「はぁ…はぁ……確実に倒したはずだがな。まさか妹が入った程度で死んじまうとは」
「大丈夫……?お姉様」
「フラン…アナタ、どうして…」
「だって…私はお姉様の妹だから」
目の前で姉妹による感動劇が繰り広げられている中、悟浄は焦りと緊張によって思考か揺れるのを感じた。生唾を飲み込まなければならないほど、悟浄は特大の焦燥を抱いていたのだ。
一人一人の戦闘力であれば問題ないが、二人が揃えばまずいと直感が予告をしている。悟浄は二人で戦った時に急激に戦闘力が増幅する相手は経験があり、吸血鬼姉妹のクローンも同じだと思ったのだ。
それを込みしたら先に手を打つのが最善策だろう。その事実は把握しているし、行動しようと理性は訴えかけている。しかし、それ以上に。今手を出せば痛手なのはこちらだと直感が示している。直感全てを信じる訳ではないが、今の直感はそう思わせる存在があった。
「ごめんなさい、フラン。私はアナタに対してひどいことを」
「いいの。お姉様。私はお姉様の妹だから。助けるなんて当たり前なの!」
「フラン…!ありがとう。これからは一緒に戦いましょう!」
「うん!」
姉妹による協力の締結が結ばれたと同時に向いてきた圧倒的な敵意。妹と共存する為に。姉と共存をする為に。そんな各々の思惑が組み合わさり、先ほどまでとは違う次元の力を発している。二人揃ってパワーアップする相手など悟浄にはいなく、それを羨ましく感じながら静かに戦闘の準備を進める。
姉に続き、スペルカードによって武器を召喚したフラン。グングニルとは違い、禍々しさが大きく主張している『レーヴァテイン』。
これにより両者戦闘の準備は整ったと思う悟浄だったが、それは勘違いに他ならない。フランドール・スカーレットという少女は切り札なりえるスペルカードを一つ隠していたのだ。言わば数の有利が一気にひっくり返る劇物のスペルカード。
禁忌『フォーオブアカインド』を…。
「はは…5対1かよ」
「残念だな、悟浄。5対2だぞ?」
「は…え……っ!浩介!」
「よっす。ピンチそうだから助太刀に来たぜ」
「ありがとう…」
「礼は要らねえよ。お前はささっと片付けてあの子たちの援護に向いな」
「あぁ……!!」
「俺は紫…レミリアをやる。お前はフランをやっとけ」
一人だと思っていた暗闇の戦闘の中、駆けつけてくれたのは遠藤浩介という男だった。いつもそうだ。親友は詰まった時に助言や解決する行動を持ってきてくれる。今回も、ハジメと吸血鬼姉妹に板挟みされ、どうしようかと選択を迫られていた。
そんな時、助けてやると駆けつけたのが浩介。これは親友と言うよりも戦友だろう。
戦友が隣で戦ってくれると思えば、無敵の力が湧いてくる。もしかしたら子供騙しの一部かもしれない。そう思っても、滾る思考は止められないものだ。
(なるほど、こういう感覚か。一緒に戦った際、戦闘力が増幅する感覚は)
※違います
興奮状態へとなり、拳がいとも容易く握れるようになった悟浄の攻撃。それはひどく軽く、ひどく重かった。ただのジャブのつもりで放ったパンチだったとしても、打たれたフランとしてはかなりの質量を持ったパンチだと認識したのだ。
「ふふっ、はははっ!!こういうことか。こういうことかよ!なあ、父さん、母さん。戦闘が楽しいってそういうことなんだな!」
悟浄はこれまで戦闘に楽しみを見出したことはない。それは他人に影響され、精神が焦燥していた為。他人を気にし、自分の戦闘を楽しむ余裕なんてミリの一つも存在していなかったのだ。だが、今はどうだろうか。浩輔が隣にいることで、楽しむ余裕が出てくる。無邪気な子供のように、戦闘という快感を体感しているのだ。
____あぁ、最高に楽しいじゃん
戦闘が重なれば重なるほど、脳内には様々な行動の択が飛び出してくる。それを実践したいと心は動き、体は連動する。
__四人一斉に仕掛けてくるフラン軍団を捌きたい
__攻撃を捌いているウチに新技を試したい
__新技は何が良いだろうか。とりあえず糸と魔力を組み合わせて…
「あ、ラッキー」
思考と脊髄が奇跡的に連動を果たし、何かを考えている途中に体は動いている。人々は楽しいことを考える時間は一瞬だと言う。それが少し分かった気がして、感謝をする。
言葉への理解。そして戦闘民族として生まれてきた自身への祝福。考えている内容がどんどんと溶けていき、常人から見たらまるでチグハグ。
その歪さが悟浄には最高にマッチしていた。
「あ、ラッキー」
そんな余談を抱いている間に分身が溶けた。先ほどの新技で一つ溶けているから、残りはあと二つ。それのどちらかに本体がいることは分かっているが、悟浄にとっては雑音の知識。
今はそれよりも新しいことを…。
「やめた」
「は?」
浮かび上がってきた思考がフランの言葉一つで破壊され、困惑の渦に呑まれてしまった。
「私、魔法少女なんだ。吸血鬼だから肉弾戦もいけるけど、本質はどちらかと言えば魔法。だから、ちょっと賭けようよ」
意味深げに笑うフラン。この提案、理性の奥底では既に判断していた。受ける価値もない陳腐な提案と。
だが、愉快な戦闘によって冷静が溶けかけている悟浄にとって……最高の提案と誤認してしまう代物だった。愉快、愉悦。そんなプラスの感情が脳を渦巻き、特大の技の準備を始める。
「ベジータさん。ちょっと技を借ります」
両手を胸の先で構え、手のひらを横へと傾ける。両手を繋ぎ合わせることによって気を溜めれる窪みを生み出し、黄金の気を集めていく。
「ファイナル……」
現在残っている気の何割かを技に注ぎ込む。フランと悟浄のぶつかり合いが本気によるものだったと言えるように。終わった後にこの戦いが最高のものだったと自信を持って言えるように。
「フラァァァァァッシュ!!」
「はぁぁぁぁぁっ!!」
【孫悟浄VSフランドール・スカーレット】
winner悟浄!
「あばよ。フランドール・スカーレット。お前との勝負、最高に楽しかったぜ。じゃあな」
悟浄の体内に追加したい作品
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