東方縛鎖録   作:ふみくじ

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台風来てます


そのじゅう

「ご主人ー!一緒に遊ぶの!」

 

「またですか…」

 

 赤火と出会って約三百年。赤火と一緒に散歩したり、妖術の練習をしてみたりと、これまでと変わらぬ生活を送ってきました。

 まあ変わらないのは生活だけで、色々あったのですよ。とりあえずその説明をしておきましょう。

 

 変わったこと其の一、赤火の尻尾が三本から六本に増えました。これは約百年ごとに増えているような気がします。妖狐は長い時間をかけて妖力を増やす、と人里のお偉いさんの家にあった本に書いてあったようななかったような。たぶんその過程で尻尾が増えるのでしょう。……ということは赤火は六百歳ということになります。私より年上ですよこの子。

 

 そして変わったこと其の二、幻術を使えるようになりました。変化の練習をしていたつもりなのですがね…。変化紛いのことはできるのですけれど。

 詳しい内容はまたあとで説明しましょう。赤火が遊ぼうといってきた時は大体遊びという名の戦闘になりますので。

 

 どうも赤火は戦うのが好きなようです。道や森などで妖怪を見つけた瞬間飛びかかっていき、即デストロイ。自分より格上だとしても躊躇なしです。その時は私も参加しますよ、心配ですし。

 私、こんなに好戦的な子に育てた覚えはないんですけどね。どうしてこうなった。ちなみにあの子、私より普通に強いです。

 

「はやくするのー!」

 

 はぁ…、憂鬱になりそうです。

 

 

 

 

「それじゃあやるの」

 

「赤火、今回もちゃんと制限させてもらいますからね。あなたが本気でやると私が死にかねません」

 

 冗談だと思います?これ本気ですよ。この前一撃で気絶しましたからね。防御した腕の骨もばらばらです。数週間は不自由な生活でした。

 

「そんなこと分かってるのー。さっさとやるの!」

 

「半分くらいでいいですかね。あなたの力を二分の一まで縛ります」

 

 パチン

 

 半分でもぎりぎり勝てるかどうかなんですが。そこまで強いのですよ、赤火は。妖力、身体能力、どれをとっても私より結構上です。それに加え、あの子硬化の術とかいって尻尾で…。と、まあそろそろ集中しましょうか。

 

「いくの」

 

 赤火の目つきが変わる。まるで獲物を狙う時の目だ。あの目で見られると、なにか、こう…… いえ、なんでもありません。気のせいでしょう。

 今は集中です。

 

 身体強化は…全体三回でいいでしょう。

 この身体強化は全体と一部で使い分けることができ、さらに重ねがけができます。全体より一部がけのほうが妖力の消費が少ないのですが、強化する機能が複数ある場合は手間がかかるのです。ちなみに現在、全体は十回の重ねがけが。一部は四十二回の重ねがけができます。これ以上は妖力が足りません。

 

 これで準備万端です。今回の作戦では必要かはわからない作業ですけれど、念には念を込めてってやつです。

 

「こないのならこっちからいくの」

 

 痺れを切らしたのか、こちらへゆっくりと歩いてくる赤火。そして、消え…ッ!?

 あわてて後ろへ飛ぶ。次の瞬間、上から落ちてきた赤火の尻尾が、先ほどまで私が立っていた地面を抉っていた。

 あのもふもふだったはずの尻尾が今は必殺の凶器。嘆かわしいです。

 

 というか半分まで力を縛ってなおこの威力。ちょっと強すぎやしないですかね。

 

「避けない、のっ!」

 

 空中で体を捻り、抉り取った地面を尻尾を器用に使ってキャッチ。そのままこちらに投げ飛ばしてくる。わーすごい。

 あわてて後ろへ飛んだせいでバランスを崩している私に、容赦なく飛んでくる元地面だった土塊。紛れもない直撃コース。当たれば痛いじゃ済まないんでしょうね。当たればですが。

 

「そこの空間を縛ります」

 

パチン

 

 能力によってピタリと宙で静止する元地面。そして私は無事体勢を立て直す。何があろうと指ぱっちんさえ出来れば能力は発動できるのです。

 

 これ以上追撃をさせないように妖力で作った弾を目の前に壁のようにばらまく。

 この妖力弾は普通のものと違い、触れるとドカン、小さな爆発を起こします。空中機雷のようなものです。もちろん誘爆もしますよ。威力は人間ならその部分が吹っ飛ぶレベルです。妖怪は火傷程度ですが。

 

「もうそれには引っかからないってこの前言ったの!」

 

 そう言って妖力弾の壁を悠々と飛び越えてくる赤火。作った当初は引っかかっていたのですが、何回も引っかかればそりゃあ学習します。

 

「予想通りなんですけどね。私がいつそこにしか妖力弾を設置していないと言いましたか?」

 

「……?」

 

「足元」

 

「なっ!?」

 

 赤火が着地する寸前、着地地点の空間がゆがむ。そしてそこに現れる多数の妖力弾。

いやー、幻術って便利ですね?ありもしないものを見せたりあるはずのものを見えなくしたり。まあ要するに視覚認識の阻害ってやつですかね。今回は妖力弾を隠すのに活用させていただきました。

 

 防御態勢を取ろうをする赤火。もう間に合いませんけれど。

 その足が妖力弾に触れた瞬間爆発が起こる。一つ爆発すればもう連鎖は止まらない。二つ三つ四つと、次々爆発していく。 

 さすがの赤火でもこれだけやれば気絶確定でしょう。なにせ私の残存妖力をほぼつぎ込んだ量ですからね、していなければちょっと辛いです。

 

「流石に疲れました…」

 

 妖力の使い過ぎたのか足に力が入らずその場にへたり込んでしまう。これでは赤火を運ぶどころか家に戻ることすらできませんね。どうしましょう。紫さんでも呼びましょうか?

 

 爆発が止まり、爆発によって生じた砂煙が晴れていく。あれ…、なんか人影が…

 

「けほっ…。今のは危なかったの」

 

 あの子は気絶しているはずなので、髪や服を焦がしながらも平然と立ってる赤火なんて私には見えませんし、何も聞こえません。……もう駄目かもしれないです。

 

「どうして座ってるの?」

 

「足に力が入らないのですよ。というわけで私の負けです、ギブアップです。ぎーぶーあーっぷー」

 

 投げやり気味に手足を放り出し、地面に寝ころぶ。

 あーあ、また負けちゃいました。これで何回目でしたっけ。何千?何万?これが始まった初めの頃と、機雷型妖力弾を作った日くらいしか勝った覚えがないんですけれど。

 

 

 ん、なんだか眠くなってきました。

 

「ご主人どうしたの?」

 

「いえ、眠くなってきただけですよ…」

 

 あぁ駄目だ、眠い。妖力を消費し過ぎたのでしょうか。

 

「私が運ぶの。だからご主人はゆっくり休むの」

 

「それじゃあ任せ…ます…ね……」

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

「よっこらせ、なの。ご主人はやっぱり軽いの、もっと食べなきゃダメなの」

 

 眠ってしまったご主人を背負い、家に向かって歩き始める。

 もう、本当にこの人は優しすぎるの。今日も手加減してたの。本気だったら、妖力弾を大量に撒くんじゃなくて一点集中設置だったら負けてたの。

たぶんご主人は、手加減してることを自覚していないのだろうけど。

 

 

 そんなご主人だから私が見ていてあげないといけないの。

 これからもよろしくなの、私の優しいご主人様。

 

 




まあ手加減しなくても負けるんですけどね。今日は勝ってましたけれども。


次はこの二人の詳しい紹介になる予定
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