「はっ!ほっ!」
悟浄は今、鍛錬をしている。とは言っても、他の者達と違って一人での鍛錬なのだが。これはステータスが高いのが原因だ。ステータスがアップした勇者である光輝の数値も全てが200。それなのに悟浄の今のステータスはどれも1000越えだ。それでも、弱体化する前と比べてしまえば弱いとしか言い様が無いのだが。
話を変えて、悟浄の鍛錬方法は気弾を発射、操作をし、それを避けるのだ。悟空も使っていた鍛錬方法であり、中々に良い。体の動かし方、気の操作のレベルを鍛えれるというのもあるが、並行して行う為、頭も鍛える事ができる。
この鍛錬方法で今日経った時間は三時間にもあり、そろそろ終了させる為に拳を出す。拳が当たった事で爆発が発生するが、殆どダメージは無いモノなので気にしない。良い汗を掻いたな、と思いながら息を吐いていれば、ハジメの気の周りに四人の気が集まっていた。それはいつもハジメにちょっかいを掛けている檜山達だった。
嫌な予感が悟浄を襲っている。檜山達が何をしているのか、予想は滞り無く浮かぶ。最弱と呼ばれているハジメをイジメているのだ。舌打ちをしながらハジメに向かって瞬間移動をする。
「ほら、何寝てんだよ。焦げちまうぞ?ここに焼撃を望むーー火球」
いつも檜山の側に居る中野が火属性魔法の『火球』を放つ。ハジメに向かって放った事、それで怒りが限界突破してしまいそうだが、今は兎に角ハジメに向かう『火球』を何とかする為に体を動かす。右足を動かし、大きく上へと上げる事でハジメに直撃する事を回避させる。
檜山達にとっては突如現れた悟浄。その瞳には怒りの業火が燃えていた。その怒りに中野は一歩後ろに下がってしまう……が、悟浄は許す訳が無い。逃す訳が無い。中野の頭を掴み、地面に叩き付ける。その痛みに悲鳴を上げるが、他の者達に向かって悟浄は進む。悟浄にとっては雑音そのもの。気にする筈が無い。
次は斉藤。情けない声を出しながら魔法を発動させる。
「ここに風撃を望むーー風球」
「ソード」
ベジットソードのように気を剣のように変化をし、斉藤の『風球』を切り裂いた。今の悟浄の心の中にあるのは冷める事など無い怒り。しかし、殺す訳にはいかない。怒りをそのままぶつけて殺してしまうのは悟浄では無いから。
死なない程度の力を込めて拳を握る。顔に向かって容赦無く打ち込む。それでどれだけ斎藤の顔が凹もうが知った事では無い。残りの二人、檜山と近藤には瞬間移動で近づき、気弾を腹に放射する。我慢をする為、息を強く吐いていれば背後から四人の足音が聞こえた。
「ハジメちゃん、悟浄君……?」
「香織、ハジメを治してやってくれ。ついでに此奴らも」
「う、うん」
香織がハジメや、檜山達を治している姿を見ていれば、背後から三人に話し掛けられた。
「孫君、あれ、どうしたの?何かあったんでしょ」
「雫!?何を言っているんだ?悟浄がしたのは暴力以外のなにものでも無いだろう。自分の欲望の為に動いたんだ。龍太郎、お前も何か言ってくれ」
「おい、光輝。流石にそれは俺もどうかと思うぞ。悟浄は良いヤツだ。理由も無くそんな事をする人間じゃ無い。さっきの南雲の姿を見たか?打撲跡があっただろ」
光輝の言葉に親友である龍太郎も苦言を口にした。普段からの様子や倒れていたハジメ。訓練中にハジメに向かって来た檜山達四人。これ等を見て誰もがハジメは被害者だと分かるだろうに、全て悟浄が原因だと口にした。確かに悟浄に非はあるだろう。それは自身も認めている。しかし、流石にこれは無いだろう。
そう雫や龍太郎、戻ってきた香織から説明されても、納得がいっていない様子だった。此奴の精神構造は一体どうなっているんだ、と光輝の言葉に関して思っていれば、光輝の口から悟浄を再度怒りに堕とさせる言葉が出てきた。
「そもそもの話、悪いのはハジメだろう?ハジメの努力不足でなったのがこれだ。錬成師だから、という言い訳で努力をしないからこうなったんだ。聞けば訓練がなければ図書室で読書をしているそうじゃないか。ハジメが頑張らないから、こうなったんだ。不真面目だから、こうなったんだ。檜山達はそれを治そうとしたのかもしれないだろ?」
光輝の言葉に一度だけ困惑が浮かんでしまう。自分ができる事を最大限しようと考え、努力しているハジメに努力不足と呼んだ。意味が分からなかった。優れた者としてのステータスを持っている光輝は優れなかった者の心が理解できないのだろう。前から知っていた筈なのに、意味が分からなくてなってしまった。
