し続けることにした。

 

 

 ──なぁ、早く戻ってきてくれよ。そしたらさ……。

 

 

 

 

 

 

 ⏱

 

 

 

 

 

 

 レース当日。そのレース場にて、二人は対面した。

 

「……久しぶりだな」

「……うん、久しぶりだね」

 

 共に勝負服を身に纏い、ターフの上に立っている。

 

 以前と似たような状況。しかし今回は決定的に違っているところがある。

 それは表情。両者心の底から目の前の相手に勝ちたいという心情が顔に現れている。

 

 敵、ではない。ライバル。この関係性はこう定義するべきであろう。

 

「……ねぇ」

「なんだ」

「わたし、やっと分かったんだ。君が言っていたことが」

 

 片方は笑う。相手のことをやっと理解することが出来たから。

 

「……今度は手加減なんかするなよ」

「しないよ。それに、させてもくれないでしょ?」

「はっ、言うじゃんか」

 

 もう片方も笑う。相手がようやくこっちに来てくれたから。

 

 そのままゲートの方へ向かっていく二人。入る直前、片方が言葉を切り出した。

 

「……わたしね。このレースが終わったら、話したい事あるんだ」

「奇遇だな。アタシもだよ」

 

 顔を見合わせて笑い合う。なんとなく、お互いに言いたい事は伝わっていた。

 だが、ここでは言わない。大事なレースが控えているから。

 

「じゃあ、あとでだね」

「あぁ、だけど言いたいことに気を取られるなよ? そんなんだったらアタシが勝利をかっさらってやる」

「させると思う?」

「なら、"勝負"だな」

「そうだね。"勝負"だ」

 

 "勝負"をすることを改めてここで約束し、自身のゲートへ入っていった。

 

「──勝つよ。わたしが」

「いや、勝つのはアタシだ」

 

 ここからは全力の時間。どちらが勝ってもおかしくない真剣勝負。

 

 ファンファーレが鳴った。

 

 ──ザッ……

 

 スタートの構えが取られる。

 

 無音が世界を包み、独特の緊張感が発生する。

 

 

 

 

 ──ガチャン!

 

 ゲートが、今開いた。




(レース前の会話がなんかめっちゃ仲良さそう。つまり仲直りしてる! ヨシッ!!)

ということで、これにて完結です。
ここまで見ていただきありがとうございました。
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