東方縛鎖録   作:ふみくじ

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幻想郷なう(死語)

若干のグロあります。注意してください。



そのに

 幻想郷に引っ越して五十年くらい経ちました。

 

 色々あったような無かったような。まあ、覚えていないということはどうでもいいことだったのでしょう。

 

「それにしても、です」

 

 そう呟いて自分の体を見てみる。赤黒い着物に包まれた体は一向に成長する気配がない。昔と変わらず小さいまま。髪は伸びるのに体は成長しないとは困ったものです。ちなみに、現在の髪の長さは腰に届くか届かないか程度。そろそろ切ろうかなと思っています。

 

「紫さんが帰ってきたら頼んでみるですか」

 

 紫さんは今、この幻想郷を留守にしている。確か月に行っているらしいです。なにをしに行っているのでしょうか。月に何かあるのでしょうか。別に興味はありませんけれど。

 あの人のやることは本当にわからない。たまに馬鹿なのかと思うのですが、紫さんには紫さんの考えがあるのでしょう。

 

 

 

「……暇ですし散歩にでも行くですか」

 

 最近はよく暇になると散歩しています。ついでに木の実を集めて食べたり。それに結構な頻度でご馳走が手に入ることがあったりするのです。

 

「今日は森の奥に行ってみましょう」

 

 家のすぐそばには森があります。

木の実や山菜などを集めるためにたまに入るのですが、奥には入ったことがありません。集めるだけならば浅いところ十分なのですよ。

 

 

 

 

「このきのこ食べれるんでしょうか…」

 

 森の奥からこんにちは、絞崎縛理です。只今緑色のきのことにらめっこ中。森の奥に来たのはいいんですが変な色のきのこばっかりでどうにもなりません。

 まあ毒があったとしてもお腹を壊すだけなのでいいですけれど。妖怪って便利ですね。ちょっとやそっとのことじゃ死にませんし。

 

「これくらいでしょうか」

 

 食糧を入れるために持ってきたかごは、きのこや木の実で半分ほど埋まっている。どれが食べられるかとかはまったくわからないので適当に放り込んだ結果がこの量。かごの中は緑色のきのこや、赤いきのこなどの色のせいでとてもカラフルです。

 正直に言いましょう、気持ち悪いです。何ですか緑色のきのこって。これ絶対に毒持ちですよ…。まあ食べますけれど。

 

 

「グ、ググ…。ギギ?」

 

 かごの中身をのぞいていると、突然後ろから変な鳴き声がしました。なんでしょうか。野良犬とかだったら捕まえて飼ってみたいのですが鳴き声が全く違います。

 仕方なく振り向いて相手の姿を確認します。

 

「うわぁ…」

 

 振り向いてみるとそこにいたのは四本の腕がある猿。猿というよりはゴリラでしょうか?結構大きいです。体いたるところに血のような赤がついています。人間でも食べていたのでしょうか。すごく、血生臭いです…。

 

「臭いです…。血の匂いですかね?」

 

「グギ?」

 

 見た目からわかるでしょうが妖怪です。それも下級の。

 散歩をしていると結構あるんですよね、こういうこと。

 

「ギシャア!」

 

「わわっ!?」

 

 飛びかかってきた妖怪を紙一重で避ける。急にくるのはやめてほしいです。心臓に悪い。

 

「ギィ?」

 

 攻撃を避けられた妖怪は首をかしげてこっちを見ています。あ、ちょっとかわいい…ことはありませんでした。

今ので仕留めるつもりだったのでしょう。不思議そうな顔で自分の手と無傷の私を交互に見ています。まぬけな顔ですね。

 笑いそうになるのを抑え相手の動きを見る。あんな攻撃程度なら何回来ようと避けることは可能ですが、いきなりは心臓に悪いので。

 

「ふう…。そろそろやりましょうか」

 

 一息。相手から目を離さないようにしつつ、かごを地面に置く。動きの邪魔になるだけですからね。あと中身が飛んでいかないようにです。

 

