東方縛鎖録   作:ふみくじ

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遅くなったね!


そのじゅうに

「空間を縛りまッ!?」

 

「そんなんじゃ甘いんだよォ!」

 

 縛られ、動きを止めたはずの空間がその拳で破壊され再度動き始める。いやいや、拳で空間を破壊て。脳筋にもほどがあります。赤火でさえ妖力でどうのこうのしてやっと脱出ってレベルなんですがね……というか!

 

「赤火!早く起きて手伝ってください!」

 

「きゅう………」

 

 あ、だめだこれ!頼りになりません!

 

「余所見かァ!?余裕だなァ!?そんなんじゃ死んじまうぜエェエエエ!!秘拳!岩砕きィ!!!!」

 

 まるで秘伝マシンから覚えたような名前を叫びながら超高速の裏拳が避けても避けても顔面めがけて飛んでくる。当たったら…考えるだけでもぞっとしますね……

 普通の一撃で赤火があれなので大体想像がつきますよ。パーンッ☆じゃ済みそうにもありません。早いとかそんなレベルではないので今の私では避けるだけで精一杯。何とか効けば良いのですが。

 

「あなたのっ!危なっ!?私への物理行動を縛ります!」

 

 髪を掠めましたが当たらなければどうということはないです!指ぱっちんも決まりました!さすがにこんな脳筋がこれを破れるだけの妖力は持っていないはぶっ!!?

 

「――ッ!げふッ!?」

 

 地面に一バウンド二バウンド三バウンド決めたところでやっと勢いが止まる。体を強く打ったからか息ができない。視界が揺れる、思考がままならない。頭が割れたように痛い。実際割れていないようなので効いていることは効いているのでしょう。軽減できてもこれですが。縛っても縛り切れないとかどういうことなの。

 とどめを刺そうとしているのか一歩また一歩と近づいてくる敵さん。どうすればいい?どうすれば逃げられる?赤火は気絶、私はこれ、吹っ飛んだおかげでまだ距離はありますが起きて赤火を回収、逃げるなんてできるわけがない。追いつかれてしまうのがオチです。

 そもそも、なんでこんなことになってるんでしたっけ…

 

 

 

――――――――――

 

 

 

「へー…鬼ですか…」

 

「そうなんすよ!あいついつもいつも俺たちの住処まで来て飲み食い好き放題しやがるんすよ!おかげでこっちは食糧難、ほんっと迷惑してるんす!わかります!?酒もってこい食い物もってこい踊れだのボケろだの面白くなきゃ殴られるし!昨日も「いやもう分かりましたから」うっす…」

 

 妖精も凍えそうな寒い寒い冬の真っただ中。凍えるかどうかは知りませんが。河童の男、風弥のうるさい愚痴を聞き流しつつ温かい布団の中で赤火が焼いてくれたきのこを齧る。

 

「というか縛理さん、布団の中で食べるの行儀悪いっすよ」

 

「いいんですよ私は。そもそも突然訪ねてきて愚痴ばっかり言って、そんなあなたに行儀が悪いとか言われたくないです」

 

「すんません…いやでも縛理さんなら暇かと思って…」

 

「失礼な。私だって朝は優雅に二度寝の時間を過ごしたいんですよ。寒いし眠いしで起きたくないんです。分かります?というか分かってください。」

 

 ええ…暇じゃないですかと呟く風弥。朝の二度寝は私の大切な時間ですし、お昼のある程度暖かい時間まで過ごすための行動でもありますので必要なことなのです。ちなみに赤火は先ほどどこかに出かけたようです。

 

「とか言いつつ起きて聞いてくれてる縛理さん優しいっす。まあそんなことは置いといて鬼ですよ鬼。俺達の縄張りにまで入ってきやがって!強いからって調子に乗りすぎなんですよ!縛理さんの能力でどうにかできませんかね?」

 

 風弥には前にどんな能力なんすか?って聞かれたのである程度は教えてあります。まあ簡単にですが。

 鬼といえば妖怪の山に住んでいる妖怪の中で頂点に君臨する種族。紫さんでも容易には手を出せないほどらしいので私がどうこうできるとは思えません。

 

「残念ながらどうにもできないかなと…」

 

「今回のことを解決してくれるなら冬でも暖かく過ごせるようにする道具を御礼として渡そうと思ってたんすけど」

 

「やります」

 

「よっしゃ」

 

 

 

――――――――――

 

 

 というわけで妖怪の山。正面から入ると見張りの天狗からうだうだと文句を言われるので河童がよく通るという道から入っていく。一応それなりに近所で、あの姉妹によく会いに来ているので一部の天狗とは顔見知りですがなにせプライドが高いのが多いためあまり顔を合わせたくないのです。姉妹?今頃そこらへんで欝々としているんじゃないですかね、冬ですし。

 冬の山は雪が地面や木に積もっているので視界が悪く、木にぶつかろうものなら雪が崩れてきて雪だるまになってしまいます。何回かなりましたし。なので、ゆっくりと飛んで進んでいくのが安全です。歩き?絶対無理ですね。今だって寒すぎて飛ぶこともままならないので布団にくるまった状態で赤火に運んでもらってますし。

 

「ご主人!いい加減に自分で飛んでほしいの!」

 

 口を開けることすら嫌なため背中にしがみつき拒否の意を示す。尻尾が暖かすぎて離れるとか考えられません。一生一緒にいてくれや。

 

「まあいいじゃねえの赤火。縛理さんは寒いの苦手なんだし」

 

「風弥はなんでご主人だけさん付けなの!私も付けるの!敬うの!」

 

「敬われるような感じじゃないから仕方ないと思うぜ。それに比べ縛理さんは優しいし妖気もでかいし、何よりあのまだまだ形態変化残してますよって感じの余裕!さすがだぜ!」

 

 形態変化なんてできないんですが。妖力が多いだけで赤火よりも戦闘は弱いですし優しくなんてないと思うんですよね。優しいことしましたっけ?

 

「何なの…おまえ一発殴りたいの」

 

 いつもの流れですね。風弥が煽って赤火が怒る。流石に本気ではないようですけど。本気なら死んでるでしょうし。

 

「おー、怖い怖い。そろそろ着くしその怒りはあの鬼野郎様に向けてくれよ」

 

 木々の隙間を抜けていくと大きな川に出る。河童の集落、久々ですね。この寒さでよく水の中に入ろうと思いますよ本当に。尊敬も何もありませんがね。

 

「んじゃ、あれが来るまで俺の家で休んでいきますかね」

 

「ご飯食べるのー!」

 

 おー。そろそろお昼時なので私のお腹もぺこぺこです。ぐー。食べてゆっくり休んで備えましょうかね。

 




後編に続くんじゃ いつになるかはわかりません!すいません!
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