BRAVE10   作:花札

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半蔵の襲撃を受けた後から……


もう一人の勇士

服部半蔵達の襲撃を受けた上田……

 

 

城には、民と兵士達の亡骸が寝かされていた。

 

 

「ったく、せっかくの祝いの席が台無しになってしまったなぁ……

 

民にまで、犠牲を出すとは……

 

 

だが、これが狸との戦か……

 

 

しかし、お前等六人がいてくれたおかげで、この程度で済んだ。

 

なぁ……我が勇士達。

 

霧隠才蔵

アナスタシア

猿飛佐助

海野六郎

筧十蔵

そして、伊佐那海……」

 

「え?私も勇士?」

 

 

キョトンとした顔を浮かべながら、伊佐那海は幸村に問いかけた。幸村は、伊佐那海の頭の上に手を置きながら頷いた。

 

 

「そうだとも、お主も我が勇士だ」

 

「話からして、私は勇士じゃないみたいだね……」

 

 

佐助の隣に座っていた肩下まで伸ばした白髪の少女が、口を開いた。その声に気付いた幸村は、手に持っていた煙管を加えながら、少女に話をした

 

 

「何を言う、お主も立派なわが勇士だ。」

 

「どうだか……

 

さっき『お前等六人がいてくれたおかげで、この程度で済んだ』って……

 

あれって、私は含まれてないって意味じゃないの?」

 

「そういう意味ではない。お主は、別の意味の勇士だ。」

 

「別の意味?」

 

「そうだ」

 

「……そういうことにしとくよ」

 

「帰って来て早々、幸村様に向かって、何たる態度だ!礼儀を弁え!」

 

 

幸村の話し終えたとき、黙っていた十蔵が佐助の隣に座っている少女を怒鳴った。しかし少女は、聞く耳を持たぬような態度で十蔵を眺めていた。

 

 

「相変わらず、うるさいなぁ……

 

別にいいじゃん。母さんだってこういう態度をとってたし」

 

「お主と紫苑は違うだろ!」

 

「そこまでにしとけ筧。儂はそんな気にしてない」

 

「しかし」

 

「相変わらず、型っ苦しいんだよ筧は」

 

「さんをつけろ!さんを!」

 

「じゃあ昔みたいに、十蔵でいい?」

 

「そういう問題じゃない!」

 

「筧、落ち着け!」

 

「!?」

 

 

煙管の灰を落とす音に合わせて、幸村が声を上げた。十蔵は幸村の声で、落ち着きを戻し座り込んだ。十蔵が落ち着いたのを確認すると、黙っていた才蔵が口を開いた。

 

 

「さっきからオッサンとやり合ってる、このガキ誰だ?」

 

「そういえば、私も初見だわ」

 

「おい幸村、この弱者何者?」

 

「おいガキ、今何言った?

 

それから、人に向けて指差すな」

 

 

少女の言葉が癇に障ったのか、才蔵は少女の頭を鷲掴みにしながら少女の顔を自分の顔に寄せた。しかし少女は、恐怖を感じていないのか、平気な顔で才蔵をにらんだ。

 

 

「頭鷲掴みにして睨めば、ビビると思った?弱いくせして」

 

「!この…」

 

「伊賀の汚らわしい手、この子に触れること許さぬ!」

 

 

少女の隣にいた佐助が、才蔵の手を叩き少女を自分の後ろへ隠した。才蔵は叩かれた手を引っ込めながら、佐助を睨んだ。

 

 

「んだよ!甲賀の猿が!お前何だ、そいつに思い出も寄せてんのか?」

 

「!!否!」

 

「図星だろ?」

 

「……」

 

 

赤くなった佐助の顔を見ながら、才蔵は笑みを浮かべながら問いかけるが、佐助はそのまま黙ってしまった。

すると、左隣に座っていた伊佐那海が、佐助の後ろに隠れている少女の肩を叩きながら話しかけた。

 

 

「ねぇねぇ、アンタ名前は?まだ聞いてなかったでしょ?アタシ、伊佐那海」

 

「……

 

光坂明日花(コウザカアスカ)」

 

「?!(光坂だと)」

 

「へぇ、明日花ちゃんかぁ」

 

 

伊佐那海と明日花の話している姿を見ながら、才蔵はアナスタシアの隣へ行き耳元で囁いた。

 

 

「『光坂』って確か……」

 

「昔、武田に仕えていた忍の一族よ。武田が滅んでからは生き残った者は各地にバラつき、自分の身を隠して生活をしている者もいれば、一族の名を飾りながら「忍」として生きている者もいるって聞いたことがあるわ」

 

「じゃああいつは?」

 

「生き残った者の子じゃない?」

 

 

「ゴッホン

 

そろそろ、儂の話を聞いてくれぬか?」

 

 

咳払いをした幸村は、皆を見た。才蔵達は幸村の咳払いに、反応しその場に腰を下ろしながら、幸村に話しかけた。

 

 

「何だよ?話って」

 

「実はな、一匹の狸がこの上田を奪おうとししていてな、一度懲らしめたのだが全然懲りてはおらぬのだ。」

 

「?どうして?」

 

「上田は、いろいろ便利で戦をするなら、絶好の場所だからねぇ」

 

 

伊佐那海の疑問に、佐助の背中に寄りかかり座っていた明日花が、どこからかやってきた白い毛に身を包んだ鼬の頭を撫でながら、伊佐那海の質問に答えた。

 

 

「フ~ン……こんな山奥の小さなお城なのに?」

 

「小さいは余計だ、小さいは」

 

「戦でも始まるの?」

 

「そうだな。

 

この信濃の国と甲斐の国を治めていた武田家が滅んでから十四年……

 

そして、太閤秀吉が亡くなってから一年……

 

今までコソコソ裏で動いていた狸が、ようやく本性を現しおったわ」

 

「裏で動いてたって………

 

二年前の事件はどうなるの?その狸が原因でしょ?

