階段を下りていく才蔵達……
「随分深いな……
まだまだ先が見えねぇ。
もう、十丈(約三十メートル)は下りたぞ」
「そういえば出雲大社には、大昔天界に届くような高さ十六丈(約四十八メートル)もの巨大な階段があったって、聞いたことがある。」
「じゃあこの地下階段は、その反対……」
「反対って……
じゃあこの階段は、冥府に届くってか?(やめろよ……変な話は……)」
「冥府ねぇ……
まだ、目的果たしてないから行きたくないんだけど……」
「つーか、その話自体有り得ねぇ!」
「えぇ!?
才蔵、信じてないの!!
アタシ、死んでも才蔵とは冥府で結ばれると思ってたのにぃ!!」
「(死んでも?)あの世では、静かに暮らしてなぁ……」
「縁起でもないこと言わないでよ。
本当に、この階段が冥府に続く道だったら。私たちここでおしまいだよ?」
「そうだな。
……
?
着いたんじゃねぇか?」
階段が終わり、ようやく地面に着いた才蔵達……
辺りは真っ暗闇に包まれており、才蔵と明日花が持つ燈火が唯一の光だった。
「真っ暗で、何も見えないじゃん…」
「仕方ねぇ」
才蔵は札が付いたクナイを出し、札に火を点け投げ飛ばした。投げて数メートルもしないうちに、クナイは壁に当たった。
「!?」
クナイについていた札の明かりに灯された場所には、巨大な石の壁があり行き止まりになっていた。
「い、行き止まり?!」
「何もない……
これじゃあ、先にも進めない……」
すると何かに気付いたのか、伊佐那海はその巨大な岩に近づき何かを見た。
「ねぇ!岩に何か書いてあるよ!!」
その言葉に、才蔵達は岩に近づきその書かれているものを見た。だがそれは見たことのない文字の様なものが、その岩に書かれていた。
「何だ?こりゃ?」
「多分、出雲の字だと思うよ?」
「読めるか?!」
「……うんうん」
「何だ、そりゃ……」
「ここまで来ても、結局何も何ということか……」
「だな。
?
明日花、どうかしたか?」
才蔵の隣で、ジッと文字を見つめる明日花に、才蔵は声をかけた。
だが、明日花は聞こえてないのか何も答えず、その文字を見ていた。
「……」
「おい、明日」
「うわっ!」
声をかけた途端、明日花は突然悲鳴を上げ、その場に尻を突いた。その様子に気付いた十蔵はすぐに明日花に駆け寄り、膝を付いて明日花の顔を見た。
「明日花、大丈夫か!」
「才蔵!明日花ちゃんに、何か」
「してねぇよ!勝手に倒れたんだ!」
「明日花、どうしたんだ?」
「……」
「おい、明日花」
「……
何か、見えた」
「え?」
「何かって、何だ?」
「……分からないけど……
何か……」
“ドカカカカカ”
「!!」
突然、階段の方から数本のクナイが飛んできて、巨大な岩に突き刺さった。それに気づいた才蔵達はすぐに後ろを振り返った。
「何?!」
「何者?!姿を見せよ!」
「いやあ、出雲に先回りして張ってた甲斐がありましたよ」
そこにいたのは、上田を襲った伊賀の忍び服部半蔵と半蔵の仲間の桜割(オウカツ)だった。
半蔵の声に気付いた明日花は、立ち上がり振り返り半蔵を見た
「(……こいつ…まさか?!)
!!うわぁ!!」
「明日花!!」
突然、半蔵が放った火の玉が明日花に命中し、明日花は放たれた勢いで岩に体を叩きつけられてしまった。
「感謝しますよ?ここを見つけて下さったうえ、長年探し求めていた幸魂も持ってきて下さって……」
「幸魂?!(狙いは、あれか?!)」
「さて、幸魂もですが渡して貰いますよ?その奇魂を」
「くしみたま?