「私に前に出てきたことを後悔してくださいね。」

 

 腕を前に出し構える。

 

「ググギィアァアア!」

 

 その動きに興奮したのか妖怪が飛びかかってくる。先ほどより速い。今度は逃がさないつもりでしょう。しかし無駄ですね。

 

「あなたのいる空間を縛ります」

 

 告げる。そして同時にパチン、という音。

 

「ギィイッ!?」

              ・・

 妖怪が私の目の前で止まる。空中で鳴き叫ぶ。

 

「うるさいですよ。あなたの口と舌の動きを縛ります」

 

 パチン

 

「――――ッ!?」

 

「これで静かになりましたね。それとやっぱりあなた臭いです。私の嗅神経を縛ります」

 

 パチン

 

 これでこの臭いから解放されました。

 いったい私が何をしたか。能力です。絞崎縛理の、つまり私のです

 

 『縛る程度の能力』

 

 これが私の能力です。とりあえずなんでも縛ることができます。人、妖怪の動きや機能、物、さらには今のように空間まで。もちろん解除もできますよ。そうじゃないと自分に使ったりはしません。

発動時には誰の何を縛るかを唱え、フィンガースナップ、つまり指ぱっちんを行わなければなりません。どちらかを怠ると発動はしないのです

 

         

 

          ・・

「それじゃあさっさと加工しましょうか」

 

 袖から一本の鞘に収まった短刀を取り出す。そして鞘から刃を抜き、妖怪に近づく。

 

「ちょっと切れ味が悪いので頑張ってくださいね」

 

 空中で静止している妖怪の四本の腕のうちの一本に刃を当て、一気にそれを引いた。

 

「――――!」

 

 腕から血が流れ、妖怪の表情が歪む。

 

「やっぱり一回じゃ無理ですか。もうこれを使って結構経ちますし、そろそろかえ時でしょうか…」

 

 短刀を眺めながら一人呟く幼い少女の様子は、少しはしゃいでいる様に思える。

 

「続けましょう」

 

 同じ腕に刃を当てる。そして引く。

 当てる引く当てる引く当てる引く当てる引く当てる引く当てる引く当てる引く当てる引く当てる引く当てる引く当てる引く当てる引く当てる引く当てる引く

 

 何度もそれを繰り返す。血が飛び散り、その血が顔にかかろうが気にしない。

 

 当てる引く当てる引く当てる引く当てる引く当てる引く当てる引く当てる引く当てる引く当てる引く当てる引く当てる引く当てる引く当てる引く当てる引く

 

 そうして三十回は過ぎたころ、妖怪の腕はぼとり、と地面に落ちた。

 

「ふふっ、やっと一本目です」

 

 幼い少女は笑っていた。

 

「あと三本と足。頭も取るつもりなのでそれまで頑張ってくださいね。かわいいかわいいご馳走ちゃん?」

 

 

 

 

 

 

 

「今日は疲れました…」

 

 妖怪を加工し終わり、私は家に戻っていました。もう外は真っ暗です。あの妖怪、大きかったので時間がかかったのです。

 

「でもおいしかったです…」

 

 思い出すと涎が出そうになります。

 加工し終わった後、腕一本を味見感覚で食べてみたのですが、とても美味しかったです。見た目や匂いだけでは判断しちゃだめですね、今日学びました。

 紫さんが帰ってきたら分けてあげましょうか。

   ―――などと考えていると急に睡魔が襲ってきました。

 

「……おやすみなさいです」

 

 

 そう呟いた幼い少女は、睡魔に抵抗することなく眠りに落ちていった。

 

 

 




主人公の能力登場。着物が赤黒いのはデフォです。あと雑食。
戦闘描写はうまくできているでしょうか。少し心配でございまするるる。

次回はあの人を登場させるつもりです。


ちなみにですが、月に行っているというのは第一次月面戦争のことです

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