 

それとも何?その狸の首でも取りに行くの?」

 

「二年前の事件?」

 

「明日花、そう慌てるな。

 

儂には、この信州上田を、国の民を守る義務がある。

 

そのため、儂はこの場からは動けん。だから」

「だから、俺等を使い外部の情報を聞くってか?」

 

「まぁ、そういうことだな」

 

「くだらねぇ……

 

俺には関係のない話だ」

 

 

立ち上がり、襖を開けた才蔵は表へと出て行った。そんな才蔵を伊佐那海は心配した表情を浮かべた。

 

 

「ねぇ、二年前の事件って?」

 

 

幸村の話を聞いていたアナスタシアが質問をした。その話を聞いた途端、十蔵と佐助が一瞬、明日花の方に顔を向けた。明日花はその目線に気付いたのか、その場を立ち上がり障子に手をかけてアナスタシアに目を向けて答えた。

 

 

「馬鹿な女が、血の繋がってない子供を守って死んだ事件」

 

「子供を?」

 

「そう……」

 

 

目を逸らし、明日花は障子を開けそのまま外へと出て行ってしまった。

 

 

 

 

夜……

 

 

才蔵は部屋を出た後、城の屋根の上で仰向けになりながら月を眺め、昼間のことを思い出していた。

 

 

『命拾いしましたね?』

 

「……」

 

『どうやら応援部隊が来たようですし……引き揚げるとしますか。

 

しかし、がっかりしましたよ?強いと言っときながら……

 

 

異名だけが、この世を歩くみたいですね?』

 

 

その言葉を才蔵に言い放つと、半蔵は煙のようにその場から姿を消した。才蔵は月の光に自分の両手をかざし眺めた。

 

 

(……

 

情けねぇ…あいつ(伊佐那海)を守りきれなかった……俺はもっと強かったはずだ……

 

暗殺が生業だった俺が、柄でもないことをしたから調子が狂ったんだ……)

 

 

「あの女を捨てれば、気が楽になる…」

 

「!?」

 

 

聞き覚えの声が聞こえ、声が聞こえたほうに顔を向けるとそこには、肩に鼬を乗せた明日花が座っていた。

 

 

「てめぇ、いつの間に」

 

「アンタが、自分の両手を月にかざしたあたりかな」

 

「……」

 

「『何で、俺の考えが分かった?』ってか?」

 

「!」

 

「捨てれば楽になるか……

 

楽になるなら、とっくに捨てるわ。けど、アンタは全然その気配はなし」

 

「は?」

 

「下、見てみな」

 

 

明日花が言うと、それまで気付かなかった何かが切れる音が聞こえた。下を覗くと、そこに佐助が稽古をしていた。

 

 

「けっ!

 

バカじゃねぇのか?お前?」

 

「!」

 

 

才蔵の声にと気配に気付いた佐助は、才蔵の声がした方に顔を向けた。

 

 

「いくら一生懸命やったって、無駄なもんは無駄なんだよ」

 

「……

 

話す価値なし」

 

「んだと!

 

集団でしか動けない腰抜け猿が偉そうに!」

 

 

屋根から飛び降り、才蔵は佐助に殴りかかろうとした。だが佐助は、才蔵の攻撃をかわし、才蔵の額に頭突きした。その反動に才蔵は一瞬意識を無くし掛けたが佐助はそれを承知の上か、才蔵の腹に蹴りを入れた。受けた蹴りの勢いで、才蔵は近くにあった池に落ちた。

 

 

「何しやがる。猿野郎!

 

ムカつくんだよ!意味もない修業しやがって!」

 

「意味はあるよ」

 

 

屋根から飛び降りてきた明日花が、才蔵に近づいた。

 

 

「何の意味がある!?」

 

「自分が弱いことを知っている。だからもっと強くなろうと、修行をしている。

 

そうでしょ?佐助」

 

「……

 

幸村様、我必要。だから強くなる。

 

上田、守る。真田、守る。これ、我の務め」

 

「守だと?

 

そういうのが嫌いなんだよ!」

 

「否!」

 

「は?」

 

「お前、自分弱いの認めない」

 

「この」

 

 

立ち上がり佐助を殴ろうとした途端、何かが頭にぶつかってきてまた才蔵は尻を突いた。

 

 

「一度ならずに二度までやり」

「やったのは私」

 

 

いつの間にか佐助の前に立っていた明日花が、才蔵に言い放った。

 

 

「這い上がられるじゃん。二度も殴られたのに」

 

「……」

 

「その力。幸村様必要。

 

お前強くなれる。誰かのために」

 

 

「良い事を言うなぁ。佐助、それに明日花。

 

佐助、お主がそんなに喋ったのは久しぶりに見たぞ」

 

「ゆ、幸村様!」

 

 

顔を赤くして、佐助はその場を立ち去った。

 

 

「おぉ、逃げたか」

 

「あっ!待ってよ!佐助ぇ!」

 

 

明日花は佐助の後を、慌てて追って行った。二人を見送った幸村は才蔵の方へ振り向き口を開いた。

 

 

「どうする?そこから這い上がるか?」

 

「……

 

何度でも、這い上がってやるさ」

 

「なら、お前にぜひ頼みたいことがある」

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