まさか、狙われていたのは、アタシの簪だったの?!」
「お前の簪だけじゃなねぇ!明日花の首から下がってるあの勾玉もだ!(やっぱり、あの二つが爆弾だったのか!)」
壁に叩きつけられた明日花を目にしながら、才蔵は伊佐那海を隠すように前に出た。
「まさか、その子が帰っていたとは……」
「帰ってた?どういう意味だ?!」
「いえねぇ……
二年前、その子が下げている勾玉……幸魂を渡して貰おうと、その子の母親に申し込んだところ、お断りするので少し痛めつけようと思い攻撃しましたら、まぁ反撃が来ましてねぇ……
仕方なく、母親を」
「光坂流木術!妖枝術!」
明日花が倒れている方から、先の尖った不気味な色をした枝が半蔵目掛けて飛んできた。だが半蔵は飛んできた枝を鞘から刀を抜き取り、刀で枝を切り刻みバラバラにした。
「困りますねぇ……話の途中に攻撃されるのは」
「黙れ!!
アンタだけは、私が殺す!!」
「あなたには大人しくしててもらいたいのです。桜割、あの子を大人しくさせなさい」
「承知いたしました。
しばらく、寝ていてもらいましょう。」
そう言うと、桜割は明日花の頭上から蛇を落とした。蛇に気付いた明日花は蛇の方に目を向けた途端、蛇に首を噛まれそのまま意識が無くなり、その場に倒れてしまった。
「明日花!!」
「テメェ!!何しやがった!!」
「少し、寝かせただけです。
さぁ、渡して貰いますよ?」
もう一つの鞘から、刀を取り出し攻撃態勢に入る半蔵……
その途端、才蔵の手が震えだした。
「(震えんな!!手!!鳴るな!!歯!!
あの時は、油断してただけだ……
締めて掛かれば、何とかなる!!
要するに、伊佐那海と明日花を守りゃ……
俺は、バカか!!んな、逃げ腰でどうすんだ!!)
誰が、テメェら何かに渡すか!!」
「そうだ!!力ずくで来るというなら、受けて立つ!!」
才蔵の掛け声に、十蔵は銃を構えた。半蔵はため息交じりに才蔵達に言い放った。
「退屈させないで下さいね?」
その言葉と共に、天井が突然動き出した。よく見ると、それは蛇の大群だった。
すると蛇たちは、雨の用に才蔵達目掛けて落ちてきた。
「蛇だと?!」
「筧さん!!銃は駄目だ!!
この蛇は、殺すと爆発する!!」
「何?!
斬っては駄目なのか?!」
「斬れるなら、とっくにやってる!!くそ!!」
“バタン”
突然、何かが倒れた音が聞こえそこに目を向けると、そこにいたはずの伊佐那海がその場に気を失ったのか、倒れ込んでいた。
「伊佐那海!!(そうだ!!こいつ、蛇苦手だったんだ!!)」
「半蔵様、あの渋井殿方は私にお任せを」
半蔵の隣にいた桜割は、蛇を自分の周りに寄せ付け十蔵に飛び乗った。
「蟲傀儡秘儀蛇玉繭!!」
「?!」
「さあ……私を楽しませて下さいませ」
「筧さん!!」
「余所見しないでください!」
後ろを振り返ると、才蔵の真後ろから半蔵が手に持っていた刀を振り下ろしてきた。才蔵はすぐに剣の束を掴み、鞘から取り出し刀の攻撃を防いだ。
「さぁて……とっとと、済ませましょうか?」
「相変わらず、嫌な殺気を放つ野郎だぜ!!」
「何です?まさか、やるつもりですか?
先日、俺に惨敗したのは、どこの誰でしたっけ?本当、学習能力が無いですねぇ……」
「今回はそうは行かねぇ!!(守らねぇと……もう、後には退けねぇ!!)ここでテメェを、倒す!!」