ただ、分かる事。それは、今悟浄の感情を占めているのは怒りという事。
「あ゛ぁ゛!?天之河光輝、お前今なんて言った!」
自然と、悟浄は光輝を威圧していた。技能によっての威圧では無い。強さとしての格を表す威圧。
どれだけ威圧をしようとも、怒りは収まらない。むしろ、悟浄の怒りは増幅するばかり。怒りのまま、行動をしようとするのだが、背後から肩をポンッと叩かれた。
背後を振り向き、其処に居たのは浩介。性質である影の薄さ。それを利用して近づいたのだ。浩介の瞳は責めるような鋭い眼光であり、怒りが静まっているような気がした。
「悟浄、それは辞めろ。一部を見ていたからお前の怒りは分かる。俺だって、アッチで見ていた幸利だってそうだ。けどな、ハジメの顔を見てみろよ。随分と泣きそうな顔をしてるよな。……ダチの為に怒ってくれるのはありがたい。ぶっちゃけると俺は嬉しい。多分ハジメもそうだ。でもさあ、悲しませるのは、違うだろ」
「悪い、浩介。ハジメ」
「僕は大丈夫だよ」
「俺もだよ。でも、怒りを抑えられようにはなれよ?友と殺し合いをするのは嫌だからな。どうせ負けるのは俺だし」
そんな確定で負ける宣言をしている情けない浩介につい笑みが洩れてしまう。それはハジメも同じで、二つの笑いが起きる。当の本人である浩介も笑みを浮かべた。
その日、メルドから明日【オルクス大迷宮】に向かうと説明された。オルクス大迷宮にはハジメも強制。本当に、嫌な予感がする。ハジメだけが嫌な予感がするのでは無い。悟浄とハジメ含めて嫌な予感がするのだ。こんな不吉な事を考えてしまうなんて、と両目を手で覆っていれば、ドアがノックされた。
「悟浄君、起きてる?話したい事があるんだけど」
「開いてるよ、香織。どうぞ」
「あ、そうなんだね」
そう言いながら入って来た香織の姿に驚愕をする事になる。純白のネグリジェにカーディガンを羽織ったのが今の香織であった。
頭を抱えたくなるのを、髪を掻きたくなるのを抑えながら香織をベットに座らせて話を聞く。何故自身の部屋に来たのかを。
「明日の話なんだけど、町で待ってて欲しいの。ハジメちゃんと一緒に。皆やクラスメイトは私が説得する、だから……!」
「嫌な予感、するのか?」
「……!?よく、分かったね」
予想通りの香織の反応に「だろうな」と呟く。それは悟浄も同じなのだから。何が此処まで嫌な予感に堕とすのかが分からなかった。友達を失うかもしれない恐怖。
理由が分からなくとも、二人の中にある共通している感情がそれだ。この感情は魔人ブウの時、ビルスが来訪した時に似ている。大切な人を失ってしまうかもしれない。それにどうしたら良いのか分からなくなってしまう。それは今も同じだ。けれど、初めてそれになっている香織を安心させる為に、頭に手を置く。
「安心したら良い。何があっても、俺は死なねえよ。ハジメとの約束があるんだ。頼り頼られの関係であるってな。死んだら約束を守れねえからな。まあ、それでも不安だってんなら、俺とハジメを治してやってくれ。苦しい時に居場所になってくれ。俺は、俺達はそれだけで救われるから」
「ありがとう、安心したよ。悟浄君は友達を残して居なくならないもんね。前から変わらない。覚えているかな、たこ焼きを持った男の子が男の人とぶつかっちゃって、泣いてた時に代わりに謝っていたハジメちゃんと悟浄君。雫ちゃんから聞いてたんだよ?悟浄君の武術は桁外れの技術だって」
恥ずかしい所を見られてしまっているのを知った悟浄は内心羞恥に溢れていたのだが、それを受け取っておく。
サイヤ人の歴史を知っている悟浄からしてみれば、優しいと言われるとは思ってもいなかった。むず痒くなりながらも、感謝の言葉を贈る。
「ありがと。暴力を振るってしまえばハジメを悲しませてしまうからな。今日は悲しませちゃったけど」
「でも、極力しようとしないでしょ?自分よりも他人を優先する。それが私の知ってる悟浄君だよ」
「そう言ってもらえるとありがたいな」
そう笑い合い、十分程話した頃、香織は悟浄の部屋から離れる。絶対に生きて帰るという決意を固め、ベットに転がっていた。
部屋の外、廊下に居る檜山に対して警戒を高めながら。
「許せねえ、許せねえ、許せねえ、許せねえ、許せねえ、許せねえ!南雲も孫も!」
悟浄の体内に追加したい作品
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ポケモン