東方縛鎖録   作:ふみくじ

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日常回


そのじゅういち

読者の皆様お久しぶりです、絞﨑縛理です。え?なんでこんなに遅くなったのかって?そんなことは細かいことは気にしない方がいいですよ。私もゆっくり休めたことですし、きっとそういうことなのです。

 

 

――――――――――

 

 

「鍋が食べたいです」

 

「急にどうしたのご主人?」

 

「いえ、何となく食べたいと思ってしまったのですよ。ありませんか?そういうこと」

 

「うーん… 私には良く分からないの…」

 

 季節は冬。現在幻想郷では毎日寒い日が続いています。冬だから仕方ないといえば仕方ないのですけれど寒いのは苦手なので困ったものです。布団から出られません。赤火は平気なのか、外で雪だるまを作ったり、里のほうへ遊びに行ったりしているようです。若いっていいですねほんと。雪合戦やるの!とか言って雪玉をぶつけてきた時は殺意が湧きましたけどね!

まあそんなことはどうでもいいのです。鍋です、お鍋。誰もが一度は食べたことがあるでしょう。寄せ鍋、水炊き、もつ鍋等々ありますが、私は水炊きが特に好きです。簡単でかつ美味しいのが素晴らしいです。

 

「そういうわけで今日の夕食は鍋にするですよ。なにか入れられそうなもの残ってましたっけ?」

 

「ちょっとまつのー… きのこと里でもらった緑の葉っぱのやつしかないの。お肉は昨日食べちゃったからもうないの」

 

 緑の葉っぱ?うむむ、ホウレンソウあたりでしょうか。まあ足りなければ足せばいいだけですかね。肉は… 面倒ですが探しにいくしかないですか。寒いのは苦手ですが赤火に頼むと必要以上に持って帰ってきませんし。

 

「赤火、私は少し狩りかいものに行ってきますので鍋の用意をしておいてもらってもいいですか?」

 

「分かったの。気をつけて行ってくるの」

 

「できるだけ早く帰ってこれるようにしますので。それでは行ってくるですよ」

 

「いってらっしゃいなの」

 

 

――――――――――

 

 

「寒ッ…」

 

 さすが冬の森、とてつもなく寒いです。雪が積り森を白く染めている様はとても綺麗に見えます。太陽が沈まないうちにとっとと用事を済ませて帰りましょう。

狙うのは食べられそうな生き物全般。探し歩いてどんどん奥へ進んでいきます。

手に息を吐きかけ手を暖めてみるが、一瞬暖まるだけですぐに冷たくなる。明日くらいにでも里に行って防寒具を見に行ますかね…。食料の方も買い貯めておきたいですし。

などと考えながら鹿を探し歩いているとき、ふと異変に気付く。血の匂い… あちらのほうでしょうか。鹿を解体している時に寄って来られても困りますし適当に間引いておきましょう。

 

 

――――――――――

 

 

「ひっ…!来ないで!来ないでよ!」

 

逃げる逃げる逃げる逃げる

 

そうしないと捕まるからそうしないと食べられるからそうしないと殺されるから

 

聞こえているのは私の荒い息遣いとすぐ後ろからの獣のような息遣い

 

いくら森の中を走ってもいくらやめてと言ってもいくら来ないでと言ってもいくら泣いてもいくら血を流してもいくらお願いをしても追いかけて来る

 

まだ死にたくない、死にたくない

 

血を失いすぎたせいか意識が朦朧とする

 

雪に足を取られ、倒れる、追いつかれる

 

雪め、恨んでやる、死ぬまで恨んでやるからな

 

――――あぁ、そうだ、私死ぬんだった。

 

追いかけてきた妖怪がゆっくり近づいてくるのがわかる。もう逃げないと、逃げられないと分かっているのだろう

 

お父さんお母さんごめんね。

 

そして、その凶爪が振り下ろされ――――

 

 

――――――――――

 

 

 先程見つけた血の跡を辿って歩いていく。この量の失血じゃ、たとえ妖怪だろうが人間だろうがもう長くはないですしょう。死んでいようが生きていようが私には関係ありませんがね。関係ないっていうのはどちらの状態でも『食料』になってもらうという意味です。蟲型の妖怪は流石に食べようとは思いませんが。

…どうやら追いついたようです。血の跡の先には一人の人間がうつ伏せに倒れており、すぐ後ろには妖怪が。人型をしていますが知能は低い様子。ゆっくりと倒れている人間に近づいていく妖怪。鋭く尖ったその爪が人間に――

 

 

 

振り下ろされる。

 

 

 

人間の断末魔の叫びとともに鮮血が飛び散る。

あれは死んだかなぁなんて事を思っていると妖怪が、ごりごり、という音とともに人間の腕を捥ぎ取り食べ始めた。

濃い血の匂いが其処ら中に充満する。その甘美な香りが私の鼻腔をくすぐる。腕を捥ぎ取られた傷口からは本当にあれだけの血を流したのかと思うほどの夥しい量の血が流れだし、雪の白を赤で染めていく。

その食べ方はとても綺麗といえず、人間の肉の味と血の匂いに魅了されているであろう妖怪の口からは細かい肉が飛び散… あぁ!もう我慢できない!

 

「貴方のいる空間を縛ります。それ以上のその素晴らしい物に手を付けないでください」

 

 指を鳴らし能力を発動させる。すると腕に夢中であった妖怪がピタリと止まりその動きをなくした。しかしそんなことは今はどうでもいい。今重要なことは目の前に転がるご馳走。赤い血が滴り彩られたそれ。

 

それじゃあ、いただきます

 

ああ、貴方はあとでゆっくり解体して差し上げますからそこで見ておいてくださいね?

 

 

 

 

 

 

 

「いただきです」

 

「あ!ずるいの!ご主人さっきから食べ過ぎなの!」

 

「ふふん、世は常に弱肉強食。つまり早い者勝ちなのですよ」

 

「ドヤ顔はやめるの!それにしても帰ってくるのが遅かったの。何かあったの?」

 

「いえいえ、何もありませんでしたよ」

 

「何か隠してるの!教え「隙あり!」だからずるいの!」

 

 

 今日も絞崎家は平和です。




※人間さんは縛理ちゃんが残さず綺麗に食べました。


遅れて申し訳ない…!リハビリを兼ねたじゅういちはどうでしたでしょうか。たぶんかなり飛ばし気味な話になってしまっているような気がします。
こんな小説でよければこれからも生ぬるい目でお付き合いいただけるとありがたいです…!
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