「おいで」
私が呼ぶと、嬉しそうに駆け寄ってくる赤い毛玉が一つ。この前助けた狐である。手当のおかげか、この子の治癒力がすごいのか、もしくは両方か、全ての傷は回復し、痕なども残っていない。
「よしよし」
こちらに駆け寄ってきた狐が、膝の上に飛び乗ってきたので撫でてあげる。すると狐は気持ちよさそうに目を細めだす。尻尾も振っちゃってかわいいですなぁ。
ゆっくりと狐を撫でる。もふもふ。撫でる手が止まらない。この殺人毛玉め。
そういえばこの狐、尻尾が二本有ります。確か妖狐っていうのは妖力に応じて尻尾が増える妖怪だったはず。ということはこの子、それなりに妖力を持っていることになります。……変化の術とかできるんでしょうか。そもそも狐って化かす動物だったような。
「あなたは変化できたりしませんよね…?」
できたら困る。というか悔しい。なぜ私にはできないのでしょうか。いつまでもこんな幼児体型じゃ困るのです。人里へ行った時なんて子ども扱いされますし。あぁ、辛い。
そんな私の苦悩を知ってか知らずでか、狐はふすん、と鼻息を立てる。なんか馬鹿にされてるような気がします。まあかわいいんですけど。
「はろはろ~、縛理ちゃん元気?」
「ふひゃあ!?」
なんでちゃぶ台の下から紫さんが現れるんです!?あ、能力…。狐さんが部屋の角で震えちゃってるじゃないですか。
「紫さん、お久しぶりです。机の下から出てくるのやめてください。心臓に悪いですよ」
「まあそう怒らないの。その子も怯えてるわよ?」
「どちらも紫さんが変な所から出てくるのが悪いんじゃないですか!」
「おほほほ…」
扇子を開き口元を覆う紫さん。ちょっと殺意が湧きそうです。
なんでこの人は毎回毎回こんな登場の仕方を…。確かこの前は眠ろうとしている時に布団の中に。その前は天井から。そしてその前は畳の下から。思い出したらいらいらしてきました。
「今日はどうしたんですか」
「暇だったから貴女の様子を見に来たのよ」
暇って言ってますけどこの人確か幻想郷の管理者ですよね。そんな人が暇とか言っちゃっていいんですかね。
「そういえば、まだあの人間は帰ってきていないのね」
「………うるさいです。あの人はそのうち帰ってきます」
「あらあら怒っちゃって。そんなにあの人間がよかったのかしら?」
うるさいな。
「うるさいですって言ってるじゃないですか。その話はやめてください」
紫さんを睨んでいると、いつの間にか私のところに戻ってきていた狐が膝にすり寄ってきた。毛がくすぐったい。
「くすぐったいですよ、狐さん」
これ以上くすぐられるのもアレなのでもう一度膝の上に乗せ、撫でてあげる。
「可愛らしいわねその子。どうしたの?」
「狐さんは拾ったんです、森で。」
拾った経緯をかいつまんで話す。
「そんなことがあったの」
「ええ。それでまあ懐いちゃったので一緒にいる、ということですよ」
そんな狐は今私の膝の上で丸くなっている。そんなに居心地がいいとは思えないのですがね。
「ふうん…」
紫さんが何か思いついたような胡散臭い笑みを見せる。今度は何をたくらんでいるのだろうか。
「貴女も元気なようだし今日はもう帰るわ」
「そうですか、それではまた」
「それじゃあね。あ、そうだ。その子、名前が無いのなら決めてあげたら?いつまでも狐さんじゃ不便よ」
そう言い残して紫さんは、能力で作った空間の中に消えていった。
ふむ、名前ですか。そういえばまだ名前を考えていませんでしたね。どうしましょう。うむむ…。あ、思いつきました。
「赤火、あなたは今日から絞崎赤火です」
絞崎赤火。我ながらいい名前を付けたと思う。赤火も二本ある尻尾を勢いよく振っているので喜んでいる、と思う。
そんな赤火を撫でながら、妹紅さんのことを考える。何故いなくなったのですか。なぜわたしを置いていったのですか。いつ帰ってくるのですか。
「赤火、あなたはいなくならないでくださいね」
絞崎赤火(こうざきあかひ)
妖狐。名前の由来は赤い毛と狐火から。
話の長さについてですがもうちょっと長めのほうがいいのでしょうか?悩みどころです